食物アレルギーの考え方 除去から摂取へ

  • ページ数 : 138頁
  • 書籍発行日 : 2014年11月
  • 電子版発売日 : 2015年5月22日
¥3,080(税込)
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商品情報

内容

”食べて治す”をキーワードに新しい考え方を伝授します。

食物アレルギー患者とどう付き合っていけばいいの?…その不安を解消。
新たな治療法として注目されている食べて治す治療法「経口免疫療法」を中心に食物アレルギーを解説。
初学者も現在診療に悩む専門医にもおすすめの一冊です。

序文

はじめに

医学の診療にはどの分野にもエポックメイキングの年がある.気管支喘息では1992年であり,その本態が気道の収縮から気道の炎症へと考え方がかわり,それに伴って気管支拡張剤の治療から抗炎症を主体とした治療へと大きく変化した.食物アレルギーでは2008年ではないかと考えている.イギリスのLackらが食物アレルギーにおける二重抗原暴露説を提唱し,食物アレルギー患者への経口免疫療法が始まったのもその頃であり,またアトピー性皮膚炎の原因が皮膚のフィラグリン防御蛋白の遺伝的な低下であると言われだしたのもその頃である.この年を境に食物アレルギーの考え方が180度完全に変わり,除去から摂取へと大きく舵取りがなされ,またされなければならないと考えている.しかし,いまだに除去にこだわっている医師,看護師,助産婦,栄養士,保健師が数多く存在するのも事実である.本書はそれらの人たちやこれからアレルギー特に食物アレルギーを学びたい医師やコメディカルの人たちに最近の食物アレルギ−の考え方をわかりやすく,論理的にその内容を書いたものである.とくに一般日常診療の小児に携わっている小児科以外の先生方に現在行われている食物アレルギ−診療を理解し,そして実行していただきたい.またどういった状態になればアレルギー専門医に紹介すべきかを付け加えた.筆者の専門である食物経口免疫療法についても最新の情報について30ページほど記載した.最後は日常に遭遇する食物アレルギーに関連する症例をQ&A方式で紙面をさいた.

最後に付け加えたいのは,除去は簡単であるが摂取はそれなりの危険性があり,アナフィラキシーを起こす可能性はゼロではなく,もし起こしても早急に対応できる施設と体制が必要であり,そしてそれらを実行できる医師がこの診療をまかせられるべきであると考えている.本書には紙面の都合上アナフィラキシー対応の項目を設けなかったが,本書の経口免疫療法の項目の中のアレルギー症状の対応か,あるいは「食物アレルギーガイドライン」を参照していただければ幸いである.食物経口免疫療法は一般診療として認められておらず,あくまで研究段階であり,万全の体制で施行されなければならない.

本書が食物アレルギーで悩む患者さんをこれから診療しようという初学者のみならず,経口免疫療法にもこれから取り組んでみようというアレルギ−専門医にも役立てば,幸いである.


2014年11月
谷内昇一郎

目次

1.食物アレルギー診療は変わったのか?

1.重症アトピー性皮膚炎男児との出会い

2.重症食物アレルギーの女児の経験

3.食物負荷試験から経口免疫療法へ

4.急速経口免疫療法との出会い

5.経皮感作と経口寛容

2.食物アレルギーの診療の問題点

A アレルギーマーチとは?

1.アレルギーマーチは正しいのか?

2.アレルギーマーチを予防するには?

B 経皮感作とは?

1.ピーナッツによる経皮感作

2.食物アレルギーの成り立ちは経皮感作からか?

C 皮膚をきれいにすれば本当にアレルギー疾患はよくなるのか?

1.Outside-inside-outside理論

2.食物アレルギーの治療あるいは予防はアトピー性皮膚炎を治すこと

D 食物アレルギーに抗アレルギー薬は有効か?

1.乳幼児の感冒薬は無効

2.抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬の使用は危険

E NSAID軟膏は危ないのか?

1.NSAID薬はアレルギー体質を助長

2.NASID軟膏は感作性皮膚炎を引き起こし,乳児には危険

F ステロイド軟膏は本当に効くのか?

1.ステロイドは体内では重要なホルモン

2.湿疹ゼロを目指せ

3.たっぷり,しっとり,擦りこまないで塗ろう

G タクロリムス軟膏は本当に効くのか?

1.T細胞を選択的に抑制

2.リバウンドのない軟膏

H 特異的IgE抗体価は本当に食物アレルギー症状を予測できるのか?

1.特異的IgE抗体価が高いほどアナフィラキシーも強くなる?

2.食物の種類によって陽性的中率は異なる

3.果物,野菜アレルギーではプリックテストの診断的価値が高い

I 特異的IgE抗体価で食物アレルギーの予後を予測することができるか?

1.鶏卵

2.牛乳

3.小麦

4.大豆

5.ピーナッツ

J 生まれた季節はアレルギー体質に関係あるか?

1.秋冬生まれが食物アレルギーになりやすい

2.乳児期早期の皮膚の乾燥がアレルギー体質を決定する

K アトピー遺伝子は存在するのか?

1.免疫アレルギーに関する遺伝子はアレルギー体質と関連はない

2.皮膚の防御遺伝子であるフィラグリンがアレルギー体質を決める

L 腸内細菌はアレルギーと関連があるのか?

1.Th2細胞がアレルギーの元凶

2.母親の大腸の細菌叢が新生児に受け継がれ,アレルギー体質を助長させる

3.プロバイオティクスがアレルギー体質に有効?

M 添加物や保存剤はアレルギーと関係あるのか?

1.皮膚感作だけでは急激なアレルギー疾患の増加につながらない

2.添加物や保存剤が腸内細菌叢を破壊する

N 即時型アレルギー以外にもアレルギーがあるのか?

1.皮膚感作だけとは限らない

2.非IgE依存性アレルギーも存在する

3.好酸球性腸炎の一例

O なぜ食物アレルギーは増加しているのか?

1.食物アレルギーが増加しているのは本当か?

2.食物アレルギーが増加している原因は何か?

3.間違った指導が食物アレルギー増加の原因?

P 経口負荷試験の目的,方法,意義は?

1.目的

2.方法

3.誘発症状の強さが重要

Q 食物アレルゲンの種類はどんなものがあるか?

1.鶏卵

2.牛乳

3.小麦

4.豆類,種子類

5.甲殻類・軟体動物・貝類

6.魚卵

R 乳幼児期にアトピー性皮膚炎がある場合,皮膚炎の治療と離乳食の進め方はどうしたらよいか?

1.生後3カ月程度で顔面に軽い湿疹がある場合

2.6カ月で中程度~重度のアトピー性皮膚炎がある場合(顔以外にも湿疹があり,ステロイド外用を指導されたが軽快しない場合)

S 食物アレルギーを伴った喘息とアトピー性皮膚炎の管理はどうすればよいか?

1.食物アレルギーの種類によって合併症が違う

2.経口免疫療法中には合併症の十分なコントロールが必要

T 環境整備は必要か?

1.環境中の吸入アレルゲンが気管支喘息の発症と関連する

2.乳幼児期のウイルス感染が気管支喘息の発症と関連する

3.1歳までの上気道炎は気管支喘息発症の危険因子を低下させる

3.食物アレルギー診療は変わったか?経口免疫療法(OIT)

A OIT(oral immunotherapy)にはどんなものがあるのか?

1.緩徐経口免疫療法

2.急速経口免疫療法

3.海外での方法

B アレルギー症状が出たとき,?どう対応すればよいか?

1.静脈路は原則として前もって用意しない

2.アレルギー症状の対処方法

3.アドレナリン筋肉内注射の適応と時期

C OIT(経口免疫療法)での増量方法のポイントとは?

1.OITの方法

2.緩徐OITにおける増量の方法

3.急速OITにおける増量のポイント

D OITの維持療法のポイントとは?

1.緩徐経口免疫療法の維持療法

2.急速OITの維持療法

3.負荷食品の工夫

E OITの本邦での成績は?

1.国立病院機構相模原病院での取り組み

2.多施設RCTによる急速経口免疫療法の検証

F 海外でのOITの最近の成績は?

1.海外でのOIT

2.特別なOIT(経皮的食物OIT)

3.無作為プラセボ対照二重盲検試験のOIT

G OITの手順とは?

1.経口負荷試験の時期

2.負荷試験の結果により2つの方法を使い分ける

3.OITの開始時期

H 関西医科大学でのOITの成績は?

1.層別化による成績

2.OITの安全性

3.日本小児アレルギー学会はOITを一般診療としては推奨しない

I OITの理論―OITをすることで,なぜ食べられるようになるのか?

1.制御性T細胞の役割

2.抗原提示細胞(樹状細胞)の関与

J OITの今後の展望は?

1.OITに用いるアレルゲン

2.OITの投与経路

3.OITの投与方法

4.OITに対する薬物治療

5.OITの今後

4.症例

A 顔面に湿疹がある3カ月の男児

B 卵アレルギーの7カ月の男児

C 全身に強い瘙痒と顔面に痂皮を伴った体重増加不良の生後3カ月の女児

D 伝染性膿痂湿疹の2歳5カ月の男児

E 蕁麻疹を主訴として来院した卵アレルギーの1歳の男児

F 瘙痒が強い全身の湿疹がある7歳児

G 緩徐経口免疫療法を行い,胃腸炎になった4歳の女児

H 緩徐経口免疫療法を行い,なかなか増量できなかった6歳の男児

I タコ焼きで運動誘発アナフィラキシーを起こした10歳の男児

J 卵アレルギーで魚卵が摂取可能となった4歳女児

5.こんな症例は専門医に送るべし

1.生後1カ月まで

2.生後1カ月~6カ月まで

3.6カ月~1歳

4.1歳~6歳まで

5.6歳以上

6.内科医がやってはいけないこと

1.乳幼児における抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の投与

2.家族歴にアレルギーがある女性が,妊娠中・授乳中に卵,牛乳,小麦などの食物アレルギーが出る可能性のある食品を除去すること

3.血液検査で食物アレルギーの疑いがあるからといって,今までに摂取可能であった食物を除去すること

4.アトピー性皮膚炎に対する間違った軟膏療法

5.血液検査が陰性化して,自宅で除去していた食品を解除すること

7.食物アレルギーガイドラインの概説

1.食事療法(総論)

2.本ガイドラインの特徴(従来の治療方針との相違点)

3.注意点

8.食物アレルギーの今後の展望

1.食物アレルギーの考え方の激変

2.食物アレルギーの予防

3.食物アレルギーの皮膚感作は本当か?

4.気管支喘息の分類

5.アレルギー治療の展望


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  • ISBN:9784498026087
  • ページ数:138頁
  • 書籍発行日:2014年11月
  • 電子版発売日:2015年5月22日
  • 判:A5判
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