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INTESTINE 2020 Vol.24 No.1 ここまで来たde novo cancer
INTESTINE編集委員会 (編) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
本特集では悪性度の高いde novo 癌の内視鏡診断,臨床病理学的特徴像,そしてAI診断など最先端の知見も交え展開する.
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序文
序説 De novo cancer の時代的変遷と解決すべき課題
工藤 進英
(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
元号が平成から令和に変わり,新しい時代の幕が開けた.大腸Ⅱc 研究会を基盤とし,大腸Ⅱc病変の重要性を広く啓蒙する雑誌として本誌の前身である『早期大腸癌』が創刊されたのが1997年9 月,今から23 年前のことである.創刊号のテーマは「いかにして大腸Ⅱc を見つけるか」であり,当初は淡い発赤などわずかな色調の変化を捉えいかにⅡc を発見し治療するかが肝要であった.その後,Ⅱc は決して幻ではなく悪性度,転移率の高さをはじめ,さまざまな研究が積み重ねられようやく海外にも周知されるようになってきた.二十余年にわたって早期大腸癌の診断,治療を中心に企画を重ねてきたが,本号では大腸癌の発育進展においてもっとも重要な位置づけを担う「de novo cancer」に改めて焦点を絞り,最新の知見も含めさまざまな観点から論じていただく.まさに,新しい時代の幕開けにふさわしい内容となっている.
大腸癌の組織発生には,正常粘膜から直接発癌するde novo carcinoma 説,腺腫から癌化をきたすadenoma-carcinoma sequence 説,鋸歯状ポリープを前駆病変とするserrated pathway 説,炎症粘膜を母地とするdysplasia-carcinoma sequence説などが提唱されている.Vogelstein ら(1998 年)は家族性大腸腺腫症の検討から,腺腫の発生と癌化は各遺伝子の多段階異常によって起こることを明らかにし,adenoma-carcinoma sequenceを提唱した1).K-ras,5q の欠失に関連してAPC 遺伝子やp53 遺伝子をはじめとする種々の遺伝子異常が発見された.一方でde novocancer の象徴とされるⅡc 型早期大腸癌は,粘膜全層性のstraight 腺管が粘膜筋板に向かって垂直に伸びるという特徴的な病理像を有し,腫瘍径が小さくともほかの肉眼形態に比しSM 癌率がきわめて高いという特徴を有する.このことはdenovo 発生の陥凹型腫瘍は他の形態に比べ発育が非常に速いことを示している.そしてこの大腸Ⅱc の内視鏡診断に重要な役割を担ったのが真に,拡大内視鏡である.
今でこそ大腸内視鏡診断学の礎となったpitpattern 診断であるが,pit pattern 診断学の登場は当時,「生検こそがゴールドスタンダード」とされていた従来の診断学に一石を投じ,内視鏡的に病理組織を予測する“optical biopsy”の精度を追求する歴史の幕開けでもあった.内視鏡像,実体顕微鏡像,マクロ病理組織像の対比を1 例1例,綿密に行い検討を重ねた筆者の秋田時代での地道な検討は“in vivo 下の拡大内視鏡”開発を必然にし,同時に実体顕微鏡観察に基づくpit pattern診断の基本形ができ上がった.その後,超拡大観察を可能とするEndocytoscopy(Endocyto,CF-H290ECI,Olympus Corp.)の出現により,リアルタイムで生体内の細胞の核や微細血管を観察できるようになった.Endocytoscopy は構造異型だけでなく細胞異型の診断をも可能とするため,pit pattern 診断に比べより精度の高い質的診断を得ることができる2).
そして現在,人工知能(AI)医療の時代が到来した.2019 年3 月にわれわれが主体となり開発してきたEndoBRAIN® 3),4)が,日本初の医用AIソフトウェアとして薬事承認を得て市販された.前述のEndocytoscopy を用いた大腸病変のコンピュータ診断支援システムである.また,AI を用いたⅡc をはじめとする大腸病変発見システムの開発5)や癌の転移予測6),de novo cancer の遺伝子研究にも取り組んでおり,今後も大腸診療に革新的な転換をもたらすことが期待される.
本誌は二十余年にわたり陥凹型をはじめとする早期大腸癌の最先端の知見を発信してきた.本特集では悪性度の高いde novo 癌の内視鏡診断,臨床病理学的特徴像,そしてAI 診断など最先端の知見も交え展開する.本号が世界の医学の発展につながることを,そして何より1 人でも多くの大腸癌患者の未来に貢献することを,切に願う.
文献
1) Vogelstein B, Fearon ER, Hamilton SR, et al:Genetic alterations during colorectal-tumor development.
N Engl J Med 1988;319:525-532
2) Kudo T, Suzuki K, Mori Y, et al:Endocytoscopy for the differential diagnosis of colorectal low-grade adenoma:a novel possibility for the“resect and discard” strategy. Gastrointest Endosc 2019;Nov 28( Epub ahead of print)
3) Kudo SE, Misawa M, Mori Y, et al:Artificial intelligence-assisted system improves endoscopic identification of colorectal neoplasms. Clin Gastroenterol Hepatol 2019;Sep 13(Epub ahead of print)
4) Mori Y, Kudo SE, Misawa M, et al:Real-time use of artificial intelligence in identification of diminutive polyps during colonoscopy:A prospective study. Ann Intern Med 2018;169:357-366
5) Misawa M, Kudo SE, Mori Y, et al:Artificial intelligence-assisted polyp detection for colonoscopy:Initial experience. Gastroenterology 2018;154:2027-2029 e3
6) Ichimasa K, Kudo SE, Mori Y, et al:Artificial intelligence may help in predicting the need for additional surgery after endoscopic resection of T1 colorectal cancer. Endoscopy 2018;50:230-240
目次
特集
序説:De novo cancer の時代的変遷と解決すべき課題 工藤 進英
Ⅰ.発育進展から見たde novo cancer の位置づけ 大内 彬弘 他
Ⅱ.De novo cancer 発見への挑戦-通常内視鏡・色素内視鏡,画像強調内視鏡(非拡大)まで 藤井 隆広
Ⅲ.De novo cancer の内視鏡診断-画像強調内視鏡(拡大) 二宮 悠樹 他
Ⅳ.De novo cancer に対する人工知能の可能性-発見から診断まで含めて 三澤 将史 他
Ⅴ.De novo cancer の浸潤・転移・再発リスク 南出 竜典他
Ⅵ.De novo cancer の病理診断-陥凹型腺腫との異同を含めて 河内 洋 他
Ⅶ.海外におけるde novo cancer の現況 堀田 欣一
Ⅷ.症 例
(1)転移をきたしたde novo cancer の症例(T1 癌) 今井 健一郎 他
(2)陥凹型腫瘍における超拡大内視鏡所見 工藤 豊樹 他
(3)家族性大腸腺腫症に発生しde novo cancer 様の発育を呈した小さな陥凹型SM 癌の1 例 山田 真善 他
TOPICS
人工知能による小腸びらん・潰瘍の自動検出─深層学習を活用したカプセル内視鏡画像診断支援システムの開発 青木 智則他
Mayo 内視鏡スコア1 の潰瘍性大腸炎患者に対する治療介入の有効性 福田 知広他
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書籍情報
- ISBN:9784004202401
- ページ数:84頁
- 書籍発行日:2020年4月
- 電子版発売日:2021年3月3日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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