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医学のあゆみ281巻9号 腫瘍と糖鎖―糖鎖の基礎研究から腫瘍の分子標的同定に向けて

  • ページ数 : 70頁
  • 書籍発行日 : 2022年5月
  • 電子版発売日 : 2022年5月25日
¥1,540(税込)
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商品情報

内容

企画:谷口直之(大阪国際がんセンター研究所糖鎖オンコロジー部)
・糖鎖は腫瘍細胞の発生から進展,転移に関わり,さらには化学療法や放射線療法でみられる耐性の過程においても,重要な役割を果たしている.
・糖鎖あるいは糖鎖の改変や誘導体などを利用したがんなどの治療については,core fucoseを除去したADCC(抗体依存性細胞所外活性)の活性化を利用した薬剤や,接着分子の阻害薬などが開発されている.
・今後さらに,分子標的治療の応用についての発展が期待される.現在,がん治療でのトピックスのひとつである免疫チェックポイント阻害薬への糖鎖の応用や糖鎖抗体などを用いた治療法の開発も期待できよう.

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序文

はじめに


タンパク質の糖鎖修飾は,リン酸化とともに翻訳後修飾として最も頻度が高いことは周知の事実である.腫瘍に特徴的な糖鎖変化を利用した腫瘍の制御やバイオマーカーとしての意義はよく知られている1-3).しかし,ゲノム,タンパク質の研究に比べると糖鎖は多様性や複雑性に富み,研究面ではまだまだ未解決の問題が多い.一方,タンパク質,脂質のほか,最近small RNAにもN-結合型糖鎖が付加されていることが報告された3).糖鎖は腫瘍細胞の発生から進展,転移に関わり,さらには化学療法や放射線療法でみられる耐性の過程においても,重要な役割を果たしている.また,がん細胞の悪性化に深く関わる上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transitio:EMT)や間葉上皮転換(mesenchymal epithelialtransition:MET)においても糖鎖と糖鎖遺伝子の役割が重視されている4).がん細胞や患者血清の糖鎖変化として,N-結合型糖鎖の分岐に関わる糖鎖,シアル酸,O-結合型糖鎖,プロテオグリカン糖鎖,スフィンゴ糖脂質,GPI (glycosylphosphatidylinositol)アンカーに関わる糖鎖に加えて,細胞内のO-GlcNAcylationの重要性などが知られてきた5).また,分子腫瘍マーカーとして,AFP-L4,CA19-9(Sialyl-Lea),Dupan-2,CEA,MUC-1,CA125など多くが使用されている2,6,7)が,早期がんの診断には限界がある.

また,糖鎖あるいは糖鎖の改変や誘導体などを利用したがんなどの治療については,core fucoseを除去したADCC(antibody-dependent cellular cytotoxicity;抗体依存性細胞傷害)の活性化を利用した薬剤や,接着分子の阻害薬などが開発されている.今後さらに,分子標的治療の応用についての発展が期待される.現在,がん治療でのトピックスのひとつである免疫チェックポイント阻害薬への糖鎖の応用や糖鎖抗体などを用いた治療法の開発も期待できよう.がんのみならず前がん病変や,がんを併発しやすい疾病も対象とした糖鎖研究も重視されるべきだと考えている.本特集は糖鎖研究の実績のうえに,腫瘍におけるその意義を明らかにされている諸氏に執筆をお願いし,改めて腫瘍や前がん病変における糖鎖の役割をご理解いただけると幸いである.


谷口直之
大阪国際がんセンター研究所糖鎖オンコロジー部


【文献】

1) Hakomori S. Proc Natl Acad Sci 2002;99:10231-3.

2) Taniguchi N, Kizuka Y. Adv Cancer Res 2015;126:511-3.

3) Flynn RA et al. Cell 2021;184:3109-24. e3122.

4) Taniguchi N et al. Mol Aspects Med 2021;79:100905.

5) Varki A et al. Essentials of Glycobiology. Cold Spring Harbor Lab Press;2015, p.597-609.

6) Pinho SS, Reis CA. Nat Rev Cancer 2015;15:540-55.

7) Silsirivanit A. Adv Clin Chem 2019;89:189-213.

目次

特集:腫瘍と糖鎖─ 糖鎖の基礎研究から腫瘍の分子標的同定に向けて

はじめに  谷口直之

がんとシアル酸重合体  佐藤ちひろ

N-結合型糖鎖による細胞接着と上皮間葉転換(EMT)の制御  顧 建国

細胞膜受容体と糖鎖  高橋素子

細胞外小胞の糖鎖情報からみえてきたがんとの関連  原田陽一郎

がんにおけるルイス糖鎖の生物学的機能  福岡智哉・他

腫瘍とコンドロイチン硫酸  灘中里美・北川裕之

がんや前がん病変におけるヘパラン硫酸およびケラタン硫酸の機能  大川祐樹

免疫チェックポイント分子としてのSiglecファミリーとその腫瘍免疫への関与  安形高志

レクチン融合薬を用いた糖鎖標的がん治療戦略  下村 治・他

連載

COVID-19診療の最前線から ─ 現場の医師による報告20

呼吸療法 ─ 酸素療法,非侵襲的換気,リハビリテーション  大山慶介

バイオインフォマティクスの世界(9)

疾患ゲノム解析Ⅱ:GWAS解析  重水大智

TOPICS

小児科学

妊娠期の喫煙・生後の受動喫煙と子の喘息罹患との関連  吉田都美

免疫学

STINGリガンドと抗CD47抗体の併用によるがん免疫療法  大栗敬幸・他

医療行政

医薬品副作用被害救済制度の現状と課題  山田和男・他

FORUM

中毒にご用心 ─ 身近にある危険植物・動物13

巻貝(テトラミン,テトロドトキシン)─ 見た目だけで有毒か無毒かを見分けることは困難  新田正和

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書籍情報

  • ISBN:9784006028109
  • ページ数:70頁
  • 書籍発行日:2022年5月
  • 電子版発売日:2022年5月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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