心エコーの「今」と「これから」をつなぐレポートづくりを目指して

年度初めというこの時期，新たな気持ちで心エコー室の体制やマニュアル，レポートの見直しに取り組んでいる方も多いのではないでしょうか．心エコーの診療は，装置や計測技術の進歩，そして各国のガイドラインの更新に伴って，日々変化を続けています．一方で，変わらない大切な視点もあります．だからこそ，定期的に「基本」を振り返り，自分たちの現場に合った最善の形を模索し続けることが重要です．

今回の特集「最新版！心エコーレポートの基本」では，まさにその“振り返りとアップデート”の一助となるべく，全国各地の施設で実際に使われている心エコーレポートの工夫やこだわりをご紹介いただきました．「計測項目や基準値はどうしているか？」「レポートの書式や表現はどこを工夫しているか？」「ガイドライン更新時の運用変更はどう進めたか？」など，現場ならではの悩みに具体的なヒントを与えてくれる内容がそろっています．

特に，臨床検査室としてISO登録を目指す施設においては，マニュアル整備の過程で「基準値」の扱いが重要な課題となることが多く，ガイドラインと施設独自の実情とのバランスに頭を悩ませている方も少なくないと思います．本特集では，そうした課題にどう向き合っているかを各施設の目線でお届けしています．読者の皆様が「このやり方，うちでも取り入れられそうだ」と感じていただけるような，実践的なアイデアや工夫が満載です．

「私はこう考える」「うちではこうやっている」といった，エビデンスや形式にとらわれすぎない自由な視点を大切にしたいという思いから，本特集ではあえて教科書的な記述ではなく，各施設の日々の診療に根ざした“生きた知恵”を集めました．筆者の皆様には，科長や施設の代表として，現場の責任を担いながらも実践に即した具体例をご紹介いただきました．この場を借りて，心より御礼申し上げます．

心エコー診療の質は，日々のレポートの積み重ねから育まれます．本特集が，読者の皆様の「明日からのレポート」をブラッシュアップし，依頼者に届くものにするきっかけとなれば幸いです．

石津智子