「病院船」が日本を救う~海洋国・災害多発国 日本に今必要なもの

  • ページ数 : 224頁
  • 書籍発行日 : 2015年9月
  • 電子版発売日 : 2021年7月7日
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商品情報

内容

四方を海に囲まれた日本は,古くから「海洋国家」として,海と密接な関わりをもって発展してきた。四季が織りなす美しき日本である一方,台風,豪雨・土砂災害,河川氾濫に大洪水,高潮災害,加えて火山噴火災害から地震・津波災害等,ありとあらゆる自然災害が発生する災害大国でもある。阪神淡路大震災の直後,わが国に病院船が必要という政治機運が高まったことがあるが,結局実現していない。非常時においても,過度に陸路に頼る発想が重きをなし,海上からのアプローチは軽視され検討の跡すらない,今後は国民の命を守るためにも海上からのアプローチは必須である。災害は忘れた頃に本当にやってきたではないか。未曾有の大津波を伴い,福島原子力発電所を破壊された。福島原発事故しかり,地下鉄サリン事件しかり,これまで多くの想定外を経験している。本書はこうした事象を危惧する専門家六氏が,各々の専門領域から熱い議論と,海洋国日本,災害大国日本に相応しいアプローチに,グローバルな政策課題であるレジリンスも(創造的回復)も加えて議論している。東京オリンピック開催も控え,「病院船」を望む多くの読者の声によって,本書を出版することにした。

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序文

はじめに


四方を海に囲まれた日本は、古くから「海洋国家」として、海と密接な関わりをもって発展してきた。日本は一九九六年の国連海洋法条約発行の日を国民の休日「海の日・七月二〇日」に定める世界でも稀な海洋国家である。今から約一五〇〇万年前頃に大地殻変動が起き、アジア大陸の東端にある地塊が東に移動をはじめ日本海が形成された。その頃は、未だ大陸と陸続きだった日本海は巨大な湖であった。アジア大陸東縁から分路して現在の日本列島の原型となったのはおよそ二万年前といわれる 。日本の国土は、北は亜寒帯・北海道択捉島から、南は亜熱帯・沖縄県与那国島まで三三二八キロメートルほどの長さにわたって、大小あわせて六八五二の島からなる島国である。国土自体は決して広くないが、領海を含めた排他的経済水域(EEZ)は国土の一二倍・約四四七万平方キロメートルもあり、世界第六位を誇る海洋国である。四季が織りなす美しき日本である一方、台風、豪雨・土砂災害、河川氾濫に大洪水、高潮災害、加えて火山噴火災害から地震・津波災害等、ありとあらゆる自然災害が発生する“災害大国”でもある。それは地震と火山噴火による日本列島形成に刻まれた地殻にある。

一九九五年一月一七日、阪神淡路大震災の直後、わが国に病院船が必要という政治機運が高まったことがある。多くは七万トン級の米海軍の病院船「コンフォート」や「マーシー」への期待に留まり、結局実現していない。三・一一の翌年二〇一二年、内閣府に設置された「災害時多目的船検討会議」委員として、三月にスペイン雇用・社会労働保険省海事社会局を初訪問。同省所属の病院船、「エスペランザ・デ・ル・マール」、「ファン・デ・ラ・コーサ」について尋ねるためである。スペインにはいわゆるジュネーブ条約でいう軍所属の「病院船」はない。非軍事のいわゆるシビル部門に所属している。参考にすべきは、シビル部門に所属する点である。非軍事部門に所属させる理由は、「巡視船や軍では、官僚主義のため対応に時間がかかる。シビルであれば、早く回答でき、すぐに行動できるから」と、古に無敵艦隊を誇った海洋国スペインの明快な回答であった。

翻って、わが海洋国に照らしてみよう。道路も鉄路も寸断された非常時でも、過度に陸路に頼る発想が重きをなし、海上からのアプローチは軽視され検討の跡すらない。国民の命を守るためには「介入Intervention」と「避難Evacuation」を同次元で行う機動力の高い、海上からのアプローチが必須である。さらにインフラが破壊された被災地で「司令塔機能」が十分に果たせなかった東日本大震災の前例に鑑みれば、病院船は指揮・司令機能がパッケージで移動可能な役割が果たせる。スペインの事例からも、国民の命は軍に委ねるだけではない。災害医療には、意思決定から、備える装備まで、自己完結できる船の特性を活かし、フルスペックの医療設備を充実させた非軍事の運営等で、ノアの方舟的観念論を正す必要がある。

災害は忘れた頃に本当にやってきたではないか。未曾有の大津波を伴い、福島原子力発電所を壊滅させた。福島の原発事故しかり、地下鉄サリン事件しかり、感染症等、自然災害にとどまらずこれまでも多くの想定外を経験している。本書はこうした事象を危惧する専門家六氏が、各々の専門領域から熱い議論を試みた。予想される首都直下地震、火災や水害のこと、東京は世界一危ない都市ということ、復旧と復興の違いなどもわかりやすく語り合った。新しくは、海洋国日本、災害大国日本に相応しいアプローチに、グローバルな政策課題であるレジリエンス(創造的回復)も加えて議論してみた。

二〇二〇年は東京オリンピック開催年。四方を海に囲まれた日本に相応しい「病院船」を望む多くの読者の声によって、積極的平和外交を謳う日本の「災害医療の未来」のシンボルとして、オリンピック開催年に実現できれば望外の喜びである。スピード感ある素晴らしい議論にご登壇賜った各氏に心から感謝の意を表し、厚く御礼を申し上げる。


日本は「レーク・パワー:湖国家」とする学説もあるが、本書では海洋国家として論をすすめる。


平成二七年四月

公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナル 理事長 砂田向壱

目次

対談者一覧

はじめに

第1部 多種多様な自然災害発生の日本

【コラム】海洋国とは

【コラム】国連海洋法条約にみる「海洋国」の定義

地震や火山等の地殻活動に起因する災害多発の理由を理解する

なぜ日本は水害に襲われるのか

【コラム】水害大国の日本

【コラム】自然災害で世界一危険な「東京・横浜」

【コラム】低地に総資産の75%が集中

第2部 今そこにある危機 「常識の落とし穴」災害対応への懸念

「経験の普遍化に対する意識」の欠如

避けられない災害─天災─に学べない国

日本版FEMAの必要性 ─実現を妨げるもの

災害情報の一元化ができないのはなぜか

〝帰宅困難対策〟は「災害対策」ではない

災害教育の必要性

オランダに学ぶ ウォーターボード税

【コラム】治水の歴史と水管理委員会

災害とロジスティックス─無謀の一言「おっとり刀で駆けつける」

レジリエンスの考え方

「起きたら困ることは起きない」という思考法を回避せよ

費用便益比(コストからバリューへ)

大問題!「想定外」という考え方

第3部 病院船(災害時多目的船)を創ろう

病院船とはどのようなものか─私が提案するもの

病院船と呼ばれる船はお国柄で種類も役割も違う

日本が必要とする病院船とは?

平時に病院船で何を学ばせるか

まず国民・政治家・役人の現状認識の共有が必要

病院船の機能

【コラム】機略用語「Maneuver warfare」の概念

海洋国日本になぜ病院船がないのか

ナンセンスな「病院船の採算性」の議論

Hospital ship・Mobile Hospital・Floating ship

病院船に求める機能─山口芳裕医師のイメージの変遷

病院船に求める機能─山口芳裕医師のイメージの変遷:1 海上に浮かぶ巨大病院船

病院船に求める機能─山口芳裕医師のイメージの変遷:2 搬送拠点としての病院船

病院船に求める機能─山口芳裕医師のイメージの変遷:3 司令塔としての病院船

有事の際の戦略と病院船の有用性

わが国の災害医療にはイノベーションが必要

病院船に乗る医療従事者とその教育

災害医学教育・研究の不備

病院船のレジリエンス

【コラム】救難船とは

病院船に期待される役割

新しい事業目的ファンドは可能か


あとがきに代えて~災害の常識・非常識

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書籍情報

  • ISBN:9784892698712
  • ページ数:224頁
  • 書籍発行日:2015年9月
  • 電子版発売日:2021年7月7日
  • 判:新書判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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