高次脳機能障害Q&A症候編

  • ページ数 : 224頁
  • 書籍発行日 : 2011年10月
  • 電子版発売日 : 2020年8月5日
¥4,620(税込)
ポイント : 84 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

一言で「高次脳機能障害」といっても、複雑で多彩な症状をみせるこの分野。本書では患者をみる際に重要な症候学と実際に臨床で直面する様々な疑問に対し、Q&A形式でわかりやすく解説しています。テーマにあわせて神経内科、精神神経科、リハビリテーション科の医師だけでなく、ST・OT・PT、心理の分野からも臨床、研究ともに第一線でご活躍中の先生方が執筆しており、その内容は詳細でわかりやすく、また最新の情報にも触れています。
本書では基礎的なテーマからちょっとマイナーなトピックまで幅広くQとして取り上げ、全項目「知っておきたい基礎知識」、「少し詳しく」、「じっくり学ぶ」の3段階でステップアップしながら学べるようになっています。「高次脳機能障害」の全貌がわかる、おすすめの1冊です。

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版

序文

今年2011年はPierre Paul BrocaのLeborgne報告から,ちょうど150年目の年です.また,John Hughlings Jackson没後100年にもあたります.高次脳機能研究草分けの巨人2人に関連した年にこの本が出版されるのを心から嬉しく思います.

この本は元々,新興医学出版社から出版されている雑誌Modern Physicianの創刊30年記念特大号(2010年1月)の企画を基に製作されました.雑誌特集の時の倍にQuestionを増やし,執筆者はおよそ80人にも上ります.

Questionに対するAnswerは,3つに分けることにしました.すなわち,1)知っておきたい基本知識,2)少し詳しく,そして3)じっくり学ぶ・文献です.急いで項目についての知識を得たい時には1)だけ読めば十分です.1)~3)まで読みとおしても,それほど時間はかかりません.内容は高次脳機能理解のための,基礎知識・症候・トッピクスの3つの部分に分け,基礎知識とトピックスを「基礎編」,症候を「症候編」として2巻に分けました.執筆をお願いした先生方は,医学部名誉教授の大先生から私の教室の大学院生まで幅が広く,バックグラウンドも神経内科,精神神経科,リハビリテーション科の医師だけでなく,ST・OT・PTや心理の立場の先生方も多く,多彩です.しかし,これらの先生方は皆,共通して「日本神経心理学会」や「日本高次脳機能障害学会」でご活躍なさっている方々です.執筆者の専門性を第1に重視して,テーマを選択いたしましたので,どの項目もわかりやすく書けていると思います.

ところで,Jacksonの失語に関する最初の論文をご存知でしょうか.彼が故郷のヨークからロンドンに出てきて神経疾患患者の診療に従事して3年目の1864年に若干29歳でまとめた論文です.この論文は「London Hospitalの内科および外科スタッフによる臨床講義と報告 第1巻」に載っており,「言葉の喪失(Loss of speech).それと心臓弁膜疾患,右片麻痺との関連―嗅覚欠損―ヒョレアにおける言葉の欠損―てんかんにおける動脈支配領域」という長ったらしい題名が付いています.この本は私がもっとも大切にしている蔵書の1つです.この論文には34例の失語症例の病歴と考察が書かれています.随所にBrocaが引用され,彼に対する敬意が示されていてほほえましいぐらいです.このことはあまり知られていない話です.むしろ,Jacksonは後に徐々にBrocaに対して批判的になり,彼独特の失語理論を生み出していったことのほうがずーっと有名です.

この本は,Q & Aという形式を取っており,読むのが大変にならないように工夫しましたが,内容は実は重厚です.とくに若い,まだ初心者の読者には,最初から全体を通して読むことをお勧めします.そうすると,脳の高次脳機能についての全貌を知ることができるはずです.この本に書かれていることを参考にして経験を積み,JacksonがBroca理論と葛藤したように,この本に書かれている事実を確認し,さらに乗り越えていただくことを期待したいと思います.

最後に,この本の企画・編集を全力で応援して下さった,新興医学出版社の岡崎真子さん,林 峰子社長に心からのお礼を申し上げたいと思います.


2011年8月

昭和大学神経内科 河村 満

目次

症候編

Q1 「記憶」「記憶障害」の分類をわかりやすく教えてください.また,どのような病気が「記憶障害」の原因になるのでしょうか.

Q2 私の叔父は85歳ですが,戦争体験を生き生きと語り,とても認知症とは思えませんが,Alzheimer病と診断されています.認知症の症候診断はどのようになされるのですか.

Q3 Acute dementiaの概念を教えてください.

Q4 認知症の精神症状と行動障害の違いについて説明してください.

Q5 Acute confusional stateについて教えてください.せん妄とは違うのですか.

Q6 「遂行機能障害」と「作業記憶(working memory)障害」との関連を教えてください.

Q7 椅子に座れない主訴の患者さんをどのように診断したらよいかを教えてください.

Q8 「失行」はLiepmannの古典的失行が有名ですが,もう100年も前の概念で,古いのではないでしょうか.新しい失行のとらえ方を教えてください.

Q9 脳卒中で起こる失行と変性疾患で生じる失行とは違いがあるのでしょうか.

Q10 「発語失行apraxia of speech」というのはどのような症状なのですか.診断の仕方を教えてください.

Q11 発話の「流暢性」と「非流暢性」についていくら教えていただいてもよくわかりません.ポイントをきちんと説明してください.

Q12 ジャルゴンの種類,症候内容についてまとめてください.

Q13 「失文法」という症状はどのようなことを指しているのでしょうか.訓練のポイントも教えてください.

Q14 語義失語と意味記憶障害との関連を知りたいと思います.また,診断の仕方はどうすればよいですか.

Q15 「読めない」が主訴の患者さんをどのように診断したらよいかを教えてください.

Q16 「書けない」が主訴の患者さんをどのように診断したらよいかを教えてください.

Q17 純粋失読・失書の脳内機構の説には各種あると聞きました.どのようなものがあるのですか.

Q18 計算障害について教えてください.

Q19 「半盲」と「半側空間無視」とはどのように区別するのでしょうか.

Q20 「消去現象」と「半側空間無視」はよく合併すると思いますが,それらの関連について説明してください.

Q21 視覚性失認は「統覚型」と「連合型」に分かれると聞きますが,この分類は今でも認められているのでしょうか,そうでしたら,鑑別の仕方を教えてください.

Q22 変形視にはさまざまなタイプがあるそうですが,その詳細について,また機序がわかっていたら教えてください.

Q23 身体部位失認は片側に起こる症状と聞きましたが,そうですか?鑑別診断も含めて,症候の内容を教えてください.

Q24 Anton症候群など病態失認の種類にはどのようなものがあるのでしょうか.

Q25 「病態失認」と「白己認知障害」との関連,診かたについて説明してください.

Q26 カプグラ症候群とフレゴリの錯覚との異同を教えてください.

Q27 Parkinson病でカプグラ症候群が起こると聞きましたが,事実でしょうか.Parkinson病では他にも高次脳機能障害が起こるのでしょうか.

Q28 「失音楽症」について教えてください.

Q29 皮質聾,語聾,環境音失認の鑑別法を教えてください.

Q30 「痛覚失認」,「二点識別覚」などの体性感覚性高次脳機能障害について知りたいのですが.

Q31 大脳内側面の症候学について教えてください.

Q32 脳梁の障害はどのような症候を起こすのでしょうか.また病因について教えてください.

Q33 脳の限局性病変により,人格障害が現れることがあるのですか.

Q34 大脳皮質基底核変性症(CBD)では行為障害が現れやすいと聞きますが,どのような症状なのですか.

Q35 口運び傾向(oral tendency)は,Klüver-Bucy症候群の1症状として有名ですが,孤立性にも発症するという報告を聞いたことがあります.口運び傾向の症候・責任病巣・病因について教えてください.

Q36 服が着られない主訴の患者さんをどのように診断したらよいかを教えてください.

Q37 「closing-in現象」とは何ですか?

Q38 作話はKorsakoff症候群で有名ですが,他の病態でも生じるということを聞きました.作話の症候・責任病巣・病因について教えてください.

Q39 脳損傷による視覚認知障害からの回復について教えてください.

Q40 「逆転視」とは何ですか?

Q41 「街並失認」と「道順障害」の違いを具体的に説明してください.

Q42 22q11.2欠失症候群について教えてください.

Q43 脳血管障害後に,「うつ」や「そう」が生じると思います.その割合や治療についてご教授ください.

Q44 「アパシー」という言葉をよく聞きますが,これについて教えてください.

Q45 血管性認知症の症状について教えてください.Alzheimer病との鑑別の要点は何ですか?

Q46 Alzheimer病と前頭側頭型認知症はどのように鑑別するのですか.臨床症状・画像診断の要点を説明してください.

治療・介護編

Q47 皮質下血管性認知症の治療について最近の知見を教えてください.

Q48 Alzheimer病の治療薬について教えてください.

Q49 認知症の食行動異常にはどのようなものがあるのでしょうか.介護についても教えてください.

Q50 行動障害を持つ家族にどのように接したらよいか教えてください.

Q51 「失行」のリハビリテーションについて教えてください.

Q52 失語症に薬は効くのでしょうか.効果があるとしたら,薬の投与法を具体的に教えてください.

Q53 「半側空間無視」の治療について教えてください.

Q54 「視空間性認知障害」のリハビリテーションについて教えてください.


索引

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:17.1MB以上(インストール時:42.3MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:68.4MB以上

  • android icon

    AndroidOS 5.0 以降

    外部メモリ:17.1MB以上(インストール時:42.3MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:68.4MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784880027234
  • ページ数:224頁
  • 書籍発行日:2011年10月
  • 電子版発売日:2020年8月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。