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幹細胞と再生医療

中辻 憲夫 (著)

丸善出版

  • ISBN : 9784621089439
  • ページ数 : 178頁
  • 書籍発行日 : 2015年6月
  • 電子版発売日 : 2015年9月11日
  • 判 : 新書判
  • 種別 : eBook版 → 詳細はこちら
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商品情報

・ES細胞とiPS細胞の違いは?
・倫理問題はどうなっている?
・再生医療はいまどこまで進んでいる?
・今後どのような病気の治療が可能になる?

幹細胞や再生医療の分野で日本をリードしてきた著者が、多能性幹細胞の特徴、倫理問題の本質、世界の状況、そして治療や創薬への応用について、いま私たちに必要な知識を提供します。基礎研究で得られた知見を実際の治療につなげるにはどのような技術やプロセスが必要か、実用化への道筋がわかるのが本書の特長です。
人類に恩恵をもたらす再生医療を身近なものにするために、世の中に広まっている誤解を正し、専門家のみならずすべての市民が科学の適切な考え方を持てるようにとの思いで本書を届けます。

■ 序文

はじめに

私が多能性幹細胞の入門書を執筆するのは2回目。前回は私たちが京都大学再生医科学研究所でヒトES細胞株(胚はい性せい幹細胞株、Embryonic Stem Cell Line)を樹立して基礎医学研究者へ細胞を分与するプロジェクトに着手した2002年だった。ヒトES細胞とは何か、その医学創薬への広範な応用可能性について解説した。今回の原稿を書きはじめたのは2014年8月13日だが、ES細胞やiPS細胞(人工多能性幹細胞、induced Pluripotent Stem Cell)という言葉が、生物学や医学に携わる人たちだけでなく広く一般の人たちにも知られるようになり、関心を集めているのは、皮肉にも2014年はじめからのいわゆるSTAP細胞事件が原因である。当初は新しくすばらしい幹細胞として大々的にマスコミをにぎわせたこの細胞が、発表論文結果(iPS細胞よりも簡単に多能性幹細胞を作れる)の再現性を世界中のだれも示せず、論文内容の不正や捏造まで疑われることになって、世界三大科学スキャンダルのひとつとまで酷評されることになった。その間わずか数か月の出来事だった。

私がSTAP事件でこの導入部を書きはじめるのは、その内容を解説するためではなく、この間の出来事が、まさに多能性幹細胞の入門書を改めて執筆して、広く正確な理解を広めたいと感じる理由だからである。つまり、STAP細胞が当初発表されたときに、あたかもまったく新しい夢の細胞出現と喧伝されたこと、それによってES細胞とiPS細胞では難しい治療法をこの新細胞で実現できると考えた難病患者の方たちがいた(というよりはそう考えるように論文発表時に宣伝誘導された)こと、そして論文が撤回された後でもSTAP細胞が存在するかどうかに関心が集中したこと(STAP細胞があるかないかで難病治療が可能かどうか決まるなど誤解されたこと)、これらがすべて日本国内における多能性幹細胞への誤解や理解不足を顕著に示している。

私たちは現在、多能性幹細胞(いわゆる万能細胞)という、培養下で無限に近く細胞分裂を続ける長期の増殖能力と多種類細胞への分化能力をあわせもつすばらしい細胞株を、貴重な財産として共有している。すなわち、再生医療や新薬開発におおいに活用できる可能性が高い、特別の能力をもつ多能性幹細胞が発見され、作り出されたことが話の出発点である。このような多能性幹細胞株を作り出す方法としてはいくつかの種類があり、まずは初期胚中に存在するいわば純正品の多能性幹細胞を取り出して増殖を続けさせたES細胞株、卵や精子という生殖細胞に分化しはじめた細胞を逆戻りさせて作ったEG細胞株(胚性生殖細胞株、Embryonic Germ Cell Line)やmGS細胞株(多能性生殖幹細胞株、multipotent Germline Stem Cell Line)、分化した後の体細胞核を卵子中に移植して初期化させて作るSCNT ‒ES細胞株(体細胞核移植胚性幹細胞株、Somatic Cell Nuclear Transfer-Embryonic Stem Cell Line)、そして同じく体細胞を数種類の遺伝子(その後の研究でRNA、タンパク質、化合物でも初期化できるという報告が続く)によって初期化したiPS細胞株、といったように、これら作成方法の異なる多能性幹細胞株が存在する。しかしながら、作る方法は違えども、樹立された細胞株は互いに非常に似ており、一部の性質(たとえば遺伝子の働き方を制御するDNAメチル化など)だけが異なることが知られている。

もしこのような多能性幹細胞に関する正確な理解が広く存在したなら、STAP細胞の作成成功の発表は、卵子への核移植(SCNT ‒ES細胞)や数種類の遺伝子(iPS細胞)による体細胞の初期化方法に、もうひとつの初期化方法ができたということ以上でも以下でもないことが理解されて、まったく新しい夢の細胞という表現は誇張だとわかったはずである。さらに、難病治療のためにいま乗り越えなければならない問題点は、どうやってがん遺伝子などに大きな異常のない比較的安全な多能性幹細胞を大量に生産するか、どうやって細胞移植治療に使うための有用細胞に効率よく安定して分化させることができるか、どうやって安全かつ確実に目的臓器の疾患部分に細胞移植できるかであり、これら全体の安全性と安定性を高め、さらに必要コストを下げて富裕層でなくとも手が届く治療コストを実現することが現在の課題である。つまり、多能性幹細胞株の作成技術というのは、幹細胞を再生医療に応用するために必要な技術が大きく10段階あるとして、その最初の1段階にしかすぎない。しかも残り9段階の技術はどんな種類の多能性幹細胞であってもすべて共通の技術である。したがって、多能性幹細胞を作る新しい方法ができたことは、難病治療の将来展望にプラスになるかもしれないが、当面の治療実現が早まるわけではないのである。

じつは、このような多能性幹細胞の正しい認識が妨げられた原因は、1998年ごろにヒトES細胞の研究がはじまった際の生命倫理問題の誇張と過大認識からはじまり、そのあと2007年にヒトiPS細胞の作成が成功したときに、今回と同じく、まったく新しい夢の幹細胞という誤った理解が広まったことにあり、今回の騒動の遠因にもなっている。もし正しい理解があれば、ES細胞で進められてきた再生医療や新薬開発への活用が、iPS細胞が加わったことにより多能性幹細胞分野全体の活性化につながったはずだ。しかし実際には、ES細胞ではなくそれとはまったく異なるiPS細胞に研究開発を集中すればよい、という誤った政策方針が日本国内では取られることとなった。それと同様の誤りとして、今度はiPS細胞を超える夢のSTAP細胞、というキャッチフレーズが作られることになったのである。

最近インターネット上で目にする、広く国民を巻き込んだ幹細胞についての情報のやり取りで顕著になったのは、ES/iPS細胞など多能性幹細胞についての理解不足というか、大きな誤解である。私は、マウスES細胞の研究に1984年から取り組んで、サルおよびヒトES細胞株の樹立を2000年および2003年に成功させたのち、現在までES/iPS細胞の活用研究を長年続けてきた。そこで、本書を通して国内での誤解を正し、当分野の研究者を代表して多能性幹細胞についての正しい理解を世の中に発信したいと考えて執筆した。本書は入門書ではあるが、基本的で重要な知識と本質的な考え方を多面的に解説するものであり、さらに詳しく調べたい意欲ある読者には、研究の歴史における重要な論文に加え、最新の論文および総説を参考文献として巻末に加えることによって、最新の専門的知識を入手してもらえるように配慮した。

冒頭部分にも述べたが、新しい多能性幹細胞として当初脚光を浴びたものの、その後医学生物学の歴史に残る捏造スキャンダルとなってしまったSTAP細胞事件。その論文発表時点から、報道の内容に強い違和感を覚え、報道機関や市民の多能性幹細胞に対する誤解を改める必要があると考えていたが、2014年8月上旬にはSTAP細胞事件で最大の悲劇が起きたことを知り、以前から計画していた本書の執筆に急いで取り掛かった。そのあと草稿を熟読して下さった丸善出版の米田裕美氏から頂いた、詳しく的確な多数のコメントを参考にして、新年になって草稿の改訂作業を進め、ようやく上梓の運びとなった。なお滋賀大学の加納圭氏からも原稿を推敲するうえでの有益なコメントを頂いたことを感謝する。ちょうど世間では、STAP細胞事件の外部委員会による詳しい検証結果が昨年末に発表され、事件を丹念に取材した科学ジャーナリストによる書籍や雑誌特集号が出版されているが、残念ながら事件の核心の多くが隠されたままである。

私自身は、STAP細胞問題を当初はきわめて特殊な事件だと感じていたが、状況が進展するに従って、世の中の期待と注目と予算を集める分野ほど、本来の科学者がもっているはずの、科学的探究の熱意と自律的インテグリティが壊れてしまうリスクが高い時代になったと感じている。しかしながら、だれがどう言おうと、科学技術の発展と、それを可能にした基礎的な学術研究の歴史が、私たち人類の生存と生活の質を高めてきたことは事実であり、現在も今後も、科学と技術の適正で誤りのない発展が、私たち人類に恩恵をもたらす、あるいはそのための手段とオプションを社会に与えることになると信じている。その中でも、医療や環境エネルギーなど人類の生活と幸福に甚大な影響を与える科学技術分野では、当該分野の専門家だけでなく、市民や異分野の専門家が正しく適切な知識と理解をもつことが不可欠である。もし何らかの原因によって、バランスを欠くゆがんだ理解が広まってしまえば、せっかくの科学技術の発展と活用が損なわれてしまう。それを改善するためには、各分野の科学者と専門家が、自己の短期的利害や思惑をできるだけ排除して、広い視野と長期の展望をもち、科学者や専門家としての誇りを堅持して、社会や政策決定者への情報発信と発言を続けるべきと考えている。私自身ができることは小さいかもしれないが、自ら選択した信念による人生をこれからも続けたいと書き記して、導入部分の結びとしたい。


2015年5月

京都にて 中辻 憲夫

■ 目次

1 多能性幹細胞の研究の歴史

きっかけはがん研究/ES細胞の誕生/初期化とiPS細胞

2 ヒトの発生過程

ヒトの受精と胚発生/ゲノムとエピゲノム

3 幹細胞とはどのような細胞か―組織幹細胞の例

臓器の維持と修復のための幹細胞/造血系と神経系の幹細胞

4 多能性幹細胞とはどのような細胞か

多能性幹細胞の種類と由来/初期化による多能性幹細胞/ナイーブ型とプライム型/京都大学ヒトES細胞株樹立プロジェクト/多能性幹細胞の有用性と課題

5 ES細胞やiPS細胞に関わる生命倫理と社会的対応

国内の生命倫理議論の問題点と波及効果/科学と生命倫理の考え方/日本の状況

6 多能性幹細胞の可能性とリスク

実用化のためには何が必要か/多能性幹細胞株が持つリスク/多能性幹細胞の改良研究は進行中

7 再生医療への応用と世界の状況

世界の現状/免疫拒絶への対応

8 新薬開発への応用

新薬開発のプロセスとコスト

9 再生医療のための技術開発―大規模な細胞培養生産技術

再生医療に必要な細胞数/2次元の平面培養から3次元培養へ/スフェア培養法の有用性

10 再生医療のための技術開発―化合物による安定で低コストの分化誘導技術

化合物ライブラリーのスクリーニング/化合物を使った分化誘導/化合物による分化誘導方法の有用性

11 まとめ


エピローグ

索引

■ 特記事項

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