救急画像診断のキホンⅠ

救急診療や病棟急変時の対応で「画像診断」が有用なことに異論はないと思います．画像の確認は，確定診断や重症度の評価に役立ちます．患者さんへの説明時に提示すれば，病態の理解を深める効果も期待できます．

前回の画像診断の特集から，約13年が経過しました．その間に，CTやMRIは解像度が増して詳細な診断が可能になりました．しかし，一番大きな変化は，超音波診断の普及ではないでしょうか．とくにベッドサイドでスクリーニング的に診断を行うpoint-of-care ultrasound（POCUS）の進歩がめざましいと感じます．従来の超音波検査といえば，大型の装置を検査室に据え付け，移動してきた患者さんの特定の部位に対して時間をかけて詳細に検査するというものでした．POCUSではこの発想を転換し，時間をかけずに全身をサッとスキャンするという趣旨です．視打聴診と同じ感覚です．30年以上前に「超音波装置を白衣のポケットに入れて回診できたらいいのに」という冗談4 4がありましたが，昨今はそれが現実のものとなりました．

これらを踏まえ，今回は全面改訂版を企画しました．項目名が同じでも，技術の進歩や知見の集積に応じて内容を刷新しています．記載は，従来のシリーズと同じように「研修医からの質問」という形式です．各項目の中にポイントとなる数テーマを設け，一問一答という簡潔な形でまとめてあるので，短時間で知りたい点を把握することが可能です．内容は，書名の通り，研修医や若手医師が読んで理解できるレベルを目指していますが，看護師などの医療スタッフや医学生などにも十分参考になると考えます．

日々の臨床に，系統立てた勉強に，院内講習会の参考資料にと，幅広く役立てて頂きたいと思います．

大塚将秀横浜市立大学附属市民総合医療センター 集中治療部
松田直之名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野