特集：骨粗鬆症性椎体骨折－難治例の診断・治療を中心に－
introduction

「骨粗鬆症性椎体骨折」の診断と治療については，これまでに多くの整形外科関連の雑誌で特集として取り上げられてきた。それらの特集を見ると，骨粗鬆症に関する学術的研究の成果が盛り込まれ，特に最近では，大規模な症例データを解析してエビデンスを打ち出している素晴らしい内容のものが多い。しかし，実際の臨床の現場で，目の前の「骨粗鬆症性椎体骨折－難治例」の患者をどのように治療するかという立場から見ると，具体的な診断・治療の方法についての記載が乏しいと感じることが少なくない。今回の特集では，これまでの「骨粗鬆症性椎体骨折」に関する特集とは異なる視点・内容で企画を進めた。すなわち，エビデンスを中心とする内容ではなく，「難治例」に対して，あるいは「難治例」を作らないために個々の医師が考えている診断・治療のコツ・注意点を中心に執筆を依頼した。

「骨粗鬆症性椎体骨折」の診療の現場において，われわれはさまざまな問題に直面する。診断に関しては，急性期に新鮮骨折を診断することがしばしば困難である。また，予想に反して偽関節に進行してしまった例をしばしば経験する。画像診断で予後不良因子をどの程度予見できるのか，その情報が知りたいところである。発症の初期に他の疾患として診断・治療が行われていた例を少なからず経験する。誤診を防ぐためのポイントは何かについて情報が欲しい。

保存療法に関しては，薬物治療で骨癒合が促進するのか，どのような装具療法が実際に行われているのか，骨折後の後弯変形は予見できるのか，初期の安静臥床は効果があるのかなどについての情報が欲しい。

手術治療に関しては，さまざまな術式が行われているが，それらの適応はどうなっているのか，手術のコツは，不成功となってしまう要因は，screw loosening のリスクは，隣接椎体の骨折のリスクは何か，サルベージ手術はどのように行うかなどについて知りたい。

上述のように「骨粗鬆症性椎体骨折－難治例」について知りたい事情は多々ある。今回は，最新の情報を整理すべく，実際の現場で「骨粗鬆症性椎体骨折－難治例」の診療に携わっている先生方に執筆をお願いした。執筆にあたっては，診断・治療の実際，見逃さないためのポイントなどについて具体的に記載していただいた。ぜひご熟読いただき，読者の先生方の知識の整理・向上にお役立ていただければ幸甚である。

筑波大学医学医療系整形外科
山崎正志