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- クリティカルケア看護と看護倫理;日常の臨床場面における倫理的思考と実践
商品情報
内容
身体的・心理的危機状況にある患者とその家族をケアするクリティカルケア看護、その日常的な臨床場面・実践では、もやもや感が生じることが少なくありません。「クリティカル=危機的状況」であるからこそ、看護師だけではなく、多職種や患者・家族までもが抱えてしまう、「もやもや感」「倫理的ジレンマ」「倫理的苦悩」。
本書の23事例では,クリティカルケア看護における日常的な臨床場面と事例ごとのもやもやポイントを提示します。
もやもや感をもやもやしたままにせず、情報を整理し、多職種でのカンファレンスにつなぎ、分析を通して解決に導く看護実践までを,本書では可視化しています。
看護師のもつ 気づきと省察の力を 次の看護に生かす倫理的実践に迷ったときのヒントが詰まった1冊です。
序文
序文
2019年末から世界中で大流行した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により,クリティカルケア領域の看護師の皆さんは,今までと同じように患者とのコミュニケーションが取れない,家族との時間を提供できない,そして何よりも患者の最期の看取りを患者一人で迎えるという状況に,ケアとは何かというジレンマや,十分なケアができないという不全感を感じたことでしょう。
クリティカルとは,危機的状況を意味するといわれています。身体的・心理的危機状況にある患者と共にいる家族も危機状態にあることが考えられます。私たちは患者の身体状況の回復に尽力しながら,治療による効果をアセスメントします。場合によっては,医師と予後についての議論をすることもあるかもしれません。つまり,クリティカルケア領域の看護師は患者の回復をゴールにしつつも,患者の最悪な状況(予後不良,つまり看取り)に対する準備を行うことを求められているともいえます。この状況を「hope the recovery and prepare for the worth」と表現する人もいます。ここでのprepareは,患者の意思(意向)を知るということ/ 患者の人生を知り,患者の価値を理解するということ/ 家族とコミュニケーションをとり,患者の思いを推定すること,など深いかかわり(ケア)です。これはインフォームドコンセントに立ち合うことやインフォームドコンセント後の理解状況を把握することのように,患者や家族の情報を収集するというものではなく,向き合って話を聴くという状況から,徐々に横に座り(物理的なものではなく,横にいるような距離感である)同じ方向を向きながら,患者や家族が見ている景色(価値・希望)を共有すること,そして同じように悩み,一緒に考えることを意味し,これが寄り添うことだと私は考えています。
クリスティン・タナーの「臨床判断モデル」1)では,実践のプロセスを「気づき」「推論」「反応」「省察」と示しています。倫理的実践も同じであると考えます。私たちが,患者・家族,同職種,他職種の抱える「もやもや感」「倫理的ジレンマ」「倫理的苦悩」に気づき,起こっている事象の情報を整理し,多職種で協議し,倫理的課題や問題に対して多職種で解決策を実践していくこと,そして実践後は省察し,次の事例に活かしていくこと,このプロセスが私たちの倫理的実践力を向上させていきます。しかし,「気づく」ためには知識が必要です。また相手をよく知ろうという気持ちも必要です。情報の整理や推論,実践には先輩や同僚の支援が必要なときもあります。支援を受けましょう。もやもやした気持ちや引っかかったときには,同職種や他職種,そして何よりも患者・家族と語りましょう。
本書は,クリティカルケア領域で日常的に経験する事例に対して,倫理的な思考と実践をプロセス化しています。事例をただ経験するのではなく倫理的課題や問題に気づき,その気づきを基に情報を整理したうえで,私たちはアセスメントや多職種と協議をし,多職種チームとしてのゴール設定と方略を決めていきます。そして看護師として踏み込んで(実践)いくさまを,本書では記述しています。
最後に,臨床現場で「もやもや感」や「ジレンマ」,「苦悩」を抱える読者の皆さんに,編者からのメッセージがあります。プロセスを追う読者の皆さんには,事例の情景が目に浮かぶだろうと思っています。倫理的実践に迷ったときに,本書が皆さんのヒントになれば嬉しいです。
2024年5月
宇都宮 明美
1)Tanner CA:Thinking like a nurse : A research- based model of clinical judgement in nursing. J Nurs Educ.45(6):204-211,2006.
目次
Ⅰ章 総論
1 クリティカルケア看護と看護倫理
2 看護倫理に関する基礎知識
3 倫理的課題を調整するうえでの看護師の役割
4 クリティカルケア領域における倫理的課題
5 クリティカルケア領域における臨床倫理アプローチ
6 倫理的感受性を高める看護師教育
Ⅱ章 臨床場面での倫理的課題
患者・家族ケアにおける課題
テーマ1 代理意思決定支援
意思決定は誰が決めるものなの?
終末期に本人の意向がわからない場合は
家族の意向で治療方針を決めていいの?
患者よりも家族の意向を優先して治療方針が決定されていいの?
テーマ2 苦痛緩和
鎮静していれば,鎮痛はしなくてもいいの?
十分な疼痛緩和が図られないまま,鎮静薬を増やすことは
患者の回復につながるの?
テーマ3 インフォームドコンセント
医療者間の見解のズレで,情報提供が進まなくていいの?
同意書にサインをもらうことがインフォームドコンセントなの?
テーマ4 家族支援
理解力がない家族だと本当に判断していいの?
家族の意見が対立して決着がつかないときはどうしたらいいの?
テーマ5 終末期ケア
患者の事前指示がないなか,意思疎通が困難だからといって,
延命治療を望む家族の言うとおりにしていいの?
終末期になった患者の家族からの「人工呼吸器を外してほしい」
との希望に,どう対応すればいいの?
DNAR を選択した患者と家族に対しては
何もできない/しないってことなの?
テーマ6 機械的補助下にある患者
患者の価値・意向に基づく治療の選択が守られていない
患者の意思が確認できないなか,
救命の選択を家族からの発言のみで決めてもいいの?
看護師に関する課題
テーマ1 ケア達成感
患者にとって必要と考えるかかわりができないときに感じる
やり切れない気持ちは仕方がないことなの?
テーマ2 看護師の態度
医師の治療方針や家族への説明に違和感を抱くけれど
チーム医療に関する課題
テーマ1 医療チームとしての方針
患者のQOLと救命治療,どちらが大事?
一度,気管チューブの抜管に失敗してしまったら
再挿管後には気管切開しかないの?
テーマ2 他職種との連携
意思決定できる患者の思いを他職種と共有できていない
患者の希望に沿った転院調整はできないの?
組織に関する課題
テーマ1 組織管理
DNAR は誰が決めて,どのような行為を実施しないの?
テーマ2 安全確保
「人工呼吸器離脱困難だけど一般病棟へ退室して」と
簡単に言わないでほしい
テーマ3 守秘義務
「家族にはしばらく内緒にしておいてほしい」という
患者の思いにどう寄り添えばいいの?
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書籍情報
- ISBN:9784867190920
- ページ数:196頁
- 書籍発行日:2024年6月
- 電子版発売日:2024年6月25日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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