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思春期,内科外来に迷い込む(先行予約)

  • ISBN : 9784498020986
  • ページ数 : 254頁
  • 書籍発行日 : 2022年1月
  • 電子版発売日 : 2022年1月12日
  • 判 : 四六判
  • 種別 : eBook版 → 詳細はこちら
  • ※ 1月19日 ダウンロード開始予定
販売価格 (ダウンロード販売)
¥3,080 (税込)
ポイント : 56 pt (2%)

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商品情報

内科で思春期、診てますか?

國松淳和先生と尾久守侑先生が,内科外来にやってくる思春期の子たちについて語りつくす.診療科の狭間に落ちやすい思春期の体調不良を救うのは誰か.そこに内科外来の重要性を見いだし,全医療者の新たな可能性をひらく.クロスしないトークの話題は思春期診療だけにとどまらず,内科と総合診療,何となくの感覚,自己愛,チーム医療などに及び,二人の臨床風景がありありと浮かぶよう.さらに註釈の重ね塗りによって,立ち止まることのない思考の進歩も垣間見える.

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■ 序文

Bienvenue en la médecine interne ambulatoire


この本は、「対談本」を作ろう!とかいう色気や思惑から企画がスタートしていない。これだけは初めに言っておこうと思った。

本をパラパラとめくる。対談本ではないか。そう言うかもしれない。それでもまずは聞いてほしい。

この本のインスピレーション源は『村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫、1998年)という本にある。「ああ、先生は村上春樹かぶれなのね」と思われただろうか。安心してほしい。私は村上春樹さんの作品を実は読んだことがない。

この本は尾久先生から紹介されたのだが、そのときの尾久先生の説明はこうだった。

「このふたりが一応対談という体で話してるんですけど、それぞれが意味不明なことを言っていて面白いなと。(対談本というのは)どっちかが聞き手/質問者だと、そっちを読んでる時間が退屈なんですよね。(この本は)シンクロしつつ、違う意味不明のことを言っているのがすごいと思います」

確認したところこのやりとりは2020年の8月のことだったが、当時この尾久先生のコメントを聞いて激しく膝を打ったのを覚えている。対談なのに通わせない感じ。クロスしないトーク。このとき打った膝の痛みが、この本の起点となった。

尾久先生が私に本を紹介してくれる直前、「コロナ禍に影響を受けた、思春期の子たちの体調不良」ということを彼としばらく話していた。思春期診療は、私たちにとってそもそも一大テーマだった。勤務ごと毎回、一例一例を外来終了後に振り返る私たちにとって、思春期の子たちが内科外来に何らかの不調を抱えてやってくることが少なくないことは、集計などしなくても明らかだった。あの子たちは、まずは普通の外来にやってくる。

この本は、この程度のことを初期衝動に立案された。思春期を扱うことと、クロスしないトークをする。このことだけふたりの間で決まり、まだその時点では中外医学社に持ち込むとは決めていなかった。ただ、「お互いが意味不明のことを言い合う」などというコンセプトを受け入れてくれる医学出版社などあるだろうか……と思って項垂れた。そこで頭に浮かんだのが、中外医学社だった。

今回の企画は、単に國松・尾久のトークを収録して文字化しただけ、ではないこと強調しておきたい。いつも強烈な示唆と刺激をくれるばかりか、昭和を彷彿とさせる「脚を使った」フットワークの軽さとあらゆる労を厭わない中外医学社企画部の桂さん、質・量ともに莫大な謎の教養を備え、テープ文字起こしが文字起こし業者よりも早いという謎の特技を持った同じく中外医学社企画部の上岡さん。この2人との共同作業によってこの本は作られた。また、妙な執筆・作業工程を踏む企画であり、編集もやりにくかったことだろうと思われる。同社編集部のおかげでとても読みやすく仕上がった。

最後に、言わなくていいことを述べて終わりにする。この本は、ふたりのトークが良好にクロスしてないということを売りにしている。もし読まれた方の中から、「何が言いたいかわからない」「噛み合っていない」という消極的な書評をいただいた場合、それはむしろこちらの意図通りということになるので、私たちは好意的に受け取ってしまう可能性があるため、その書評は意味がないかもしれない。レビュワー諸氏が、ネット等でレビューをする際にその点は事前にご留意いただきたい。

ただ、この本のふたりのトークは、本当に錯乱した事柄を言い合っているわけではなく、思春期診療や内科外来のことについて述べてはおり、読んでいるうちに最終的には脳の上のほうでフワッとシンクロしてくるはずである。そういう仕掛けにしてある。戸惑っている読者には、それがまさに「抽象理解」ってことだよ、と教えてあげたい。


医療法人社団永生会南多摩病院 國松 淳和




L'écho de leurs pensées


思春期のときどこかに迷い込んだかなと少し考えて、ぞっとしてしまう。本当にどこにも迷い込まない思春期をすごしていたのだ。親にも教師にも反抗せず、カラオケにもゲーセンにも立ち寄らず、女子校の文化祭に乗り込んで赤外線通信でメアドをゲットすることもなく、全国大会を目指して部活に汗を流し時に友人と喧嘩をするなどということもなく、ただひたすら井の頭線で自宅と教室を往復して、青チャートを解き続けていた。無遅刻無欠席無欠課、どこにも迷い込まなかった。

その裏で、毎日午前中お腹が張って痛かったし、朝ごはんを時に嘔吐していた。具合は別に良くなかった。それは今もなのだが、たぶん、なにかもう1、2歩の後押しがあれば、僕もどこだかの内科を受診していたのかもしれない。

どこにも迷い込まない、というのは、かえって異様である。いまの僕が17歳の僕を見たら、規範的ないい子すぎてどこかがおかしいに違いないと穿った目で見てしまいそうだ。17歳は、どこかに迷い込んだほうがいい。それはそれで別の規範になってしまいそうだけど、どこかに迷い込んでいるほうが、そのこと自体はちょっとした問題になっていたとしても、かえって全体のバランスがとれているように僕の目には映る。

17歳の僕はおそらくそのバランスを、おそらく空想に耽ったり、読書をしたり、詩を書いたりすることによって、傍目にはよくわからない形で保っていた。目に見える場所ではなく、現実から一歩降りた世界に迷い込んでいたのだ。後年、この世界はアイデンティティのひとつになったから、そう考えると、どこにどんなふうに迷い込んでいるかということが、思春期を診るときに、ひとつ大事なことなのかもしれないと今これを書きながら思った。

さて、本書は内科外来に迷い込んだ思春期、というのをひとつのテーマに、内科外来のあれやこれやを國松先生と話したことが収録されている。國松先生とは、僕が医者になった1日目に、国立国際医療研究センター病院の総合診療科のブースで初めて症例の振り返りをしたときから、この8年もの間、直接会って、あるいはチャットで、継続して対話をし続けている。

当然最初は対話ではなく100%指導を受ける側であったわけだが、僕が精神科に進んで後期研修を終え、國松先生が南多摩病院に移ったあたりから、徐々に本書のような内容について話す機会が増えていったような気がする。

面白いことに、症例を振り返りながらざっくばらんに話をしていると、お互いのアイディアが飛び交い、振り返っていた患者のカルテの内容と瞬間的な結びつきをして、新しい臨床に有用な思考や技法が爆誕する、ということがしょっちゅうある。それが現場で各々実践され、また別の患者を翌週振り返っているときに、そのお互いの実践の堆積と、その場で行われたディスカッションが、振り返っていた患者の内容と奇跡的に結びつき、さらに進化した思考・技法が爆誕する、ということが毎週起きている。

思春期診療についても同様で、ほぼ毎週振り返りでなにか新たな発見があるし、だから正直この対談で話したことと、今の我々が中心的に話している話題は少し違ったりもする。ただ、対談のあと、註をつけるまでにはけっこう時差があったので、そのあたりが本文の註で書いたように「動的な重ね塗り」になっていて面白いかもしれない。

内科外来は、思春期の不調が最初にやってくる可能性の高い場である。だから、この場で適切な方向に僅かでも介入できれば、あらゆる複雑で込み入った事情が前景化してとんでもなく大変なことになる前に、事態を収集できるということがしばしばある。対談ではいろいろな話をしたが、内科外来に取り組む先生に、なにかひとつ覚えて帰ってほしいことがあるとすれば、このことなのかなと思うのである。

中外医学社企画部の桂さん、上岡さん、南多摩病院の関先生、益子先生をはじめとする先生方、内科バックヤードのナースのみなさん、そして普段から関わってくれているそのほかの皆様と、患者さんたちに感謝します。


尾久守侑

■ 目次

Bienvenue en la médecine interne ambulatoire〈國松淳和〉

プロローグ 思春期診療の場は“不思議の国”ではないよ、という話

第1章 ケアを(必要とする、ひらかれるということが強調されるあまり、耳触りのいいふんわりした対処ばかりとなって実効的な何かが回避されるあまり実臨床との距離が)ひらく

第2章 「何となく」をつかむには個人の感覚という実像が大事だ

第3章 分裂、二元論、分ける分けない

第4章 医療者の自己愛

第5章 存在として患者と在る、そして診療も指導も空論はアウト

Le détourI

第6章 薬いろいろ談義

Le détourII

第7章 内科医として

L'écho de leurs pensées〈尾久守侑〉

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