臨牀消化器内科 2021 Vol.36 No.9 胆道感染症の診断・治療

  • ページ数 : 128頁
  • 書籍発行日 : 2021年7月
  • 電子版発売日 : 2021年7月16日
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内容

特集「胆道感染症の診断・治療」

 本特集では、急性胆管炎・胆嚢炎の病態、重症度判定とそれに基づく治療戦略という総論の再確認に加えて、術後腸管症例、高齢者、膵炎・DIC合併例などの診療ガイドラインでは深く掘り下げにくい各論まで含めた企画としました。(編集後記より抜粋)

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序文

巻頭言
胆道感染症の重症度判定


露口 利夫


急性胆管炎は消化器内科医に緊急内視鏡が要請される代表的疾患である.最新のガイドラインである「急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2018」1)(TG18)では急性胆管炎の重症度は軽症(GradeⅠ),中等症(GradeⅡ),重症(GradeⅢ)に区分され,重症度が上がるほど胆管ドレナージの緊急性が増すようになっている.日本と台湾で行われた多施設共同観察研究2)によれば,TG13を基準にしたGradeⅡ急性胆管炎に対して24時間以内にドレナージが行われた944 例の死亡率は,24時間以降のドレナージもしくはドレナージが行われなかった1,081例よりも有意に低かった(1.7% vs. 3.4%,P=0.0172).このことからTG13 の有用性が検証され,重症度判定基準は変更されることなくTG18にも採用された.TG18/13では以下の5 項目中2 項目が該当するとGradeⅡと判定される.

・WBC>12,000 or <4,000/mm3 ・発熱(体温≧39℃) ・年齢(75 歳以上)

・黄疸(総ビリルビン≧5 mg/dl) ・アルブミン(<健常値下限×0.73 g/dl)

一方でGradeⅠ,Grade Ⅲではドレナージのタイミングと予後に関連は認められず,GradeⅡの早期ドレナージ介入が予後改善につながるという貴重な知見である.

急性胆管炎の重症化は胆管内の細菌やエンドトキシンが胆道内圧上昇により血中に移行し,敗血症や播種性血管内凝固症候群(DIC)などの全身臓器障害をきたすことにより生じる.カルシトニンの前駆物質である血清プロカルシトニン(PCT)は,全身性細菌感染のバイオマーカーとして敗血症診断に用いられている.急性胆管炎の重症度判定にPCT は有用とする報告がみられるが,単施設の検討にとどまり判定基準に取り上げるには時期尚早とされている.2020年春から新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)が蔓延し,一般病院でもCOVID‒19 と細菌性肺炎の鑑別にPCTの測定が日常的に行われるようになっている(ウイルス感染ではPCTは上昇しない).当院でも2020年3月よりCOVID‒19鑑別診断のためPCTを迅速検査に取り入れており,急性胆管炎においては敗血症診断目的にPCTを測定している.

●GradeⅡ急性胆管炎の症例:症例は70歳代女性で38℃台の発熱と肝障害のため当院を紹介され,ラボデータ,CTにて総胆管結石嵌頓(図a)によるGradeⅡ急性胆管炎と診断された(総ビリルビン≧5mg/dl,WBC>12,000/mm3).PCTは15(<0.5ng/ml)と高値であり敗血症の可能性が高いと判断し,来院2時間後に内視鏡的ドレナージを行った(図b).内視鏡的乳頭筋切開術(EST)を施行し,8mm大の結石を除去すると大量の膿性胆汁が排出された(図c).一期的結石除去によりドレナージ完遂と判断しステントは留置しなかったが,抗菌薬と補液投与で翌日には解熱し,入院7日目に軽快退院した.本例はPCT高値のためドレナージ後も血圧低下などを危惧したが,経過はきわめて良好であった.

PCT値と重症度は相関するとされるが,測定時期や併存疾患などの影響も考慮しなければならず,大規模多施設共同研究による検証が必要である.急性胆囊炎の重症度判定も同様であり,COVID‒19の蔓延によって図らずも一般化したPCTの有用性を検証すべきであろう.


文献

1) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会 編:急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2018.医学図書出版,東京,2018

2) Kiriyama, S., Kozaka, K., Takada, T., et al.:Tokyo Guidelines 2018:diagnostic criteria and severity grading of acute cholangitis(with videos). J. Hepatobiliary Pancreat. Sci.25;17‒30, 2018 doi:10.1002/jhbp.512




Toshio Tsuyuguchi
千葉県立佐原病院消化器内科(〒287‒0003 千葉県香取市佐原イ2285)

目次

特集 胆道感染症の診断・治療

巻頭言:胆道感染症の重症度判定/露口 利夫

1 .急性胆管炎・胆囊炎の病態/竹中 完 他

2 .急性胆管炎の診断・重症度判定/杉山 晴俊 他

3 .急性胆囊炎の診断・重症度判定/菅野 良秀

4 .TG18 に基づく急性胆管炎・胆囊炎の治療戦略/向井俊太郎 他

5 .急性胆管炎・胆囊炎に対する抗菌薬選択/藤澤 聡郎 他

6 .急性胆管炎に対する緊急胆管ドレナージ/白田龍之介 他

7 .急性胆囊炎に対する外科手術/河口 義邦 他

8 .急性胆囊炎に対する胆囊ドレナージ法の選択/松原 三郎 他

9 .胆石性膵炎の診断と治療/牛島 知之,岡部 義信 他

10.胆管結石胆管炎に対する一期的結石除去/中原 一有 他

11.高齢者における総胆管結石症に対する治療/伊藤  謙 他

12.術後再建腸管症例における胆管炎治療/谷坂 優樹 他

13.DIC 合併胆道感染症に対する治療/小倉  健 他

14.胆管炎による肝膿瘍に対する治療/長谷川浩之,深澤 光晴 他

15.無石胆囊炎/塩見 英之

16.医原性の胆道感染症の原因と治療/桒谷 将城 他

〔連載〕検査値の読み方

ニューモシスチス肺炎発症時に診断されたHIV/HBV 共感染症例/淺岡 良成 他

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書籍情報

  • ISBN:9784004003609
  • ページ数:128頁
  • 書籍発行日:2021年7月
  • 電子版発売日:2021年7月16日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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