医療メディエーション―コンフリクト・マネジメントへのナラティヴ・アプローチ

  • ISBN : 9784990301446
  • ページ数 : 308頁
  • 書籍発行日 : 2011年11月
  • 電子版発売日 : 2022年9月30日
  • 判 : B5判
  • 種別 : eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数 : 2
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¥4,180 (税込)
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商品情報

●安全・安心な医療をつくる対話モデル、医療メディエーション。
●病院の医療安全担当者はもちろん、医療にかかわるすべての人が活用できる内容。
●(財)日本医療機能評価機構・認定病院患者安全推進協議会のセミナーでも教科書として採用。
●社団法人 日本医療メディエーター協会の推薦図書。
●医療メディエーター(医療対話仲介者)必携。

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
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■ 序文

はじめに


本書の前身である『医療コンフリクト・マネジメント─メディエーションの理論と技法』(シーニュ社)を出版してから5年余りがたちました。この間、医療メディエーションについての認知度も高まり、医療の現場に急速に普及してきています。

2003年に、日本医療機能評価機構の認定病院患者安全推進協議会の部会で検討を始めた頃には、まだ研修プログラムの構成も手探りの状況でした。

法律実務家を対象とした第三者機関手続としてのメディエーション研修プログラムはいくつか存在していましたが、複雑な医療現場の対話過程を考えた場合、ほとんど参考になるものはありませんでした。メディエーションの構造とスキルを表層的に教育しても、医療の現場では型どおりに対応できるものではありません。基本的な姿勢と理念を体得したうえで、現場の複雑さに対応できる動態的な応用能力を涵かん養ようできるようなプログラムの構築が急務でした。

わが国でのメディエーション教育は3つの時期に区分することができます。

第1期は、法学研究者を中心に、第三者機関での紛争解決を目的として、メディエーションの理論的探究がなされた時期です。筆者の和田自身、1982年にハーバード・ロー・スクール留学中にメディエーションを学び、1988年に九州大学に奉職してすぐ、ゼミでメディエーション・ロール・プレイなどを実施しました。しかし、この時期のメディエーション教育は、大学アカデミズムの領域に限定されていました。

第2期は、1990年代後半、法律関係者を対象としてアメリカの実務的な研修トレーニングが紹介され、普及した時期です。アメリカでメディエーター研修に従事していたレビン小林久子氏(現・九州大学教授)がアメリカの教育プログラムを導入したことで、法律実務家を中心に研修が広く提供されるようになりました。このほか、経済産業省でもプログラムが開発されたりしました。しかし、これらは、第三者機関手続きを念頭に置いた研修であったこと、アメリカの文化・環境を前提としていたこと、パターン化されたスキル教育に重点が置かれていたことなどから、医療現場でのソフトウェアとしてのメディエーション教育には、不十分で不適合なものでした。

第3期が、医療メディエーションというかたちで、第三者機関の手続きとしてではなく、ソフトウェアとして普及してきた現在の動きとなります。

医療現場のメディエーションの機能化のためには、いくつかのポイントがありました。院内でソフトウェアとしてメディエーションを実施するには、上層部の理解・支持と、公正な事実検証、正直な説明が必須であることは言うまでもありません。われわれと同時期にアメリカで医療メディエーション教育を始めていたコロンビア大学ロー・スクールのキャロル・リーブマン教授も、医療メディエーションでは事実の共有が前提となることを指摘しています。こうした「事実の公正な検証と共有過程」を支えるためのメディエーション教育が求められていました。事実の公正な検証と共有、真摯で正直な対話の過程は、まさに医療現場でのメディエーション実践の目標であるとともに、必須の要素にほかならないからです。

また、医療現場の複雑性や動態性を念頭に、表層的スキルや技術教育でなく、基本的な姿勢と理念を身体知・暗黙知として体得し、応用的に対応できるような能力涵養のための新たなコンセプトに基づくプログラムが必要でした。例えば、IPI展開も、ハーバード流の狭い利害を念頭に置いたものから、感情や関係性、当事者自身の対話と気づきの促進、さらには「患者側の視点を踏まえた事実検証」へつなげる分析技能として、組み替えていく必要がありました。

こうした観点を前提に、メディエーションの理論的研究に従事してきた和田と、医療現場での実践経験をもつ中西を中心に、医療事故被害者遺族である佐々木孝子氏をはじめ、現在まで医療メディエーションの普及・教育に尽力していただいている多くの医療安全管理者の方々の助言・協力を得て、医療メディエーション教育プログラムが生まれました。とりわけ、佐々木孝子氏は、われわれが医療現場におけるソフトウェアとしてのメディエーションの必要性と可能性を考え、取り組むきっかけを与えていただいた、いわば「医療メディエーションの母」とも言うべき存在です。それ以来、医療メディエーションは、現場に次第に普及していくとともに、様々な課題にも直面しながら、その過程で精錬され、成長を続けています。

2005年に、日本医療機能評価機構で初めて医療メディエーター養成研修を提供し始めたときには、プログラムは基礎編だけで、実施回数は年に3回、受講者は79名に過ぎませんでした。しかし、それからの数年、年を追うごとに受講者が急増して、2010年度には年間2500名を超える方が受講するまでになり、プログラムも継続編、応用編、その他問題領域ごとのフォローアップ研修などと体系化され、多様化してきました。こうした急速な普及の中で、医療メディエーションのとらえ方も少しずつ深まり、新たな動きも出てきています。

第1に、研修プログラムの提供方法がニーズに応じて多様化してきました。

日本医療機能評価機構と早稲田総研インターナショナルでは、当初のとおり、一般に参加者を募集して研修を実施しています。しかし、それとは別に、病院団体、地域医師会、地方自治体、個別医療施設などから組織的な育成・導入の要望が上がるようになり、それに応じた研修も提供されるようになりました。現在では、後者のほうが、のべ受講者数が多くなっています。この文章の執筆時点では、下に掲げた団体で医療メディエーターの養成および医療メディエーション・モデルの普及に取り組んでいただいています。このほか、北里大学病院、武蔵野赤十字病院、虎の門病院、国立循環器病研究センターをはじめ、30を超える個別医療施設で、上層部の理解の下、研修を実施していただいています。

〈病院団体〉

全国社会保険協会連合会、国家公務員共済組合連合会、国立病院機構(九州ブロック、東北・北海道ブロック、関東信越ブロック)、全日本民医連、全国自治体病院協議会、日本私立医科大学協会(東京)、静岡県病院協会、日本文化厚生農業協同組合連合会、熊本県保険医協会、労働者健康福祉機構

(労災病院関係)

〈地域医師会〉

愛媛県医師会、新潟県医師会、福岡市医師会、京都府医師会

〈地方自治体〉

岩手県、新潟県、高知県

第2に、当初は、関心をもつ医療者が個人で受講するパターンが多かったのですが、現在では、病院団体や地域医師会主催の研修に象徴されるように、医療施設が組織として医療メディエーションを導入していこうとする動きが広がってきています。日本医療機能評価機構の研修などでも、同じ施設から継続して受講者が参加する例が多くなっています。医師の参加者のほとんどは、患者対応の改善に前向きに取り組む姿勢をもった院長や副院長などが占めています。

第3に、このような動きは、単に1人の医療メディエーターを導入するためというより、医療メディエーションを日常の医療場面でも有益な対話のモデルとしてとらえる発想に支えられています。医療事故やクレームへの対応を超え、日常の診療場面を含めて、医療者が備えるべき基本的な姿勢と態度を涵養するプログラムとして認知されているということです。個別医療施設内で行なう出張研修を継続的に受講することにより、すでに100名を超えるスタッフが医療メディエーションの素養を身につけている施設も複数あります。また、医学部教育や研修医教育に取り入れる動きも出始めています。

第4に、プログラムが体系化されるにつれ、研修での教育と現場での実践経験を統合的に一つの過程と見る視点が取り入れられてきています。現場での真摯な実践と研修での学びの機会が、相互支持的に患者と向き合う姿勢と理念、実践的応用能力の涵養に大きな意義をもつという観点で、プログラムの整備が進んできています。

第5に、医療者だけでなく患者・市民からも関心が寄せられ、医療事故に遭われた方々や、地域医療・小児科医療を再構築すべく医療者と共に努力している市民、患者会のみなさんたちと一緒に、医療メディエーションのあり方を考えていく動きが活発化してきています。患者・市民・医療者が一緒になって、医療メディエーションを体感的に学ぶ機会も増えてきています。

医療というものが、そもそも、医療者と患者が一緒に紡ぎ、構築していくものである以上、患者・市民の側でも医療メディエーションを学び、医療の場で生かしていく可能性が広く存在しています。医療メディエーションが患者・医療者の双方をつなぐ一つのシンボルとして機能していければと思っています。

第6に、こうした動きを支える仕組みとして、2008年3月には医療メディエーターの認定と資質の向上を図ることを目的とした日本医療メディエーター協会(Japan Association of Healthcare Mediators;JAHM)が発足し、2009年3月には一般社団法人となりました。医療メディエーションが普及するにつれ、その質を保証する仕組みが必要になってきたためです。医療メディエーターには、その姿勢や理念、専門能力を常に自省しながら精錬していくことが要求されます。それゆえに、相互に研けん鑽さんを積みながら支え合い、より向上するためのネットワークが必要です。すでに、全国ほとんどの地域に地方支部が設立されました。また、協会が中心となって、前述した患者・市民の方々と協働して医療メディエーションの可能性を探る活動も始まっています。すでに、患者・市民が中心となって患者サポートおよび病院サポートを行なう仕組みとして、アメリカ病院協会のペイシェント・アドヴォカシー教育システムなどを参考にした「医療マイスター」と呼ばれる人材の養成に取り組む試みが、内閣府の支援を得て動き始めています。その人材養成プログラムに医療メディエーションが取り入れられることとなり、日本医療メディエーター協会との協働で市民による患者支援メディエーターの育成も計画されています。

第7に、海外の医療教育機関との協働も始まっています。アメリカ病院協会の中に設置されたヘルスケア・コンシューマー・アドヴォカシー協会(SHCA)が、ペイシェント・アドヴォカシーのために備えるべき9つの技能領域の1つとしてメディエーションを取り上げたり、終末期の意思決定過程にメディエーターがかかわる生命倫理メディエーションの実践・教育が進められたりといった動きが見られるようになりました。また、事故対応への先進的取り組みで有名なミシガン大学ヘルスシステムでは、すべてのリスクマネジャーがメディエーション研修を受講しており、今後、日本医療メディエーター協会と継続的に意見交換していくことになっています。アメリカでも、このように院内の医療者がメディエーション・スキルを学び現場で役立てる動きが、日本ほどの広がりは見られないものの、着実に行なわれています。

ほんの数年前、一つの試みとして研修プログラムを提供し始めた頃には想像もつかなかったほど、現場の医療者はもちろん、患者・市民にも医療メディエーションが受け容れられ、広まってきたことは望外の幸せです。その過程で、本当に多くの方々との出会いがあり、ご支援をいただき、また有益なご指摘もいただいてきました。医療メディエーションとその研修プログラムは、まさにこれらの出会いの中で作られてきたものと言えます。もちろん、まだまだ取り組むべき課題や問題は山積しています。

このような状況の変化や課題の存在も踏まえて、このたび、前著『医療コンフリクト・マネジメント─メディエーションの理論と技法』を大幅に書き換えた改訂版を上じょう梓し することにしました。本書の前半部分はまったく新たな章立てになっており、その意味では、改訂版というよりむしろ新たな本とも言えることに加え、医療メディエーションという言葉が普及してきたこともあり、タイトルも思い切って変更しました。すでに述べたように、医療メディエーションは、医療現場の様々な場面への広がり、患者・市民の視点からの活用という面で、いまだ進化と変容の過程にあります。本書は、こうした声を反映させながら、さらに医療メディエーションを充実させていくための一つのステップです。本書を通じて、医療の現場の対話文化の醸成にささやかながらでも貢献していければと考えています。


2011年11月11日

和田仁孝・中西淑美

■ 目次

I 医療メディエーションとは

A 医療メディエーションの定義

B 医療メディエーションの諸前提

C 医療事故と医療メディエーション

D 医療メディエーションの適応場面

E 医療施設における対話文化の醸成と医療メディエーション

F 医療安全への示唆

II 医療メディエーションの理論的背景と構造

A コンフリクトとコンフリクト・マネジメント

B メディエーションの諸類型

C ナラティヴ・アプローチによる医療メディエーション

D 医療メディエーションのラダーと流れ

III 医療メディエーションのスキル

A 医療メディエーターの振る舞い方のポイント

B 医療メディエーション・スキルの全体像

C 気づきのためのスキル─―認知構造の把握と変容へのパスの発見

D エンパワメント・スキル(聴くスキル)―─傾聴と信頼関係の構築のために

E 対話促進のスキル

F 流れをスムーズにするスキル

G まとめの問題

IV 医療メディエーション・ロールプレイ

A Phase1:セルフ・メディエーション

B Phase2:現場対応メディエーション

C Phase3: 専従メディエーターによる医療メディエーション

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