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薬局 2024年1月 Vol.75 No.1 基礎薬学とエビデンスからおくすり比べてみました

  • ページ数 : 130頁
  • 書籍発行日 : 2024年1月
  • 電子版発売日 : 2023年12月13日
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商品情報

内容

医薬品には同じ効果だけれども特徴が異なるものがあり,患者の状態・状況に合わせた使い分けが重要です.薬剤師は「なぜA薬ではなくB薬を使っているの?」「効果にどれくらいの差があるの?」などを考えながら薬剤業務を実践することが求められます.加えて,疑義照会などで各薬剤の特徴を簡潔に提示するスキルも必要です.そこで本特集では,同種・同効薬の特徴を基礎薬学と臨床エビデンスの2つの視点から比較して解説しました.本特集を通し,化学構造や薬物動態学などの薬剤の特徴の違い・有効性の違いを学びましょう.

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序文

特集にあたって

科学の方法は,大胆な推測とそれを反駁しようとする巧妙で厳しい試みの方法である(文献1)


哲学者,カール・ライムント・ポパー(1902〜1994年)の言葉です.化学や生物学といった薬学の基礎をなす学問,あるいは薬理学や薬物動態学といった学問体系は,薬剤の治療効果に関する「大胆な推測」のよりどころになるものでしょう.物理法則が物体の運動現象を説明するように,科学の本質が人の解釈に依存しないということならば,基礎薬学的な理論から治療効果を推測することは,きわめて科学的な営みといえるかもしれません.

しかし,ポパーによれば理論から導き出された推測はあくまでも仮説であり,不変の真理ではありません.推測を反駁(はんばく:論じ返すことの意)しようとする試みの方法こそが科学の本質というわけです.いわゆるエビデンスとよばれるような臨床研究は,理論から導き出された推測に対する反駁の方法論です.重要なことは,臨床研究の結果と理論的な推測の結果は,必ずしも一致するわけではないということです.常識と謳われていた理論を覆した歴史的な研究については,「えびさんぽ」にまとめました.本特集と対比しながら読んでいただけると,より多くの示唆が得られるように思います.

ところで,臨床研究の結果は統計学的な観点から,集団の平均として薬剤効果を描き出します.基礎薬学的な理論との一貫性はともかく,平均は現実の日常生活には実在しないものです.少し考えてみてください.身の回りに平均とまったく同じ何かが存在するでしょうか?薬剤の効果は,患者の生活環境に含まれるさまざまな変数(予後因子)の影響を受け,その発現の仕方は千差万別です.ある人にはよく効いた薬剤も,ほかの誰かには無効かもしれません.その意味でも,薬の効果に関する不変の理論(theory)は存在しません.しかし,理論はなくとも薬剤の効果を語る論理(logic)は存在するはずです.経営学者の楠木 健氏は『ストーリーとしての競争戦略』という本のなかで,「論理とは,『無意味』と『嘘』の間にあるものとして理解できます」と述べています(文献2).

「この薬は●●受容体に作用して▲▲を促すことで,××させる作用があります」と語ることが,患者にとっていかに無意味であることは想像に容易いでしょう.また,「この薬はむくみに効果があります」と語ることは嘘に近いかもしれません.薬剤を飲んでも,むくみが改善しなかった人は存在するでしょうし,「むくみ」を曖昧に定義すれば,薬剤が効いたか効いていないかなんて,結局のところ誰にもわからないのですから.薬剤効果に物理学のような法則がない以上,「この薬を飲めばこうなる」ということはありません.

楠木氏の論じる論理とは,法則ではないが自明でもない,あらためて考えてみるべき思考の構えにほかなりません.本特集では,基礎薬学的な理論によって薬剤の特徴を大胆に比較したうえで,臨床研究の結果に基づく薬剤効果の統計学的な比較を試みました.多様な観点から薬剤を比較した本特集が,薬剤の効果を表現するための論理となりましたら幸いです.


引用文献

(文献1)カール・R・ポパー:客観的知識,p94,木鐸社,2004.

(文献2)楠木 建:ストーリーとしての競争戦略─優れた戦略の条件,p6,東洋経済新報社,2010.


中野病院 薬局
青島 周一

目次

特集 基礎薬学とエビデンスからおくすり比べてみました

特集にあたって(青島 周一)

・SGLT2阻害薬 ─糖尿病治療薬として(安島 秀友/青島 周一)

・尿酸降下薬(三星 知/青島 周一)

・直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)(門村 将太/青島 周一)

・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)(小原 拓/青島 周一)

・HMG-CoA還元酵素阻害薬(大島 新司/青島 周一)

・第二世代抗ヒスタミン薬(武田 達明 ほか/青島 周一)

・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)(宮崎 雅之/青島 周一)

・プロトンポンプ阻害薬(PPI)(村阪 敏規/青島 周一)

・下剤 ─ルビプロストン,エロビキシバット,リナクロチドを中心に(百 賢二 ほか/青島 周一)

・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(桑原 秀徳 ほか/青島 周一)

・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(児島 悠史/青島 周一)

・JAK阻害薬 ─関節リウマチ治療薬として(小林 俊介 ほか/青島 周一)

シリーズ

えびさんぽ

基礎研究の結果と臨床研究の結果に違いはありますか?

(青島 周一)

ぐっとよくなる! 漢方処方快訣ビフォーアフター

〈第1回〉かぜ症状に対する漢方の使い分け

かぜには葛根湯,…のみにあらず

(津田 篤太郎)

飲み合わせ研究所 子どもの服薬Tips

〈第13回〉アスベリン ®散10%

(小嶋  純,米子 真記)

医薬品適正使用・育薬フラッシュニュース

・OTCかぜ薬の長期服用による間質性肺疾患

・ループ利尿薬中止後のカリウム補給薬の漫然処方

(佐藤 宏樹,澤田 康文)

Gebaita?! 薬剤師の語ログ 108

〈第25回〉伝える? 伝わる?

〜薬剤師のたたかいかたとは?〜

(大森 智史)

薬剤師力の型 新たな思考と行動プランを手に入れろ!

〈弐拾伍ノ型〉薬物動態を活用せよ! 多剤併用化学療法による副作用の考え方

(菅野 雄太)

現場で働く薬剤師のための 臨床薬学研究のオモテ・ウラ

〈第25回〉社会人大学院のオモテ・ウラ

(大井 一弥)

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書籍情報

  • ISBN:9784525940003
  • ページ数:130頁
  • 書籍発行日:2024年1月
  • 電子版発売日:2023年12月13日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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