大腸ポリペクトミー・EMR 2025

  • ページ数 : 200頁
  • 書籍発行日 : 2025年5月
  • 電子版発売日 : 2025年5月10日
¥4,950(税込)
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商品情報

内容

近年,cold polypectomy とESDの間にあるターゲットである10~20mm の大腸腫瘍に対する治療法についても,新しいアプローチがなされるようになった.欧米から開発が始まったunderwater EMR やpiecemeal CSP などが有望な治療法と位置づけられている.  一方,静岡がんセンターではTip—in EMR(先端刺入法EMR),cold snare EMR,LPPC(low—power pure—cut)—HSP などの開発,評価に取り組んできた.最近では世界に先駆けてgel immersion EMR を大腸腫瘍の治療に応用した.新たな切除法を臨床試験として評価し,一定の成果も出ていると実感している(序文より)

序文

推薦の言葉


静岡県立静岡がんセンター内視鏡科,堀田欣一先生が責任編集された「大腸ポリペクトミー・EMR 2025」の発刊を心から祝福したい.

近年,大腸内視鏡治療についてはESDに関する書籍が多くを占めるようになった.ESD手技は画期的な手法で学会などにおいて瞬く間に席巻し,ESD手技は標準治療にまで浸透してきた.

が,「ESD手技を習得したが,EMRが上手くできない」という声も耳にするようになり,このような状況のなかでESD手技以外の内視鏡治療を習得したいと願う医師にとって,朗報となる書籍である.

腫瘍径だけからみた内視鏡的治療法は,10mm未満はcold polypectomy,10~20mmはhot polypectomy,20mm以上はESDという位置づけである.

ESDが登場するまではEMRによる分割切除も容認されていたが,局所再発リスクの観点から一括切除が推奨されている.本書では20mm以上の病変をすべてESDの対象とするのではなく,30mmまでの病変に対する内視鏡切除手技を,安全で確実に行う一括切除法についてさまざまな治療手技が具体的に紹介されている.また最良の処置具や薬剤なども客観的データと実臨床に基づいて詳細に解説されており,さらに活字では表現が難しい実技手技の詳しいコツなども鮮明な画像とともに解説がされている.内視鏡治療以外のことでも,前処置から病理検体の取り扱いに至るまで,日常診療に役立つ内容が満載であり,多くのことを勉強させていただいた.

とくに共感を得たのは第Ⅳ章の病理診断とサーベイランスの項である.病理診断と内視鏡診断との一対一の対応をベースとした内視鏡・病理カンファレンスの継続から,実臨床のなかで内視鏡検査時に病変がおのずと病理組織像,ルーペ像がイメージできてくるということ.また大腸内視鏡検査は,ほかの検査法にはない内視鏡治療ができる最大のアドバンテージから大腸癌の死亡率抑制に大きく貢献している.しかしながら,本邦における癌死亡率のなかで大腸癌は女性1位,男性2位という現実であり,大腸癌死亡率抑制を目指すにはサーベイランス・コロノスコピーよりこれまで受けたことのない初回大腸内視鏡検診(first colonoscopy)の受診率向上が必要であることなど,まさに大腸癌撲滅を目指すわれわれ内視鏡医の思いが述べられている.

本書は,内視鏡治療だけを取り上げたのではなく大腸内視鏡検査の本質の意義を捉えており,多くの内視鏡医の先生方に読んでいただきたい良書である.

静岡がんセンターの先生方に感謝を伝えるとともに,続編として大腸内視鏡診断や大腸癌検診についての新たな本を発刊してくれることを期待して,推薦の言葉としたい.


藤井隆広クリニック
藤井 隆広



序文


軟性大腸内視鏡の開発から10余年後の1969年に当時,米国のBeth Israel MedicalCenterの外科医であった日本人医師の新谷弘実氏により,世界で初めて高周波電流を用いた大腸ポリペクトミーが実現された.同じ年にアポロ11号による人類初の月面着陸と音楽史上の伝説的イベントであるウッドストック・フェスティバルが開催された.振り返るとまさに激動の時代の最中に大腸ポリペクトミーは誕生したといえる.

私が医師になった1990年代半ばには,大腸ポリープを切除する方法は,ポリペクトミー,EMRそしてhot biopsyしかなかった.上部消化管の内視鏡切除ではERHSE,EMRC,EMRL法などが報告されていたが,大腸領域で応用した報告は皆無であった.

1990年代後半,内視鏡切除の世界に革命的な出来事が起きた.ESDの開発である.胃癌に対する切除法として開発されたESDは,数年のうちに大腸腫瘍に対して試みられるようになった.2000年以降の10年は多くの内視鏡医がESDの開発,普及に没頭した.2010年頃には先進的施設においては大腸ESDの技術はほぼ確立したように思う.

その間,大腸ポリペクトミーやEMRにおいてはとくに目立った進歩や変化はなかった.2010年代に入り,後にcold revolutionと称される革命的な変化が起きた.cold polypectomyの開発である.National Polyp Studyの長期成績の報告から,大腸腺腫の全摘除,つまりクリーンコロンが大腸癌死亡を抑制することが明らかとなり,cold polypectomyは瞬く間に普及した.とくにスネアを用いたcold snare polypectomyは10mm未満のポリープの大部分に適応可能であり,さまざまな臨床試験のエビデンスから,各種ガイドラインにおいても第一選択の治療法として推奨されるに至った.

近年,cold polypectomyとESDの間にあるターゲットである10~20mmの大腸腫瘍に対する治療法についても,新しいアプローチがなされるようになった.欧米から開発が始まったunderwater EMRやpiecemeal CSPなどが有望な治療法と位置づけられている.

一方,静岡がんセンターではTip—in EMR(先端刺入法EMR),cold snare EMR,LPPC(low—power pure—cut)—HSPなどの開発,評価に取り組んできた.最近では世界に先駆けてgel immersion EMRを大腸腫瘍の治療に応用した.新たな切除法を臨床試験として評価し,一定の成果も出ていると実感している.

そんななかで,世界的潮流を踏まえたうえで,当院が取り組んできた新規の内視鏡切除法を整理する時期にきていると考えた.本書の執筆は現在,当院に在籍しているスタッフ,レジデントに加えて,レジデントとして当院で研鑽を積み,現在,日本全国で活躍している卒業生の先生方に分担していただいた.内視鏡切除手技を中心としたが,その準備段階で必須と思われる診断手技や,治療後の病理評価,サーベイランスなどで必要な知識についても取り上げた.2025年時点で,もっともアップデートされた大腸ポリペクトミー・EMRの書籍が完成したと自負している.本書を手にして,日常診療に取り入れていただけることとなれば,編者,執筆者一同にとって望外の喜びである.

最後に多忙な診療業務のなか,短期間で原稿を執筆していただいた先生方,ならびに本書を出版する機会を与えてくださった日本メディカルセンター編集部の方々に心から感謝申し上げます.


2025年4月

静岡県立静岡がんセンター内視鏡科 堀田 欣一



本書で取り上げた新しい切除法

Cold snare EMR

【対象】10~14mm腺腫,SSL

【難易度】EMRと同様

【長所】出血,穿孔のリスクほとんどなし

【短所】粘膜下層はとれないのでTis以深には適用不可

【将来展望】SSLへの適用

Low powered HSP

【対象】10~14mm腺腫, SSL, Tis

【難易度】CSPと同様

【長所】出血,穿孔のリスク低い/粘膜下層切除可能

【短所】特になし

【将来展望】標準的切除法となりうる可能性あり/EMRとの比較試験

UEMR GIEMR

【対象】15~25mm腺腫,Tis, SSL(T1a)

【難易度】局注が不要/良い条件を出すために慣れ,工夫が必要

【長所】病変が浸水下で収縮し,周囲粘膜伸展されていないのでスネアリングが容易

【短所】口側の辺縁が遺残しやすい/水を貯めるのが難しい場面あり

【将来展望】20mm以上でのエビデンス構築/SSLへの適用

Tip-in EMR

【対象】15~25mm腺腫, Tis, T1a, NLS陽性含む

【難易度】EMRとほぼ同様/スネア刺入部位に工夫必要

【長所】20mm以上でも根治性高い/T1やNLS陽性も根治切除可能

【短所】穿孔リスクはEMRよりやや高い可能性あり

【将来展望】ESD適応病変の一部(30mm以下)への適用

目次

第Ⅰ章  内視鏡治療に必要な大腸内視鏡診断学

腫瘍性病変の発見能を高めるために  木村 英憲

Ⅰ.観察手技の工夫

Ⅱ.内視鏡機器,デバイスの工夫

病変径測定を正確に行うために  重田 浩平

Ⅰ.病変径測定の意義

Ⅱ.病変径測定の方法

Ⅲ.大腸ポリープに対する病変径測定における限界と新展開

腺腫・癌の質的診断,深達度診断の精度を高めるために  髙田 和典

Ⅰ.腺腫・癌の鑑別診断

Ⅱ.癌の深達度診断

鋸歯状病変の診断  岸田 圭弘

Ⅰ.鋸歯状病変の分類と特徴

Ⅱ.鋸歯状病変の鑑別ポイント

第Ⅱ章  内視鏡治療に必要な基礎知識

大腸癌の抑制のためにはクリーンコロンが基本  島田清太郎

Ⅰ.クリーンコロンとは

Ⅱ.クリーンコロンをしないセミクリーンコロンが許容される経緯

Ⅲ.クリーンコロンの実現可能性と有害事象と労力

外来内視鏡切除はどこまで可能?  伊藤 紗代

Ⅰ.当院の大腸内視鏡検査件数と治療法の変遷

Ⅱ.外来内視鏡治療の適応

Ⅲ.外来治療における鎮痙・鎮痛・鎮静

Ⅳ.偶発症対策(後出血)と術後管理

抗血栓薬の取り扱い  上田 駿介,堀田 欣一

Ⅰ.消化器内視鏡診療ガイドラインにおける抗血栓薬の取り扱い

Ⅱ.他臓器ガイドラインにおける抗血栓薬の取り扱い

Ⅲ.大腸内視鏡治療の今後の展望

腸管洗浄法の種類と選択  土井 拓矢

Ⅰ.大腸内視鏡検査の腸管洗浄法に関するガイドライン

Ⅱ.腸管洗浄剤の種類・特徴

Ⅲ.腸管洗浄剤の選択

Ⅳ.腸管洗浄剤による偶発症

スネアの特性と選択  沼 圭次朗,堀田 欣一

Ⅰ.スネアの特性

Ⅱ.スネア選択のコツ

Ⅲ.論文紹介

局注液の特性と選択  平井 哲彦,堀田 欣一

Ⅰ.局注液の種類と特性

Ⅱ.局注液の選択

第Ⅲ章  内視鏡切除法各論

Cold snare polypectomy(CSP)  籔内 洋平

Ⅰ.CSPの歴史

Ⅱ.CSPのガイドライン上の適応

Ⅲ.CSPの理論的背景

Ⅳ.CSPの適応に関するエビデンス

Ⅴ.CSPの偶発症リスク

Ⅵ.CSPにおけるスネアの選択

Ⅶ.CSPの手技のコツ

Ⅷ.CSPの派生手技

Hot snare polypectomy(HSP)  髙田 和典

Ⅰ.hot snare polypectomy(HSP)

Ⅱ.低出力純切開波hot snare polypectomy(LPPC-HSP)

Conventional EMR  沼 圭次朗,堀田 欣一

Ⅰ.EMRの位置付け

Ⅱ.EMRの手技とコツ

Ⅲ.分割EMR

Ⅳ.偶発症への対応

Underwater EMR(UEMR)  芦澤  浩

Ⅰ.UEMRの開発・理論背景

Ⅱ.UEMRの特色―CEMRと比べて

Ⅲ.UEMRに関する臨床試験とCEMRの比較試験

Ⅳ.UEMRの適応病変

Ⅴ.UEMRのデメリット

Ⅵ.UEMRに必要な機材と準備

Ⅶ.UEMRの実際

Ⅷ.症例提示

Gel immersion EMR(GIEMR)  芦澤  浩

Ⅰ.GIEMRの開発・特徴

Ⅱ.GIEMRの適応病変

Ⅲ.GIEMRに必要な機材と準備

Ⅳ.GIEMRの実際

Ⅴ.GIEMRのデメリット

Ⅵ.GIEMRに関連した研究

Ⅶ.症例提示

Tip—in EMR  今井健一郎

Ⅰ.手技の概要

Ⅱ.Tip—in EMRの治療成績

ESMR—L  伊藤 紗代

Ⅰ.直腸NETにおける内視鏡治療選択

Ⅱ.直腸NETにおける内視鏡治療の変遷

Ⅲ.直腸NETに対するmodified EMR

Ⅳ.ESMR—Lによる偶発症

Hybrid ESD  奥村 大志

Ⅰ.hybrid ESDの概念と特徴

Ⅱ.hybrid ESDの適応病変

Ⅲ.SOUTEN®

Ⅳ.大腸hybrid ESDの現状と課題

Ⅴ.hybrid ESDの実際―手技の流れとポイント

Ⅵ.症例提示

治療法選択 ― ポリペクトミー・EMRとESDの棲み分け  堀田 欣一

Ⅰ.腫瘍径10mm未満の病変

Ⅱ.腫瘍径10~19mmの病変

Ⅲ.腫瘍径20mm以上の病変

第Ⅳ章  切除後のマネジメント

切除後のクリッピング  横山英一郎,堀田 欣一

Ⅰ.切除後のクリッピングを全例に行う必要性はない理由

Ⅱ.クリッピングによる予防止血を行うメリットが期待できる病変

検体処理の工夫 上田 駿介,堀田 欣一

Ⅰ.切除後検体の回収

Ⅱ.標本の展翅(貼り付け)

Ⅲ.展翅後標本の画像撮影のポイント

Ⅳ.病理医への依頼書の書き方

病理診断のエッセンス  重田 浩平,堀田 欣一

Ⅰ.内視鏡画像と病理診断の対比

Ⅱ.大腸pT1癌内視鏡切除後の追加外科切除基準

切除後のサーベイランス― 米国,欧州,日本のガイドラインの比較  堀田 欣一

Ⅰ.低リスク腺腫群

Ⅱ.高リスク腺腫(NAA)群

Ⅲ.advanced neoplasia(AN)群

Ⅳ.分割切除後

Ⅴ.鋸歯状病変

Ⅵ.ポリープ切除後のサーベイランスの将来展望

エビデンス創出のための臨床研究  今井健一郎,堀田 欣一

Ⅰ.研究の立案

Ⅱ.試験デザイン

Ⅲ.研究対象の設定

Ⅳ.エンドポイント設定とサンプルサイズ設計

Ⅴ.研究実施体制の構築

略語一覧

本書のWeb動画につきまして

索引

Column

技術向上の鍵は左手にあり!

挿入困難,どう突破する?

蠕動が止まらない…どうする?

多発ポリープ症例,所見ちゃんと覚えていますか?

処置具,すぐに出てきますか?

水の中で観る新たな世界~underwater endoscopyの魅力~

鼠径ヘルニアに注意!~見落としがちな大腸内視鏡挿入の落とし穴~

切除直後の大量出血,どうする?

外来コールド・ポリペクトミー,生活制限しなきゃダメですか?

大腸癌術前,ポリープ全部切除しなきゃダメですか?

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書籍情報

  • ISBN:9784888753302
  • ページ数:200頁
  • 書籍発行日:2025年5月
  • 電子版発売日:2025年5月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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