心理学からひも解く認知症の症候学

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2021年11月
  • 電子版発売日 : 2021年11月17日
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商品情報

内容

認知症の症候×心理学

記憶障害,判断力の低下,帰宅願望,暴力や暴言,人物誤認など,認知症患者が示す不可解な行動や言動は多岐にわたる.こういった認知症患者によくみられる症候について,本書では心理学的視点を用いて解説した.認知症の症候の発現機序や心理機制はもちろんのこと,心理学用語への理解も深まる1冊である.

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序文

はじめに


認知症診療に従事していますと,患者さんが示す不可解な言動や行動にしばしば遭遇することがあります.たとえば,散歩に出かけた後で迷子になって帰宅できない患者さんがみられます.常識的に考えると,道順がわからなくなったら誰かに尋ねるとか交番や近くの店に駆け込んで助けを求めるはずですが,認知症患者さんはそのような行動をほとんど取らないのです.なぜ帰宅できるような手はずを考えないのでしょうか.また,買い物の際にわずかな支払いに対してどうしていつも一万円札を出して勘定をするのでしょうか.自宅にいるにもかかわらず自宅に帰ると訴えて荷物をまとめるのはなぜでしょうか.思いつくと不可解な言動や行動を示す患者さんは少なくありません.また,認知症でみられる症候,たとえば,約束ごとを忘れている,妻を妹と誤認する,訪問販売に騙されて不当な購入契約を結んでしまうのはなぜでしょうか.

本書は,そのような迷子や帰宅願望などの不可解な言動や行動あるいは記憶障害や人物誤認などの認知症でみられる症候が出現する機序を心理学の立場から解説をしたものです.書名に示すように心理学からひも解くとの立場で認知症の症候学についてまとめたものです.

本書の構成は,まず臨床現場で私たちが遭遇する代表的な経験事例を挙げ,不可解な言動や行動あるいは認知症でみられる症候がなぜ生じているのかを理解するために必要な心理学用語の解説を行っています.そして,その心理学用語を用いながら臨床現場でみられる不可解な言動や行動あるいは認知症でみられる症候の発現機序や心理機制の解説を行っています.最後にこれらの出現で困っているあるいは戸惑っている家族への対応や指導内容について簡潔に述べる構成になっています.

本書の肝は,心理学用語の理解とそれを利用した不可解な言動や行動あるいは認知症でみられる症候の発現機序や心理機制を理解することです.認知症患者さんが示す不可解な言動や行動あるいは症候のわけを知りたい医師や研修医,医学生,看護師,その他の医療・介護スタッフを読者対象としています.巻末に示しました参考書籍などを熟読した上で本書を執筆しておりますが,心理学について不佞の身であることから心理学用語の解釈などに誤謬があるかもしれません.その折にはご海容を賜れば幸いです.本書が認知症患者さんにみられる不可解な言動や行動あるいは症候を理解するための一助になれば,それは著者の望外の喜びとするところです.


2021年10月

川畑信也

目次

01 認知症でみられるもの忘れ(記憶障害)はなぜ生じるのか

[メモ]忘却のメカニズム

02 自分の経験した出来事や知識を忘れてしまうのはなぜか

03 同じ話を何回もするあるいは何回も聞いてくるのはなぜか

04 ちょっと前のことを覚えていないのはなぜか

05 患者が子育てをしていた時期(30年前)の話をいつもするが,どうしてなのか

06 記憶障害が高度に進展しているのに日常生活に大きな支障がないのはなぜか

07 明日の予定をいっておいたのに忘れてしまい別のことをしている,どうしていわれたことを実行できないのか

08 時間で決まっていることや頼んでおいたことを忘れてしまうので困っています

09 自分の生活歴を語るとき,事実と異なる話をしばしばするのはなぜか

[メモ]意味的プライミング効果

10 日常生活のなかで事実誤認の話をしばしばするのはなぜか

11 なぜ計算やお金の勘定ができなくなるのか

12 なぜ知識(意味記憶)を思い出せないのか

13 あるものをみたとき,それが何か,何に属しているのかがわからない

14 なぜ何時間も同じ行動(たとえば終日掃除をしている)をするのか

15 実際にはまだ行っていないのにもうそれは行ったというのはなぜか

[メモ]幼児期における偽りの記憶の形成に関する研究

16 自分勝手な言動や行動が多く周囲が振り回されている

17 患者が何を考えているのかわからない,自分自身の思いをいわないので困っている

18 家では何もしないのに介護施設で他人を助ける行動をするのはなぜか

19 デイサービスなどの介護施設で上手に適応できる人もいれば,そうでない人もいるのはなぜか

20 日常生活のなかでパニックになることがあるがなぜか

[メモ]エピソード記憶と自伝的記憶

21 日常生活のなかで発生するいろいろな問題を患者だけでは解決できなくなっている,どうしたらよいか

22 患者本人だけでは決められないことが多いのはなぜか

23 叱られたこと,嫌な思いをしたことだけはよく覚えているのはなぜか

24 我慢をすることができず気に入らないとすぐに怒り出す,自分の感情をコントロールできないのはなぜか

25 患者のためにいっているのに逆に反発されたり怒ったりするので困っている

[メモ]社会的促進と社会的抑制

26 自宅や介護施設で攻撃的な言動や暴言がみられるのはなぜか

27 もの盗られ妄想はなぜ生じるのか

28 妻(あるいは夫)が浮気をしていると疑うのはなぜか

[メモ]ナッジ(nudge)による判断や意思決定

29 性的逸脱行為はなぜ生じるのか

30 異食行動がみられるのはなぜか

[メモ]人が占いを信じる理由―心理学の立場から─

31 場所の感覚が混乱して迷子になったりするのはなぜか

[メモ]記憶の加齢変化

32 訪問販売や悪徳商法に簡単に騙されるのはなぜか

[メモ]シャーデンフロイデ

33 家族や親しい知人の顔や名前がわからない

34 相手が自分にとってどういう関係なのかがわからない

35 家族のいうことを患者が聞き入れてくれない.納得あるいは説得させる方法はあるのか

[メモ]組織や集団における勢力と地位

36 もの忘れに関して患者に病識がないのはなぜか

37 外面がよいなどの取り繕い反応はなぜ生じるのか

[メモ]さまざまな自己知識

38 相手によって患者が態度を変えるのが理解できない

39 自宅や施設でみられる帰宅願望はなぜ生じるのか

40 慣れたことを行う場合には支障がないのに新しいことを行うことができないのはなぜか

41 介護施設で他の利用者と上手に付き合えないのはなぜか

42 いつも悲観的な発言ばかりしているのはなぜか

43 心理学的視点から症候を説明できないこともある


参考文献

参考書籍

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784498229365
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2021年11月
  • 電子版発売日:2021年11月17日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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