• ページ数 : 288頁
  • 書籍発行日 : 2012年1月
  • 電子版発売日 : 2020年7月8日
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商品情報

内容

本書は、最新の研究成果をもとにNIRSの基礎研究から臨床応用までカバーするスタンダードな教科書を目指して編集された。特徴として、①NIRSの優れた点だけでなく問題点も明らかにすることに努めた、②データ解析や解釈に関してさまざまな立場に基づいた方法や考え方を紹介した、③脳機能イメージングだけでなく、脳循環モニタリングについても解説した、ことが挙げられる。すでにNIRS研究を行っている上級者だけでなく、これからNIRSを使い始めようとする初心者にもお勧めの一冊である。

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序文

光技術は日本がもっとも得意とする先端科学技術の一つである.近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy:NIRS)による脳循環・脳機能の非侵襲計測技術も世界に先駆けて日本が実用化した光技術である.当初,NIRS は脳虚血や低酸素による脳循環状態をモニタリングすることを目的に開発されたが,1993 年に神経活動に伴う脳循環変化が計測できることが日本や海外で相次いで報告され,脳機能研究に使用されるようになった.NIRS はダイナミックに変化する脳機能を高い時間分解能でリアルタイムに捉えることができ,fMRI やPET と比較すると装置がコンパクトで移動できるため測定場所の制限がない.また測定時の被験者の拘束が少ないため,乳幼児や高齢者の脳機能研究に適している.さらにfMRI よりも神経活動時の賦活脳血流・酸素代謝変化を詳細に検討できる利点がある.さらに2004年に日本光脳機能イメージング研究会が初めて開催され,これを契機として,NIRSによる脳機能研究が急速に国内の研究者の間に広まったのである.

近年のNIRS 研究を振り返ると,ハードウエア,ソフトウエアともに大きな進歩を遂げたと思われる.特にマルチチャンネルNIRS による脳機能イメージングはさまざまなデータ解析法が開発され,脳科学研究に新しい展開をもたらしてきた.さらに,短パルス光を用いた時間分解スペクトロスコピーや携帯型NIRSなど新しいNIRS 装置が実用化され,NIRS の応用範囲が広がってきた.しかし一方では,NIRS には未だに解決されていない問題点が残されているのも事実である.たとえば光路長の問題である.脳組織の光路長がわからないため,脳内ヘモグロビン濃度を定量的に知ることはできない.また,ヘモグロビン濃度を算出するアルゴリズムやレーザー光の波長などが統一されていないなどの問題もある.これらの問題点に対する研究者の認識は必ずしも一致しておらず,その考え方の違いがNIRS データの解析方法や解釈の違いとなって表れているのが現状である.

本書は,最新の研究成果をもとにNIRS の基礎研究から臨床応用までカバーするスタンダードな教科書を目指して編集した.すでにNIRS 研究を行っている上級者だけでなく,これからNIRS を使い始めようとする初心者まで幅広い読者層を想定して構成されている.本書の特徴は以下のような点である.第一には,NIRS の優れた点だけでなく問題点も明らかにすることに努めたことである.NIRS は発展途上にある技術であり,問題点も決して少なくないからである.第二に,データ解析や解釈に関してさまざまな立場に基づいた方法や考え方を紹介している点である.このため本書には相反する意見も述べられているかもしれないが,どれが合理的なのか,その判断は読者に委ねたいと思う.第三に,脳機能イメージングだけでなく,脳循環モニタリングについても解説した点である.NIRS はマルチチャンネル化されて以来,脳機能イメージングに応用されることが多いが,脳神経外科,麻酔科,小児科などでは脳循環モニタリングに使用されることも多いからである.

現在,日本ではNIRSに関する用語は未だ統一されていない.NIRS の計測項目の名称や略称については電子情報技術産業協会(JEITA)と日本光脳機能イメージング研究会が中心となって議論しているところである(基礎編D-8「NIRSの標準化」参照).本書では,本文中の測定パラメータの名称を酸素化ヘモグロビン,脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビンとし,ヘモグロビンの略語はHb として統一することにした.なお,これらの名称,略称は学会や論文などにおける使用を強制するものではない.

本書の執筆者はいずれも国内だけでなく海外でも活躍をされているNIRS 研究の第一人者の方々である.本書の編集は,基礎編に関しては岡田英史先生,星詳子先生,臨床編に関しては宮井一郎先生,渡辺英寿先生に担当していただいた.本書にかかわった諸先生方および新興医学出版社の編集者の方々に,この場を借りて厚く御礼申し上げたい.

追記

本書執筆者の田村守先生が2011年8月7日に逝去されました.田村先生は日本のNIRS 研究の草分けであり,本書の完成を心待ちにしておられました.心よりご冥福をお祈りいたします.


2011年6月

監修酒谷薫

目次

第Ⅰ章 基礎編

A 測定理論

 1 NIRSの測定原理

 2 NIRSトポグラフィー

 3 空間分解スペクトロスコピーの測定原理

 4 時間分解スペクトロスコピーの測定原理

 5 拡散光トモグラフィー

B NIRS計測の基礎生理

 1 神経血管カップリング

 2 脳循環代謝障害

C NIRSの測定方法

 1 プローブ設定

 2 実験デザイン

D NIRSのデータ解析

 1 統計解析総論

 2 光トポグラフィー計測信号の解析手法を検討するための基盤ソフトウェア

 3 NIRS-SPM

 4 ウェーブレット変換

 5 独立成分分析

 6 新しいアーチファクト除去法

 7 NIRS信号のゆらぎ解析

 8 NIRSの標準化

E マルチモダリティー計測

 1 EEGとNIRSの同時計測

 2 fMRIとNIRSの同時計測

F NIRSのピットフォール

 1 NIRSデータの統計解析ツールボックスは可能か?

 2 近赤外分光法の原理と限界,そしてその解決法―脳機能計測を中心に―

第Ⅱ章 臨床編

A 脳神経外科

 1 言語機能障害とてんかん外科への応用

 2 脳血管障害,脳腫瘍における神経活動時のNIRS計測

 3 頸動脈内膜剥離術における術中モニタリング

 4 時間分解スペクトロスコピーを用いたクモ膜下出血後の脳循環モニタリング

 5 NIRSを用いたEC-IC bypass術のバイパス機能評価法

B 精神科,神経内科

 1 精神疾患・心理現象への応用とうつ症状の先進医療

 2 ストレスの評価

 3 統合失調症の前頭葉機能

 4 摂食・嚥下障害の評価

 5 薬物効果の判定

 6 高次脳機能と加齢

C リハビリテーション

 1 リハビリテーションへの応用

D 小児科

 1 乳児の脳機能発達

 2 自閉症スペクトラムの前頭葉機能

 3 新生児領域における近赤光を利用した脳機能,循環・代謝評価

 4 小児起立性調節障害と脳循環障害

E 麻酔科

 1 全身麻酔中の脳循環・酸素代謝とNIRSモニター

 2 低酸素脳障害のチトクロームオキシダーゼ(cyt.ox.)計測

 3 TRSによる周術期脳モニタリング法

F スポーツ医学

 1 活動筋の酸素・エネルギー代謝の測定

 2 運動による実行機能の向上と神経基盤:背外側前頭前野の役割

G その他(耳鼻科,眼科,歯科)

 1 聴覚領域への応用:聴覚機能

 2 眼科領域への応用:眼不快の定量的評価

 3 歯科領域への応用:顎口腔機能,ストレスなど

第Ⅲ章 トピックス編

 1 PocketNIRS Duo

 2 ウェアラブル光トポグラフィ

 3 Spectratech OEG-16

 4 マルチチャンネルNIRSによる頸動脈内膜剥離術の術中モニタリング

 5 マルチチャンネルNIRSを用いた皮質マッピング中のモニタリング

 6 脳深部刺激療法における脳機能モニタリング

 7 森林浴によるリラクゼーション効果

 8 ドライビング中の脳活動

 9 社会脳

 10 NIRSを用いたALS患者の意思伝達装置―Yes/No判定装置「心語り」の開発―

 11 酸素化ヘモグロビンをトレーサーとした脳虚血検出法

 12 NIRSによるClosed Loop Brain-Machine Interfaceを応用したリハビリテーションシステム

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書籍情報

  • ISBN:9784880027142
  • ページ数:288頁
  • 書籍発行日:2012年1月
  • 電子版発売日:2020年7月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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