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- Heart View 2021年5月号 Vol.25 No.5 虚血評価はPCIの適応,治療をどう変えたか?
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序文
企画にあたって
中村正人(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授)
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の黎明期には,冠動脈狭窄の重症度は視覚的な狭窄度評価,解剖学的複雑性はACC/AHA のClass 分類で評価されてきた。しかし,治療デバイスが進歩しデバイス治療間での優劣が重要になると,視覚的な狭窄度評価では不十分であり,定量的な冠動脈造影による狭窄度評価が必要となった。冠動脈疾患の重症度評価は1枝,2枝,3枝といった病変枝数により分類されてきたが,薬剤溶出性ステント(DES)を用いたPCI が標準となり冠動脈バイパス術(CABG)との優劣が改めて問われるようになると,病変形態を一つ一つ評価し,それを合算したSYNTAX スコアで評価されるようになった。
このように,血行再建の歴史においては解剖学的な評価に基づいた治療戦略決定,有効性評価が中心であったが,評価方法は時代とともに進化してきた。しかし,解剖学的な評価に基づいたPCIに代わって,機能的な狭窄評価に基づいたPCI が大きくクローズアップされることになった。これまで解剖学的高度狭窄は虚血を示唆すると判断されてきたが,fractional flow reserve(FFR)を用いた臨床研究で,解剖学的な狭窄度評価と機能的な狭窄評価の間ではmismatch,reverse mismatch が多く,解剖学的な狭窄評価はgold standard にはなりえないことが判明したからである。加えて,機能的有意狭窄ではない病変は薬物療法で経過観察すること(PCI のdefer)が妥当な治療戦略であることが示され,機能的な狭窄評価に基づいたPCI は,造影ガイドのPCI よりも無駄なPCI を減らすのみでなく予後も改善することが報告されたからである。背景にはoptimal medical therapy の概念の確立があり,不適切なPCI が少なくないとの指摘が世界中で聞かれたことが挙げられる。
近年,SYNTAX Ⅱ試験で機能的狭窄評価に基づいたPCI の位置付けは一歩前進したが,ORBITA 試験,ISCHEMIA 試験によってPCI の意義,虚血評価の意義が改めて問われることになった。そこで,本誌では虚血の評価について再度考えてみることとした。各領域のエキスパートの先生方にお願いし,虚血をいかに診て,識り,治すか重要なポイントをコンパクトにまとめていただいた。非常に読み応えのある内容となっている。頭の整理に役立ち,明日からの臨床の一助となることを期待している。
目次
特集:虚血評価はPCIの適応,治療をどう変えたか? 企画・構成/中村正人
診る
1 核医学診断による予後予測 七里 守
2 心臓CTによる虚血評価 谷澤(元山)貞子,皿井正義
3 侵襲的な虚血評価のアップデート 大橋寛史,高島浩明
4【Expertise】虚血診断 モダリティの使い分け 松本直也
5【Expertise】負荷心エコーによる虚血評価 加藤奈穂子,渡辺弘之
識る
6 核医学による虚血評価の精度を高める方法は? 笠井督雄
7 CFRとFFRのgapは何を表現しているのか? 民田浩一
8 COURAGE試験とISCHEMIA 試験との違いは何か 香坂 俊
9【Expertise】Resting indexとFFRの共通点と相違点 菊田雄悦
10【Expertise】PETによるMBFR評価の意義 粟屋 徹,脇屋桃子,国正妙子,諸井雅男,中村正人
治す
11 AUCの概念によるpractice 石井秀樹
12 ORBITA試験後の最適な治療 塩野泰紹
13 ISCHEMIA試験後の最適な治療 田中信大,可児純也
14 SYNTAX Ⅱ試験から考える最適の治療 浅野 拓
15【Expertise】iFR-pullbackを活用した左主幹部病変の治療戦略:state-of-the-art PCIのその先へ 割澤高行
連載
第2回 右房②(基本構造と心血管疾患との関連) 井川 修
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書籍情報
- ISBN:9784008102505
- ページ数:100頁
- 書籍発行日:2021年4月
- 電子版発売日:2021年7月30日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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