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大麻の新常識 ―大麻では死なない、大麻に身体依存はない、でも……―

松本 俊彦 (監修) / 新見 正則 (ファシリテーター) / 新興医学出版社

  • ページ数 : 140頁
  • 書籍発行日 : 2024年5月
  • 電子版発売日 : 2024年5月8日
¥2,530(税込)
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商品情報

内容

渦巻く利権、あらゆる違和感、都合のよい事実を、専門家が斬る!

医師・元官僚・科学者・弁護士・元麻取・起業家など、
さまざまな立場で大麻に携わる専門家が、それぞれの大麻の真実を対談で語る。
大麻を推進するものでも、反対するものでもなく、研究で判明している事実のほか、
利権や違和感の正体について読者が自分で考え自分で判断するための材料を提供する。
75年ぶりの大麻取締法改正は何をもたらすのか。変わりゆく時代をキャッチアップする、必携の新常識。

序文

はじめに


私は薬物依存症を専門とする精神科医です。精神科医31年目、薬物依存症臨床にかかわってから27年目になります。まちがいなく医者のなかでは、最も多くの大麻使用患者さんと会ってきた者の1人です。しかし、それにもかかわらず、大麻の有害性について、ずっとモヤモヤした気持ちを抱いてきました。安全か否かではなく、酒やたばこと比べてどうなのか、です。

理由は簡単です。外来で出会う大麻患者さんたちが、他の薬物─覚せい剤はもちろん、処方薬や市販薬も─の患者さんとは異なり、普通の方ばかりだったからです。多くは20年以上、それこそたばこ感覚で毎日大麻を使用してきたにもかかわらず、少なくとも逮捕されるまでは仕事は順調、家庭も円満で、大麻使用に起因する弊害といえば、その薬理学的影響ではなく「逮捕」という社会的制度だったわけです。

私は不満でした。知覚変容や幻覚・妄想、はたまた無動機症候群といった、教科書に記載されている症状が見当たらないのは変だ。たとえこうした症状が顕在化してなくとも、脳にはそれなりのダメージがあるはずだ……。諦めの悪い私は、何とか大麻使用による脳障害を炙り出そうと、頭磁気共鳴画像検査や脳波検査、各種心理検査と、あれこれ検査を試みましたが、結局、苦々しい敗北感に打ちひしがれたものでした。稀には、頑固な精神病症状を呈する大麻使用患者さんに遭遇することもありましたが、よくよく話を聞いてみると、大麻使用以前から精神障害に罹患している方ばかりでした。

モヤモヤが最高潮に達したのは、2011 ~ 2014年に世間を席捲した、危険ドラッグ乱用禍のときでした。その契機はいまでもよく覚えています。2009~ 2010年頃、有名大学に在籍する大学生が大麻で逮捕される事件が相次ぎ、大麻に対する風当たりが強くなったのです。すると、海外留学経験のある若者を中心に、「逮捕されない大麻類似物質」を求める動きが出てきて、それがブームのきっかけとなりました。そして、皮肉にも大麻取締法違反による検挙者数は一時的に激減しました。

いま思えば、当時の危険ドラッグ対策は、いわば一種の壮大なる社会実験でした。というのも、国が規制を強化すればするほど、新たな脱法的薬物は必ず有害性・危険性を増していったからです。そして、2度の包括的な規制を行った後、各地で中毒死や交通事故が多発するようになりました。

いまでも私は、危険ドラッグ乱用禍の終焉は規制強化によるものではない、と考えています。診察室から見えた風景は、むしろ使用者側の方から、「こんなヤバい薬を使うくらいなら大麻の方がマシ」という事実に気がつき、危険ドラッグを捨てて大麻に戻っていった、というものです。彼らの見立てはまちがっていませんでした。実際、なかなか危険ドラッグがやめられず、始終騒ぎを起こしていた患者さんたちが、大麻再開後、生来の人柄を取り戻し、薬物に翻弄される生活を脱して、職場や家庭に復帰していったからです(ただし、2015年以降、大麻取締法検挙者数は増加に転じましたが……)。

衝撃的な体験でした。大麻に関して、医学部や卒後研修、精神医学の教科書から学んだことは、すべてまちがいかもしれない……。私は古い知識をいったんすべてリセットし、大麻という薬物と大麻政策について学び直しました。すると、患者さんの発言が理解できるようになったばかりか、大麻そのものよりも大麻政策の方が有害ではないか、と考えるようになったのです。

もちろん、こうした変化はあくまでも、私の主観的な体験にすぎません。というか、大麻に限らず、アルコールやたばこを含めたあらゆる嗜好品・薬物は、使用経験があるか否か、身近に感じているか否かによって、その人に見えてくる風景は大きく異なってきます。結局、いくら議論を尽くしても、最後はサイエンスではなく、ヒステリックに「好悪」を裁く感情論に堕してしまう、というのは、嗜好品規制論争のお約束といってよいでしょう。

それでも私としては、まずは関心を抱いてもらうことが大切だと考えています。本書の対談には、大麻推進派も慎重派も、ともに参戦してくださっています。まずは、多くの方に本書を読んでいただき、自分なりの「大麻政策のあり方」論を考える契機としていただければ、これに勝る喜びはありません。

末尾になりましたが、本書を企画し、対談のファシリテーターを担ってくださった新見正則先生、そして、企画を実現させてくださった新興医学出版社社長林峰子さん、編集部の田代幸子さんに心からの感謝を申し上げます。


2024年3月20日 春分の日に

松本俊彦

目次

はじめに  松本俊彦

1. 大麻をとりまく状況

1 大麻の基本知識

新見正則(外科医・免疫学者・漢方医)

2 大麻の歴史と文化概要

高安淳一(大麻博物館館長)×新見正則

3 政府による「骨太の方針」に記載された大麻

木下翔太郎(元内閣府官僚・精神科医)×新見正則

2. 知りたい、大麻のいろんな側面

1 大麻由来医薬品はどういう過程を経て、どんな人に使えることになったの?

太組一朗(脳神経外科医)×新見正則

2 合法化した地域で、大麻はどんな役割を担っているの?

正高佑志(脳神経内科医)×新見正則

3 大麻のわかっていない部分を、楽観視していいの?

田中伸一郎(精神科医・公認心理師)×新見正則

4 「生きづらさ」を抱える人たちの1つの選択肢として、大麻は役に立つの?

松本俊彦(精神科医)×新見正則

5 大麻は科学的に何がわかっていて、何がわからないの?

野崎千尋(薬理学研究者)×新見正則

6 大麻取締法はいま、そして今後はどうなるの?

菅原直美(弁護士)×新見正則

7 麻薬取締官は大麻のことをどう思って取り締まっているの?

廣畑 徹(元厚生労働省麻薬取締部捜査第一課長)×新見正則

8 大麻は日本にもグリーンラッシュをもたらすの?

持田騎一郎(薬事医療・機能性表示食品コンサルタント)×新見正則

あとがき  新見正則

コラム

大麻に対する厳罰主義は正しいのか

園田 寿

大麻由来医薬品を薬剤師が扱うとき

中山今日子

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書籍情報

  • ISBN:9784880029283
  • ページ数:140頁
  • 書籍発行日:2024年5月
  • 電子版発売日:2024年5月8日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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