はじめに
ご挨拶
本書を手に取っていただきありがとうございます。本篇に入る前にメディッコ、そして多職種連携について、少しばかり私の思いを綴らせていただきます。まずは自己紹介から。はじめまして、メディッコ発起人、そして現顧問の宮座です。臨床工学技士の資格を持ち、前職では大学病院にて、手術室や心臓カテーテル室などで循環器をメインに従事しました。その後退職し、現在はライター・編集者として、臨床の外から医療に関わっています。さて、あなたは「多職種連携」という言葉を聞き、何をイメージするでしょうか。「難しそう」、「ハードルが高そう」、「実際に何から始めたらよいかわからない」など、このように想像した方もいるかもしれません。
少々難しく考えがちな多職種連携ですが、あなたの職場の中には、業務やコミュニケーションを円滑に進めるためのヒントがたくさんあります。本書では、様々な医療職が連携する様をマンガを交え、わかりやすくお見せしながら、シチュエーションごとに各職種が何を考えているのかを紹介しています。
メディッコを立ち上げた思いメディッコは2018 年8 月に発足した任意団体です。現在は21 名で活動しており、日々、多職種連携への学びを深めています。多くの方の力をお借りしながら、活動は早くも4 年目を迎えます(2021 年4 月現在)。メディッコを立ち上げるに至った経緯は、自身の新人時代の経験から。当時、在籍した病院の心臓カテーテル室(以下、カテ室)では、臨床工学技士の配置は1 人。プリセプターと呼ばれる指導者がいない中で、カテ室の一員として一人前になるまで指導してくれたのが、他職種である放射線技師や看護師、医師。その時得た経験は、私の医療者としての礎を築いたと言っても過言ではなく、臨床を離れてもなお、他職種を頼りに業務に励んだことを思い出していました。さて、ライターに転職後しばらくして、SNS で他職種が悩みを抱えているのに気づきました。内容は様々。そこには、他職種でありながら共感できるものが多くあります。
「みんな誰かに悩みを聞いてほしい、助言をもらいたいのだろう……。」そんなことを思った時、看護師向けのサイト、理学療法士や作業療法士向けのサイトは目にするものの、多職種を対象するメディアがないことに気づきました。そこでひらめきます。
「コメディカルに多い悩みは、コメディカル同士で解決すればいいのでは?」と。そこから立ち上げまではあっという間です。メディッコという多職種のメディアを作りたいと発信したところ、現代表の喜多さんのアプローチを受け、コアメンバーを集め、名前を決め、準備しリリース。メディアリリースまでのスピード感はこのメンバーでなければ、成し得なかったでしょう。メディッコメンバーに改めて感謝いたします。そうして今もなお、進化し続けているのがメディッコです。全国各地にいるメンバーと書籍出版に至るのは非常に感慨深く、私一人では到底できなかったでしょう。
多職種連携の問題は、多職種で共有し、多職種で解決する
冒頭でも述べましたが、多職種連携は難しいイメージ、堅苦しいイメージを持ちがちです。しかしながら、専門性を生かしたチーム医療の重要性を唱えられる昨今では、避けては通れない分野でもあります。1 つ例を挙げましょう。
『あなたは新人の医療者です。多職種が集まり患者さんの治療を行っています。現場では自分の役割をそつなくこなしているものの、同じ時間に多職種が何をしているのかわかりません。こんな時、あなたはどうしますか?』
「同職種の先輩に聞く」これも正解の1 つでしょう。では、「タイミングを見計らって同じ空間にいる他職種に聞いてみる」これはどうでしょうか。
……これも正解。他職種に質問すれば、今までにない別の視点を得るかもしれません。
現場では患者さんや職場環境を思うあまり、他職種・同職種間でしばしば意見の対立が起こります。そんな時、他職種のことを理解し、問題を共有することで解決へと向かうかもしれません。これは同職種にも言えること。職種は同じでも専門分野は多岐にわたります。お互いを知ることで患者さんへのパフォーマンスはさらに良くなるでしょう。
多職種連携とは「それぞれの専門職が、共有した目標に向けてともに働くこと」。相手のことを理解しようとし、ともに掲げた目標に向かって進むのは新人でもできます。まずは、普段話す機会のないあの人に、声をかけるところからはじめてみませんか?
これから医療職場で働く皆さんへのメッセージあなたの抱く理想の医療者像はどんな人物でしょうか?
医療現場に出た時、理想とのギャップに落ち込むこともあるでしょう。そんな時励ましてくれるのが患者さんからの感謝の言葉や、家族、同僚の存在です。ともに業務に励む仲間は、ときに頼れる存在になることもあれば、意見の食い違いからムッとすることもあるでしょう。だからこそ、多職種連携を大切にしてほしいのです。
「なぜあの時、その対応だったのか」
「あの時、こうしておけばよかった……」
入職してしばらくすると、きっとそう思う場面に出くわします。多職種連携を知るに遅いも早いもありません。ぜひメディッコと一緒に学んで行きましょう。この本を手に取ったあなたが、少しでも多職種連携の実践に興味を持つことを願って。
2021年4月
メディッコ
宮座美帆