医学のあゆみ265巻5号 遺伝子治療の新局面

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2018年5月
  • 電子版発売日 : 2021年7月7日
¥2,640(税込)
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内容

遺伝子治療の新局面
小野寺 雅史(国立成育医療研究センター研究所成育遺伝研究部)


 現行の遺伝子治療は,紆余曲折はあったものの,現在では長足の進歩を遂げ,原発性免疫不全症や先天性代謝異常症に対する自己造血幹細胞を用いたex vivo遺伝子治療,白血病や悪性リンパ腫に対する末梢血T細胞を用いたCAR-T療法,血友病や神経・疾患に対するアデノ随伴ウイルスベクターを用いたin vivo遺伝子治療,固形腫瘍に対する増殖性ウイルスベクターを用いた腫瘍溶解ウイルス療法など,その有効性や安全性が臨床の場で実証され,その結果を受け複数の遺伝子治療に至っては医薬品としての承認を受けている.(序文より一部抜粋)

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序文

はじめに

現行の遺伝子治療は,紆余曲折はあったものの,現在では長足の進歩を遂げ,原発性免疫不全症や先天性代謝異常症に対する自己造血幹細胞を用いたex vivo遺伝子治療,白血病や悪性リンパ腫に対する末梢血T細胞を用いたCAR-T療法,血友病や神経・疾患に対するアデノ随伴ウイルスベクターを用いたin vivo遺伝子治療,固形腫瘍に対する増殖性ウイルスベクターを用いた腫瘍溶解ウイルス療法など,その有効性や安全性が臨床の場で実証され,その結果を受け複数の遺伝子治療に至っては医薬品としての承認を受けている.

また,GMP/GCTP適合性に基づくベクター製造技術の開発や次世代シークエンサーなどを用いた安全性評価系の確立もあり,これら技術革新の下,欧米では積極的に遺伝子治療の企業化に向けた取組みが行われている.さらに近年のゲノム編集技術の台頭と相俟って,現行の遺伝子治療の定義である“遺伝子による治療”にあらたな定義としての“遺伝子への治療”が追加される日も近い.

ただ,遺伝子治療薬という概念がいまだ新しく,また,それに伴う知見も乏しいことから,ややもすると過剰な規制を開発者や実施者に求めることもあり,ただ,その一方でこれまでにもベクター挿入による造血系腫瘍の発症例やウイルスベクターの過剰投与による免疫反応からの患者死亡例もあることから,今後もその安全性,有効性は幅広い観点から論議されるべきであり,さらにはゲノム編集の応用には単に安全性や有効性のみの観点からだけではなく,倫理性の観点からも社会的コンセンサスの下に論議される必要がある.

本特集では,遺伝子治療に関する基礎研究からその臨床応用ならびに規制および企業化にかかわる事項を第一線でご活躍の先生に執筆していただき,本特集を一読することで現行の遺伝子治療の全体像を把握できるように企画した.本特集が遺伝子治療に携わるすべての研究者,医療関係者,企業の方に有用な一冊になることを祈念してやまない.


小野寺 雅史(国立成育医療研究センター研究所成育遺伝研究部)

目次

【総論】

遺伝子治療の歴史と遺伝子治療の国内外の現状……谷憲三朗

【遺伝子導入・改変法・解析法:特徴と作製法,最近の話題】

レトロウイルス,レンチウイルスベクター:特徴と作製法,最近の話題……内山徹

AAVベクター──開発の歴史と最近の話題……島田隆

組換えアデノウイルス──特性と最近の話題……水口裕之・邊見昌久

がん治療のための腫瘍溶解性ウイルス──腫瘍溶解性ウイルスの種類,特徴,作製法から最近の話題まで……中村貴史

ゲノム編集技術の分子基盤と最近の話題……濡木理

遺伝子治療を支える次世代シーケンス技術――遺伝子導入部位解析とゲノム編集オフターゲット評価……中林一彦

【遺伝子治療の対象疾患】

免疫・代謝・血液疾患

原発性免疫不全症:造血幹細胞を標的とするSCID, WAS, CGDの遺伝子治療……大津真

先天代謝異常症におけるex vivo遺伝子治療の現状と展望──ライソゾーム病,ペルオキシソーム病の中枢神経症状に対する治療法の開発……奥山虎之

AAVベクターによる血友病遺伝子治療の現状と展望──臨床試験における成功から実用化に向けた取組みへ……綿野亮太・水上浩明

悪性腫瘍

白血病/リンパ腫:CAR-T遺伝子治療の現状……小澤敬也

固形がん:TCR改変T細胞遺伝子治療の現状……影山愼一

食道がんに対する放射線併用ウイルス療法の臨床開発の現状……藤原俊義

前立腺癌(Ad-REIC):Ad-REICによる遺伝子治療の現状……定平卓也・那須保友

神経疾患

Parkinson病・Alzheimer病:AAVベクターによる遺伝子治療……村松慎一

AADC欠損症に対するAAVベクターを用いた遺伝子治療の現状……山形崇倫

遺伝性網膜変性疾患に対する遺伝子治療の現状……池田康博

筋ジストロフィー(DMD,脊髄性筋萎縮症)──人工核酸およびAAVベクターによる筋ジストロフィー遺伝子治療の現状……岡田尚巳

循環器・皮膚

肝細胞増殖因子の多面的効果と遺伝子治療の現状……眞田文博・森下竜一

末梢血管病変:FGF発現センダイウイルスベクターを用いた末梢血管系疾患に対する遺伝子治療の現状……田中理子・米満吉和

表皮水疱症に対する再生医療と遺伝子治療:現状と展望……玉井克人

【遺伝子治療の開発】

遺伝子治療関連規制の動向──遺伝子治療の規制の概要と指針改正の動向……内田恵理子

遺伝子治療製品開発におけるカルタヘナ承認・確認申請……久米晃啓

日本における再生医療等製品の価格:どのように設定されるべきか?……木村正伸 

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書籍情報

  • ISBN:9784006026505
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2018年5月
  • 電子版発売日:2021年7月7日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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