終末期がん患者に対する緩和的作業療法

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2023年11月
  • 電子版発売日 : 2024年6月13日
4,400
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商品情報

内容

がんの終末期であっても、その人の「生きる」を最期まで支える作業療法士であるために!
緩和ケアチームのメンバーとして、作業療法士が持つべき視点を3部構成で詳細に解説。


終末期の作業療法で患者との関わりに悩む作業療法士に向けて、終末期のがん患者とその家族に「作業療法士として何が提供できるのか」を常に考え続ける作業療法士らによって執筆された、患者と向き合う際の実践ヒントが満載のガイドブック。
ドクターの視点やナースの視点も盛り込み、終末期がん患者への様々なケアをTOPICSとして記載。医師や看護師、家族・遺族会の立場から、作業療法士へ贈られたメッセージは、作業療法への期待に満ちています。

序文

はじめに


日本人が一生のうちに,がんと診断される確率は,男性,女性共に二人に一人と言われ,多くの日本人が,がんに罹患し,がんで死亡する.そのような背景の中,2010年度の診療報酬改定にて「がん患者リハビリテーション料」が設けられた.その対象患者として,終末期がん患者が挙げられており,多くの作業療法士が,終末期がん患者のリハビリテーションに従事する機会となった.

私が作業療法士として出発した20数年前,「がん患者に対する作業療法」「終末期・緩和ケアの作業療法」について学んだ記憶は,残念ながらほとんどない.当時の私は,「作業療法は,患者さんが日々元気になっていくため,社会復帰,復職,復学を目指すための一手段である」というイメージが強かった.

臨床家となり,作業療法士として初めて終末期がん患者さんを担当した時のこと,患者さんの居室を訪問すると,私の目の前に,瘦せ細った,反応もほとんどない患者さんがいた.室内は暗く,患者さんの傍らには,不安や悲しみ,寂しさ,日々の疲れなど,様々なものが入り交じったご家族が付き添っておられたのを覚えている.私は,作業療法士として何が提供できるのかわからず,ただ,日々訪問し,患者さんの手を握ったり,背中をさすったり,少しでも楽になるために…との思いで関わった.しかし患者さんは,日に日に病状が進行していく.本当にこの介入で良いのか,患者さんやご家族の痛みや苦しみに,私が関わることで,何かの役に立てているのか…それまでに経験してきた私のすべての臨床経験を全く実践に活かすことができず,思い悩んだ.

本書は,現在,日本において,当該領域で活躍している作業療法士,医師,看護師,遺族会代表者に執筆をお願いした.作業療法士が終末期がん患者に関わるチームメンバーの一員として,持つべき視点を各項目執筆の先生方の経験と共に記載し,近年の知見も含め,編集した.20年前の私のように,目の前の終末期がん患者さんへの関わりに思い悩んでいる方,これから終末期がん,緩和ケア対象の患者さんとの関わりを開始する方に,きっとそのヒントとなるエッセンスが散りばめられていると思う.終末期がん患者さんやご家族と関わる際に,本書をその傍らに置いて介入の参考にしてほしい.

私は,がんに限らず,あらゆる領域の患者さんに作業療法士として関わる際,作業療法介入の一目的として,「患者さんやご家族の痛みや苦しみ,困りごとを少しでも軽減させること,和らげること」を考えており,それを「緩和的作業療法」と呼んでいる.本書においては,「緩和的作業療法」の対象が,終末期がん患者やその家族ということになる.

本書を通じて,終末期がん患者さんやご家族に対する「緩和的作業療法」の実践,患者さんやご家族が「最期まで生きる」ことを少しでもサポートできるよう,心より願っている.


2023年9月

編集者を代表して 池知良昭

目次

はじめに

【PartⅠ】概論

1.がんの作業療法について

1)がんのリハビリテーションの4病期別分類と各期におけるがんの作業療法について

2)チーム医療の重要性

3)チームの中で作業療法士が果たすべき役割

4)緩和ケアの定義

5)緩和ケアにおける作業療法

2.終末期がんについて

1)終末期がんの定義について

2)終末期がん患者の病態・患者像

3)トータルペインの概念について

3.終末期がん患者に対する作業療法士の役割について

1)終末期ケアにおける作業療法士の関わり

2)さまざまな場所でのがん終末期作業療法

3)終末期作業療法の目標設定とアウトカム評価

ドクターの視点:死生観について

TOPICS:死生観を育む(死生観教育について)

【PartⅡ】作業療法場面で多く経験するさまざまな症状と作業療法評価とアプローチ

1.疼痛

1)がん疼痛の基礎知識

2)痛みを感じるしくみと病態による痛みの分類

3)がん疼痛のアセスメント

4)がん疼痛の対処方法

5)まとめ

6)疼痛を有する方々への作業療法

7)作業療法士の役割

8)原因別支援

9)痛みの感じ方に影響を与える因子への支援

2.がん悪液質

1)がん終末期にみられやすい栄養摂取障害・体重減少

2)がん悪液質とは

3)がん悪液質の評価・診断

4)がん悪液質の対処・治療

3.がん関連倦怠感

1)がん関連倦怠感とは

2)リハビリテーションアプローチ

3)評価

4)アプローチ

4.精神的苦痛

1)症状の概要

2)作業療法アプローチに関する先行研究の報告

3)評価

4)アプローチ

5.呼吸困難

1)症状の概要

2)作業療法アプローチに関する先行研究の紹介

3)評価

4)アプローチ

6.がん関連認知機能障害

1)がん関連認知機能障害とは

2)リハビリテーションアプローチ

3)評価

4)アプローチ

7.骨転移

1)症状の概要

2)作業療法アプローチに関する先行研究の紹介

3)評価

4)アプローチ

8.リンパ浮腫・その他の浮腫

1)がん患者に生じやすい浮腫とは

2)リンパ浮腫とは

3)終末期・緩和ケアを主体とした時期の浮腫の特徴

4)終末期がん患者の浮腫への対処

9.化学療法誘発性末梢神経障害

1)症状の概要

2)作業療法アプローチに関する先行研究の紹介

3)評価

4)アプローチ

5)まとめ

ドクターの視点:がんと血栓症,せん妄

1)がんと血栓症

2)せん妄

TOPICS:アロマセラピーについて

【PartⅢ】終末期がん患者に対する作業療法士の実践

1.がん治療に対する支援

1)キャンサー・ジャーニー,ペイシェント・ジャーニーに思いを馳せる

2)がん罹患歴や治療歴,既往歴を把握する

3)リスク管理のための情報の収集を行う

4)治療の有害反応・副作用の有無を把握する

5)有害反応・副作用への生活上の対策を検討する

事例:「がん治療に対する支援」に着目した事例

2.患者の希望・意思の尊重

1)患者とのよりよい関係性を構築する

2)患者の自己実現・自分らしさを代弁する

3)ライフレビューの機会を持つ

4)患者の治療方針等の意思決定を代弁する

5)希望実現の具体的方法について助言する

事例:「患者の希望・意思の尊重」に着目した事例

3.患者の興味・関心へのアプローチ

1)余暇活動の提案,提供をする

2)患者の趣味を把握し,継続する

3)興味・関心拡大の機会を調整・実行する

4)患者の興味・関心を引き出すために

事例:「患者の興味・関心へのアプローチ」に着目した事例

TOPICS:アピアランスケアとルックスケア

4.他職種との協業

1)他職種と共にチームとして協働する

2)他職種と情報を共有する(カンファレンスやラウンドに参加する

3)他職種に対し,患者とのコミュニケーション方法や関わり方を助言する

事例:「他職種との協業」に着目した事例

TOPICS:デスカンファレンスとバーンアウト対策

5.家族に対するアプローチ

1)家族および家族同等要員が直面する状況を理解する

2)作業療法士としての支援

事例:「家族に対するアプローチ」に着目した事例

TOPICS:家族・遺族会の立場から作業療法士に望むこと

TOPICS:エンゼルケア

ナースの視点:がん患者を取り巻く家族の心理状態

1)ナースが捉える終末期がん患者の家族の心理状態

2)ナースが期待するチーム医療─作業療法士との協働への期待

6.終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度(SROT-TC)の紹介

1)本尺度開発の背景

2)SROT-TCについて

3)SROT-TCを使用することの有効性

事例:「終末期がん患者に対する作業療法士の実践自己評価尺度(SROT-TC)」による振り返りを行った事例

あとがき-読者へのメッセージ

索引

巻末資料

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書籍情報

  • ISBN:9784763995728
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2023年11月
  • 電子版発売日:2024年6月13日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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