● 改訂版執筆にあたって
● 初版はじめに
第1部 基礎編 ――システムとしての脳の理解
第1章 脳はどのように理解されてきたか
1 形から類推できない脳の働き ―― 脳は不可思議な臓器
2 エジプト時代,そしてギリシャローマ時代の脳
3 脳研究の闇の時代 ―― 心臓に奪われた心の座
4 18世紀後半~19世紀にかけて得られた脳研究への手がかり―― 生物電気の発見から機能局在の発見へ
5 19~20世紀にかけて発見されたニューロンの本質―― ゴルジとカハールの論争からシナプスと化学伝達物質の発見まで
6 20世紀半ばからの脳研究:ついに難攻不落の砦への攻略が始まった―― 電気生理学的解析と学際的研究
7 20世紀後半~21世紀の脳研究 ――脳機能の可視化が脳の牙城に大きな風穴を空けた
8 21世紀の研究に残されている難問 ―― まだまだ不明な部分が多く残されている
第2章 脳はさまざまな部品で構成される複雑な組織
1 やっぱり形と機能には相関性がある
2 脳の形を見てみよう
3 脳の発生 ―― 脳組織ができあがるまで
4 ニューロン ―― 脳機能の主役
5 グリア細胞 ―― 脳機能の第2の主役
6 脳血管 ―― 脳内に張り巡らされるライフライン
7 神経回路網とその可塑性 ―― ニューロンの数だけでは測れない能力
第3章 脳の働きを生み出すしくみ
1 小さな細胞に組み込まれたさまざまな驚くべきしかけ
2 静止膜電位とイオンチャネル ―― 生きている細胞の証し
3 活動電位とイオンチャネル ―― 活動する細胞の証し
4 生体における情報の形 ―― インパルスとよばれる信号
5 活動電位の伝導 ―― 神経線維を減衰することなく伝わる情報
6 シナプスにおける情報の伝達 ―― 脳機能発現の最重要システム
7 シナプスにおける情報の統合―― 何千何万のニューロンからの情報を活動電位の発現頻度で表現する
8 インパルスの粗密がつくる,脳内で使われる言葉44 ―― 無限バーコード
9 自己組織化する脳 ―― ソフトウェアは遺伝子と自らの意思
第2部 機能編(感覚)―― 外界を認識するしくみ
第1章 さまざまな感覚刺激の情報化
1 感覚の種類と感覚細胞 ―― さまざまな刺激を感じるしくみ
2 感覚の周波数符号化と投射 ―― 感じているのは脳か? 体か?
3 感覚と情動および記憶 ―― おいしさは味だけじゃない
第2章 体性感覚 ―― 体内に張り巡らされたセンサー
1 体性感覚とは? ―― 意識しなくてもいつもある
2 皮膚に分布する多様な感覚器 ―― 体を守るセンサー
3 筋肉や腱にある状態を感知するしくみ ―― 固有感覚
4 感覚器への刺激がニューロンの信号に変換されるしくみ
5 感覚を脳に伝える求心性神経伝導路 ―― 感覚信号の通り道
6 感覚信号の終着点 ―― 感覚のホムンクルス
第3章 視覚のしくみ
1 眼球は自動焦点自動絞り手ぶれ防止つき立体高感度カメラ
2 光エネルギーを神経信号に変換するしくみ ―― 視細胞は光電素子
3 網膜内での視覚情報処理 ―― 光や色を神経信号に変えるしくみ
4 網膜から脳への信号の通り道 ―― 位置情報を保ったまま送る
5 一次視覚野での情報処理 ―― 円柱状に受容する
6 脳が対象物を認識するまで
第4章 聴覚のしくみ
1 空気の振動を音センサーに取り込むまで
2 蝸牛で音を識別する ―― コンパクトに収納された広領域音センサー
3 有毛細胞で音を神経信号に変換する
4 内外の有毛細胞が音を“正しく” “聞き分ける”
5 音情報の脳への通り道 ―― 音源の位置も感知できる
第5章 嗅覚のしくみ
1 嗅上皮と嗅覚受容細胞 ―― 匂い物質はまず粘液に溶け込む
2 嗅覚受容細胞での情報変換 ―― どんな匂いでも1パターン
3 嗅覚受容細胞に多様性をもたらす遺伝子
4 多様な匂いを嗅ぎ分けるしくみ ―― 意外に曖昧?
5 嗅覚受容細胞から脳へ ―― 整理,修飾が必要
6 嗅覚情報が脳で識別されるしくみ
第6章 味覚のしくみ
1 味はいくつに分けられる?
2 基本味は5 種認識されている
3 味覚器とその分布 ―― コンパクトに収納された味細胞
4 味はどのように情報に変換されるのか?
5 味覚の中枢経路 ―― 味は脳でどのように感じられているのか
第3部 機能編(運動)――脳からの運動命令の発信とその制御
第1章 神経信号が運動を生じるしくみ
1 随意運動の実行ステップ ―― 単純? いやいや複雑巧妙!
2 骨格筋とその運動ニューロン支配 ―― やわらかに体を動かすしくみ
3 2種の下位運動ニューロン ―― 大胆さと繊細さ
4 脊髄分節と神経の入出様式 ―― 脊髄の保護と入出力の両立
5 運動単位と運動ニューロンプール ――1個で多数を支配
6 運動ニューロンから骨格筋への伝達 ―― 神経筋接合部
7 骨格筋の構造とその興奮 ―― ここにも活動電位が生じる
8 興奮収縮連関 ―― Ca2 +を引き金としたダイナミックな反応
9 脊髄における運動制御 ――脊髄レベルでかなりの制御ができる
第2章 運動の企画と円滑な運動を司るしくみ
1 運動命令の発信拠点 ――運動のホムンクルス
2 皮質脊髄路 ――正確な随意運動にかかわる情報ハイウェー
3 腹内側経路 ――平衡,眼球運動,歩行,姿勢維持にかかわる
4 大脳皮質による運動の企画 ―― 視覚や記憶も総動員
5 運動野における運動の符号化 ―― ニューロン群が描く模様
6 大脳基底核 ――デリケートな運動をつくり出す複雑なループ機構
第3章 小脳による運動調節
1 小脳は筋群をよりよく協調させる
2 小脳の構造 ――大脳より細かいひだをもつ
3 小脳の神経回路 ――整然と並んだ回路素子
4 小脳における機能局在 ――ここにもホムンクルスが
第4部 脳と行動編 ―― しくまれた自動調節装置
第1章 視床下部 ――ホメオスタシスのコンダクター
1 視床下部の形と機能 ――小さな体で大きな仕事
2 視床下部の驚くべき機能 ―― 下垂体からのホルモン分泌
第2章 自律神経系のコントロール ―― 視床下部のもう1つの大仕事
1 交感神経と副交感神経による調節 ―― 活動か? 休息か?
2 自律神経系の神経回路 ――1つの臓器に2つの指令
3 自律神経系から支配臓器への神経信号
4 支配臓器を多様に制御 ――カギは神経伝達物質受容体
5 内臓感覚神経とその役割 ―― おもらしをしない理由
第3章 脳の広範囲調節のしくみ
1 神経伝達物質を使った広範囲調節系 ―― 実は大雑把でアナログ
2 脳が刻むリズム
3 アストログリアによる広範囲調節系 ―― まさかグリアが!
第5部 高次脳機能編 ―― うまく生きていくための能力
第1章 情動
1 情動発現メカニズムの論争 ―― 脳が先? 身体が先?
2 情動発現と大脳辺縁系 ―― 情動は脳のどこで起こる?
3 ぺーペズの回路 ――大脳皮質と視床下部の橋渡し
4 情動発現と扁桃体 ―― 恐怖を記憶する場
5 快情動の中枢 ―― 幸せはどこから生まれる?
第2章 言語能力
1 ヒトと言語 ――言葉を操れるのは人間だけ
2 言語能力の発達 ――カギは咽頭室の位置
3 失語症から学んだ言語野の存在
4 脳画像による言語能力の解析 ―― 脳のどこが活動している?
5 言語の獲得 ――子どもは言葉をどう覚えるか
第3章 記憶能力
1 記憶は脳機能の基礎である
2 記憶の側面 ――昔を思い出したり自転車に乗ったり
3 記憶物質説の盛衰 ―― 記憶は食べられる?
4 記憶のシナプス仮説 ―― 伝達効率が変化していた!
5 シナプスの可塑性 ―― 解かれてゆく記憶のしくみ
6 記憶の痕跡,想起,そして再固定化
7 記憶における海馬の重要性 ―― 高等動物の場合
8 海馬で何が起こっている? ―― グルタミン酸受容体と可塑性
9 記憶の分子メカニズム ―― ここまでわかった記憶の謎
第6部 脳の疾患編 ―― 脳の故障がもたらす多様な障害
第1章 神経疾患
1 筋力の低下が起こる疾患 ―― 筋への情報が遮断される
2 運動協調性の失調を主な症状とする神経疾患
3 記憶障害を生ずる疾患 ――ニューロンの大量脱落
4 てんかん ―― 脳が暴走する神経疾患
第2章 精神疾患 ―― 脳機能の発現メカニズムに変調をきたす
1 過度なストレスが引き起こす心の病
2 統合失調症 ―― 脳科学者の大きな課題
第7部 「こころ」編 ―― 脳から心を考える
第1章 脳の発達と心の発達
1 「こころ」とは何か
2 動物に心はあるか
3 心の成長
第2章 心をつくり出す脳機能
1 心の発現にかかわる脳のしくみ
2 ミラーニューロンと心の成長
第3章 危うい心
1 心の病 ―― 心の病からみえる心の実体
2 洗脳の恐怖
第4章 心=脳の考察
1 臨死体験 ―― 魂のせいか? 脳機能か?
2 脳と心は別次元? ―― 晩年のペンフィールドとエクルズの結論
● 参考図書文献
● あとがき
● 索引
Column
❶ゴルジが考案した染色法―ゴルジは強く染めすぎた?
❷たった1つの遺伝子の欠失で行動が変わる!
❸細胞内Ca2 +計測が神経活動を可視化した
❹ブロードマンは脳の機能局在を予見していた! ―ブロードマンの脳地図
❺パッチクランプ法―チャネル分子の活動を目の当たりにする方法
❻脳のなかの幽霊―脳のやわらかさか? 曖昧さか?
❼21世紀になってブレイクしたTRPチャネル群の研究
❽画像による視覚野の研究― “見て” わかる!
❾高性能眼球カメラを支える役者―眼球運動の重要性
❿平衡感覚も聴覚も有毛細胞が感じ取る
⓫「うま味」が基本味覚「Umami」と認知されるまで
⓬カエルの脚が生んだ成果―中枢シナプスのモデル標本
⓭ロボットサッカー選手が人間のサッカー選手に勝てる条件
⓮腸管は小さな脳
⓯ LSD25 ―精神異常を生じさせる薬物
⓰情動がなくなってしまった!―前頭葉皮質が人格に及ぼす影響
⓱ミラーニューロン(物まねニューロン)の発見 ―ひょっとすると人間性の発達につながっているかも?
⓲グルタミン酸研究―日本の神経科学研究者の大活躍
⓳場所細胞と格子細胞―記憶研究上の大発見
⓴密造麻薬が引き起こしたパーキンソン病
21アミロイドβは神経毒というより血流を阻害するゴミかも
22記憶低下を防ぐ方法……?
23自閉スペクトラム症―発達障害にせまる2冊の本
24慢性疼痛は心因性? ―やっかいな痛み記憶
25再認識される「森田療法」
26面倒な心の病 ―筆者の克服体験記