医学のあゆみ274巻5号 細胞競合による生体制御とがん

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2020年8月
  • 電子版発売日 : 2021年4月30日
¥2,860(税込)
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内容

細胞競合による生体制御とがん
企画:井垣達吏(京都大学大学院生命科学研究科)


・発生中の組織のなかで細胞同士が生存競争し,争いに勝った細胞が成体の一部を形成できるという“cell competition(細胞競合)”の概念は,1975年にMorataとRipollによってショウジョウバエではじめて示された.
・最近,異なる要因で起こる細胞競合で共通に機能するメカニズムが見えはじめ,細胞競合を特異的に制御する転写因子Xrp1が発見された.細胞競合研究は今,静かにフィナーレの第4楽章へと突入しつつある感がある.
・細胞競合は,遺伝的背景の異なるもの同士が限られた生息域(スペース)や資源(栄養)を奪い合う“適者生存”を想起させることから,地球上に存在するあらゆる生物を支配する根源的な生命原理に迫れるのではないか.

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序文

はじめに

井垣 達吏

京都大学大学院生命科学研究科


発生中の組織のなかで細胞同士が生存競争し,争いに勝った細胞が成体の一部を形成できるという“cell competition(細胞競合)”の概念は,1975年にMorataとRipollによってショウジョウバエではじめて示された.その後,古典的なショウジョウバエ遺伝学を用いて,いわばひっそりとマニアックに研究されてきたこの興味深い現象は,2000年代初頭のショウジョウバエ・クローン解析技術の発展により,世界の表舞台に顔を出した.

2002年,勝者細胞クローンと敗者細胞クローンの境界面で敗者細胞がJNK依存的なアポトーシスを起こすという,今では当たり前に捉えられている現象がMorataらによってセンセーショナルに報告され,2004年にはがん遺伝子Mycを高発現する細胞が近隣細胞を競合的に駆逐する“スーパーコンペティション”現象がJohnstonやMorenoらによって報告された.同時期に米国でポスドクをしていた筆者は,apico-basal極性が崩壊した細胞が単独では過剰増殖するのに,野生型細胞に囲まれるとなぜか細胞死を起こして排除されるという現象に出会い,そのなんともいえない不思議な細胞の振る舞いに魅了された.今では“tumor-suppressive cell competition(がん抑制型細胞競合)”とよばれる細胞競合現象のひとつである.

その後,藤田らによって哺乳類でも細胞競合が起こることが示され,またがんや個体発生,幹細胞システムの維持など,さまざまな生命現象で細胞競合が機能している可能性も見えてきた.最近,異なる要因で起こる細胞競合で共通に機能するメカニズムが見えはじめ,Bakerらは細胞競合を特異的に制御する転写因子Xrp1を発見した.細胞競合研究は今,静かにフィナーレの第4楽章へと突入しつつある感がある.

細胞競合は,遺伝的背景の異なるもの同士が限られた生息域(スペース)や資源(栄養)を奪い合う“適者生存”を想起させることから,地球上に存在するあらゆる生物を支配する根源的な生命原理に迫れるのではないかというロマンがある.はたしてそうであろうか.早く種明かしを知りたいが,それを見つけるプロセスこそが醍醐味である.なんともいえない不思議な現象のなかには,これまで見たことのない,あっと驚くからくりが潜んでいるはずである.

目次

細胞競合のメカニズム

細胞競合の制御機構――ショウジョウバエからみえてきた共通メカニズム……永田理奈・井垣達吏

がん原性変異細胞と正常細胞との間で引き起こされるがん抑制性細胞競合――ショウジョウバエをモデルとして……大澤志津江

ゼブラフィッシュ胚でのSrc変異細胞の細胞競合による制御メカニズム……多田正純

哺乳類細胞におけるScribble欠損誘導性細胞競合……小川基行・他

細胞競合における機械刺激応答を介した組織修復……奈良真吾・田守洋一郎

細胞競合とがん

哺乳類におけるがん原性変異細胞と正常細胞との細胞競合……谷村信行・藤田恭之

Hippo-YAPシグナル経路を介した異常細胞の排除……仁科博史

哺乳類Hippo経路による細胞接着の制御と細胞競合……前濱朝彦・他

Srcによる細胞競合とがん進展……梶原健太郎・岡田雅人

がん細胞社会における細胞間相互作用……髙橋智聡・河野晋

生理的な細胞競合

組織発生における細胞競合……龝枝佑紀・石谷太

マウス初期胚エピブラストにおける細胞競合――多能性細胞の品質管理機構……佐々木洋

表皮幹細胞の細胞競合と皮膚の再生・老化……松村寛行・他

組織リモデリングにおける細胞の入れ替わりとエンドサイトーシスの役割……梅津大輝・倉永英里奈

筋分化過程における細胞競合――インスリン受容体基質(IRS-1)の役割……伯野史彦・他

細胞競合の力学・動態・数理

細胞競合とアクチンダイナミクス……松井貴輝

細胞競合と力覚応答……大橋一正

細胞競合と生体イメージング……菊田順一・他

細胞競合の力学的理解……坪井有寿・他

細胞競合の数理モデル――組織の運命を決めるものとは?……西川星也・高松敦子

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書籍情報

  • ISBN:9784006027405
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2020年8月
  • 電子版発売日:2021年4月30日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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