改訂にあたって

初版「ヒアルロン酸注入治療 安全マニュアル」は，2018年10月に発行しました。ヒアルロン酸製剤注入治療は，世界美容外科学会（ISAPS）や日本美容外科学会（JSPAPS）の統計を見ても，今やボツリヌス毒素製剤治療と並んで非外科的美容医療の中心となっています。一方で，ヒアルロン酸注入治療後の皮膚壊死や失明などの重篤な合併症も続いていて，患者や医療者を不安にさせる大きな要因となっています。

初版発刊後，ヒアルロン酸製剤注入治療の合併症に関する文献も増え，治療に対する概念も変わってきました。初版では失明事故への対策としてヒアルロニダーゼの球後注射を推奨していましたが，現在ではむしろ推奨しないとする意見が多くなっています。また，注入治療後のOver filling syndromeも問題視されるようになってきました。

そこで改訂版では，内容を最新の情報にアップデートすることにしました。ヒアルロン酸製剤注入治療について豊富な経験と知見をもつ古山登隆先生に編集に加わっていただき，執筆者としても幅広く専門家に加わってもらいました。さらに眼科領域の専門家として野田実香先生に加わっていただきました。本書を活用することで，ヒアルロン酸製剤注入治療による不幸な事故が少しでも減少することを願っています。執筆にご協力賜った皆様に，心より感謝申し上げます。

2024年3月

大慈弥 裕之
北里大学形成外科･美容外科　非常勤講師
NPO法人自由が丘アカデミー　代表理事