神経疾患患者の転倒予防マニュアル

  • ページ数 : 152頁
  • 書籍発行日 : 2021年3月
  • 電子版発売日 : 2021年2月24日
4,950
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商品情報

内容

高齢者より格段に確率がはね上がる、神経疾患患者の転倒・転落
どのように予防すべきか多角的に理解できる書籍です!


運動・感覚・認知機能が障害されやすい神経疾患患者は、特に転倒・転落に見舞われる可能性が高いとされている。本書では、各神経疾患における転倒の特徴とその予防のポイントをはじめ、転倒予防グッズの紹介・環境整備の方法などを具体的かつ視覚的に解説している。医療現場はもちろん、家庭や職場など患者家族なども巻き込みながら、少しでも転倒・転落が防止できるようマニュアルとして本書を活用してほしい。

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序文

序文


「神経」(英語ではnerve、ドイツ語ではNerv)という言葉は、日本初の本格的な西洋医学書『ターヘルアナトミア』の翻訳書『解体新書』(1774年、前野良沢・杉田玄白ら)を訳す時に、オランダ語のzenuw(元々は、ドイツ人クルムス著の解剖図譜のオランダ語訳本)の訳語として作られた言葉とされている。神気と経脈からの造語であり、「神経」の言葉は日本から漢字の母国である中国に逆輸出されたという1)。神経系は、からだのすみずみまで張り巡らされており、ヒトをはじめとする動物の運動・感覚、高次脳機能を統括・調整する役割を有する、きわめて精巧に整備された体内情報システムと言うことができる。その神経系が病気や障害で侵されると、さまざまな症状(symptom)や徴候(sign)をきたし、日常生活の身体活動に制限や低下、減弱を招くことになる。

神経疾患の患者は、運動機能・感覚機能・認知機能が障害される場合が多く、そのために転倒・転落をきたしやすく、その結果、頭部外傷や四肢・脊椎の骨折などを生じ、いっそうの生活機能とQOLを低下させてしまう事態を招くことが少なくない。在宅高齢者の一般的な転倒率は約20%とされているが、神経疾患患者の転倒率は、進行性核上性麻痺64%、パーキンソン病60%、脊髄小脳変性症55%、多系統萎縮症41%、筋萎縮性側索硬化症35%、末梢神経障害43%とされる2)。このように神経疾患患者が非常に転びやすいことは、患者、家族、医療従事者ともに十分に認識している。そして、「神経疾患からくる症状の1つだから仕方がない」と思っている、あるいは思わされているのが現場の実情であろう。

しかし、一つひとつの神経疾患には、それぞれの原因となる神経系の病変部位があり、それに伴う特有の症状と徴候があり、転倒の仕方(転倒前・中・後の変化・動き・反応など)にも特徴がみられることが多い。そして、その特徴を明らかにすれば具体的な予防対策を講ずることによって、転倒をゼロにすることはできなくとも、せめて1/2~1/3程度に低減できると考えられる。

その転倒の特徴を明らかにする作業と具体的で有効な予防対策を講ずる作業で大切なことは、「多職種で 楽しく 多面的 」(3つの「た」)3)にアプローチすることである。転倒という事象が数多くの要素が複合して起こることから、医師を中心に看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、放射線技師、ソーシャルワーカー、管理栄養士、事務職など、多職種の連携・協力により、多面的な見方・知識・技術を融合させることが求められる。しかも、難しい課題を皆で柔軟にかつ楽しく進めていくことが必要である。

ところで、オーケストラは、指揮者の振るタクトの下、弦楽器、管楽器、打楽器それぞれの奏でる音が協調されて、美しく壮大な交響曲(シンフォニー)を醸し出す。それと同様に、転倒予防という壮大な医学的・社会的な課題は、多くの職種の専門的な知識と技術と経験そして感性が集められることによって、初めて具体的かつ有効な対策への道が拓かれると考えられる。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」(井上ひさし)の言葉のように、神経疾患と転倒というきわめて難しい組み合わせと現場での困難な課題について、多職種の各執筆者には、情理を尽くした観点、すなわちhuman(人間性)にしてscience(科学)を大切にした姿勢と内容・表現で、それぞれの項目を執筆していただいている。全身のすみずみまで張り巡らされている神経系のように、本書全体のすみずみまで神経が行き届いた現場に役立つ構成・内容となり、明日からの医療・介護の業務に資する書として広く、長く活用されることを切に願っている。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大、国の緊急事態宣言の発令など、前代未聞の厳しい事態と各職場の多忙かつ困難な状況にもかかわらず、短期間で執筆・構成に協力していただいた各執筆者の方々には3名の編者(饗場、鮫島、武藤)を代表して厚く御礼申し上げます。また、学術的・社会的意義のある新たな視点の企画として、本書発刊の決断をし、迅速・適切な対応をしていただいた(株)新興医学出版社の林 峰子代表取締役と、細やかで適切な編集作業を担当していただいた同社の宮澤 咲さん・石垣光規さんに感謝します。


2021年1月20日

日本転倒予防学会理事長/東京大学名誉教授
一般社団法人東京健康リハビリテーション総合研究所 代表理事/所長
武藤 芳照


[文献]

1) 小長谷正明:神経内科─頭痛からパーキンソン病まで─(岩波新書 383):p10-14,岩波書店,1995

2) 饗場郁子:神経疾患患者の転倒を予防するために~チームで取り組む転倒予防~医師の立場から.神経治療学 33(2):245-249, 2016

3) 饗場郁子 編:根拠に基づく転倒予防Q&A.エキスパートナース 31(11):89-124,照林社,2015

目次

序文

■1章 医療現場で知りたいQ&A

1.転倒予防対策に対して、患者の同意が得られず困っています。何かよい方法はないでしょうか?

2.「動く前にナースコールを押してください」と説明しても、ナースコールを押さずに動いて転倒する場合があります。どうすればよいでしょうか?

3.認知症の患者が転倒予防のために使用しているセンサーの電源を切ってしまいます。どのように対応すればよいでしょうか?

4.すくみ足があるパーキンソン病患者の転倒予防のために、色々なキュー(手がかり、きっかけ)があると聞きました。キューを選択するポイントを教えてください。

5.転倒予防のため、1人で動かないように伝えたり、必要に応じて身体拘束を行う場合があります。どのように対応すればよいでしょうか?

6.疾患ごとの転倒による外傷の特徴はありますか?

7.階段で転ばないための注意点を教えてください。

8.退院後の在宅での運動・生活指導で大切なことは何ですか?

9.脳梗塞後遺症などがある場合、1人で歩いてよいかはどう判断しますか?

10.車いす移乗時に、転倒予防で注意する点はありますか?

11.病院のトイレでの転倒予防で気をつけることは?

■2章 各疾患における転倒の特徴と転倒予防のコツ

1.パーキンソン病(およびパーキンソン症候群)

2.脳卒中後遺症

3.特発性正常圧水頭症

4.進行性核上性麻痺

5.脊髄小脳変性症

6.多系統萎縮症

7.末梢神経障害

8.筋萎縮性側索硬化症

9.球脊髄性筋萎縮症

10.慢性硬膜下血腫

■3章 神経疾患患者の転倒予防の具体的な方法

1.転びやすい患者を見極める

2.患者をどう評価するか

3.運動療法

4.環境整備

5.転倒予防・外傷予防グッズ

6.患者・家族参加型転倒予防

7.対策を伝える方法(ポスター・川柳など)

8.各職種の特性とかかわり方

 ①医師

 ②看護師

 ③リハビリスタッフ

 ④薬剤師

 ⑤管理栄養士

■4章 神経疾患患者の環境に応じた転倒予防の基本

1.家庭

2.病院の回復期リハビリテーション病棟

3.介護保険施設

4.職場

5.公共施設(駅,百貨店など)での転倒予防

巻末資料1:日本転倒予防学会の転倒予防川柳

巻末資料2:日本転倒予防学会推奨品

あとがき

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書籍情報

  • ISBN:9784880027975
  • ページ数:152頁
  • 書籍発行日:2021年3月
  • 電子版発売日:2021年2月24日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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