医学 歴史と未来

  • ページ数 : 195頁
  • 書籍発行日 : 2020年12月
  • 電子版発売日 : 2021年1月1日
¥3,300(税込)
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商品情報

内容

科学と共に進化を続ける医学.人生100年時代を迎える一方,パンデミックの脅威にも曝される人類.これからわれわれは何をなすべきか.長年医学の振興に携わってきた著者が全ての医学者へ贈る,変化の時代の羅針盤

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序文

はじめに


医学は古代ギリシャ以来の長い歴史をもっているが、二〇世紀に入って急速な発展を遂げ、人々の健康に大きく貢献してきた。特に二〇世紀の中葉に抗生物質が開発されたことと、環境衛生と予防技術が改善されたことによって、有史以前から人々を苦しめてきた感染症がかなりの程度に克服されたことは、今日の長寿を実現するうえに大きな力となったことは疑いがない。医学は感染症の時代から、非感染性疾患の時代へと変わったと多くの人が考えてきた。例えば一九五〇年頃までの日本人の主な死因は、結核、肺炎・気管支炎、下痢・腸炎などの感染症であった。その後、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患などの非感染性疾患が主要死因となった。ごく最近になって肺炎が死因の三位になったが、これは超高齢者の死因として嚥下性肺炎が増加してきたことによるものである。

このような医学の進歩を支えてきたものは、科学としての医学の進歩である。特に遺伝子、あるいはそのすべてであるゲノムの構造がしだいに明らかになってきたこと、人体を構成する、あるいはそれを調節する主要な物質の構造や機能が解明されてきたことなど、生命科学のめざましい進歩によるものである。それによって疾患への理解は、過去半世紀の間に予想もできなかったほど深いものとなった。それにもかかわらず多くの疾患の成因は現在もなお明らかでなく、予防法も、また完全な治療法も確立されていないものが多い。自然のしくみは人智を越えて複雑なものであり、なお克服すべき多くの課題が残されている。

医学の進歩によって、人の寿命は急速に延びた。明治時代までの平均寿命は三十歳代であったが、第二次世界大戦後、五十歳を超え、その後も延び続けて二〇一九年の推計によると、日本人の男子は八十一・四一歳、女子は八十七・四五歳となっている。平均寿命には小児期死亡が大きく影響するので、日常的な感覚とやや異なるところがある。そこで厚生労働省は、寿命中位数も数年ごとに公表している。これは統計学でいう中央値で、五十%の人が生きられる期間といってよい。この寿命中位数(二〇一八年)は、男子八十四・二三歳、女子九十・一一歳である。この値は今後も延び続け、二二世紀には百歳になると推計されている。すなわち五十%の人が百歳まで生きられる時代になると考えられているわけで、“人生百年時代”という言葉がさかんに用いられるようになったのはそうした理由による。しかし他方では、出生率は多くの国で低下し、高齢者の医療、介護を、誰が、どう負担するかも、深刻な問題になろうとしている。こうした問題に対処するために、あるいはそれらを解決するために、今われわれは何をなすべきかが、重要な課題となりつつある。

このような現代医学の流れのなかで、二〇一九年、予想もしなかった事態が発生した。それは中国の武漢にはじまり、全世界に広がった新型コロナウイルス感染症、すなわちCOVID-19のパンデミックである。航空機を利用した国際交流が活発な現在、この感染症はきわめて短期間に全世界に広がり、二〇二〇年十月の時点で世界の感染者は三千万人を超え、死者も百万人を超えている。しかもこうした新しい感染症に対して、現代の進歩した医学も迅速に手を打つことができないことを改めて思い知らされる結果となった。

こうしたときこそ、われわれはもう一度医学の歴史を振り返り、未来を展望する必要がある。しかし本書では、医学の通史を述べることが目的ではない。主として二〇世紀から二一世紀にかけての医学の特徴を述べ、それを基礎として医学の未来について、特に内科学を中心に私の見解を述べたい。

目次

はじめに

第1部 医学の歴史

 第1章 観察と経験に基づく医学

 「観察がすべてである」

 薬とさじ加減

 名医の条件

 もっともっとフィジカル

 第2章 病因・病態に基づく医学

 病理医は裁判官

 感染症との戦い――細菌学、免疫学の勃興

 ラボラトリー検査と画像診断の発展

 病因あるいは病態に基づく医学への転換

 薬の開発――その成功と障壁

第2部 医学の現在――新しい医学の登場

 第1章 証拠(エビデンス)に基づく医療(EBM)

 臨床疫学からEBMへ

 EBMの誕生

 診療ガイドラインの普及と弊害

 トランスレーショナル・リサーチの登場

 第2章 ゲノム情報に基づく医学 そしてprecision medicine へ

 ヒトゲノムの解読――神の言語の理解へ向けた挑戦

 新しい千年紀(ミレニアム)の科学政策

 次世代シークエンサーの登場とがんゲノム医学の進歩

 がんの免疫療法とゲノム医学

 大統領の演説で有名になったprecision medicine

 先天異常へのゲノム・ファースト・アプローチ

 人種によるゲノムの相違と医学――集団遺伝学の重要性

 遺伝子変異はどのようにして起こるのか

 第3章 ゲノム医学からみた多因子疾患

 多因子疾患の成因――人は生まれか育ちか

 見つからない遺伝率(missing heritability)

 飢餓に学ぶ――早期環境の重要性

 遺伝子か、それとも環境適応か――バーカーの貢献

 育ちの重要性――エピジェネティクスを中心に

 複雑かつ変化の激しい環境因子――exposomeという概念

 ライフコース・データとは何か、なぜ重要か

 体内の仲間との共生――マイクロビオータと健康影響

 人種による病気の違い

第3部 医学の未来

 第1章 がんゲノム医学の確立 がん制圧の日をめざして

 がん、その発生機構の解明と予防

 注目を集める免疫療法

 第2章 先天異常の治療の確立 ゲノム編集はどこまで許されるか

 最近の治療法

 遺伝子治療への期待と重い課題

 第3章 多因子疾患へのアプローチ 残された最大の課題

 ゲノムと環境の複雑な相互作用

 重要なライフコース・データ

 第4章 治療から予防へ、そして先制医療へ

 重要な公衆衛生(パブリック・ヘルス)の視点

 医療の最終目標――先制医療

 第5章果てしなき感染症との戦い 常に備えを

 常にあるパンデミックの脅威

 われわれがなすべきこととは――重要な感染症への備え

 第6章 脳と心の研究 残された最大のフロンティア

 脳研究の発展と障壁

 臨床的に重要な脳研究の課題

 第7章 再生医学 古くて新しい分野

 組織工学から幹細胞医療へ

 再生医療――残された領域

 第8章 情報と医学の融合 医学の未来を拓くフロンティア

 ビッグ・データ

 人工知能とIoMT

おわりに

文献

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書籍情報

  • ISBN:9784758121118
  • ページ数:195頁
  • 書籍発行日:2020年12月
  • 電子版発売日:2021年1月1日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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