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- うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル セラピストガイド 改訂第2版
商品情報
内容
全部で15章からなり,ワークブックの各モジュールに合わせた使い方を解説しています.各セッションの進め方から実際のセラピーを想定した患者への説明の仕方など,セラピストが使いやすいように工夫されています.
序文
推薦の辞
本書は,認知行動療法のエッセンスを実践的な視点からまとめ注目を集めた“Unified Protocol for Transdiagnostic Treatment of Emotional Disorders: Therapist Guide”の改訂第2版である。本書の特徴は,個々の精神疾患ごとに分けて紹介されてきた認知行動療法のアプローチを,臨床現場で使いやすいように統合して紹介している点にある。本改訂第2版では,感情科学と神経症傾向の研究の進展を反映させて治療モデルをさらに洗練し,そのモデルに沿った概念化や心理教育について詳述するなど,より充実した内容になっている。
初版でも書いたように,本書のテーマである「診断を越えた統一治療」アプローチは,科学的な視点から積み重ねられてきた認知行動療法の効果に関する多くの研究の成果のエッセンスを,現場の臨床実践に活かす指針として提供しているという点で画期的なものであり,その一つひとつのアプローチが,モジュールとしてまとめられている。
精神疾患の分類を提唱する専門家は,2つのタイプに分けて考えられている。ひとつは,うつ病や不安症,パニック症など,特徴的な精神症状を中心に精神疾患を分類していく“splitter”とよばれるグループである。もうひとつは,“lumper”とよばれるグループで,個々の精神症状を越えて,精神的不調を総体として捉えようとするグループである。本書の原著者のDavid Barlow氏は, 2013年に本書の訳者らが企画して日本で行ったワークショップの冒頭で,自分はlumperであると述べていた。
臨床現場では,単一の明確な精神疾患に悩んでいる人よりも,併存する複数の精神疾患に苦しんでいる人や,単一の精神疾患の診断基準を満たさない「特定不能」の精神症状群に苦しんでいる人に出会うことのほうがずっと多い。そのように苦しみながら今を生きているひとりの人間としての患者やクライエントを手助けするには,単一の疾患を対象として開発されたマニュアルだけでは不十分である。
本書で取り上げられている「診断を越えた統一治療」アプローチは,そうした複雑な精神症状や生活環境を生きている人を手助けするのに有用であり,真の臨床家であるために絶対的に身につけておくべきものであると私は考えている。
2024年2月
大野 裕
国立精神・神経医療研究センター
認知行動療法センター センター顧問
セラピストガイド 日本版改訂第2版によせて
日本のみなさまへ,こころよりの挨拶をさせていただきます。『うつと不安への認知行動療法の統一プロトコル』の『セラピストガイド』と『ワークブック』が日本で出版されることをうれしく思っております。ヨーロッパ,アメリカ,日本,アジアの国々など,世界中において不安症やうつ病で多くのかたが苦しまれております。加えて,コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大においては,不安やうつの有病割合がほぼ2倍にまで高まったと報告されています。Unified Protocol for Transdiagnostic Treatment of Emotional Disorders(UP)では,神経症傾向に焦点を当て,この気質によって生じている様々な臨床症状を和らげることを目標にしています。このセラピストガイドは,さまざまな障害に対するUPの適用のしかたを描いていております。こうした診断横断的な特徴こそが,統一プロトコルの本質でもあります。しかしながら,創造性が求められる臨床家は,本セラピストガイドで書かれていることにしばられる必要はありません。実際,UPは本書で説明した対象以外にも,神経症傾向に特徴づけられるさらに多くの障害にも効果を発揮します。
伊藤正哉博士とその同僚の方々は,専門的見地から第2版を翻訳し,私たちが有する感情症への最前線の捉え方,診断横断アプローチを反映させてくれました。ワークブックではたくさんの新たなイラストが加えられていて,セラピーの進め方やアプローチの重要な側面を描いてくれています。さらには,英語オリジナル版で作られた素材を,日本の方々に合うように丁寧に提示されています。こうした修正によって日本の臨床家の方々が重要な概念を説明しやすくなって,わかりやすいかたちでセラピーの原則に基づき取り組められるようになっています。
この最新の改良された改訂第2版を作るなかで,伊藤博士らはクライエントや臨床家の方々からの声に耳を傾け,そうした感想や意見をしっかりと分析されてきました。日本版のこうした努力が英語オリジナル版や,その他の言語で出版されている第1版の今後の改訂において反映されていくことでしょう。
伊藤博士とその同僚の方々がこの翻訳をなしとげてくれたことを,かたじけなく思っております。“感情の痛みでつらい状態にある人が癒やされていく”私たちのこの目標を共有する臨床家の方々が,こうしたUPの実践を役立つものと感じていただけるよう,心から願っています。
2024年2月
デイビッド H. バーロウ
トッド J. ファーキオーニ
ボストンより
目次
推薦の辞
セラピストガイド日本版改訂第2版によせて
原著者一覧
付録1 略語一覧
付録2 用紙一覧
第Ⅰ部 セラピストのための基礎情報
第1章 UPの基礎情報
1 診断を越えた統一アプローチの利点
2 UPの有効性
3 セラピストガイドの目的
第2章 基本原理と手続き
1 基本原理
2 モジュールの説明
3 治療手続き
第3章 UP導入前の準備
1 アセスメントとモニタリング
2 薬物療法
3 UPが有効な対象
4 他の感情の併存が認められる場合
5 誰がUPを実施すべきか
6 ワークブックを用いる利点
第4章 UPの進め方
1 セッションの構造
2 セラピストの役割
3 ホームワークとセッション外の練習
4 ホームワークのふり返り
5 患者のコミットメント
6 患者の両価性に対処する
7 動機づけを高めるための参考文献
第Ⅱ部 治 療
第5章 セッション1 機能アセスメントと治療への導入
1 主訴をふり返る
2 機能アセスメントを行いながらUPの理論的根拠を示す
3 社会・文化的要因の重要性
4 先をみる―継続的な機能アセスメントと診断を越えた事例概念化
5 トラブルシューティング:機能アセスメントに役立つ質問
6 UPへと導入する
Form 5.1 事例概念化用紙
第6章 モジュール1 目標を定め,やる気を育む―動機づけ面接
1 動機づけとコミットメント
2 最も重要な問題の明確化と目標の設定
3 動機づけ構築―〔両面を考える用紙〕
4 ホームワーク
5 事例
6 トラブルシューティング
第7章 モジュール2 感情を理解する―感情の心理教育
1 ホームワークのふり返り
2 心理教育―感情の本質
3 感情と行動を理解する:学習された行動
4 ホームワーク
5 事例
6 トラブルシューティング
第8章 モジュール3 ありのままの現在に気づく―感情へのマインドフルな気づき
1 ホームワークのふり返り
2 感情へのマインドフルな気づきの導入
3 感情へのマインドフルな気づきを練習する
4 ホームワーク
5 事例
6 トラブルシューティング
第9章 モジュール4 やわらかく考える―認知の柔軟性
1 ホームワークのふり返り
2 認知の柔軟性を紹介する
3 思考の重要性
4 自動思考
5 思考の落とし穴
6 認知の柔軟性を練習する
7 ホームワーク
8 事例
9 トラブルシューティング
第10章 モジュール5 代わりの行動をとる―感情行動の変容
1 ホームワークのふり返り
2 感情行動について話し合う
3 感情回避のデモンストレーション
4 役に立たない感情行動の悪循環を断つ
5 ホームワーク
6 事例
7 トラブルシューティング
第11章 モジュール6 身体感覚になれる―内部感覚エクスポージャー
1 ホームワークのふり返り
2 身体感覚と感情反応
3 身体感覚の回避
4 症状誘発エクササイズ
5 エクスポージャーを繰り返す
6 ホームワーク
7 事例
8 トラブルシューティング
第12章 モジュール7 感情エクスポージャー:UPスキルの総実践
1 ホームワークのふり返り
2 感情エクスポージャー
3 セッション内での感情エクスポージャーの導入
4 セッション内で感情エクスポージャーを実施する
5 実生活で感情エクスポージャーを行う
6 ホームワーク
7 事例
8 トラブルシューティング
第13章 モジュール8 できたことを認めて,この先に活かしていく―再発予防
1 ホームワークのふり返り
2 UPスキルのふり返り
3 進歩を評価する
4 将来の困難を予想する
5 練習を続ける
6 長期目標を設定する
7 セラピストとの取り組みを終える
8 事例
9 トラブルシューティング
第14章 感情症への薬物療法
1 薬物療法に関する問題について話し合う
2 薬物療法がUPに与え得る影響
3 事例
4 トラブルシューティング
第15章 集団形式でUPを実施する
1 はじめに
2 集団形式の利点
3 集団形式でUPを行う場合の推奨事項
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訳者紹介
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書籍情報
- ISBN:9784787881670
- ページ数:196頁
- 書籍発行日:2024年6月
- 電子版発売日:2024年7月3日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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