麻酔科医のための周術期の疼痛管理《新戦略に基づく麻酔・周術期医学》

  • ページ数 : 320頁
  • 書籍発行日 : 2014年2月
  • 電子版発売日 : 2021年4月14日
¥13,200(税込)
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商品情報

内容

麻酔科医にとって関心が高い疼痛管理について,周術期を通してさまざまな角度から取りあげた.痛みの発生のメカニズム,評価法,疼痛が及ぼす有害作用を解説するとともに,臨床に役立つマネジメントの実際や治療法を詳述. ICUなどでの疼痛対策や先進的な取り組みも紹介する.疼痛管理を「周術期」の視点からとらえ直す実践書.

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序文


1846 年にMorton がエーテルによる全身麻酔を行って以来,麻酔科学は手術の痛みからの解放を基本課題としながら発展してきました.手術の痛みとは,術中の手術侵襲による痛みだけでなく,術前からの原疾患や併存疾患による痛み,術後痛,術後の創処置,各種ドレーンなどに由来する痛みなど,周術期におけるすべての痛みを包括しています.このような周術期の痛みの中で,これまで術後痛/ 術後鎮痛は独立したテーマとして取り上げられ,数多くの教科書が出版されてきました.しかし,手術患者は周術期の痛みを,術前,術中,術後にかけての連続した痛みとして体験しており,術前痛,術中痛,術後痛という独立した痛みが存在している訳でありません.したがって,これからの麻酔科学においては,手術に伴う痛みを術前から術後へと繋がる周術期の一連の痛みとして捉え,手術患者の「周術期痛」からの解放を目指した視点が重要と考えます.

そこで《新戦略に基づく麻酔・周術期医学》シリーズでの本書のタイトルを,『術後の疼痛管理』ではなく,『周術期の疼痛管理』とさせていただきました.手術患者が術中に痛みを感じているのか,いないのか─すなわち,痛みに伴う神経系の変化が生じているのか,いないのか─について,私たち麻酔科医はいまだ明確な答えをもっていません.そして,麻酔から覚醒した患者が体験する,ズキズキ,ジンジン,ピリピリ,火照って,締め付けられて,絞られて……といった,言葉では区別できるさまざまな種類の痛みがどのような神経系の興奮で発生しているのか,その生理学的基盤についても不明です.このように周術期の痛みは,痛みの専門家にとっても未解明の問題を多く含んでいます.

しかし本書では,周術期に患者が体験するさまざまな痛みの原因や治療方法を,痛みの専門医としてではなく,麻酔科医としてどのように捉え治療していくかに主眼をおきました.そこで,周術期の痛みによる生体系の反応や,エビデンスを基盤とした鎮痛法や鎮痛薬,将来目指すべき治療の方向性など,周術期管理としての痛みに関連する事項を網羅しました.幸い,麻酔科医として周術期の痛みに造詣の深い第一線の執筆者を迎えることができたため,本書は専門医から研修医まで,読者のすべてに理解しやすく,かつ実践的な内容となりました.

本書を通して周術期鎮痛に取り組む麻酔科医が,一人でも増えることを願っています.


  2014 年1 月

信州大学医学部麻酔蘇生学講座教授

川真田樹人

目次

1章 周術期疼痛管理の現在の動向

1-1 周術期疼痛管理の現在の動向(井上莊一郎)

1 術後鎮痛法の変遷

2 周術期医療の最近の動向

3 術後鎮痛の最近の動向から目標を考える

4 新たな術後鎮痛の中心的な概念:多様式鎮痛法

5 多様式鎮痛法において注目される鎮痛法,鎮痛薬

6 術後鎮痛のもう一つの方向性:慢性痛の予防

2章 手術に関連する痛みとは

2-1 手術侵襲による痛み(小幡英章,齋藤 繁)

1 手術侵襲による痛みとは

2 侵害受容性疼痛と痛みの伝達

3 炎症性疼痛と末梢性感作

4 中枢性感作

5 内因性の痛み抑制機構

6 手術侵襲による痛みの機序から考える術後鎮痛法

2-2 術後痛:創治癒過程の痛み(長谷川麻衣子,上村裕一)

1 術後痛の痛みの種類

2 手術部位と痛みの強さ

3 創傷治癒の過程

4 術後痛のメカニズム

5 先行鎮痛は有効か?:炎症性侵害受容性疼痛予防の見地から

2-3 遷延性術後痛(柴田政彦)

1 痛みの慢性化

2 遷延性術後痛についての考え方の変化

3 遷延性術後痛の発生のリスク評価

4 遷延性術後痛発症の高リスク患者に対する予防法

5 遷延性術後痛の治療

3章 周術期の痛みを評価する

3-1 術前からの痛みの評価(濱口眞輔,永尾 勝)

1 術前からの痛みを評価する意義

2 視覚的なスケールを用いた痛みの評価法

3 言葉による痛みの評価法

4 特殊な環境下にある患者の術前からの痛みの評価

5 機器を用いた痛みの評価

3-2 術中の侵害刺激と手術侵襲の評価(萩平 哲)

1 術中の侵害刺激にはどのようなものがあるか

2 侵害入力とその応答のメカニズム

3 侵害入力と麻酔薬,鎮痛薬

4 侵害刺激の評価法

3-3 術後の痛みの評価(加藤 実)

1 手術後の痛みを評価する目的

2 痛みの強さに対する視覚的スケールによる評価

3 痛みの強さに対する口頭式評価スケールによる評価

4 痛みの強さに対する表情・態度からの評価

5 痛みの性質に対する言葉による評価法

6 術後痛の評価に用いられる他の評価法

7 新しい痛みの評価指標

4章 周術期疼痛の有害作用

4-1 循環系への作用(青木優太,山崎光章)

1 周術期疼痛と循環系への有害作用:合併症,死亡率

2 周術期疼痛による循環動態への影響

3 周術期疼痛による不整脈

4 周術期疼痛による心筋虚血

5 周術期疼痛による凝固・線溶系の障害

6 手術後の硬膜外鎮痛による循環系への作用

4-2 痛みと呼吸の相互作用(孫 慶淑,磯野史朗)

1 呼吸の調節

2 痛みと呼吸調節

3 鎮痛による呼吸機能変化とその臨床的意義

4-3 内分泌・代謝系への作用(江木盛時)

1 周術期疼痛が恒常性に与える影響

2 周術期疼痛によって生じる内分泌系の変化

3 周術期疼痛による内分泌系の変化によって生じる代謝反応

4-4 交感・副交感神経機能への作用(石田祐基,西脇公俊)

1 正常時における交感・副交感神経の機能

2 組織損傷時の交感神経と疼痛

4-5 消化器系・泌尿器系への作用(村川雅洋)

1 消化器系に対する周術期疼痛の作用

2 泌尿器系に対する周術期疼痛の作用

4-6 中枢神経系への作用(宮下亮一,内野博之)

1 痛みの脳内メカニズム

2 痛みの情動・心理面への影響

3 痛みの睡眠への影響

4 痛みの記憶への影響

4-7 免疫系への作用(河野 崇,横山正尚)

1 免疫系の概要

2 周術期の免疫機能

3 周術期疼痛と免疫機能

4 周術期疼痛管理と免疫機能

5章 周術期疼痛管理の実際

5-1 心臓外科手術における周術期疼痛管理(鈴木麻葉,岡本浩嗣)

1 術後痛の原因による分類

2 術後痛の治療

3 慢性痛への移行

5-2 呼吸器外科手術における周術期疼痛管理(住谷昌彦,山内英子,山田芳嗣)

1 開胸術後痛の手術因子

2 開胸術後痛に対する区域麻酔の意義

3 傍脊椎ブロックの手技

4 開胸術後痛に対する薬物療法

5 慢性開胸術後痛

5-3 上腹部手術における周術期疼痛管理(杖下隆哉)

1 上腹部手術の特徴

2 上腹部手術後の鎮痛法

5-4 下腹部手術における周術期疼痛管理(坂口嘉郎)

1 下腹部手術後の痛みの特徴

2 術後鎮痛法

5-5 整形外科手術における周術期疼痛管理(瓜本言哉,鈴木利保)

1 整形外科手術患者の疼痛管理における特徴,問題点

2 周術期ごとの疼痛管理

3 手術部位別の疼痛管理

5-6 小児の周術期疼痛管理(山本信一)

1 小児の鎮痛を取り巻く背景

2 痛みの評価

3 多様式鎮痛法(multimodal analgesia)に基づく鎮痛戦略

4 年齢に基づく鎮痛戦略

5 区域麻酔法の実際

6 局所麻酔薬以外の薬物

5-7 産科における周術期疼痛管理(照井克生)

1 帝王切開術中の疼痛管理

2 帝王切開術後疼痛管理

3 妊娠中の手術の術後疼痛管理

5-8 高齢者の周術期疼痛管理(西村友美,川口昌彦)

1 高齢者の疼痛管理における特徴

2 高齢者の周術期疼痛評価

3 高齢者の疼痛管理で主に使用する薬物

4 術後疼痛管理の方法

6章 周術期疼痛の治療法

6-1 オピオイドの全身投与(山口重樹,池田知史)

1 オピオイド鎮痛薬

2 周術期に使用されるオピオイド鎮痛薬

3 手術中のオピオイド鎮痛薬(レミフェンタニル)投与の実際

4 術後痛のオピオイド鎮痛薬投与の実際

6-2 消炎鎮痛薬,COX-2阻害薬,アセトアミノフェン(中村清哉,須加原一博)

1 消炎鎮痛薬

2 COX-2阻害薬

3 アセトアミノフェン

6-3 術後痛に有効なその他の薬物(西川精宣)

1 ケタミン

2 トラマドール

3 α2アゴニスト

4 カルシウムチャネルα2δサブユニット遮断薬

6-4 今後臨床応用が期待される薬物(廣瀬宗孝)

1 周術期疼痛のメカニズムと新規鎮痛薬のターゲット

2 ターゲットとなりうる化学物質とその受容体

6-5 患者自己調節鎮痛(PCA)とIV-PCA(徐 民恵,祖父江和哉)

1 IV-PCAとは

2 使用薬物

3 使用ポンプ

4 IV-PCAの実際

5 副作用

6 安全なシステムの確立

6-6 硬膜外鎮痛と硬膜外PCA(佐藤哲文,中塚秀輝)

1 硬膜外鎮痛法の利点と適応

2 硬膜外鎮痛法の欠点と禁忌

3 カテーテル留置部位

4 鎮痛薬の選択

5 患者自己調節硬膜外鎮痛法(PCEA)

6 副作用

6-7 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔と脊髄くも膜下鎮痛単独(杉山陽子,飯田宏樹)

1 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)

2 脊髄くも膜下鎮痛単独:オピオイドのくも膜下投与

6-8 末梢神経ブロック(北山眞任,廣田知美)

1 周術期疼痛管理における役割

2 頭頚部手術

3 上肢手術

4 下肢手術

5 体幹部ブロック

7章 病室以外での疼痛対策

7-1 ICUにおける疼痛管理(森﨑 浩,鈴木武志)

1 ICUにおける痛みの頻度と影響

2 ICUにおける疼痛評価

3 ICUにおける鎮痛手段

4 ICUにおける疼痛管理の実際

7-2 ERにおける疼痛管理(成松英智,新谷知久)

1 ERにおける鎮痛の必要性

2 鎮痛が病態診断に与える影響

3 ERにおける鎮痛

4 ERにおける病態別鎮痛法

7-3 検査室における麻酔・鎮静管理(武田敏宏,白神豪太郎)

1 検査室での麻酔・鎮静の適応

2 検査室の検査/処置での注意点

3 検査/処置前計画

4 検査室での鎮静管理

5 麻酔・鎮静後管理

8章 周術期管理として取り組む疼痛対策

8-1 Acute Pain Serviceとしての取り組み(濱田 宏,河本昌志)

1 Acute Pain Service(APS)とは

2 チーム構成と各メンバーの役割

3 APSの業務の流れ

4 APSを立ち上げるために必要なこと

5 APSを安全に実践するために

8-2 周術期管理チームとしての取り組み(佐藤健治)

1 周術期管理チームとは

2 急性痛サービス(Acute Pain Service)チーム

3 目標志向型周術期管理における術後疼痛管理

4 周術期管理チームで取り組む術後疼痛管理

8-3 遷延性術後痛に対するペインクリニック外来の取り組み(田中 聡,川真田樹人)

1 遷延性術後痛

2 遷延性術後痛は麻酔科/ペインクリニック科の診療対象である

3 術後痛の原因

4 これまでの術後痛治療の問題点

5 遷延性術後痛に対する当科の取り組み

6 遷延性術後痛の防止法・治療法

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書籍情報

  • ISBN:9784521737102
  • ページ数:320頁
  • 書籍発行日:2014年2月
  • 電子版発売日:2021年4月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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