医師・医学生のための人工知能入門

  • 書籍発行日 : 2020年5月
  • 電子版発売日 : 2020年5月1日
¥3,740(税込)
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商品情報

内容

現状のAIは,囲碁の世界王者に勝てるのに東大には合格できない.それはなぜか.1980年代のニューロブームを体験した脳生理学者である著者が,脳と比較しながらAIの基礎・歴史から応用や展望まで解説.平易な語り口をたどるうち,AIと脳研究の新たなクロスオーバーが見えてくるはずだ.

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序文

はじめに

私が医学生だった1980 年代は,「第2 次ニューロブーム」の時代だった.「バックプロパゲーション」が再発見されただけでなく,実験と理論を融合した「新しい研究のスタイル」が生まれた時代である.例えば,1987年のZipserとAndersen の論文は,3 層の人工神経回路の中間層のニューロンの受容野と,サルの頭頂葉のニューロンの受容野特性を比較するという斬新な論文で,私は大いに感動した.しかし,ブームは長続きしなかった.バックプロパゲーションは極小にトラップされやすい.層を重ねると,学習がうまく進まないことも多く,規模の拡張は困難だった.第2 次ニューロブームは,バブル景気とともに消えさった.

ところが,2012 年にブームが再燃した.第2 次ブームが去った後も,変わることなく研究に取り組んでいたHinton らが,100 万枚の写真の分類にバックプロパゲーションが使えることを示したのだ.実用にならないと見捨てられていたバックプロパゲーションが,なぜ,使えるようになったのだろうか.そして,2016 年には,Hassabis らが作った人工知能(AlphaGo)が囲碁の世界チャンピオンを破るという快挙を成し遂げた.囲碁は機械が侵せない最後の聖域ではなかったのか.

納得がいかないときは,原典を読む.なるほど,学習感度が低下する問題は,神経回路の出力が直線的に伸び続ける,という「ReL 関数」に置き換えて解決したのか.おや,最初の入力層のニューロンの縞模様の受容野は,一次視覚野の受容野とそっくりではないか.これは面白い,などと思ううち,脳の視覚野の階層構造と深層学習した人工神経回路の階層構造を比較したYamins らの論文に行き当たった.これは,Zipser とAndersen の論文の再来ではないか.爆発的に増大した計算力を支えとして,人工神経回路は本当の脳の機能的構築を再現するほどの規模に達したのだ.人工神経回路をうまく育てれば,ヒトの脳と同等のシステムを構築することができる.人特有の言語や高度に発達した認知機能の真髄は,動物モデルでは決して解明できない.人工神経回路を正しく育てて比較対照とする方法論は,ヒト高次機能の理解を飛躍的に深めるに違いない.新しい時代が始まったことを確信した私は,大阪大学医学部の生理学の講義の中に「人工知能と脳」という項目を追加することにした.本書は,講義ノートを元に24 回にわたって臨床神経科学誌上に連載した原稿をまとめたものである.

AlphaGo の衝撃を伝える第1 章に続いて,2 章から12 章は,いわゆる深層学習(ディープラーニング)の説明に費した.2~5 章はAlexNet,6~8章は脳との比較,9 章は再帰型神経回路の雄「LSTM」の解説にあてた.そして,10 章でようやく医療(画像診断)への応用を紹介した.11 章では単語を「意味空間」に配置するword2vec 法,12 章では日常生活に浸透した音声認識の原理,を紹介した.続く,13,14 章で扱った「GANs」は新しい絵や写真を作りだす切磋琢磨する二人組である.現ブームで登場した新星である.15 章から20 章は強化学習とAlphaGo の解説にあてた.20 章で解説したAlphaGo Zero の威容は緻密に設計された荘厳な聖堂を思わせる.最後の4 章は,「意味とは何か」を巡る旅である.新井は人工知能が東大に入れないのは「意味とは何か」がわからないからだという.意味とは一体何なのだろうか.どうすれば意味を理解する人工知能が作れるのだろうか.旅の途中で,トノーニの意識の理論(22 章)とフリストンの知覚の理論(23 章)に寄り道をして,終点に至る.

「医師・医学生のための人工知能入門」というおとなしい題名の本書は,人工知能の医学応用を主題とした本ではない.実は,「これから医師になる医学生の好奇心に火をつけて,あわよくば脳研究の道に引き込む」ことを意図した危険な本なのだ.

遅筆で締め切りを守らない(守れない)著者を見限らずに,励ましてくださった編集部の佐渡さん,大重さん,笹形さん,python を軽快に使いこなしてZipser とAndersen の解析を再現してくれた秋山君と李君,そして本書で精読させていただいた珠玉の論文を執筆された著者の方々に心からの感謝をささげる.


2020年3月

北澤 茂

目次

Chapter1 人工知能が東大に合格する日は来るか

Chapter2 「画像を分類する」人工知能(1)深層学習がブレイクスルーをもたらした

Chapter3 「画像を分類する」人工知能(2)分類の基本は線を引く

Chapter4 「画像を分類する」人工知能(3)AlexNet 成功の鍵 ①畳み込みでシナプスを減らす

Chapter5 「画像を分類する」人工知能(4)AlexNet 成功の鍵 ②シナプスの結合を正しい方向に変える

Chapter6 深層学習で再現された視覚経路の階層構造(1)

Chapter7 深層学習で再現された視覚経路の階層構造(2)

Chapter8 深層学習で再現された格子細胞

Chapter9 LSTM で時系列信号の情報処理が飛躍的に発展した

Chapter10 深層学習を画像診断に応用する

Chapter11 深層学習による音声・言語処理(1)Word2Vec: 人工神経回路を使った単語のベクトル化

Chapter12 深層学習による音声・言語処理(2)音声を「聞き取る」多層人工神経回路

Chapter13 GANs(1)データを作り出す2 人組

Chapter14 GANs(2)急速な進展と脳科学への示唆

Chapter15 強化学習(1)歴史的背景

Chapter16 強化学習(2)TD 学習: 価値の時間差分で報酬予測誤差を表現する

Chapter17 強化学習(3)TD 学習でスペースインベーダーを攻略する

Chapter18 強化学習(4)AlphaGo ① 深層学習の応用

Chapter19 強化学習(5)AlphaGo ② ゲーム木を使った先読み

Chapter20 強化学習(6)AlphaGo Zero 独力で「離」の境地に達した孤高の棋士 135

Chapter21 意味とは何か(1)情報理論は意味を捨てた

Chapter22 意味とは何か(2)情報理論で意識のレベルと内容を定義する試み

Chapter23 意味とは何か(3)フリストンの自由エネルギー原理

Chapter24 意味とは何か(4)人工知能は東大に入れるか

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書籍情報

  • ISBN:9784498048843
  • ページ数:0頁
  • 書籍発行日:2020年5月
  • 電子版発売日:2020年5月1日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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