融合3次元画像でみえる脳神経外科手術戦略

  • ページ数 : 242頁
  • 書籍発行日 : 2022年4月
  • 電子版発売日 : 2022年4月1日
9,680
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商品情報

内容

3DCGを使って脳外科手術のアプローチが自在にわかる!

雑誌『CLINICAL NEUROSCIENCE』に2017年4月から2021年3月まで掲載された連載が待望の書籍化! 融合3次元画像を使用した脳神経外科手術のアプローチが平易に学べる一冊です.48の症例を,実際の手術シミュレーションと術野の写真を用いてコンパクトに解説しています.「Topics」として解剖を中心とした関連事項の文献による考察も充実しています.

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序文

巻頭言


脳神経外科の手術の修得のためには,たくさんの手術を現場で見なさいと言われてきました.師匠の技を見て考えて覚えるという,昔の職人芸の伝達と通じるところがあります.確かに多くの手術を見ることで,やって良いこと,いけないこと,学会などで見聞きしただけでは表に出ない部分や,手術のペース配分など一定の常識が形成されたと思います.また手術を見ながら,見事な手術の場合にはそれを模倣しようとし,難渋した手術の場合にはどうすれば良いのかを自分の頭でも考える事自体に大きな意味があると思います.

しかし医療の世界は日々進歩し,医療安全文化も成長し続けていますので,現代の若手が手術を始める際には,もう少し効率よく学ぶことができないかと常々思っていました.脳神経外科の初期の方々が,術野を直接のぞき込んで手術を修得していた頃と比較すると,我々の世代では既にビデオが普及しており,術後にビデオを編集したり,カンファレンスでビデオを供覧したりすることで,昔に比べると効率よく手術を修得することが可能となっています.最近ではコンピューターや画像技術が進歩し続けていますので,これらを活用しながら,シミュレーションを用いた言葉による教育で現代版の知識の伝達が可能となりました.

20世紀の末頃から3次元プリンターが普及し始め実体モデルが作られるようになりました.これを手術シミュレーションにも試してみましたが,出来上がったものを見て触れることはできても,変形したりする事ができず物足りなさを感じていました.必要な部分がもっと見えるように不要な部分を消したり,開頭範囲をいろいろと試したり,脳をリトラクトして変形したりする事を考えると,実体モデルよりもコンピューターの中で3次元を自由に扱えるようになった方がはるかに有用ではないかと漠然と考えておりました.保存場所に困らずに済むというメリットもあります.

2006年に東京大学の医療情報工学の小山博史教授からこのような画像ができましたと,とてもきれいな3次元融合画像の絵が1枚送られてきました.先述のコンピューターの中で自由に扱える脳立体モデルの開発にはこれが手がかりと考え,小山先生にご指導いただきながら当時大学院に入学したばかりの金太一先生に開発を担当してもらいました.当初は,カーナビ的な正確さよりも脳神経外科医が見て役に立つ地図を作成することを目標とし,サイエンスよりもアートを重視して,色使いなどにはとことん拘りました.その後,金先生は工学系研究科の先生方と連携を取りながら,さまざまなソフトウェア技術のtipsを開発し,3次元融合画像作成の技術を発展させました.

私どもの教室ではもう10年以上,難しい開頭手術についてはほぼ全ての症例で3次元融合画像を作成して術前検討に活用しており,その検討効果と教育効果を痛感しています.しかしながら3次元画像の作成には時間と手間がかかり,大学院生の研究目的で実施しているから何とか成り立っていたものの,多くの方々に御活用いただけるソフトの開発が待たれていました.また,顕微鏡手術の基本的手技であるtrans—sylvian approachをシミュレートするためには,前頭葉と側頭葉を分けることが必要ですが,当初はコンピューター上でこれができないことが大きな課題で,長らく解決の糸口がありませんでした.最近になってdeep learningなど機械学習の分野が急速に進歩し,これにより前頭葉と側頭葉を自動的に分けることが可能になりました.さまざまなtipsは特許も獲得し,AMEDの資金を得てソフトウェアも開発し,第2種の医療機器として販売されるに至りました.この方法の普及に関して,いよいよ機が熟したと考えています.

本書は,2017年4月から2021年3月まで48回に渡り,雑誌「CLINICAL NEUROSCIENCE」に連載した内容に見直しを加え,一部を修正し,一冊にまとめたものです.連載では毎回1つの疾患の手術を取り上げ,融合3次元画像を用いた手術シミュレーションと実際の術野の写真をご覧いただくようにしています.はじめに「症例提示」をして,「手術戦略のポイント」を記した後に,「融合3次元画像を用いた手術検討」で手術戦略を示し,最後に実際の「手術所見」を示しています.また,「Topics」として,解剖を中心とした関連事項の文献による考察を加えています.

本書が,脳神経外科診療に携わる実地臨床医家のみならず,学生,研修医,専門医試験受験者のお役に立つことを願っています.最後に,連載をサポートし,本社の刊行を実現してくださいました中外医学社編集部の皆さまに感謝の意を表します.


令和3年11月

齊藤延人
金 太一

目次

融合3次元画像の作り方

Chapter1 片側顔面けいれん

Topics 顔面神経の走行

Chapter2 三叉神経痛

Topics 三叉神経のREZ(root entry zone)について

Chapter3 中大脳動脈瘤

Topics Sylvius裂について

Chapter4 内頚動脈瘤

Chapter5 脳幹部海綿状血管奇形(1)

Topics 脳幹部海綿状血管奇形に合併するDVA

Chapter6 脳幹部海綿状血管奇形(2) 第四脳室底アプローチ

Topics 第四脳室底と脳幹の解剖

Chapter7 脳動静脈奇形(1)

Topics Diffuse type AVM

Chapter8 脳動静脈奇形(2) テント下

Chapter9 髄膜腫(小脳テント)

Topics 栄養動脈の画像所見

Chapter10 髄膜腫(前頭蓋底)

Chapter11 髄膜腫(蝶形骨縁)

Topics 中硬膜動脈と眼動脈の吻合

Chapter12 髄膜腫(anterior petrous type)

Topics 腫瘍癒着の画像所見

Chapter13 神経膠腫(anaplastic oligodendroglioma)

Topics 中心溝の解剖学的同定方法

Chapter14 軟膜動静脈瘻

Topics 軟膜動静脈瘻(pial arteriovenous fistula:pial AVF)

Chapter15 脊髄血管奇形

Topics 脊髄辺縁部動静脈瘻(perimedullary AVF)

Chapter16 頭蓋咽頭腫

Topics 手術アプローチを重視した頭蓋咽頭腫の分類

Chapter17 中枢性神経細胞腫

Topics 視床線条体静脈とdirect lateral veinとの関係

Chapter18 血管芽腫(延髄)

Topics 後頭静脈洞について

Chapter19 血管芽腫(小脳)

Topics 血管芽腫の囊胞について

Chapter20 松果体部腫瘍(混合性胚細胞腫瘍)

Topics 松果体囊胞

Chapter21 聴神経腫瘍

Topics 聴神経腫瘍における脳神経の画像診断

Chapter22 三叉神経鞘腫

Topics Meckel腔の解剖

Chapter23 脊索腫

Topics 脊索腫の発症様式

Chapter24 Eagle症候群(過長茎状突起症)

Topics Eagle症候群(過長茎状突起症)

Chapter25 前交通動脈瘤

Topics 脳動脈瘤の発生と血管形状との関連性

Chapter26 末梢性前大脳動脈瘤

Topics 架橋静脈

Chapter27 後大脳動脈瘤

Topics 後大脳動脈瘤

Chapter28 椎骨動脈瘤

Topics 大後頭孔外側縁の骨構造と舌下神経について

Chapter29 傍矢状洞髄膜腫

Topics 上矢状静脈洞と腫瘍との関係

Chapter30 三叉神経痛(困難症例)

Topics 椎骨動脈のdolichoectasia

Chapter31 大孔部髄膜腫

Topics 大孔部髄膜腫の部位別分類と周囲の静脈について

Chapter32 眼窩内腫瘍(神経鞘腫)

Topics 眼窩内解剖構造のサイズ

Chapter33 前床突起髄膜腫

Topics 前床突起髄膜腫の分類と手術リスクファクター

Chapter34 中頭蓋窩髄膜腫

Topics 蝶形頭頂静脈洞(sphenoparietal sinus)

Chapter35 上衣下腫

Topics 仮想変形について

Chapter36 海綿状血管奇形(中脳)

Topics 中脳背側部病変におけるsafe entry zone

Chapter37 島回グリオーマ

Topics Long insular artery

Chapter38 脊髄血管芽腫

Topics 脊髄血管芽腫の画像上の予後不良因子

Chapter39 類上皮腫

Topics 類上皮腫のMRI所見

Chapter40 先天性水頭症

Topics レジストレーションのコツ

Chapter41 前頭蓋窩硬膜動静脈瘻

Topics 前頭蓋窩硬膜動静脈瘻の血管

Chapter42 頭蓋頚椎移行部動静脈瘻

Topics 頭蓋頚椎移行部の静脈

Chapter43 下垂体腺腫

Topics 蝶形骨洞の解剖

Chapter44 大脳鎌髄膜腫

Topics 画像診断における髄膜腫の硬さ推定

Chapter45 円蓋部髄膜腫

Topics 髄膜腫の癒着の画像所見

Chapter46 中間帆腔による中脳水道狭窄

Topics 中間帆腔

Chapter47 錐体斜台部髄膜腫

Topics 滑車神経の画像診断

Chapter48 中大脳動脈巨大蛇行状動脈瘤

Topics 巨大脳動脈瘤の血栓の画像診断

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書籍情報

  • ISBN:9784498328846
  • ページ数:242頁
  • 書籍発行日:2022年4月
  • 電子版発売日:2022年4月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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