改訂第3版の序
改訂第2版が出てから,思いの外,好評を頂いたこともあって,早くも,改訂第3版を出させて頂くことになった.短い期間で改訂することは既に買って頂いた方に申し訳ない気持ちもあり,改訂せずに増刷することも検討したが,なるべくこのような機会に少しでも直したり,アップデートできることはした方が,今後買って頂く方のためにも良いと考えた.
今回の改訂では特に,内容が十分でなかった低カリウム血症の記述を追加したり,カルシウム代謝異常においてはミルクアルカリ症候群や FGF23 の解説をアップデートした.何度,改訂しても不十分な点を完全になくすことは出来ないが,このような改訂をさせて頂くにあたっては,多くの先生や同僚からの意見を頂いて,初めて出来たことである.ここに,感謝の意を表するとともに,今後も御意見やご助言を頂ければ幸いと思っている.
2007年 3月
柴垣 有吾
改訂第2版の序
大変うれしいことに初版はそれなりに好評をもって迎えられたようである.ある意味,マニアックな部分も多く,又,筆者の文章力の無さにも関わらず,多くの方に読んで頂いた背景には体液電解質の一般的な教科書には書かれていない部分にも言及した点があると思っている.
しかしながら,輸液をタイトルに掲げているにも関わらず,輸液の章の内容が薄いことがかなり気になった.又,読者の方からも多くのするどい質問や疑義を頂いた.本改訂版では,初版の訂正などに加え,輸液の章をより詳しくし,かつ,最もわかりにくいとされる透析患者における体液電解質異常・輸液の章を新設した.
本書は 100%完璧なものでは到底なく,読者の方からの質問や疑義・助言は常に歓迎したいと思っている.又,本書が少しでも体液電解質・輸液の理解に貢献できれば幸いである.
2006年 6月
柴垣 有吾
序
水電解質・輸液は難しいとの声に応えるように,最近はいくつものレジデント向けの水電解質・輸液のテキストが巷に出回るようになった.これらの多くは大変よく書けていて,最初に学ぶには非常にとっつきやすい.しかし,この初級者向けのレベルを卒業した人の好奇心をさらに満足させるようなテキストはあまり見かけない気がする.私も研修医時代,常にこのような本を探していた.その中で Halperin & Goldstein の「Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Physiology: A Problem-Based Approach」と Scribner の「Fluid & Electrolyte Balance」が私にとって唯一,好奇心をくすぐられる名著であったと思う.
私は父が約 45 年前に米国で臨床留学をし,まさにその Scribner 博士の下で水電解質を学んで来たこともあり,是非,自分も米国で学びたいと思っていた.そんな中,現在に至るまで大変お世話になっている日本学術会議会長の黒川清先生や現在の上司である藤田敏郎先生のお陰もあって,アメリカ腎臓学会の教育担当ディレクターで水電解質教育のエキスパートでもある Robert G. Narins 先生の下で臨床研修を積むことができたのである.私にとっては,毎日が非常に勉強になる日々であり,日本で解決せずにいくつも抱えていた疑問が次々に氷解し,さらに理解を深めることができる喜びを感じたのを今も覚えている.米国では,かなり偉い先生にも気軽に質問できる雰囲気がある.visiting professor 制度により,教科書や論文で名前を知っている先生が目の前で講義をしてくれることも度々でその度に多くの疑問をぶつけることができた.是非,ここで学んだ多くの事を本として還元したいという気持ちが強くなっていた.
この度,私の研究室の先輩であり,尊敬する神戸大学医学部助教授深川雅史先生のご理解とご協力の下にこのテキストを出版できることを大変大きな喜びに感じている.深川先生にはこの本をレビューし,修正して頂く労をお願いしたが,先生のお力でかなり満足のいくものができたと自負している.又,中外医学社の秀島悟氏,荻野邦義氏にはこの本の企画・編集で大変ご苦労を頂いた.中外医学社の方々は父の本も担当された方であり,縁というものを強く感じているが,改めてここに感謝の気持ちを表したい.
最後にこの本を私の医者としての目標でもあり,最も尊敬する父,昌功に捧げたい.
2005年 5月
柴垣 有吾