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エビデンスに基づく アトピー性皮膚炎治療 あたらしい潮流

  • ページ数 : 256頁
  • 書籍発行日 : 2019年8月
  • 電子版発売日 : 2020年5月8日
¥8,800(税込)
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商品情報

内容

アトピー性皮膚炎の新薬が10年ぶりに昨年発売されたが,今後も生物学的製剤やJAK阻害薬,STAT阻害薬,PDE4阻害薬などの発売が予想されており,アトピー性皮膚炎治療は大きな転換点を迎えつつある.
本書は,分子レベルにまで深まったアトピー性皮膚炎の病態理解と,それに基づいて開発が進むこれらの新薬について詳しく解説.アトピーをめぐる最近のトピックスや興味深いコラムも満載.

あわせて読む → 「エビデンスに基づく」シリーズ

序文

はじめに

アトピー性皮膚炎の患者さんは世界で二億人を超えると言われ,アトピー性皮膚炎は,われわれにとって大変なじみの深い皮膚疾患の一つである.しかしながら,「アトピー性皮膚炎の患者さんに十分満足してもらえる医療を行えているのか?」という疑問に対して,はっきりYES と答えられる医師はそれほど多いとは思えない(かく言う私もそう答えられない一人である).われわれは,診療ガイドラインを頭に入れつつも,とかく自身の経験に基づいて治療に介入しがちである.決して自身の経験に基づく医療が悪いわけではないが,それには自ずと限界がある.

近年になり,アトピー性皮膚炎に関する疫学調査,病態の解明を目指した基礎・臨床研究,新薬の開発や臨床試験が多数報告されている.すなわち,自身が経験できないことが国内外で実施され,エビデンスに基づく新たな知見が集積している.一方,皮膚科領域では皮膚悪性腫瘍や尋常性乾癬など幾つかの疾患において新薬が開発され,治療の選択肢が広がるとともに,患者さんの治療に対する満足度も高まってきた.そして,アトピー性皮膚炎の治療においても同様の状況が訪れつつある.

本書の企画に際し,こうした時代の要請を鑑み,宮地良樹・京都大学名誉教授と一緒に,アトピー性皮膚炎において「ベストな診療を実践するためには一体何が必要なのか」という議論をした.『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018』を治療戦略の基軸としつつ,IL-4受容体を標的とした新規治療や,JAK 阻害薬,抗IL-31 受容体抗体など,未来の治療の可能性について意見を交わした.病態についても,自然リンパ球をはじめとする新知見を積極的に盛り込むことにした.これらの情報は,アトピー性皮膚炎の治療を実践するうえで,将来非常に有益になると確信する.また,最近のトピックスとして皮膚常在菌(マイクロバイオーム)や,アトピー性皮膚炎のサブセットの可能性などの詳細に触れた.さらにコラムとして,汗や入浴など日常生活の指導での有益な助言や,教育入院,ブリーチバス療法なども盛り込んだ.こうして皮膚科医のみならず,小児科医や基礎医学の研究者らの知を結集させた本書『エビデンスに基づくアトピー性皮膚炎治療─あたらしい潮流』が完成したことを,とても喜ばしく感じている.

最後に,お忙しいなか快く執筆を受け入れてくださった多くの執筆者の方々に心より感謝申し上げるとともに,本書が,読者にとって明日からの診療,そして来るべきアトピー性皮膚炎治療の新時代において,診療の一助となることを心より願っている.


2019年8月

椛島 健治

目次

第1章 アトピー性皮膚炎の三位一体病態論

1 はじめに

2 アトピー性皮膚炎の概説

3 皮膚バリア

(1) 角層とフィラグリン

(2) アトピー性皮膚炎とフィラグリン

4 アトピー性皮膚炎発症におけるアレルギー炎症

(1) 各種アレルゲンに対する皮膚免疫応答

(2) アトピー性皮膚炎とT細胞

(3) バリア破壊とアレルギーマーチ

(4) アレルギー炎症によるバリア機能の変調

5 かゆみ

(1) かゆみの伝達神経

(2) かゆみ過敏とitch-scratchサイクル

(3) かゆみとアレルギー炎症

6 アトピー性皮膚炎の三位一体病態論

第2章 アトピー性皮膚炎の治療とバイオマーカーのパラダイムシフト

1 アトピー性皮膚炎の治療の歴史

(1) 新薬の開発の歴史

 1 はじめに

 2 病態論の進歩

 3 サイトカインからみたアトピー性皮膚炎の病態

 4 主な新薬の開発の歴史

 5 おわりに

(2) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018

 1 はじめに

 2 診療ガイドラインとは

 3 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018におけるエビデンスレベルと推奨度

 4 アトピー性皮膚炎の治療の目標とゴール

 5 アトピー性皮膚炎の治療の柱と意義

 6 アトピー性皮膚炎に対する薬物療法

 7 抗炎症外用薬のプロアクティブ療法

 8 アトピー性皮膚炎に対する内服抗ヒスタミン薬

 9 その他

(3) アトピー性皮膚炎治療のパラダイムシフト

 1 はじめに

 2 アトピー性皮膚炎の病態と従来の治療選択肢

 3 原因分子を標的とする新薬

 4 新薬による治療のパラダイムシフト

 5 おわりに

2 アトピー性皮膚炎のバイオマーカー

(1) 血清IgE値

(2) 末梢血好酸球数

(3) 血清LDH値

(4) 血清TARC値

(5) 血清SCCA2値

Columm アトピー性皮膚炎の発症と人種差

Columm アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法

Columm アトピー性皮膚炎と乾癬の違い

第3章 皮膚バリア障害・経皮感作に対するアプローチ-スキンケアによる発症予防,フィラグリン制御による治療

1 皮膚バリア障害・ドライスキンの病態論はどのように変容してきたか

(1) ドライスキンのメカニズムと保湿剤の作用機序-皮脂,セラミド,NMF

 1 ドライスキン発症のメカニズム

 2 物質透過バリア

 3 保湿性

(2) ドライスキンによる皮膚バリア障害の機序-フィラグリン,タイトジャンクション

 1 皮膚表皮の最終分化とバリア形成機構

 2 フィラグリンとバリア構造

 3 ドライスキンの形成機序

 4 角層の層構造の違いとその機能

Columm 汗はアトピー性皮膚炎にとっていいのか?

(3) ドライスキンによるかゆみの発症機序

 1 ドライスキンとはどのような状態か

 2 角層への水分供給

 3 バリア機能の低下によるドライスキン

 4 なぜドライスキンがかゆみにつながるのか

 5 異物の侵入とかゆみ

(4) 新薬はどのような作用機序で奏効するのか

 1 ドライスキンの治療ストラテジー

 2 皮脂膜の補強

 3 保湿因子の補強

 4 角質細胞間脂質の補強

 5 デュピルマブによる角層バリア機能の補強

 6 角層バリア補強薬─これからの展望

2 皮膚バリア障害・ドライスキンが経皮感作にどのように介在するのか

(1) アトピー性皮膚炎における経皮感作の重要性

 1 アトピー性皮膚炎はアレルギーマーチのリスク要因

 2 アレルギーマーチと食物アレルギーの関連性

(2) スキンケアにより経皮感作を回避すればアトピー性皮膚炎発症を抑えられる?

(3) アトピックマーチに対するドライスキンケアの有用性

3 新薬は従来の治療に欠けていた点をどのように補完できるのか

(1) 従来の保湿剤の有用性と限界

(2) 新薬はその欠点をどのように補完できるか

(3) 新薬によってどのような治療のパラダイムシフトが起こるか

(4) 現時点におけるベストな治療は何か

Columm 入浴・シャワー浴はアトピー性皮膚炎にとっていいのか?

Columm アトピー性皮膚炎の病理組織

Columm アトピー性皮膚炎と教育入院

第4章 免疫異常・アレルギー炎症に対するアプローチ-生物製剤,従来のステロイド・抗ヒスタミン薬の効用と限界

1 アトピー性皮膚炎の病態論はどのように変容してきたか

(1) アレルギー炎症の最新の情報と解説

 1 アトピー性皮膚炎はアレルギー炎症か

 2 アレルギーの定義と分類

 3 アトピー性皮膚炎は抗原特異的炎症なのか

 4 アトピー性皮膚炎病変部でのサイトカイン環境

 5 2型サイトカインの産生細胞

 6 自然リンパ球の活性化誘導因子

 7 Th2細胞は病変部でどのようなメカニズムで活性化するのか

 8 アトピー性皮膚炎におけるアレルギー炎症とは

 9 今後の展望

(2) 病態に応じてどのような新薬が開発されているか? 新薬の功罪は?

 1 アトピー性皮膚炎の病態に根ざした新薬開発

 2 新薬・新薬候補のまとめ

2 新薬は従来の治療に欠けていた点をどのように補完できるのか

(1) 従来の治療には何が欠けていたか

(2) 新薬はその欠点をどのように補完できるか

(3) 新薬によってどのような治療のパラダイムシフトが起こるか

(4) 現時点におけるベストな治療は何か

 1 寛解導入療法

 2 寛解維持療法

 3 重症・難治性状態に対する治療

Columm アトピー性皮膚炎とコモビリティ(合併疾患)

第5章 かゆみに対するアプローチ-抗ヒスタミン薬からIL-31まで

1 かゆみの病態論はどのように変容してきたか

(1) かゆみの機序・神経生理学の進歩

 1 起痒物質

 2 温度感受性TRP チャネル

 3 かゆみ伝達経路

(2) かゆみがアトピー性皮膚炎の病態にもたらす影響

(3) かゆみの制御はアトピー性皮膚炎のアウトカムにどのように影響するか

 1 タクロリムス軟膏によるかゆみ

 2 タクロリムス軟膏誘発性?痒モデルマウスの樹立

 3 モデルマウスの解析

 4 IL-4受容体阻害抗体

 5 IL-31受容体阻害抗体

2 新薬は従来の治療に欠けていた点をどのように補完できるのか

(1) 従来の治療の有用性と限界

 1 従来の治療薬(外用薬・内服薬)

 2 治療効果の評価

(2) 新薬はその欠点をどのように補完できるか

 1 分子標的薬

 2 JAK阻害薬

 3 ホスホジエステラーゼ4(PDE4)酵素阻害薬

 4 非ステロイド系抗炎症薬

(3) 新薬によってどのような治療のパラダイムシフトが生じるのか

 1 第一選択薬の選択肢拡大に伴う患者および医師双方における治療意欲の向上

 2 難治例に対する代替治療法の拡充─臨床経過の短縮への期待

 3 患者の疾病負担軽減

 4 患者数と年齢別構成割合に与える影響

 5 長期寛解維持への期待

(4) 現時点におけるベストな治療は何か

第6章 アトピーをめぐる最近のトピックス

1 皮膚常在菌を標的とした新規治療

(1) はじめに

(2) 正常の皮膚常在微生物叢とその特徴

(3) アトピー性皮膚炎と皮膚常在細菌叢の異常

(4) 皮膚常在菌をターゲットとしたアトピー性皮膚炎治療

(5) おわりに

2 抗菌ペプチドによる治療の可能性

(1) 抗菌ペプチドの概念と発見の経緯

(2) 疾患形成における抗菌ペプチドの作用

(3) アトピー性皮膚炎における宿主由来抗菌ペプチド発現

(4) アトピー性皮膚炎の細菌叢と皮膚微生物叢由来の抗菌ペプチド

(5) アトピー性皮膚炎における抗菌ペプチド治療の可能性

(6) おわりに

Columm アトピー性皮膚炎とPDE4阻害薬

3 衛生仮説とは

(1) はじめに

(2) 衛生仮説の歴史的変遷

(3) マイクロバイオームと喘息の関係

(4) 動物実験からの検証

(5) 環境湿度の影響

(6) 衛生仮説の矛盾点

(7) おわりに

Columm アトピー性皮膚炎と肥満

4 外因性・内因性アトピー性皮膚炎

(1) はじめに

(2) 外因性と内因性のアトピー性皮膚炎

 1 両タイプの背景

 2 内因性アトピー性皮膚炎の検査上の定義

 3 両タイプの皮膚バリア機能

 4 両タイプの免疫異常

(3) 外因性アトピー性皮膚炎の特徴

 1 フィラグリン遺伝子変異に基づくもの

 2 その他の主に外因性アトピー性皮膚炎でみられる症状

(4) 内因性アトピー性皮膚炎の特徴

 1 Dennie-Morgan fold(line)

 2 金属アレルギー

(5) おわりに

Columm アトピー性皮膚炎とブリーチバス療法

第7章 三位一体論に基づくアトピー性皮膚炎ベスト治療

1 はじめに

2 スキンケア

3 アレルギー炎症治療

4 かゆみの制御

5 三位一体論に基づくアトピー性皮膚炎ベスト治療

Columm アトピー性皮膚炎とウイルス・真菌感染


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書籍情報

  • ISBN:9784521747767
  • ページ数:256頁
  • 書籍発行日:2019年8月
  • 電子版発売日:2020年5月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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