小児救急秘伝の書

  • ページ数 : 270頁
  • 書籍発行日 : 2011年6月
  • 電子版発売日 : 2012年9月8日
¥4,180(税込)
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商品情報

内容

小児救急に必要な心構えと適切な対応が身につく!
図表が豊富で解説も簡潔なので,困ったときにすぐに調べて実践できる。
小児医療に関わる医療従事者にぜひお読みいただきたい一冊。

序文

みなさんこんにちは.私は名古屋にある南医療生活協同組合総合病院南生協病院で小児科をしている鬼頭正夫と申します.医師になってほぼ30年になります.この間,救急医療にはかなりこだわりをもってきました.その原点は沖縄県立中部病院時代にさかのぼります.3日に1度の当直では眠った記憶がありません.当時の部長の安次嶺馨先生には医師としてまた人間的にも魅力を感じ,多くのことを教えていただきました.また,Dr.Talwakarはハワイ大学の中部病院専任の教授で,総回診とレジデントの回診についていただき,その知識の豊富さに圧倒されました.病院には,重症患児や国試に出るような珍しい患児が次々と受診され,貴重な経験をさせていただきました.中部病院でアメリカ式の救急医療と医学教育を学べたことは,私の医師人生にとって大きな宝になりました.

その後,故郷である名古屋に戻ってからも,救急医療にはとりわけ興味をもち続け,重症患者が搬送される度,先頭に立って診療をしてきました.しかし,45歳を過ぎるあたりから,体力にかげりが生じ,もう自分がバリバリやる峠は越えたのかなと感じ始めました.おりしも小児科医不足,小児救急の問題がマスコミでも取りざたされはじめ,せめてこれまでの知識と経験を次代を担う若い医師たちに伝えておかなければと感じるようになったことが執筆を始めたきっかけとなりました.

救急外来では小児の受診が多数を占め,小児科は,救急外来の現場で非常に重要な位置を占めます.つまり,小児がみられればかなりゆとりを持って救急外来を行うことができるのです.しかし一方で,小児科医以外で自信をもって小児を診療できる先生方は少ないのではないでしょうか.そこで,そういった方々のために,小児救急の現場で実践的に使えることを執筆の目的といたしました.

また,執筆を進めていくなかで,どうせならば親しみやすく,楽しく読める方が良いと思い,昔から興味をもっていた忍者・忍術にこだわってみたところ,最終的に小児救急に必須の項目を『いが(伊賀)+いろは48文字(「ん」を除く47文字),合わせて49(至急)項目の秘傳』にまとめることができました.本書はこの49項目を五十音から系統的な分類へ並び替えた全4章で構成されています.第1章は「小児救急の基礎」です.小児救急の心構えや,診察法,検査手技など基礎項目を解説します.第2章の「症候・事故」では,けいれん,意識障害,不慮の事故,天災などの対応をフローチャートを使い解説します.第3章の「疾患各論」では小児救急の代表的疾患を解説します.第4章は「小児救急のレベルアップ」です.リスクマネジメント,ロールプレーイングなどを解説します.本書は学会・厚生労働省研究班の診断・治療ガイドラインに基づき記載し,現場で使える実践的内容となっています.

また各項目ごとに,EBMはなくても臨床経験上重要なポイントを「極意」として記載しています.さらに医学のこぼれ話として「いっぷく」をいれてます.ときどき休憩しながら勉強してください.付録の「小児救急秘傳之巻」には小児救急のエッセンスをまとめました.

私の経験が,小児救急にたずさわってくださる先生方のお役に立てれば幸いに存じます.本書を通して,小児科・小児救急に興味を感じていただける医師が1人でも増えることを願っています.

出版にあたって,沖縄県立中部病院時代にご指導いただいた元沖縄県立中部病院院長 安次嶺馨氏,Dr.Talwakarに深謝いたします.

羊土社の皆様,特に中林雄高様,森悠美様には出版にあたりお世話になりました.ありがとうございました.


2011年 5月

南医療生活協同組合総合病院南生協病院小児科
鬼頭 正夫

目次

第1章 小児救急の基礎

「い」 一番大切なこと
極意 コミュニケーションの3つのCとSBAR

「も」 問診・診察
極意 子どもに触れない・「あきや」問診・子どもの手も借りたい・口腔内は,右脳で診る・子どもは穴がアナ・フィ-ドバックが大切

「が」 鑑別診断
極意 逐次診断(sequential analysis)・3快の術~快食,快眠,快遊~・発熱注意「4」・呼気か吸気か・腹痛は常に虫垂炎を念頭に・けいれんの判断は非常に困難・薬疹の診断は慎重に・乳児の血尿は尿酸結晶・唾液腺開口部を診る

「る」 類似疾患
極意 「RISK」=「R is K」=「リスク(R)」は「くすり(K)」

「れ」 例外に注意が必要な疾患・治療・対応

「ぬ」 抜く ~救急外来で必要な検査~
極意 危険度対利益度の分析

「ゆ」 輸 液
極意 水分の喪失分を補う

「や」 薬剤 ~救急で使う薬剤~
極意 乳幼児への抗ヒスタミン薬,鎮咳薬,去痰薬の使用は慎重にする・食物アレルギーに注意・強いステロイドは使わない

「た」 耐性菌
極意 グラム染色を活用する

「わ」 ワクチン
極意 熱性けいれんのある児が予防接種後発熱で受診したときの反応

「そ」 蘇生 ~心肺脳蘇生法~
極意 「外鼻孔の大きさ」を参考に・胸骨圧迫,人工呼吸のコツ・血管確保困難時の対応(骨髄内投与,気管内投与)

第2章 症候・事故

「け」 けいれん重積
極意 効果発現時間と投与方法・薬剤の使用しやすさ・呼吸停止に注意

「む」 無熱けいれん
極意 無熱けいれんは帰宅可

「ゐ」 意識障害
極意 意識混濁と意識変容・人形の眼現象・清涼飲料水ケトーシス

「な」 何となくおかしい
極意 何となくおかしいのABC

「ふ」 不慮の事故

Ⅰ.小児の死亡原因
極意 事故防止が死亡率低下のカギ

Ⅱ.事故各論

a.誤飲・誤嚥・誤吸入
極意 電話対応

b.熱傷

c.転倒・転落
極意 人の手から落ちると危険

d.頭部外傷
極意 高エネルギー外傷に注意・帰宅基準・再受診項目

e.頸椎・脊椎損傷

f.歯・歯肉の外傷
極意 牛乳に入れる

g.溺死・溺水
極意 浴槽用浮き輪に注意

h.熱中症(日射病・熱射病)

「ひ」 被虐待児症候群
極意 硬膜下血腫に注意

「ゑ」 SIDS(乳幼児突然死症候群)
極意 保育施設でのSIDSの対応は慎重に

「て」 天災・テロリズム

Ⅰ.天災

a.トリアージ
極意 START:simple triage and rapid treatmentを心がける・PTSD,伝染性疾患への対応

b.外傷
極意 トリアージで診察時にすべきABCDE

c.出血性低循環血液量性ショック
極意 ショックの5徴(5P)

d.DIC(播種性血管内凝固)
極意 フィブリノゲン値に注意

e.津波に伴う疾患
極意 アスベストに注意

Ⅱ.テロリズム

f.核兵器

g.生物兵器

h.化学兵器

i.テロ災害に対する医療機関としての対応

第3章 疾患各論

1.アレルギー・免疫疾患

「あ」 アナフィラキシー
極意 ラテックスアレルギーはフルーツにも注意

「き」 気管支喘息
極意 β刺激薬禁忌

「え」 MCLS(川崎病)
極意 疑ったら,腕も診る

2.感染症

「い」 インフルエンザ・新型インフルエンザ

a.インフルエンザ
極意 解熱薬に注意

b.新型インフルエンザ
極意 インフルエンザA型(H1N1)2009終息.次の候補は?・インフルエンザA型(H1N1)2009の特徴

「ま」 麻 疹
極意 コプリック斑は探さないと見つからない・麻疹ウイルス遺伝子検査も必要

「か」 感染症

a.ウイルス感染症
極意 水疱は部位に注意・重症度はさまざま

b.細菌感染症

c.その他の感染症

d.ペット感染症
極意 ペットからの感染は約30種類

e.海外渡航者感染症
極意 トラベルワクチンは多くが未認可

3.神経疾患

「ね」 熱性けいれん
極意 同時に使わない・心配ないことを伝える・発作回数と脳波異常

「す」 髄膜炎

Ⅰ.鑑別診断

Ⅱ.各論

a.無菌性(ウイルス性)髄膜炎
極意 ヘルペス脳炎,ADEMを見逃さない

b.化膿性(細菌性)髄膜炎
極意 嘔吐(髄膜刺激症状)がポイント・partialy treated に注意・名前は似ているが重症度は全く違う・劇症型に注意

c.結核性髄膜炎
極意 脳萎縮に注意

「の」 脳炎・脳症

Ⅰ.総論
極意 脳炎と脳症の違い・無菌性髄膜炎と誤診しやすい

Ⅱ.各論

a.インフルエンザ脳症

b.急性小脳失調症

c.Guillain-Barre症候群
極意 突然歩かなくなる

d.急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
極意 多発性硬化症の類似に注意

e.顔面神経麻痺

4.眼科疾患

「め」 眼の疾患

Ⅰ.結膜炎の診断フローチャート

Ⅱ.結膜炎各論

a.細菌性結膜炎

b.ヘルペス眼瞼結膜炎
極意 網脈絡膜炎に注意

c.流行性角結膜炎
極意 家族への指導

d.咽頭結膜熱(プール熱)

e.急性出血性結膜炎

f.Stevens-Johnson症候群

g.アレルギー性結膜炎

h.淋菌性結膜炎
極意 失明の危険

i.クラミジア結膜炎

Ⅲ.その他の眼科疾患

j.麦粒腫

k.結膜異物

l.角膜異物

5.耳・鼻咽喉科疾患

「み」 耳・鼻の疾患

Ⅰ.耳疾患各論

a.外耳道炎

b.急性中耳炎
極意 安易に抗菌薬を投与しない

c.外耳道異物
極意 自分で入れる

Ⅱ.鼻疾患各論

d.副鼻腔炎
極意 「口が匂う」は副鼻腔炎も考える

e.アレルギー性鼻炎

f.鼻出血
極意 下を向かせる

Ⅲ.咽喉疾患各論

g.扁桃・アデノイド肥大
極意 授業を怠けているという訴えにも注意

「く」 クループ
極意 夜間は重症化しやすい

「こ」 喉頭蓋炎
極意 咽後膿瘍も鑑別対象・挿管チューブは細めを使う

6.肺・気管支疾患

「は」 肺 炎

Ⅰ.総論

Ⅱ.各論

a.細菌性肺炎
極意 アンピシリン(ABPC)は有効

b.マイコプラズマ肺炎

c.クラミジア肺炎
極意 熱 咳4日注意

Ⅲ.肺炎と鑑別を要する疾患 ~悪性リンパ腫~

「さ」 細気管支炎
極意 乳児に注意

7.循環器疾患

「し」 循環器疾患

a.心筋炎
極意 診断のポイント

b.起立性調節障害(OD)

c.心臓震盪
極意 予防が第一

d.不整脈
極意 ATPは喘息に注意・ATPは診断にも有効

8.消化器疾患

「お」 嘔吐・下痢・腹痛

a.急性胃腸炎・食中毒
極意 制吐薬の坐剤が有効

b.アセトン血性嘔吐症
極意 診断名ではない

c.急性虫垂炎
極意 heel-drop jarring test・胃腸炎の食事

「ち」 腸重積症
極意 腸穿孔のリスク・症例の大半は救急外来を受診

9.泌尿器科疾患

「に」 尿路系疾患

a.尿路感染症
極意 エコーを活用

b.出血性膀胱炎

c.IgA腎症
極意 血清 IgAは高くない

d.ネフローゼ症候群
極意 背も伸びる

e.溶血性尿毒症症候群(HUS)
極意 止痢薬の使用は禁忌・下痢のないHUS

f.急性糸球体腎炎
極意 リウマチ熱にも注意

10.皮膚科疾患

「ほ」 発 疹
極意 発疹はすべて隔離

注意を要する発疹症

a.アレルギ-性紫斑病
極意 腹痛は下肢もみる・後天性血友病

b.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

c.多形滲出性紅斑
極意 Stevens-Johnson症候群

d.カポジ水痘様発疹症
極意 軟膏に注意

e.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

f.伝染性膿痂疹(とびひ)
極意 30%はMRSA,ゲンタマイシン軟膏は90%以上耐性

11.整形外科疾患

「せ」 整形外科疾患

a.肘内障
極意 練習しておこう

b.成長痛
極意 アレルギー性紫斑病の始まり

c.関節炎
極意 関節腫張は注意

d.一過性股関節炎
極意 股間節のかぜ

e.ペルテス病
極意 股関節痛ではまず念頭におく

f.大腿骨頭すべり症
極意 みんなよく似ている

g.骨髄炎
極意 pin-point tenderness

h.外傷・骨折
極意 年齢を考慮

i.Osgood-Schlatter病
極意 正座ができない

12.新生児疾患

「へ」 ベビー ~新生児に特有の疾患~

a.黄 疸
極意 糞便の色に注意

b.髄膜炎・敗血症
極意 何となくおかしい

c.呼吸障害
極意 呼吸器疾患以外にも注意

d.不整脈・先天性心疾患
極意 先天性心疾患早わかり

e.肥厚性幽門狭窄症
極意 飲みすぎのこともある

f.ビタミンK欠乏性出血症(新生児メレナ)
極意 新生児以外でもある

g.Hirschsprung病

h.先天性胆道閉鎖症
極意 新生児肝炎,総胆管拡張症との鑑別を要する

i.先天性胆道拡張症

j.臍 炎

k.鼠径ヘルニア

l.陰嚢水腫
極意 陰嚢の激痛

13.その他の疾患

「よ」 夜の疾患

a.夜泣き

b.夜驚症

c.睡眠時無呼吸症候群(SAS)

d.てんかん

e.restless legs syndrome(むずむず脚症候群:RLS)

f.ナルコレプシー
極意 夜重症化する疾患

「う」 運動誘発性疾患

a.食物依存性運動誘発アナフィラキシー

b.運動誘発性喘息

c.運動誘発性不整脈

d.横紋筋融解症

e.腎性低尿酸血症に伴う運動後急性腎不全
極意 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は禁忌

f.突発性運動誘発性舞踏病様アテトーゼ(PKC)
極意 知らないと診断できない

第4章 小児救急のレベルアップ

「と」 問い合わせ ~電話治療~
極意 否定しない・受診が原則

「つ」 つなぐ ~医療連携~
極意 救急手帳を利用・録音されている

「ら」 来院時院内トリアージ
極意 「先着優先の原理」から「患児の重症度・緊急度優先」へ

「り」 リスクマネジメント
極意 「きめこまか医療」を心がける・1人で対応しない・患児,家族が怒りだしたとき

「ろ」 ロールプレーイング
極意 声かけを忘れずに・オーソリティ グレーディエント・メラヴィアンの法則・ドア ノブ コメント(door knob comment)に注意

「を」 をわりに ~救急外来で必要な法律・法規~

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書籍情報

  • ISBN:9784758117111
  • ページ数:270頁
  • 書籍発行日:2011年6月
  • 電子版発売日:2012年9月8日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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