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- 対症療法の強化書 頻用薬の使い方と非薬物療法
商品情報
内容
本書は病因に対応した根本治療のない病態に対して「患者さんに我慢をさせない」「とりあえず、漫然との対症療法を卒業する」ための知識とスキル向上に特化した、文字通り対症療法の強化本となります。 対症療法総論、風邪診療、作用機序から考える痛みへの対症療法、コモンな神経症状、メンタルヘルス不調、コモンな呼吸器・アレルギー症状、コモンな消化器系症状、泌尿器系症状、婦人科系症状、臓器を特定できない症候への対症療法など全10部で構成されており、それぞれ、エキスパートたちの実践智やプライマリ・ケア現場で役立つコンテンツが収録されています。 病因に対応した根本治療がないときでも、病態を正しく理解し、基礎的な薬理学(薬のメカニズム)を理解したうえで処方を行えるように、慢性疼痛に対する認知行動療法的アプローチの基礎など非薬物療法のエッセンス、東洋医学や漢方、リハビリ・運動療法処方など、対症療法の「引き出し」を可能な限り盛り込みました。ぜひ、「患者さんに我慢をさせない」「とりあえず、漫然との対症療法を卒業する」ための日常診療のレベルアップにご活用ください。
序文
巻頭言
医療機関を訪れる患者さんの訴えは多岐にわたり、必ずしも診断が明確なものばかりではない。たまたま運良く医学的な診断がつき、病態が把握できる症状であったとする。それでも、効果が確実な根治治療が存在するような状態はレアだと思われる。まして、日常診療で遭遇する訴えの中には明確な診断はつかないけれど患者さんを悩ませ、生活に影響を及ぼすようなものが沢山ある。机上の空論として学んできた医学も、臨床現場に出てみれば全然クリアカットではなく、シンプルな「正解」などほとんどない、そんな現実を知ることも臨床医の正常な発達過程なのかもしれない。ただ、明確な正解がない状況に対して「エビデンスがないから薬は出せません」というシニカルな態度に終始することも、「(何も処方しないのも気まずいから)ひとまずお薬出しときますね」という態度で逃げ切ることも、なんとなくイマイチな気がしてくる。
例えば、終末期における緩和ケアでは症状緩和を重視した対症療法は当然重視される。しかし、非がん疾患や、生命に直結しない症状の場合、臨床試験に基づく有効性のエビデンスが明確でない場合が多い。また、日常頻繁に扱うにもかかわらず、対症療法を体系立って学ぶ機会は少なく、過去の経験や先輩を真似て自分なりのパターンを構築している医師が多いのではないだろうか。本書はこうした根本治療がない訴えに対して、なるべく病態生理や薬理作用を理解したうえで、非薬物療法も含めた総力戦で「とにかく患者さんが良くなるサポート」の引き出しを増やすことを目的に企画された。医療者にできることは患者さんの人生から見れば微々たるものであり、決して思い上がってはいけない。それでも、日々少しだけ患者さんの助けになれる医療者を目指したくはないだろうか?
本書で重視するメッセージは以下2点である。
1.患者さんに我慢をさせない
作用機序を理解した薬物療法だけでなく、非薬物療法としての患者教育やコミュニケーションのポイント、東洋医学的アプローチやリハビリ介入、など広い意味での対症療法の引き出しを増やすような構成とする。症状・病像ごとに、同じクラス内での薬剤の特徴や使い分けまで踏み込んだ記載を目指した。
2.「とりあえず」「漫然と」の対症療法を卒業する
一方、ポリファーマシーの温床となる「とりあえず」の対症療法を勧める意図はない。開始時点で出口を視野に入れ、どの時点まで対症療法を行い、どの時点で中止するのかも明確にしたうえで、対症療法を開始することも各著者に強調していただいた。
本書のテーマ上、単なるマニュアル本の範疇を超えて臨床実践から生まれた対症療法のコツや使い分けといった実践智を大切にしている。このため、テーマごとに専門医・総合診療医として経験豊富な先生方にプライマリ・ケアの現場で役立つ内容のご執筆を依頼している。あえて病態生理学や薬理学の理解を踏まえた構成とした都合上、各項が読み応えのある内容となっている。休日に寝転んで読んでもいいが、ぜひ診療現場の手元におき、実際の患者さんのケアと結びつけながら本書を活用して日常診療のレベルアップにご利用いただきたい。
本書が現場で日々頑張る医療者に、そして患者さんに役立つ一冊となれば幸いである。
伊藤 浩
目次
巻頭言
≫ コラム1:「対症療法」という言葉がもつ社会的な意味
PART1 対症療法総論
1 原因療法と対症療法
はじめに
1 対症療法の起源
2 診断学と治療学
3 原因療法と対症療法の関係性
2 知っておきたい臨床薬理学の基本と薬剤効果の多因子性
1 臨床薬理学を定義する要素
2 疾病の進行をモデル化する
3 対症的薬剤の効果を臨床薬理学的に表現する
4 臨床薬理学においてプラセボ効果をどう考えるか?
5 治療効果とプラセボ効果の比較
6 薬剤効果の多因子性を考える
7 Effectivenessを形作るもの
8 対症療法におけるプラセボ効果の大きさ
3 対症療法におけるEBMの考え方
はじめに
1 EBMの考え方
2 エビデンスレベル
3 なぜRCTが最もエビデンスレベルが高いとされるのか
4 エビデンスレベルとエビデンスの質
5 対症療法におけるエビデンスの考え方
6 対症療法におけるEBMの実践
4 ポリファーマシーに配慮した処方戦略
はじめに
1 対症療法とポリファーマシー
2 対症薬と予防薬
3 効かないならやめる/効いたらやめる
4 やめやすい薬とやめにくい薬
5 しまい忘れ処方とclinical inertia(臨床的惰性)
6 具体的なアプローチ
おわりに
5 ジェネラリストが知っておくべき心理療法のエッセンス
1 心理療法とは
2 心理療法の基本的原則
3 治療的自己(therapeutic self)
4 患者や家族に対する心理教育
5 支持的精神療法
6 転移と逆転移
7 認知療法・認知行動療法
8 リラクセーション法(呼吸法、漸進的筋弛緩法、自律訓練法)
おわりに
6 医学的に説明困難な症状へのアプローチ
1 MUS患者が受診したら
2 どのように聞くべきか(MUSかどうか不詳な段階)
3 必要な医学的評価を実施する
4 医学的評価の結果を説明する
5 継続外来におけるMUSへの対応
おわりに
7 MUSの対症療法
1 MUSとは何か
2 ある回復事例を通じて
3 医療化せずに「つらさ」「しんどさ」に対処することは可能か
4 卓越したジェネラリスト診療とは何か
5 MUSの対症療法を改めて考える
8 東洋医学的アプローチ
はじめに
1 総論
2 各論
おわりに
≫ コラム2:漢方薬の錠剤について
≫ コラム3:出したい漢方薬が近隣の薬局に在庫がないとき
9 リハビリテーションの視点を活かした症状緩和
1 リハビリテーションとは
2 国際生活機能分類(International Classification of Functioning Disability and Health:ICF)
3 リハビリテーションのアプローチ
4 リハは根本治療? 対症療法?
5 診察室でもできるリハとは?
6 腰痛への介入
おわりに
PART2 風邪診療における対症療法の使いどころ
1 小児のかぜ症候群への対症療法
1 対応の原則
2 病歴聴取・診察
3 治療
4 患者説明のポイント
おわりに
2 成人のかぜ症候群への対症療法
1 成人のかぜ症候群の病態および診断
2 成人のかぜ症候群への対症療法薬
3 その他の対症療法
4 患者へ説明の処方
おわりに
3 抗アレルギー薬の使い所と使い分け
1 抗アレルギー薬の薬理学
2 抗アレルギー薬の使い分け
PART3 作用機序から考える痛みへの対症療法
1 解熱・鎮痛薬
1 NSAIDsとアセトアミノフェンの薬理学的特徴
2 代表的な解熱鎮痛薬の特徴
3 想定すべき有害事象
4 使い分けのコツ
5 処方開始の注意点と患者説明
6 処方中止を検討するタイミング
2 オピオイド鎮痛薬
1 作用機序
2 薬剤ごとの特徴
3 想定すべき有害事象
4 使い分けのコツ
5 処方開始時の注意点と患者説明
6 処方中止を検討するタイミング
3 神経障害性疼痛治療薬
1 作用機序
2 薬剤ごとの特徴
3 想定すべき有害事象
4 使い分けのコツ
5 処方開始時の注意点と患者説明内容
6 処方中止を検討するタイミング
4 腰痛症へのアプローチ
1 対応の原則
2 病歴聴取・診察
3 治療
4 患者説明のポイント
おわりに
PART4 コモンな神経症状への対症療法
1 慢性頭痛への対症療法
はじめに~片頭痛の疫学
1 片頭痛の病態
2 片頭痛診断の流れ
3 片頭痛の治療
おわりに~患者への説明のポイントとフォローアップの注意点~
2 めまいへのアプローチ
はじめに
1 めまいの診断
2 疾患ごとの特異的治療
3 めまい症に対する対症療法
おわりに~患者への説明のポイントとフォローアップの注意点~
3 認知症へのアプローチ
はじめに
1 認知症の定義
2 代表的な認知症の分類
3 診断と鑑別
4 治療
5 将来への展望
おわりに
PART5 メンタルヘルス不調への対症療法
1 不眠症
はじめに
1 不眠症治療の原則
2 睡眠薬の適正処方
3 睡眠薬の安全な減薬方法
4 患者説明のポイント
5 専門医へ紹介すべきタイミング
おわりに
2 不安・うつへの対症療法
1 正常な反応と異なるうつと不安について
2 プライマリ・ケアでうつ病と不安症を診療する際の留意点
3 うつと不安に対する薬物療法
4 薬物療法以外の治療と患者説明の留意点
5 専門家へ紹介すべきタイミング
PART6 コモンな呼吸器・アレルギー症状への対症療法
1 慢性咳へのアプローチ
1 対応の原則
2 病歴聴取・診察
3 検査
4 咳嗽治療薬
5 原因別の治療
6 原因不明の咳嗽、難治性の咳嗽について
7 慢性咳嗽の診療スタンスと患者への説明
2 慢性呼吸器疾患における喀痰治療薬の使い方
1 対応の原則
2 喀痰の原因診断
3 喀痰治療の原則
4 喀痰治療薬
5 原因疾患別の治療法
6 喀痰に対する診療スタンスと患者への説明
PART7 コモンな消化器系症状への対症療法
1 消化性潰瘍治療薬(PCABも含めて)
1 作用機序
2 各薬剤の比較
3 副作用
4 適応病態
5 処方開始時の注意点と患者説明内容
6 処方中止を検討するタイミング
2 制吐剤・消化管運動機能改善薬
1 制吐剤・消化器運動機能改善薬の機序
2 各種薬剤の特徴
3 有害事象
4 各種薬剤の適応病変
5 末梢性ドパミンD2受容体拮抗薬の使い分け
6 処方開始時の注意点と患者への説明内容
7 処方中止を検討するタイミング
3 便秘症へのアプローチ
はじめに
1 便秘診療の原則
2 病歴
3 検査
4 治療を考えるうえで重要な病態生理
5 治療
6 副作用への対応
7 患者説明のポイント
おわりに
4 機能性ディスペプシア
1 対応の原則
2 病歴聴取・診察
3 検査
4 治療
5 患者説明のポイント
おわりに
5 過敏性腸症候群(IBS)へのアプローチ
はじめに
1 IBS患者の病態生理
2 病歴・身体診察をもとにした診療の流れ
3 検査
4 治療
5 患者説明のポイント
おわりに
PART8 泌尿器系症状への対症療法
1 尿失禁への対症療法
1 尿失禁とは
2 尿失禁の診断
3 尿失禁の治療
4 治療開始時の患者説明内容
5 フォローアップの注意点
6 専門医への紹介
7 まとめ
2 排尿困難への対症療法
1 排尿困難を生じる病態
2 排尿困難の診断
3 排尿困難の治療
4 治療開始時の患者説明内容
5 フォローアップの注意点
6 専門医への紹介
7 まとめ
PART9 婦人科系症状への対症療法
1 妊娠・授乳中のくすり
1 妊娠編 総論
2 妊娠編 各論 安全に使えるものだけピックアップ
3 授乳編 総論
4 授乳編 各論
2 月経困難症へのアプローチ
1 対応の原則
2 病歴聴取・診察
3 治療
4 患者説明のポイント
おわりに
3 更年期障害
はじめに
1 更年期障害の診断
2 更年期障害の薬物療法
3 更年期障害の非薬物療法
4 患者教育と検査・治療開始時の説明の例
おわりに
PART10 臓器を特定できない症候への対症療法
1 「あちこちが痛い」、「疲れやすい」へのアプローチ
1 線維筋痛症と慢性疲労症候群
2 線維筋痛症(FM)
3 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)
2 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(倦怠感)へのアプローチ
1 当院のデータ
2 コロナ罹患後症状の倦怠感
3 コロナ罹患後症状の倦怠感を疑う症状
4 対応の原則
5 病歴聴取・診察・検査
6 治療、患者説明内容
7 フォローアップの具体的な方法について
8 症例提示
まとめ
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書籍情報
- ISBN:9784765320405
- ページ数:425頁
- 書籍発行日:2025年4月
- 電子版発売日:2025年4月2日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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