学校に行けない/行かない/行きたくない

  • ページ数 : 270頁
  • 書籍発行日 : 2009年1月
  • 電子版発売日 : 2021年7月7日
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商品情報

内容

不登校は恥ではないが名誉でもない

「将来、この社会で生活していくには、義務教育の学校にも行けないようでは困る」
学校にのみ責任を押し付け、学校へ行かない子どもの自由・権利を主張する不登校肯定論を真っ向から否定!30年以上不登校児とつきあってきた著者だから言える、新しく、そして当たり前のこと・・・
今まで数多く出版されている「不登校」に関する書籍とは一線を画す著者の思いを詰め込んだ一冊。医師のみならず、不登校児に関わるすべての人に捧げた渾身の一冊!

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序文

序にかえて


現在のわが国が学歴を重視する社会であるのを誰も否定しない。ソニー創業者の盛田昭夫が『学歴無用論』を出版したのは昭和四一年(一九六六)で、これを契機にマスコミや有識者の多くは「今や学歴に価値は置かれない」と言い続けているが、現在のソニーでも学歴がなくては入社できない部署がおそらくはあるだろうし、学歴社会に批判的論調をとるマスコミも同じである。学歴だけでは実社会を上手に渡れないが、少なくとも、出発点では学歴が大きな力をもっている。高校進学率はほぼ十割になり、大学進学率が五割に近づいているのも、それを示している。

昔から勤勉な民族のわが国では、勉強が重要視され、それが明治維新後と戦後を驚異的に発展させた原動力であるのは、これまた誰も否定できない。そのため「学校に行くこと」が重視され、不登校はいつも大きな問題であり続け、わが国でのみ異常に増加してきた。事件を起こした子どもで、過去に「学校を休んだ」時期があるのに、その時、問題にしなかった結果が後年の事件に繋がったのではないか、と推測できる例もある。これに限らず、子どもは何か不都合があると、幼稚園(保育所)・学校に行かないという表現をとりやすく、不登校はあらゆる問題を見つける「わかりやすい現象」ともいえる。

一方で、不登校の本は専門書から体験記に至るまで多数出版されており、今更「屋上屋を架す」ことはしたくないとも思ってきた。しかし、多くのこの種の本の見解と、筆者のそれとはかなり異なっているため、今回、「異見」を述べる機会が与えられたのは意義があると考える。主流をなす見解と異なるとはいうものの、それは奇をてらったものではなく、三十年近くの不登校児との付き合いから得られたもので、最初にこのような子どもと出会った時から基本的に変わっていない。「将来、この社会で生活していくには、義務教育の学校にも行けないようでは困る」というのが筆者の基本姿勢である。治療者は「子どもの悩み」を理解し「家庭や学級の問題」を解決するための援助をしなければならないが、義務教育期間の学校に行かない行動を肯定してはならないと考えてきた。

残念ながら、不登校に関する多くの意見は「学校に問題があり」、それは「子どもの立場に立たない学校による」と結論し続けている。そして、子どもの悩みに理解を示し、「子どもは悪くない」から、ある意味で「学校に行かなくてよい」、時には「学校に行かないのは素晴らしい」という意見にまで発展する。終いに「学校に行かない選択/権利/自由」といった、筆者からみれば噴飯物の言葉まで出現し、これが市民権まで得そうな勢いになっている。このような状況が、最近の小学校での学級崩壊や学校の荒れから、青年期の引きこもりにも繋がり、少年犯罪や虐待児や発達障害の急増に加え、ニート(NEET)やフリーター増加にも関係しているというのが筆者の異見になる。

詳しくは本書をお読みいただき、筆者の「不登校は暦年齢に求められる社会集団に属せない者の増加による、いわば日本の現代文化である」という考えに耳を傾けてもらえれば幸いである。子どもから青年期、今や中年期にまで至る、わが国を覆う問題の源は、不登校にあるとする視点から、彼らをどのように診る/対応する/予防するのかを考えて欲しいというのが筆者の願いである。

書名について 本書名は「学校に行かない子ども」の根底にある状態を、大きく三つに分けて考えなければならないことを示している。それは、①かつては登校拒否と呼ばれていた「行きたい/行かなければならない」と判っているが、なぜか行けない神経症的に悩んでいる子ども、②最近増加している学校に何となく/些細なことで行かない子ども、③更に昔からいた怠けて行きたくない子どもの示す三つの状態である。この三つは、行動が同じでも、背景にあるものは異なっているので、予防から対応(治療・指導)まで微妙に違ってくる。これらを「不登校」と一括して呼ぶと、混乱を更に深めるので、この点をできるだけ明確にしたいと考えた結果の書名である(副題については43頁参照)。

読者対象 基本的に医師を想定して書かれているが、ほとんどの内容は、教師・臨床心理士など他の職種や親にも理解しやすく、参考になると思っている。

本書の要旨と筆者の主張

①不登校は本来「経済的・病気など明らかな理由がなく」「なぜか、行くべき学校に行けない」神経症的状態を指していたが、現在ではこのような定義に当てはまらないものが増加すると共に、この定義に囚われず、学校に行かない状態をすべて不登校と呼んでいる。

②現代の不登校は神経症、心身症、精神病、発達障害によるものや、いじめによるもの、何となく休むものなど「何でもあり」の状態、いわば百貨店のようで、適切に分類して考えなければ混乱する。

③不登校は現代日本社会の子どものあらゆる問題の根底にあるもので、「暦年齢に求められる社会集団」に参加できない者が増加した結果であり、「日本の文化」とも呼べる。

④個々に異なった要因が考えられるが、基本的には「自尊心の乏しさ」「認知と表現の拙つたなさ」からくる「対人関係障害」と捉える。

⑤最近の引きこもり・ニート・フリーターなど青年期(時に中年期)の問題の起源は、ほとんどが中学生時の不登校にある。つまり、小児期の問題(不登校)を適切に予防・解決しなければ、青年期にもち越し、やがて高齢者問題にまで及んでいくのではないかと危惧している。

⑥初期の訴えは「学校に行きたくない」ではなく、腹痛・頭痛や発熱、下痢といった身体症状で、それに対する適切な対応が重要であり、初期対応に医師は重要な役割を担う。しかし、医師は「体を診る」のが主な仕事なので、身体症状にこだわり、背後の不登校を見逃す場合が多く、診断した後も適切に扱わないこともある(これを残念に思い本書を執筆する)。

⑦不登校は教師・臨床心理士(相談員)・医師(小児科医・精神科医)の三者が主にみるため、それぞれの立場の違いで異なった見解がもたれやすく、種々の意見が出て当然である。違いを認識して意見を聞くようにしないと混乱する。

⑧不登校が増加し世間で認知され、種々の対応が叫ばれながらも、減少していかないのは、学校の表面的現象を原因にする意見が多いからである。

⑨多くの不登校肯定論(時に賞賛論)は表面的優しさに溢れているが、長い目でみると子どもの立場には立っておらず、結果的に子どもも社会も不幸にしていく。

⑩ここ数年、不登校児数は数字の上では横ばいか、減少している年もあるが、総生徒数が減少しているので、基本的には今も増加している。

⑪不登校の増加について理解が行き届くと、「更に増加させていく」面もある。世の中に常にある矛盾(二面性)を考えて対処しなければならない。

⑫都市部では、不登校についての相談や治療に種々の方法や機関が出現している。不登校の成因は輻輳しているので、特定の考え方や手段ですべてが対応できるものではなく、個々に向き不向きがある。専門家が行う心理治療(種々の技法がある)や薬物療法以外に、特殊な学校に通う、農作業をする、動物を飼うなど、多くの方法があり、時には専門的治療よりも効果的なことがある。ただ、主宰者側の長所だけを強調した情報で選択すると、取り返しのつかない結果を招く危険性もある。選択に際しては、親子の状況に合わせて専門的視点から選ぶようにする。

⑬子どもの素因・年齢や周囲の環境は個々に異なり、また治療者側の立場も異なるので、治療や指導の教科書的・定石的方法はない。各自が基本にあるものを理解し、知識と経験で自分なりに行う(本書ではその一助となるように、種々の視点から述べる)。

目次

序にかえて

Ⅰ 不登校の本質を考える

不登校(学校不適応)とは何を言うのか

不登校の現状と筆者の見解

不登校と筆者の関わり

表現としての不登校

登校拒否と不登校の違い

不登校の分類

不登校論で注意するべきこと

不登校は恥ではないが名誉でもない

Ⅱ 不登校拳銃説─身体症状/引き金/弾丸/火薬とは

不登校拳銃説とは

身体症状─最初に注目される現象

引き金─出来事

弾丸─子どもの素因(気質)・性格・心の動き

火薬─家庭・学校・社会

Ⅲ 不登校に向き合う─診断・治療・予後

診断

不登校の経過

治療全般について

具体的治療

専門の相談・治療機関

特殊な治療法や手段

教祖的治療者に注意

心理技法

治療が停滞する要因

予後

Ⅳ 薬物療法の進め方

身体症状への対応─腹痛・頭痛・疲れ・微熱など/精神症状への対応─不安・うつ・強迫など

精神症状への対応─不安・うつ・強迫など

Ⅴ はっきりした原因で学校に行けない子どもたち

身体疾患がある場合

心因性疾患が主役の場合

問題行動による場合

Ⅵ 不登校後に行く学校─単位制・通信制・バイパス校など

単位制高校

通信制高校

高校卒業資格の取得できる各種学校・バイパス校

高等学校卒業程度認定試験と高認予備校

定時制高校(夜間高校)

代替教育の欠点

不登校児を受け入れる特殊な学校

大学教育の堕落

Ⅶ 不登校に付随する問題─家庭内暴力・引きこもり・ニート・フリーター

家庭内暴力

引きこもり

ニートとフリーター

視点を変えて

Ⅷ 不登校における究極の予防─強い心を育てる

心(知情意)の誕生

心が対人関係(社会性)を育てる

触覚の重要性

躾の重要性

Ⅸ まとめ

不登校の具体的な考え方と対応

不登校をみる治療者・指導者の注意点


あとがきにかえて

付録1 各職種の役割(要約)

付録2 日本と西洋(その他多くの国)の対比

参考図書

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書籍情報

  • ISBN:9784892696404
  • ページ数:270頁
  • 書籍発行日:2009年1月
  • 電子版発売日:2021年7月7日
  • 判:新書判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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