小児頭部外傷の診断と治療

  • ページ数 : 268頁
  • 書籍発行日 : 2021年11月
  • 電子版発売日 : 2021年11月12日
¥8,580(税込)
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商品情報

内容

医療、行政、司法の子どもたちの命と未来を守るすべての人たちに贈る一冊

小児の発達途上の脳神経に対する外力による損傷の診療をどのように進めるか,という命題に全国の豊富な診療経験を有するエキスパートたちが応えた小児頭部外傷の専門書の決定版.頭部外傷の病態,年齢に応じた診断と治療や長期予後を見据えたリハビリテーション, 教育・社会的支援,そして大きな社会問題となっている被虐待児への対応などについて,最新の知見や豊富な図表を用いた症例を交え詳細に解説した.

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序文


超高齢化社会を迎え,同時に総人口の減少が憂慮されるわが国において,子どもの命を守る医療への期待はこれまで以上に深く強いものとなり,併せて子どもの安全と健康を確保することはすべての大人に課せられた責務といえます.そのような趨勢にあり,小児の救急搬送体制や小児集中治療室の整備が進み,実臨床においても,小児の特殊性に根差した画像診断法の開発や,内科的および外科的治療,周術期管理の進展を通して頭部外傷の治療成績は改善されつつあります.

しかし,あらゆる治療も功をなさないきわめて重篤な頭蓋内圧亢進を伴う重症例は依然存在し,解剖学的および生理学的に成長発達段階にある小児期,特に乳幼児期の外傷性脳損傷の病態について,治療の焦点となる基礎・臨床の研究結果が蓄積されています.「子どもはサイズの小さな大人ではない」ことは,まさに最新の科学的知見により明確に裏付けられるようになったといって過言ではありません.

一方,実臨床においてしばしば活用される小児頭部外傷の治療ガイドラインにはevidence—levelの低い研究を基に構成された推奨項目が多いことから,成人治療ガイドラインの応用や個人的経験により治療が行われる傾向にあること,また年齢に合った治療転帰の評価がなされないまま経過観察から外れていく子どもたちがいること,正しいリハビリテーションが受けられないことなど,根本的な問題も多く存在しています.

「はたして,未来を担う子どもたちの頭部外傷の診療に対する社会の期待に対して,いま私たちは応えることができているのか.わが国の小児頭部外傷の診断と治療はいまどこにあるのか」という問いに対するひとつの働きかけとして,全国の豊富な診療経験を有する識者に対し,小児頭部外傷の成書を出版する企画をご説明したところ,快くご賛同を頂き,また中外医学社の多大なるご理解を得て『小児頭部外傷の診断と治療』を上梓する運びとなりました.

病態を理解する上で共通する項目を総論,一定の診断を経た病態に対する診療に関する項目を各論に収め,各々の項目について修得すべき要点を冒頭にSUMMARYとして列挙しました.また豊富な図表を用いて代表的な症例を解説し,最後に総括としてKEY POINTを記して頂きました.すべての項目において,小児特有の視点に立脚して編纂された本書が,小児頭部外傷に関する専門書の決定版として,頭部外傷を学ぶすべての方々に活用されることを願ってやみません.

そして,本書に綴られたすべての知見が,それぞれの現場において,“大好きなお家へ帰りたい思いを噛み締めながらベッドに身を横たえる子どもたちへ”,“待合室で自らの身を抱きながら不安に耐えているご両親へ”,“一日も早い回復を祈りながら毎日のケアに尽くす医療スタッフへ”,“頭部外傷に付随する事件事故の解決のために奔走する捜査機関,子どもの安全と福祉のために尽力する行政機関,この国の未来を支える子どものために協働されるすべての方々へ”暖かく届けられることを祈念します.

最後に,本書を作成するにあたり,ご監修の労をお取り頂きました,日本体育大学大学院保健医療学研究科長・教授/日本医科大学名誉教授 横田裕行先生,東京医科大学脳神経外科学分野特任教授 三木保先生,名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経外科学分野教授 間瀬光人先生の暖かいご指導に心より御礼を申し上げます.また毎日の診療において惜しみない協力と理解で支援して頂いた埼玉医科大学総合医療センター,地方独立行政法人埼玉県立小児医療センターのすべてのスタッフの皆様に深く感謝いたします.そして誰よりも辛抱強く勇敢にけがの治療に耐えたすべての子どもたちと,その回復を祈りながら尽くしてきた養育者の皆様のたゆまない頑張りに,心からのエールと感謝の気持ちを込めて,本書を贈りたいと思います.


謝辞

本書の制作を通してご尽力頂きました,中外医学社企画部 弘津香奈子様,編集部 上村裕也様に心より感謝申し上げます.またこの期間,支援してくれた家族,同僚,友人各位に感謝の意を表します.


2021年10月

埼玉県立小児医療センター小児救命救急センター外傷診療科科長
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター客員教授

荒木 尚

目次

1章◆小児頭部外傷 総論

1 小児頭部外傷の疫学〈前田 剛〉

厚生労働省の人口動態調査,他からの検討

米国CDCの調査,他からの検討

日本脳神経外傷学会の頭部外傷データバンク

おわりに

2 小児頭部外傷の病理〈小谷泰一〉

頭蓋外損傷(皮膚軟部組織)

頭蓋骨骨折

脳損傷(頭蓋内損傷)

おわりに

3 データバンクに見る小児頭部外傷〈末廣栄一〉

日本頭部外傷データバンク

病院前救護の視点から

患者搬入時の所見

治療内容

転帰

おわりに

4 病態の特殊性〈荒木 尚〉

小児の外傷性脳損傷の特徴

病院前救護

小児の外傷性脳損傷の短期および長期予後

小児頭部外傷における患者と家族ケア

リハビリテーション

5 症状・症候の特殊性〈相賀咲央莉,川崎達也〉

初期蘇生

気道確保の要点

静脈路確保の要点

神経学的評価

児童虐待の疑いをもつべき病歴・身体所見

おわりに

6 救急初期対応(病院前を含む)〈本多ゆみえ〉

一般的なドクターヘリの有用性

頭部外傷(特に小児の頭部外傷)に対するドクターヘリの有用性

症例提示

おわりに

7 画像診断〈小熊栄二〉

各種画像診断法

小児の頭部外傷画像診断の論点

おわりに

8 CT適応基準を用いた診療の適正化〈下川尚子〉

臨床現場における小児頭部外傷とCT検査の問題点

日本の医療環境の現状と被曝リスク

小児頭部外傷診療でCT適正使用を達成するための3ポイント 「最適化」「正当化」「情報提供」

2020年診療報酬改定による小児頭部外傷の際のCT撮像に係わる加算

おわりに

9 頭部外傷における神経バイオマーカー〈横堀將司〉

概論

理想的なバイオ―マーカーとは何か?

診断バイオマーカーの限界―特異度と生理的動態

おわりに

10 診療ガイドライン〈刈部 博〉

概論―小児頭部外傷診療ガイドラインの理念と歴史

項目解説

おわりに

2章◆小児頭部外傷 各論

1頭蓋外損傷(皮膚軟部組織)〈下野綾乃〉

概論

Case Report

考察

おわりに

2 頭蓋骨骨折〈萩原信司〉

概論

Case Report

考察

3 開放性脳損傷・局所性脳損傷〈石崎竜司〉

概論

Case Report

考察

おわりに

4 閉鎖性脳損傷・びまん性脳損傷〈荒木 尚〉

概論

Case Report

びまん性脳腫脹とは?

5 外傷性脳血管損傷〈石黒友也,小宮山雅樹〉

概論

Case Report

考察

おわりに

6 顔面外傷〈江浦重義,赤石諭史〉

概論

Case Report

考察

おわりに

7 頸椎頸髄損傷〈大饗和憲〉

概論

Case Report

考察

おわりに

8 穿通性頭部外傷〈阿久津宣行〉

概論

Case Report

考察

おわりに

9 多発外傷の合併〈中江竜太〉

概論

Case Report

考察

おわりに

10 頭蓋内圧モニタリング〈荒木 尚〉

概論

Case Report

考察

おわりに

11 持続脳波モニタリング〈江川悟史〉

背景

てんかん重積状態と非けいれん性てんかん重積状態

転帰への影響

適応とリスクファクター

cEEGモニタリングの期間

病態生理を考えて脳波所見を理解する

cEEGの解釈の仕方

おわりに

12 小児集中治療〈坂本 航,櫻井淑男〉

概論

Case Report

考察

13 くも膜下腔拡大と硬膜下液体貯留・慢性硬膜下血腫〈栗原 淳,荒木 尚〉

概論

Case Report

考察

14 外傷後てんかん〈香川幸太,飯田幸治〉

概論

Case Report

考察

おわりに

15 周産期頭部外傷〈加藤美穂子〉

概論

Case Report

考察

おわりに

16 合併症・後遺症(頭蓋形成術について)〈柴田あみ,金子純也〉

概論

Case Report

考察

おわりに

17 外傷後水頭症・外傷後脊髄空洞〈吉藤和久〉

概論

Case Report

考察

おわりに

3章◆小児頭部外傷のトピックス

1-1 虐待による頭部外傷(abusive head trauma: AHT)〈朴 永銖〉

虐待による頭部外傷の歴史

本邦における乳幼児型急性硬膜下血腫,いわゆる“中村I型血腫”について

虐待による頭部外傷の特徴

虐待による頭部外傷と判断する上での注意点

治療

転帰

おわりに

1-2 児童虐待の臨床と疫学〈神薗淳司〉

概論―児童虐待の疫学

児童虐待防止法の改訂

児童虐待の定義

虐待診療における徹底的な鑑別診断

乳幼児のセンチネル外傷の認識とその重要性

顔面・口腔内・頸部の身体的損傷

骨折と児童虐待

全身骨X線検査(skeletal surveys)

臨床検査,特に血液凝固検査の徹底

頭蓋内出血児の凝固機能検査

その他の鑑別疾患

虐待診療における多機関による連携の重要性

おわりに

2 小児のスポーツ頭部外傷と脳振盪〈荻野雅宏〉

疫学

国際スポーツ脳振盪会議

Child SCAT5

現場における対応

医療機関における対応

経過観察

復帰は段階的に

頭蓋内病変がある場合の対応

おわりに

3 小児頭部外傷とリハビリテーション〈栗原まな〉

概論

Case Report

おわりに

4 小児頭部外傷の長期予後と医療ケア〈高橋義男〉

小児外傷性急性硬膜下血腫(infantile traumatic acute subdural hematoma: ITASDH)

の治療転帰,予後

中~重症小児頭部外傷の急性期治療の現実と新たな治療方針
―機能予後を改善する実践活動

脳梗塞様脳虚血所見を呈する他病態,疾患の超慢性期予後と地域展開の意味するもの

中~重症小児頭部外傷の超慢性期の否定的現実の中での地域展開
―重度障害への愛情のある持続的な対応は予後を変える

小児頭部外傷の背景と社会的問題―親のそして社会の養育能力と子どもの発達への影響

おわりに

5 小児頭部外傷の看護と家族対応〈福山操花〉

成長発達段階に応じた看護

虐待を考慮する重要性

脳損傷を受けた児への支援

愛する子どもの突然の受傷に動転する家族への対応

おわりに

6 小児頭部外傷の病診連携〈高山泰広〉

小児頭部外傷の救急医療体制の現状と小児頭部外傷の特徴から考える病診連携の困難さ

小児頭部外傷のガイドラインからみた病診連携の困難さ

小児頭部外傷の病診連携の現状について

小児頭部外傷急性期治療後のリハビリからみた病診連携について


終章〈荒木 尚〉


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書籍情報

  • ISBN:9784498145689
  • ページ数:268頁
  • 書籍発行日:2021年11月
  • 電子版発売日:2021年11月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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