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栄養科学イラストレイテッド 臨床栄養学実習 実践に役立つ技術と工夫

  • ページ数 : 231頁
  • 書籍発行日 : 2022年11月
  • 電子版発売日 : 2022年11月25日
3,190
(税込)
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商品情報

内容

臨床栄養学の知識を「生きた」ものにする実習書!臨床経験豊富な執筆陣が,現場の技術や工夫を交えてわかりやすく解説.章ごとの実習課題で確実に実践力が培われます.多職種連携などもカバー,臨地実習に対応可能.

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序文

監修の序


管理栄養士の専門領域となる保健・医療・福祉分野は,近年,著しく進歩している.一方,対象者の健康状態,病態,さらに生活や環境は複雑で多様化し,それに対応する管理栄養士に求められる知識や技術は,今までに経験したことがないほど高度になりつつある.臨床栄養管理では,栄養状態の評価,判定,栄養ケア計画,栄養教育や食事・栄養補給の実施,さらにモニタリングや再介入の方法を習得することは必須である.それと同時に,傷病者が個々にもつ遺伝的素因,病態,生活,人生観や価値観などを総合的に評価,判定する能力も必要になる.

管理栄養士の役割と業務は,厨ちゅう房ぼうや事務所での献立作成,調理業務から,地域におけるハイリスク者,ベッドサイドでの傷病者,高齢者,障害者などの栄養状態の維持,改善,回復を目的とした臨床栄養管理へと変化しつつある.このような業務の変化が,傷病者のQOLの上昇,外科療法や薬物療法の効果の向上,入院日数の短縮,医療費の抑制に貢献する.さらに近年,管理栄養士を特定集中治療室(ICU)に配置することにより,絶食から経腸・経口栄養を開始する期間が短縮され,輸液使用料,抗菌薬使用料が減少することが明らかになってきた.管理栄養士には,さらに高度な臨床の知識や技術を習得することが求められている.

ところで,医療関係者の職業倫理に,“not tell a lie”という項目がある.嘘をつかないということであるが,この意味は単に正直であるということだけではない.科学的に嘘をつかない,つまり科学的根拠に基づいて業務を遂行する意味が含まれている.科学は日々進歩し,変化することに価値があるために,根拠に基づいて仕事をするためには常に学び続ける必要があり,このため臨床栄養における臨地実習には,重要な意味がある.

例えば,最近の進歩には経腸・静脈栄養補給法の適正な選択,特別用途食品の活用,咀そ嚼しゃく嚥えん下げ 困難者への特殊食品の利用や栄養指導,臨床栄養疫学の活用,栄養素に対する内分泌系・神経系の調整機能の進歩など,一人の患者を目の前にして考慮すべき事項は,多様で複雑になりつつある.

未来の優秀な管理栄養士を育てるためには,臨床現場と教育機関が連携,協働して臨地実習を進めることが重要であり,この本がそのために活用されることを願っている.


2022年10月

神奈川県立保健福祉大学学長
中村丁次




このたび,臨床栄養学実習書を上市することとなりました.臨床栄養学は,疾病者の栄養管理方法を学ぶことに視点が置かれています.この100年で日本人の寿命は約2倍に延びました.健やかな人生を過ごすために,食事や運動といった日々の生活習慣に留意することで生活習慣病のリスクが低下します.しかし,現実では生活習慣病に関連した疾病も多く,重症化予防に関する知識や技能も必要です.

管理栄養士・栄養士は,「栄養の指導」を行うことで健康の維持・増進や疾病の予防・治療・重症化予防,介護予防・虚弱支援などを担う医療職です.つまり,臨床栄養学に関連する専門的な知識や技能が必要とされます.特別の栄養管理が必要な特定給食施設では,管理栄養士の配置が健康増進法により定められています.

さらに,疾病者の栄養管理については,診療報酬の変遷からもわかるようにその重要性がますます認識され,さまざまな医療職種に浸透してきています.これからの管理栄養士・栄養士は,保健・医療・福祉の専門職と連携して,対象者に適切な栄養管理ができる能力を身につけることが必要です.

最近では,リハビリテーション分野で活躍する理学療法士や作業療法士の養成カリキュラムに栄養学が入りましたので,この分野では今まで以上に栄養管理が進展することが期待されます.日本老年歯科医学会でも『「歯科医師と管理栄養士が一緒に仕事をするために」学会の立場表明』(2018年)を行い,お互いに専門分野の理解を深め,多職種連携の有効性を高めようとしています.口腔健康管理の不良や口腔機能低下による栄養状態悪化予防のために,ますます管理栄養士・栄養士は必要とされるでしょう.

臨床栄養学で扱う疾患は幅広く,各疾患の治療指針やガイドラインは新たな知見を盛り込みながら改訂がなされており,本書においては,出版時点で必要と考えられる最新の内容を盛り込みました.本書は,学生の臨床栄養学の実践力がつくように,臨床栄養学の知識の確認を行った後,その内容の関連実習を記載しています.また,執筆者も,病院に勤務する管理栄養士をはじめ,医師,歯科医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などの医療職に参画していただき,臨床現場からみた実践に必要な栄養管理について身につくように構成されています.そのため,臨地実習にも十分に対応できる内容になっていると思っています.

本シリーズの特徴である,イラストレイテッド(illustrated)は図解入りの教科書ですので,各所でのイメージがしやすく理解が進むように工夫されています. 末筆ながら,本書の出版に際して,羊土社編集部の田頭みなみ氏,中川由香氏はじめ,関係者の方々の多大なるご協力のおかげで出版できましたことを深く感謝いたします.


2022年10月

執筆者を代表して
栢下 淳

目次

監修の序[中村丁次]

序[栢下 淳]

序章 これからの栄養士・管理栄養士の皆さんへ[中村丁次]

1 栄養は健康と幸せの基盤になる

2 SDGsと栄養

第1章 診療報酬,電子カルテ

1 診療報酬[栢下淳子,坂東紀久子]

A 診療報酬とは

B 診療報酬の流れ

2 医療保険制度,介護保険制度[引野義之]

A 医療・介護保険制度と診療・介護報酬

B 管理栄養士・栄養士の業務にかかわる診療報酬

C 管理栄養士・栄養士の業務にかかわる介護報酬

Advanced 栄養食事指導料の変遷

3 診療報酬改定[栢下淳子,坂東紀久子]

A 大規模な改定

B 小規模な改定

C 改定が行われる理由

4 電子カルテ[栢下淳子,坂東紀久子]

A 電子カルテとは

B 各部門のシステム

C 医事システムとの連携

実習課題

1 診療明細書を見て支払い額を確認する[栢下淳子,坂東紀久子]

2 診療報酬・介護報酬の算定要件を調べる[引野義之]

第2章 病院食[丹生希代美,堀 小百合]

1 病院での栄養管理業務

A 臨床栄養管理と給食管理

B 給食管理の意義

C 病院食の役割

2 システムを活用した食事提供

A 電子カルテと給食システムの連携と食事提供

B 病院食の指示となる食札

3 調理作業効率を考えた献立作成と展開食

A 展開食

B 糖尿病交換表を使った食品構成と献立作成

C 献立作成に必要な食品の特性と重量

Column 食礼表示の工夫例

Column 塩分濃度の計算にチャレンジ!

Advanced 大量調理のポイント

実習課題

1 付箋を使って1週間分の献立を作成する

第3章 栄養補給法

1 経腸栄養法(経管栄養法)[山 智成,栢下 淳]

A 栄養補給法の種類

B 経腸栄養剤の種類

C 投与時の留意点

D 経腸栄養法(経管栄養法)でのトラブル

2 静脈栄養法[中屋 豊]

A 末梢静脈栄養法(PPN)

B 中心静脈栄養法(完全静脈栄養法)(TPN)

C 輸液管理の注意点

Advanced 輸液内にどのくらい塩分が含まれているかを知る

3 経口摂取法:食形態[山 智成,栢下 淳]

A とろみ

B 食事

C 嚥下調整食の留意点

Advanced 刻み食は嚥下調整食なのか?

実習課題

1 輸液による各栄養素の投与量を計算する[中屋 豊]

2 とろみ付けを行い,とろみを分類する[山 智成,栢下 淳]

3 市販食品を学会分類に従って分類する[山 智成,栢下 淳]

4 嚥下調整食をつくり,学会分類に従って分類する[山 智成,栢下 淳]

第4章 栄養ケア・マネジメント,栄養アセスメント

1 栄養ケア・マネジメント[山内有信]

A 栄養ケア・マネジメントとは

B 栄養ケア・マネジメントとPDCAサイクル

C 栄養ケアプロセス

2 栄養アセスメント[山内有信]

A 栄養アセスメントとは

B 栄養アセスメントのための情報収集区分

3 モニタリングと評価[山内有信]

A モニタリング

B 評価・検証(リ・アセスメント)

4 栄養アセスメントに役立つツール[栢下淳子,坂東紀久子]

A OHAT

B バイタルサイン

Advanced パルスオキシメーターによる呼吸状態のチェック

実習課題

1 栄養ケアプログラムを作成する[山内有信]

2 栄養スクリーニングと栄養診断を行う[山内有信]

3 体格からの栄養アセスメントを行う[山内有信]

4 エネルギー消費量を推定する[山内有信]

5 栄養モニタリングと評価を行う[山内有信]

6 OHAT日本語版を用いて評価する[栢下淳子,坂東紀久子]

7 アネロイド式血圧計を用いて血圧測定し,コロトコフ音を確認する[栢下淳子,坂東紀久子]

8 パルスオキシメーターを用いて経皮的酸素飽和度と脈拍数を測定する[栢下淳子,坂東紀久子]

第5章 疾患別の栄養管理の栄養ケア

1 内分泌・代謝疾患

A 肥満症[安原みずほ]

B 糖尿病,糖尿病腎症(糖尿病性腎症)[安原みずほ]

C 高尿酸血症,痛風[栄原純子]

D 甲状腺機能低下症・亢進症[栄原純子]

2 腎疾患[坂井敦子]

A 急性腎障害

B 慢性腎臓病(CKD)ステージ1〜5

C CKDステージ5D:透析期

Advanced 急性腎不全から急性腎障害へ

Advanced ネフローゼ症候群

Advanced 新しい概念,糖尿病性腎臓病

Advanced CKDと植物性食品

3 循環器疾患[中屋 豊]

A 高血圧

B 脂質異常症

C 虚血性心疾患

D 心不全

E 脳血管疾患(脳卒中)

4 呼吸器疾患

A 慢性閉塞性肺疾患(COPD)[澤 幸子]

B 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)[眞次康弘,伊藤圭子]

Advanced 使い捨て食器(ディスポ食器)使用[眞次康弘,伊藤圭子]

Advanced 栄養指導と感染対策[眞次康弘,伊藤圭子]

5 肝臓・胆嚢・膵臓疾患[奥村仙示]

A 肝炎(急性・慢性)

B 肝硬変,肝不全

C 脂肪肝,NAFLD,NASH

D 胆石症

E 膵炎(急性・ 慢性)

Advanced 肝硬変患者とどう向きあうか?

6 消化器疾患[北岡陸男]

A 消化性潰瘍

B 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎,クローン病

C 下痢,便秘

7 摂食嚥下障害[栢下 淳]

A 摂食嚥下障害(高齢者)

Advanced 多様な市販介護食

8 周術期・緩和ケア[園井みか]

A 周術期(術前,術後)

B 消化管術後

C 臓器移植後

D 緩和ケア

Advanced 周術期においては患者さんも管理栄養士もチームメイト

9 老年症候群[西岡心大]

A サルコペニア,フレイル

B 低栄養

C 褥瘡

Advanced 低栄養を「診断」するためのGLIM基準

10 小児疾患[小倉有子]

A 乳幼児の下痢・嘔吐

B 小児肥満

C 食物アレルギー

11 妊産婦[吉積映里]

A 妊娠中・後

B 妊娠糖尿病

C 貧血

12 神経系・精神疾患[清水昭雄]

A 摂食障害(神経性やせ症,神経性大食症)

B 認知症

13 がん[中屋 豊]

A 疾患の特徴:管理栄養士が知るべき各種がんの特徴

B 栄養評価

C 栄養ケア

実習課題

1 糖尿病患者への食事の聞き取り調査から栄養量を算出し,問題点に対して栄養指導を行う[安原みずほ]

2 糖尿病でもおいしい食事が楽しめる献立をつくり,調理する[安原みずほ]

3 高尿酸血症患者の食事記録から栄養量を算出し,指導内容を考える[栄原純子]

4 塩分閾値を知る[坂井敦子]

5 汁物の塩分を測定する[坂井敦子]

6 CKD患者用に,低たんぱく質でエネルギーが補給できる補食やおやつをつくる[坂井敦子]

7 スパイロメーターを用いて呼吸機能測定を行う[澤 幸子]

8 COPDの栄養評価に有用な安静時代謝量を測定する[澤 幸子]

9 肝硬変患者の献立を作成する[奥村仙示]

10 身近な食品のアルコール量,脂質量を計算する[奥村仙示]

11 成分栄養剤の調製と経腸栄養剤の官能評価を行う[北岡陸男]

12 嚥下調整食を作成する[栢下 淳]

13 嚥下調整食(おやつ)を作成する[栢下 淳]

14 とろみの段階を視覚で確認する[栢下 淳]

15 咀嚼機能を評価する[栢下 淳]

16 胃切除術患者の分割食を作成する[園井みか]

17 低栄養患者に対する少量高エネルギー食の献立をつくり,調理する[西岡心大]

18 下痢・嘔吐症状の乳幼児の対応について,手順をシミュレーションする[小倉有子]

19 原発性肥満児への対応について ,手順をシミュレーションする[小倉有子]

20 コンビニエンスストアの商品を利用して妊娠糖尿病の献立を考える[吉積映里]

21 食器,食事環境による食事の見え方を知る[清水昭雄]

22 食事介助を体験する[清水昭雄]

23 がん患者の栄養評価をPatient-Generated SGAを用いて評価する[中屋 豊]

24 化学療法の副作用に関するリーフレットを作成する[中屋 豊]

第6章 発展編

1 地域包括ケアシステム[影山典子,岡 光孝]

A 地域包括ケアシステムとは

B 実際の取り組みについて

2 福祉・介護と在宅栄養[徳澤陽子]

A 福祉・介護の栄養管理

B 在宅ケアと多職種連携

C 訪問栄養指導

Advanced 訪問管理栄養士のこぼれ話

3 チーム医療・多職種による栄養管理の実際

A 医師の役割[三原千惠]

B 歯科医師の役割[早乙女裕彦]

C 理学療法士(PT)の役割[金井秀作]

D 作業療法士(OT)の役割[助金 淳]

E 言語聴覚士(ST)の役割[永見慎輔]

F 看護師の役割[藤田昌子]

G 管理栄養士の役割[谷 律子]

H 栄養サポートチーム(NST)[谷 律子]

I クリニカルパス[和泉靖子]

J リスクマネジメント[栢下淳子,坂東紀久子]

Advanced 管理栄養士に求められるコミュニケーション能力と専門性[谷 律子]

Advanced クリニカルパスにおける食事オーダーの落とし穴[和泉靖子]

4 栄養補助食品[和泉靖子,栢下 淳]

A 糖尿病

B 腎臓病

C 摂食嚥下障害

D 低栄養

5 プレゼンテーションの方法[森本尚子]

A テーマの情報収集・分析

B 全体の構成内容・展開

C 話し方・動作のコツ

D 実際の発表

実習課題

1 地域の高齢者に栄養改善を提案する[影山典子,岡 光孝]

2 高齢糖尿病患者の訪問栄養指導の栄養ケア計画を作成する[徳澤陽子]

3 市販栄養補助食品について調べる[和泉靖子,栢下 淳]

巻末付録1 臨床で役立つデータ集[棚町祥子]

付録A 臨床検査基準範囲一覧

付録B 用語集(略語一覧表)

巻末付録2 実践で役立つ知識集

付録A 臨地実習に備えて[栢下淳子,坂東紀久子]

付録B 「日本人の食事摂取基準」活用のポイント[山縣誉志江]

付録C 事業所給食にみるフードコーディネート法[前田 翼]

付録D HACCPを踏まえた病院の衛生管理[森本尚子]

付録E 食中毒発生時および災害発生時に備えた対応について[島田郁子]

付録F 栄養指導媒体について[栢下淳子,坂東紀久子]

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書籍情報

  • ISBN:9784758113717
  • ページ数:231頁
  • 書籍発行日:2022年11月
  • 電子版発売日:2022年11月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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