医学のあゆみ275巻1号 免疫リプログラミングと細胞デザイン

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2020年10月
  • 電子版発売日 : 2021年3月10日
¥2,860(税込)
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商品情報

内容

免疫リプログラミングと細胞デザイン
企画:吉村昭彦(慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室)

・免疫細胞は基本的に血液中を循環する細胞であり,標的に集積させたり,逐次補充することが可能である.免疫分野でもリプログラミングという言葉は最近よく使われるようになり,重要な研究要素となっている.
・免疫老化はさまざまな免疫細胞に現れるが,最もよく研究されているのはメモリーT細胞で,この存在比率や異常がヒトの寿命に大きく影響する.腫瘍免疫や感染免疫では“老化”に近い“疲弊”という現象が知られている.
・このような免疫老化やT細胞疲弊を解除する方法が見つかれば,がん治療のみならず健康寿命の延長におおいに貢献できるであろう.“免疫リプログラミング”や“細胞デザイン”はまさに今求められている研究テーマといえる.

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序文

はじめに

吉村 昭彦

慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室


読者の皆さんはリプログラミングや細胞デザインという言葉から何を思い浮かべるであろうか.これらはどちらかというと再生医学の言葉で,当然,有名な山中4因子による初期化やCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)によるゲノム編集が真っ先にでてくると思う.免疫分野でも,多くの免疫細胞は造血幹細胞から系統的に増殖分化を経て発生するし,系統間でもある程度の可塑性も有していることが知られている.このため免疫分野でもリプログラミングという言葉は最近よく使われるようになり,重要な研究要素となっている.しかも,免疫は感染症やがん,自己免疫疾患など,疾患およびその治療と深く結びついている.たとえば,再生医療ではリプログラミングは臓器の再生や臓器移植への応用が期待されているが,実用化には時間がかかりそうである.一方で,免疫細胞は基本的に血液中を循環する細胞であり,標的に集積させたり,逐次補充することが可能である.たとえば,CAR(chimeric antigen receptor)-T細胞のようなデザイン細胞がすでに現実的な治療に使われている.すなわち,免疫細胞を望みの“細胞”に“デザイン”,“リプログラム”して体内に戻す技術が最も早く応用可能な分野とも考えられる.そこで本特集の企画が生まれた.

実際にはリプログラミングといっても遺伝子改変ばかりではない.もちろん,TCR(T cell receptor)やCAR遺伝子導入(第1章“CAR-T細胞のリプログラミング”)や転写因子の導入によるダイレクトリプログラミングやiPS細胞(induced pluripotent stem cells;人工多能性幹細胞)の利用も重要な課題である(第3章“再生医療の応用による免疫リプログラミング”).これらに加えて最近は,代謝を制御することでマクロファージや細胞傷害性T細胞の性質や寿命を変えうることがわかってきた(第2章“免疫代謝リプログラミング”).また,免疫系においてはがんのチェックポイント阻害療法で如実に示されたように,“傷害”と“寛容”のバランスがきわめて重要である.その意味で腸内細菌や制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)の応用も可能で,第4章“免疫寛容誘導による免疫リプログラミング”で取り上げた.さらに,リプログラミングや細胞系譜の変更にはDNAの変更以外にエピジェネティックな改変が欠かせない(第5章“エピゲノムおよび転写制御による免疫リプログラミング”).これには転写因子導入やCRISPRを用いた人工的な改変方法もあるが,最近の話題は“免疫老化”や“疲弊”である.免疫老化はさまざまな免疫細胞に現れるが,最もよく研究されているのはやはりメモリーT細胞で,この存在比率や異常がヒトの寿命に大きく影響することが知られるようになった.同様に,腫瘍免疫や感染免疫では“老化”に近い“疲弊”という現象が知られており,腫瘍免疫の無効化や感染の慢性化を引き起こす.このような免疫老化やT細胞疲弊を解除(リプログラム)する方法が見つかれば,がん治療のみならず健康寿命の延長におおいに貢献できるであろう.これらの意味で“免疫リプログラミング”や“細胞デザイン”はまさに今求められている研究テーマといえる.

このような研究を進めるには新たな技術開発が欠かせない.現在,iPS細胞からの組織誘導,オルガノイド技術,転写因子によるダイレクトリプログラミング,CRISPRによる新たなゲノム編集技術など多方面にわたる研究が進められているが,紙幅の制限もあり,本特集では免疫に関係するごく一部の紹介にとどめている.詳細はそれぞれの専門書を参考にしていただきたい.ここではまだあまり知られていなが,免疫リプログラミングに応用可能な2つの技術“リシール細胞技術”と“光操作に基づくリプログラミング技術”を取り上げた(第6章“新しいリプログラミング技術”).ぜひご自身の研究に生かしていただければありがたい.

本特集が“免疫リプログラミングと細胞デザイン”の研究分野に一石を投じ,多くの研究者の目に留まり,基本的なメカニズムの解明と治療応用に結びつけば編者として望外の喜びである.

目次

CAR-T細胞のリプログラミング

CAR-T細胞の遺伝子改変……籠谷勇紀

CAR-Treg(キメラ抗原受容体制御性T細胞)移入療法……猪村優貴

CAR-T細胞療法における幹細胞性と疲弊……近藤泰介

新たなCAR-T細胞療法の標的……保仙直毅

グリピカン-3を標的としたTCR-T細胞とCAR-T細胞――どちらが有望か?……中面哲也・吉川聡明

免疫代謝リプログラミング

PD-1と免疫代謝リプログラミング……宮島倫生

腫瘍微小環境の代謝制御による腫瘍免疫の向上……西田充香子・鵜殿平一郎

マクロファージの代謝リプログラミング……大石由美子

代謝で免疫を制御する――脂肪酸代謝による記憶T細胞への運命決定……遠藤裕介

再生医療の応用による免疫リプログラミング

iPS細胞を用いたT細胞リプログラミング……石川晃大・金子新

iPS細胞を用いたNKT細胞再生と治療……青木孝浩・古関明彦

iPS細胞由来の樹状細胞とマクロファージを用いた医療技術の開発……齋藤潤・中畑龍俊

ダイレクトリプログラミングによるミクログリアから神経細胞への誘導……松田花菜江・他

免疫寛容誘導による免疫リプログラミング

化合物によるTreg誘導……三上統久・坂口志文

肝類洞内皮細胞と免疫寛容……大段秀樹・尾上隆司

経口免疫寛容の誘導による免疫制御……知念孝敏

腸内細菌と免疫寛容および腫瘍免疫制御……新幸二・田之上大

組織Tregにおける免疫リプログラミング……伊藤美菜子

エピゲノムおよび転写制御による免疫リプログラミング

DNAメチル化制御による制御性T細胞へのリプログラミング……染谷和江・他

T細胞の疲弊とその解除……安藤眞・吉村昭彦

老化による免疫リプログラミング……濱﨑洋子

線維化を誘導するCD4+組織常在性記憶T細胞のエピジェネティクス……平原潔・他

T細胞老化のエピジェネティック制御……鈴木淳平・他

新しいリプログラミング技術

リシール細胞技術を用いた“細胞編集”……村田昌之・加納ふみ

光操作に基づくゲノムのリプログラミング技術の創出……佐藤守俊

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書籍情報

  • ISBN:9784006027501
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2020年10月
  • 電子版発売日:2021年3月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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