臨牀消化器内科 2018 Vol.33 No.13 肝線維化―診断を超えて

  • ページ数 : 144頁
  • 書籍発行日 : 2018年11月
  • 電子版発売日 : 2019年2月15日
¥3,025(税込)
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商品情報

内容

消化器の臨床現場になくてはならない最新情報をお届けすべく,1986年1月に創刊。

【特集】肝線維化―診断を超えて
・肝線維化,肝硬変の病理診断
・肝線維化の非侵襲的評価法 (1) FibroScan®
・肝線維化の非侵襲的評価法 (2) 超音波エラストグラフィ(FibroScan®以外)
 他

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序文

巻頭言

肝線維化という病態が注目される理由は,肝線維化と肝発癌との密接な関連が臨床的に明らかであることにある.たとえば,肝細胞癌の80~90%は硬変肝より発生し,HBs 抗原陽性患者では,線維化マーカーであるFib4 index が高いと発癌のリスクが約15 倍に上昇し,エラストグラフィによる肝硬度測定値が12 kPa 以上であれば4~13 倍に発癌リスクが上昇するとされている.一方,HCV 陽性慢性肝疾患でも線維化の進展に伴い,発癌率が上昇することは周知の事実である.

それでは,はたして線維化そのものが肝発癌に機能的に関与するのか,それとも線維化は単に炎症の副次産物であり,炎症に伴う発癌には何ら関与していないのかという臨床的な疑問が浮かんでくる.

このような疑問の答えともいうべき報告が近年,集積されている.なかでも,細胞外マトリックス(ECM)そのものと,線維化を担う活性化星細胞(HSC),筋線維芽細胞,cancer associated fibroblas(t CAF)が肝発癌に重要な役割を果たす可能性が示されるようになった.具体的には,コラーゲンを含むECM の量的・質的な変化がインテグリンシグナルを増強し前癌細胞の増殖と生存を促すとともに,癌細胞の遊走を亢進する.またコラーゲンにより活性化されたdiscoidindomain receptor(DDR)は上皮間葉転換(EMT)を誘導するとされている.加えてECM の増加に伴う組織硬度の上昇は,HSC をさらに活性化して線維化のポジティブフィードバックに働くのみならず,上皮細胞の形質を変化させ癌化に結びつくとされている.さらにECM に蓄えられたHGF(hepatocyte growth factor),PDGF(platelet‒derived growth factor),TGFβ(transforming growth factor β)などが炎症により活性化されたマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の作用により遊出し,オートクライン,パラクライン的に癌細胞の細胞増殖を促すという報告もなされている.

一方,HSC や筋線維芽細胞と前癌細胞や肝癌細胞とのクロストークも注目されている.HSC はHGF やinterleukin 6 の分泌を介して,筋線維芽細胞はPDGF やTGFβの分泌を介して前癌細胞の増殖や遊走を促進するのみならず,VEGF(vascularendothelial growth factor)やangiopoietin の分泌を介して腫瘍新生血管の増生を促す.逆に,癌細胞より分泌されるhedgehog と呼ばれるリガンドが筋線維芽細胞を活性化し,線維化を増強するとされている.

加えて線維化の腫瘍免疫への影響もいわれており,HSC は制御性T 細胞やMDSC(myeloid‒derived suppressor cells)など免疫抑制系細胞を誘導するとともに,筋線維芽細胞より分泌されるTGFβはNK 細胞,樹状細胞等の機能を抑制する.またECM の蓄積そのものが物理的なバリアとなって,NK 細胞が腫瘍を攻撃できない状況をもたらしている.

このような動物モデルや細胞株から得られた多くの知見は,実際のヒト肝発癌過程においては単一ではなく複合的に,そして時空間的に関与することが予想される.また前癌状態から担癌状態へ移行するにつれ,線維化担当細胞も変化していく可能性がある.

いずれにせよこれらの知見を統合すると,肝線維化は肝発癌の引き金としての役割より,前癌細胞の増殖や生存,肝癌細胞の浸潤や癌組織の増大を"促進する働き"が大きいものと考えられる.言い換えれば,肝癌の増殖進展を抑制する観点から,肝線維化の改善の重要性が"より明確"になっているといっても過言ではない.

今回の特集のテーマは「肝線維化―診断を超えて」であり,まさに肝線維化の病態と意義を改めて考える,そのような企画である.Regression というこれまでの臨床では意識されなかった線維化の可逆性,種々の非侵襲的な肝線維化評価法,臨床面や実験系からみた肝線維化の発癌や予後への影響,抗ウイルス治療に伴う肝線維化の改善,さらには将来の肝線維化治療と多岐にわたる内容が紹介されている.読者にとって,本特集はまさに肝線維化の温故知新であり,肝硬変・肝癌への肝線維化の関与と治療の必要性・重要性についてさらに理解が深まることを期待したい.


佐々木 裕

目次

〔特 集〕

巻頭言

1.肝線維化,肝硬変の病理診断

2.肝線維化の非侵襲的評価法

(1)FibroScan

(2)超音波エラストグラフィ(FibroScan以外)

(3)MRエラストグラフィ

(4)バイオマーカーによる肝線維化診断

(5)慢性肝疾患における肝線維化予想式

3.肝線維化と肝発癌リスク(臨床)

4.肝線維化の動物モデル― 肝発癌との関連を含めて

5.C型慢性肝炎SVR後の肝線維化・肝発癌リスクの変化

6.抗ウイルス治療によるB型慢性肝炎の肝線維化改善

7.肝線維化は最強のNASH予後決定因子か

8.肝線維化改善治療と肝再生医療の現状と展望

〔連 載〕

手技の解説/Endocytoを使った内視鏡診断の実際:食道

Dr. 平澤の上部消化管内視鏡教室―この症例にチャレンジしてください/Helicobacter pylori未感染症例のポリープ

検査値の読み方/プロテインC活性低下による門脈血栓症を契機に敗血症,特発性細菌性腹膜炎,肝不全を呈したNASHの肝硬変例

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書籍情報

  • ISBN:9784888755039
  • ページ数:144頁
  • 書籍発行日:2018年11月
  • 電子版発売日:2019年2月15日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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