特集 1 地力が伸ばせる胸部画像診断−これだけは知っておきたい 胸部腫瘍の読影ポイント−
序 説
胸部画像において,結節や腫瘤の良・悪性の鑑別は常に読影者の重要課題である。初学者にとっても同様であり,今回は胸部画像のなかでも「胸部腫瘍」をテーマとした。取っ付きにくい印象のびまん性肺疾患に比べて,結節性病変のほうが出現や増大の有無など,ある程度の所見はとらえやすく,読影しやすい印象があるかもしれない。しかし,筆者を含め漫然と読影していて痛い思いをした方も多いのではないだろうか? 一方,エキスパートの的確で詳細な読影により,患者さんの
将来が変わるような所見も見聞きしたこともあるかもしれない。
本誌の「地力が伸ばせる」シリーズの企画は初学者に向けた側面もあるシリーズである。そこで,より実践的な特集となるように日々多数の症例の読影を,若い先生方への指導も行いながら格闘されている先生方を中心に執筆をお願いした。肺腫瘍や縦隔腫瘍・胸膜腫瘍の読影時におさえておきたい画像診断に関する事項や,読影や臨床医とディスカッションするうえで最低限必要となる肺腫瘍の病理所見・知識を解説いただいた。また,「胸部腫瘍」をテーマとするが,背景肺の状態や経過は診断や治療戦略のうえで非常に重要であり,限られた誌面ではあるが既存肺病変や治療後変化に関しても肺癌診療におけるポイントを含め解説いただいた。
初学者にとってはもちろん知っておきたい内容であり,経験のある先生方々にとっても「胸部腫瘍」およびその経過を読影するうえで考えるべきことを再確認できる内容を目指した。明日からの読影に役立てば幸いである。
室田真希子
特集 2 この機会にちゃんと覚えるCTの原理[前編]
序 説
多くの放射線科医,また施設にとってCTは,放射線科の研修で最初に経験するモダリティであろう。なじみがあるぶん,「単純」で「初心者向け」と思われがちなのか,基礎的な勉強に割かれる放射線科医のリソースは,圧倒的にMRIの原理の理解に重きをおかれてしまうことが多い。
しかし,実際に若手放射線科医と話してみると,画像の専門家として,この程度の理解でよいのだろうか,と疑問を抱いてしまうことがしばしばある。
「空間分解能の定義は?」
「フィルター補正逆投影法(FBP)は元画像からどうやって画像を作っているの?」
「Dual energy CTを利用するとなぜ造影剤が減量できるの?」
「このプロトコルで造影剤の注入速度を速めると,普通はどうなる?」
いずれも基本の“キ”といってもよい質問だが,だいたいの若手は黙り込んでしまうか,早々に「わかりません」と白旗を挙げる。1年目や2年目の研修医ならわからないのは当然だが,専門医試験も間近に控え,CT当番に上級医として従事するような年次の若手でもこのような反応は珍しくないのである。東大だけの現象かと思って,各施設や大学で指導的立場にある複数の先生方に聞いてみたが,どうやら当院だけの現象ではないようなのだ。
よく考えたら無理もない話かもしれない。そもそも,MRIの原理を解説した良書は多数あるのに,CTの原理を体系的に解説した書籍は非常に少ない。またこの10〜15年の間に,CTは検出器の多列化,多管球化,Dual energy,逐次近似再構成,人工知能応用再構成など劇的な技術革新が重なり,一昔前とはまったく違うモダリティのようになってしまったからである。
本特集は,CTの基礎的な原理から最新の話題までを網羅し,CTの基礎の基礎から学びたい初学者からup to dateな知識をまとめて知りたい専門医の方まで,幅広い先生方にお役に立てる特集になることを目標とした。5月号は第1弾としてCTの原理を取り上げた。幸いこの領域を若手の先生方に教える機会の多い,専門家としても教育者としても最高峰の先生方に,ご執筆いただくことができた。
本特集をきっかけに,1人でも多くの先生方がCTの世界に興味をもっていただけたら望外の喜びである。
前田恵理子