誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい作法

  • ページ数 : 214頁
  • 書籍発行日 : 2016年7月
  • 電子版発売日 : 2017年6月16日
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商品情報

内容

研究倫理のジレンマに向き合う

医師は個人的な意見を患者に語るべきか? 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないのか? など、実際の「悩む」シチュエーションをvignetteに提示し、それをもとに分かりやすく解説しています。
前作「 誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈」はこちら。

序文

はじめに

前著『誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈』出版から、はや5年が経過した。中外医学社からは改訂するように何度か依頼を受けたが、なにせ私はこの分野では素人であるので、なかなかおいそれと書き直すこともできない。

実はこの間、いくつか生物統計に関する話題でのレビュー執筆を、他の出版社からも依頼されたので、それを書き溜めて改訂の元原稿にしようとしたこともある。しかし、なぜか私が原稿を書くと、出版社側が一転して出すのを渋るのである。「いろんなところに影響が出る」とか言われたが、なんのことか分からない。要するにスポンサーの機嫌を損ねるということらしい。いくつもの原稿がボツになった。

そうこうしているうちにも、私もこの業界に身を置くものなので、いろいろ生物統計に関する疑問は湧いてきて、「悩む」ことになる。そのうちには、「どうしてこういうことはやってはいけないのか?」とか、「これって、やっちゃダメなんじゃない?」とかいうような、「倫理」に関するものも多い。自分で勉強するのは面倒なので、そういうのは詳しい人に聞こうと思い立った。我ながらよい思いつきである。

というわけで、旧知の吉村健一先生と佐藤恵子先生を引っ張り出し、素人の素朴な質問に答えてもらう、というのがこの本の趣旨である。それだけではあまりに虫がよすぎるので、実際の「悩む」シチュエーションをvignetteに提示し、それをもとに討論する、という形をとった。あまりこういうのをお読みになったことはないと思うが、もちろんこれは私のオリジナルではなく、マーティン・コーエンという人の『倫理問題101問』(ちくま学芸文庫)を真似たものである。

さて縁あって本書を手に取られたあなたにお読みいただくにあたって、野暮ったいがいくつかご注意申し上げる。

第一に、各vignetteの内容は、あくまでもフィクションであって、「もしかしたらオレのことか?」と思われる方がおられたら、気のせいである。その後のdiscussionで私が「これは自分が経験したことで」とかなんとか言っている場合もあるが、無視していただきたい。

第二に、私が吉村先生と佐藤先生にする質問は、私自身の見解を反映している場合もあるが、明確な答えを引き出すためのいわば「ヤラセ」であることも多い。いくつかは、わざと挑発的かつ偽悪的にしているので、良い子は真似しないように。

第三に、これも『倫理問題101問』の方針を踏襲しているが、discussionは「解答」を与えるものではない。三人の意見が最後まで対立する場合もあるし、三人とも答が見つからず途方に暮れる、ということもある。世の中のことは大抵そうなのだから仕方がない。

第四に、前著もそうであったが、これはなおさら、体系的網羅的な教科書ではない。本来的にはゴロ寝しながら読むものであって、「調べもの」に使うような用途には適さない。よって前著にはあった索引も作っていない。

まあ、気楽に読んでちょうだい、である。Vignetteの登場人物の名前はどこかで聞いたようなものもあるかと思うが、最近私は幽明虚実の境が不明瞭で、自分でも区別がつかなくなってきた。それでは困るので、今回はvignetteの中での「里見清一」とは別人として、著者を代表してご挨拶申し上げる。


平成28年 6月

日本赤十字社医療センター化学療法科
國頭 英夫

目次

第1部 情報開示の諸問題

VIGNETTE1 試験の途中経過の開示

Discussion 途中経過の開示と選択バイアス

 Adaptive randomizationについて

 第II相試験で、成績がよくないことが分かってきた時に

 臨床試験の参加と利他主義

VIGNETTE2 たまたま私は知っている

Discussion 中間解析と試験の継続・中止

 たまたま知った情報を「私用」してよいか

VIGNETTE3 試験治療と医者の「個人的見解」

Discussion ランダム割り付けにおけるequipoise

 医師は個人的な意見を患者さんに言うべきか

 プロトコール逸脱と日常臨床

VIGNETTE4 試験治療の提示

Discussion 臨床試験と標準治療の関係

 第I相試験での問題

 患者さんへの情報は、何をどこまで提供すべきか

VIGNETTE5 よその試験の結果

Discussion 他の試験の結果をどこまで患者さんに伝えるか

 並行する試験でネガティブな結果が出たら

VIGNETTE6 最終結果の公表と開示

Discussion 試験の最終結果は患者に知らせなくてはならないか

 試験の結果を公表できない場合

 説明文書にどこまで載せるべきか

 「患者様」?

第2部 試験デザインの妥当性

VIGNETTE7 病院の方針

Discussion クラスターランダム化と患者さんの自己決定権

 ランダム化比較試験とpropensity score

 大きく異なる治療法の比較

 救命救急治療の比較

VIGNETTE8 もう1回やるのか

Discussion Randomized phaseIIとphaseIII

 Randomized phaseIIの結果と治療の選択

 エビデンスの強さ

VIGNETTE9 同じことやるのか

Discussion とにかく「やる」ことが大事!?

 試験登録制度

 PhaseII試験は必要か

VIGNETTE10 後出しジャンケン

Discussion エンドポイントの閾値設定によって評価は変わる

 OSかPFSか

VIGNETTE11 非劣性試験は倫理的か

Discussion 非劣性試験の問題点

 患者にどう説明するか

 ハイブリッドデザインとは

 QOLをどう測るか

VIGNETTE12 IRB承認の問題

Discussion なぜ施設ごとにIRBがあるのか

 外部委員・専門外委員の役割

 外科領域における審査

第3部 試験と治療の境界

VIGNETTE13 臨床試験参加の本質は利他的なものか(その1)

Discussion BRIM3試験の概要

 ランダム化比較やクロスオーバー禁止は必要だったか

VIGNETTE14 臨床試験参加の本質は利他的なものか(その2)

Discussion Off-protocol治療の是非

 患者さんは利他的な動機で試験に参加する?

 Equipoiseは必要か

VIGNETTE15 希望を与える臨床試験

Discussion 患者さんから臨床試験参加を希望してきたら

 患者さんの同意をめぐって

 エンドポイントをどう設定するか

 VIGNETTE16 医療とビジネスの境界

Discussion 説明文書は何のためにあるか

 「研究病院」の周知

 医師と患者の関係

 エンドポイントの考え方

 臨床データの研究利用をめぐって


おわりに

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書籍情報

  • ISBN:9784498022621
  • ページ数:214頁
  • 書籍発行日:2016年7月
  • 電子版発売日:2017年6月16日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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