医学のあゆみ274巻13号 冠動脈疾患とステント治療

  • ページ数 : 108頁
  • 書籍発行日 : 2020年9月
  • 電子版発売日 : 2021年8月25日
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商品情報

内容

冠動脈疾患とステント治療
企画:中村 淳(医療法人社団誠馨会新東京病院院長)

・ステント治療により,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療のクレディビリティは格段に上がることになった.理由は,急性冠閉塞が完全にコントロールでき,慢性期再狭窄は半分の30%になったからである.
・2002年のヨーロッパ心臓病学会で,薬剤溶出ステント(DES)が劇的に再狭窄を抑えたというエビデンスが発表され,冠動脈治療の大きな潮目が変わるときがきた.
・本特集では,冠動脈ステントを留置するに困難でかつ,最も注意が必要な病変に対してどのようにアプローチするべきかということに関して,日本を代表する循環器内科医師に詳説していただく.

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序文

はじめに

1977年に,スイスのグルンツイッヒ先生による経皮的冠動脈インターベンション(percutaneouscoronary intervention:PCI)の歴史の曙以来,世界の循環器内科医師は急性心筋梗塞症,狭心症の治療に対してカテーテル技術で完璧に治してやろうという形容しがたいほどのエネルギーをもって47年間,100 mダッシュを走り続けてきた.筆者自身の人生もカテーテル治療一色に染まってきたし,日本の循環器内科医師もご多分に洩れず,そうであったに違いないと思う.1970年代から1980年代の,黎明期のバルーンのみで治療を行ってきたときの急性冠閉塞,きわめて高率の慢性期再狭窄はとても重大な問題として10年近く,皆で対応策を学会で熱く議論してきた.しかし,その後に登場したステント治療により,明らかにPCI治療のクレディビリティ(credibility)は格段に上がることになった.理由は,一番の問題であった急性冠閉塞が完全にコントロールでき,慢性期再狭窄は半分の30%になったからである.もちろん0にはならなかった.そして,次の30%程度の再狭窄を何とかするために10年近くを費やすことになった.もちろん,これが克服できないと,冠動脈複雑病変に対して仮に急性期の成功が得られても,慢性期で患者の予後をきわめて悪化させてしまうことになり,いつでも対側にある冠動脈バイパス治療(coronary artery bypass grafting:CABG)には,とうてい歯が立たない状況が10年も続いた.

さて,西暦2000年を迎えるほんの2年前に,イースター島で発見されたテトラサイクリン系の抗生物質の誘導体であるラパマイシンが平滑筋細胞の遊走,増殖を抑えるという事実が発表された.その後,あれよあれよという間に,ラパマイシンを塗りこんだステントを使用して慢性期再狭窄をきわめて減少させたという動物実験レベルでの報告,それからヒトへの初期使用治験を経て,あっという間にヨーロッパでRAVEL試験という大規模ランダム化比較試験が行われることになった.2002年のヨーロッパ心臓病学会で,そのステント〔薬剤溶出ステント(drug-eluting stent:DES)〕が劇的に再狭窄を抑えたというエビデンスが発表され,冠動脈治療の大きな潮目が変わるときがきた.2002年,歴史的な年である.人類が動脈硬化という病態に対してはじめてCABGの代替手段となりうる治療法,治療道具を得た瞬間であったと考える.

その後,このDESが慢性完全閉塞(chronictotal occlusion:CTO)病変に代表される冠動脈複雑性病変にも同じように再狭窄抑制効果があること,また急性心筋梗塞症に対しても,冠動脈主幹病変にも優れた効果があることが発表されてきた.そのCTO病変に対するDESの有効性の確認と,その普及の歴史のページに少しでも筆者が加われたことは光栄なことであったし,急性心筋梗塞症に関するステント治療の効果を世界に先がけて発表された齋藤 滋先生とご一緒できたこともさらに光栄なことであった.

さて,精緻なカテーテル治療に対しては,血管内超音波が必要になることは現代では常識的なことになっているが,この領域も日本人が重要な役割を担ってきた.そして,この領域の発展はステント治療のアキレス腱のうちのひとつである,ステント血栓症を極端に減少させることになる鍵にもなった.そして,術後の坑血小板治療を至適なものにしていくことにも役割を担うことになったのである.考えるに,この30年近くに日本における循環器内科医師のすべての英知の結集が世界に誇る業績と,それにつながる世界の患者たちの福音になってきたものと確信している.

本特集では,冠動脈ステントを留置するに困難でかつ,最も注意が必要な病変に対してどのようにアプローチするべきかということに関して,日本を代表する循環器内科医師に詳説していただくことになった.まず,髙木健督先生に冠動脈ステントの総論をしていただき,先に述べた冠動脈複雑病変である急性心筋梗塞症,左冠動脈主幹部病変,CTO,冠動脈分岐部病変,冠動脈石灰化病変に対して,この領域で日本を代表する医師である宍戸晃基・齋藤 滋両先生,三友 悟先生,大塩博子・及川裕二両先生,挽地 裕・野出孝一両先生にまとめていただき,現在のPCIに血管内イメージングがどのような位置づけで,いかにそれを利用していくべきかを森 敬善・鈴木 洋・新家俊郎先生らに説明いただいている.それぞれの複雑病変に対して血管内超音波(intravascularultrasound:IVUS),OCT(optical coherencetomography)などのイメージングデバイスを使用してきわめて精緻にアプローチし,術後も念入りに確認することも必要であるとわかってきたことを詳述していただいた.また,異物であるステントを植え込むことに関して,それによる血栓性病変の出現を極力抑えるために抗血小板薬治療も長く険しい,科学での証明の歴史を積み重ねてきた.この歴史をまさに体現してこられ,日本におけるステント治療後の坑血小板薬治療について常に重要な知見を示し続けられている倉敷中央病院の門田一繁先生にお話いただいている.

最後に,湘南鎌倉病院の齋藤先生は,筆者自身冠動脈ステント術の最初のイロハからすべてのテクニックを伝授いただいた恩師であり,ここに現在の先生の弟子である宍戸先生とともに急性心筋梗塞症へのステント治療の稿をご執筆いただくことは名誉の限りである.25年以上前にステント治療が登場時,血栓性病態である急性心筋梗塞症へのステント治療は禁忌とされていた.そこに果敢に挑み,科学的な知見を積み重ねた後,日本で大規模臨床試験を敢行し,世界初のエビデンスを作られた齋藤 滋先生の偉業は日本のPCIの歴史上刻まれるべきものであると思う.ご熟読ください.

また,この領域で世界中の誰もが知る巨人であり,筆者の友人であるAntonio Colombo先生に石灰化病変の稿をお書きいただいたことも名誉なことであると思っている.最近,石灰化病変に対してはステント留置前のvessel preparationが重要であり,その後のステント留置にも格段の注意が必要であるとわかってきた.最近になり登場したrotational atherectomy以外のcutting balloon(新しいバージョン),shock wave,diamond backsystem,+drug coating balloon,それぞれの利点,気をつけたほうがよいところを詳説いただいている.これも世界最高の教科書であると考える.

非常に誇らしいことに,このPCIの領域は日本人が活躍してきたことは万人の認めるところであると思われるし,だからこそ,この本一冊で現代のPCIのすべてが語られていると思ってもかまわないようなものに仕上がっていると確信している.この特集が皆さんの日常臨床に,きわめて役に立つガイドブックになると信じてやみません.ご笑納ください.


医療法人社団誠馨会新東京病院院長
中村 淳

目次

目次

冠動脈用ステント総論――知っておくべきステントのプロファイル,その違い……髙木健督

急性心筋梗塞に対するステント治療のいま……宍戸晃基・齋藤滋

左冠動脈主幹部病変に対するステント治療……三友悟・中村淳

慢性完全閉塞病変に対する薬剤溶出性ステントを用いたPCI……大塩博子・及川裕二

ステントを用いた非主幹部分岐部病変に対する治療方法の可能性と注意点……挽地裕・野出孝一

石灰化病変に対するPCI……Antonio Colombo

ステントの正しい植込み――イメージングデバイスの使い方のコツ……森敬善・他

冠動脈ステント留置後の抗血小板療法――現在のコンセンサスと今後……門田一繁

TOPICS

【神経内科学】

Lambert-Eaton筋無力症とGRP78自己抗体……清水文崇・神田隆

【腎臓内科学】

慢性腎臓病により体内時計が乱れる……田原優

【膠原病・リウマチ学】

IgG4関連疾患初のゲノムワイド関連研究……石川優樹・寺尾知可史

連載

【再生医療はどこまで進んだか】

14.水疱性角膜症に対する培養ヒト角膜内皮細胞注入療法……上野盛夫・木下茂

【臨床医が知っておくべき最新の基礎免疫学】

7.インバリアントT細胞……千葉麻子・三宅幸子

【バイオミメティクス(生体模倣技術)の医療への応用】

3.粒子安定化気液分散体が実現する物質運搬・放出システム……藤井秀司

フォーラム

【日本型セルフケアへのあゆみ】

7.新型コロナウイルス感染症:③社会的検査……児玉龍彦

【天才の精神分析――病跡学(パトグラフィ)への誘い】

2.意識変容の諸相――昏迷の創出……細川清

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書籍情報

  • ISBN:9784006027413
  • ページ数:108頁
  • 書籍発行日:2020年9月
  • 電子版発売日:2021年8月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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