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あなたと私はどうして違う? 体質と遺伝子のサイエンス

中尾 光善 (著)

羊土社

  • ISBN : 9784758120579
  • ページ数 : 222頁
  • 書籍発行日 : 2015年5月
  • 電子版発売日 : 2018年5月11日
  • 判 : 四六判
  • 種別 : eBook版 → 詳細はこちら
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¥1,980 (税込)
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商品情報

99.9%同じ設計図(ゲノム)から個性や病気が生じる秘密

体質は変えられる?現代の生命科学の観点から、体質について学び考え直します。氏か?育ちか?医学史と最新科学で十人十色の理由を紐解く!

■ 序文

まえがき

「体質」と言うのは、古いようで新しい言葉です。一人ひとりの顔かたちが違うように、すべての人がもつ身体の特徴が体質です。その人の「個性」でもあるでしょう。このため、体質は、個人差(あるいは、個体差)とも言われます。日常の生活、学校や仕事、病気のかかりやすさを考えても、人は体質と無縁には生きられません。そもそも、体質とは、自らが実感するもの。したがって、他の人の体質について客観的に知ろうとしても案外に難しいわけです。そのため、人類は体質の正体を明らかにすべく、いろんな努力を続けてきました。

遡れば、科学やテクノロジーが大きく発展する前には、人の身体全体を対象として健康と病気の研究に取り組んでいました。身体を部分に分けるのではなく、1つの塊として特徴をとらえようとしたのです。このため、「体質」の考え方が病気の原因を説明するうえで重要なポイントでした。

現代ではどうでしょうか。私たちが大きな病院を受診したとしましょう。数多くの診療科に分かれていて、どこに行けばよいかと迷うほどです。そこには、臓器別や病気別の診療体制の下で、個別の専門家が揃っています。医者は患者の全身を見て、そして身体の部分や特定の病気に絞り込んでいきます。専門科でなければ判断の難しいことも少なくないでしょう。逆に専門の枠にピッタリとはまれば、的を射た医療が保証されています。つまり、近代以降の医学は、身体を部分に分けることで大きく前進してきました。そして今や、多くの人がこの恩恵を受けるようになったのです。

すなわち、ヒトの身体についての概念(コンセプト)が大きく変化したと言えます。科学技術が進歩するにつれて、身体全体を部分に分けるという細分化への転換がありました。今日の医学の最前線においても、この延長の上にあります。身体を部分の集まりに分けて考えることで、それぞれの臓器や病気に関する理解が格段に深まりました。特定の部分に集中して探究することは、分子や遺伝子のレベルで生命を理解するための必然でもあったのです。

「体質」に相当する英語は何でしょうか。例えば、【constitution】(コンスティテューション)が"体質、素質"に相当します。面白いことに"憲法"という意味もあります。戦後をつくった日本国憲法は【The Constitution of Japan】であり、日本という国全体の基本です。基本とは、他の何よりも優先されねばならないもの。そう考えると、体質とは"身体全体の基本"と言うことになります。

ヒトの身体は、突きつめて考えれば、細胞の集合体です。200種類以上の細胞が、60兆個くらい集まった塊。その1個1個の細胞に小さな生命があって、それらが合わさって一人分の生命体になっています。これが私たちの存在であり、何とも不思議な現実です。多くの種類の細胞が集まって組織となり、身体の全体をつくりあげるのです。

大まかに言うと、ヒトの身体は3つの部分から成り立っています。それは、頭部と体幹と四肢です。「頭部」には、脳、そして目・鼻・口・耳があります。頭と体幹は首でつながります。「体幹」には、上半分の胸部に肺・気管(支)、心臓・大血管があり、後ろに食道が走ります。下半分の腹部では、胃・腸の消化管につながり、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓があります。その後・下方には、腎臓や膀胱、生殖腺があります。さらに、体幹から側方に向かって、「四肢」が上下2本ずつ伸びています。実際は、もっと多くの部分から成り立っていて、どの部分も特別な機能を果たします。つまり、私たちの身体とは、部分と部分がつながった産物なのです。このため、ある部分に異常が生じると、そこだけに留まらず、身体全体に影響が及びやすいわけですね。

木が自然に生い茂ると、森になります。しかし、「木」という部分、「森」という全体、を見て分かることには違いがあります。"木を見て森を見ず"と言う言葉もあるほどです。これらは深く結びついているので、"木と森をともに見る"と言う、重ね合わせの思考が欠かせません。こう考えると、私たちは、細分化して明らかになった生命の情報を、身体全体の理解につなげるべき時期に来ています。そこで本書は、現代の生命科学の観点から、体質について再び考え直すものです。

つかみどころのない「体質」ですが、ここでは「身体の全体をまとめた性質」としましょう。いわば、身体の各部分がもつ特徴を合わせた総和です。注目したいことが2つあるように思います。まずは、身体の各部分を別々に調べても見えない総合的な性質があることです。全体としては見えても、部分に分けると消失してしまうのです。さらには、体質には、"氏と育ち"という両面があることです。生まれながら備わるものがあれば、その一方、ある年齢になってはじめて現れるものがあります。つまり、遺伝が強く働くもの、生活環境のなかで新たに生じるものがあります。つまり体質とは、遺伝と環境が働き合った結果なのです。最新の生命情報を用いて、この体質を科学的に解き明かすことができないでしょうか。

私たちの身体は、ゲノムに書き込まれた遺伝情報にしたがってつくられています。「ゲノム」(設計図)を辞書に例えるなら、「遺伝子」はそこに書かれた単語のようなものです。ところが、単語を無闇やたらに並べても意味をなしませんね。辞書の中から単語を選んで、意味のある文章を作ることが肝要です。これと同じように、ゲノム上にある遺伝子を選んで使うという、遺伝子の使い方が重要になります。身体を構成する細胞の中では、使う遺伝子と使わない遺伝子に印がつけられています。この印をつけたゲノムを「エピゲノム」と言います。遺伝子とその働き方が変われば、細胞の性質は換わるでしょう。そして、身体の部分である細胞が変われば、全体にも影響を与えることでしょう。

折しも「体質改善」などが注目されている昨今です。生命科学の進歩を実感するためにも、これから私たちの「体質」について一緒に考えていきましょう。人が似ていたり、違ったりするのは、一体なぜでしょうか。身体の全体と部分とは、どんな関係にあるのでしょうか。古くから思考されてきたことなので、先人の考えと智恵を大いに取り入れることにしました。このような思考は、病気の研究に新しい視点をもたらすかもしれませんし、私たちにより良く生きるヒントを与えてくれるかもしれません。本書が「体質」についての理解を深める一助になれば、この上ない喜びです。

2015年4月

中尾 光善

■ 目次

第1章 「体質」とは何だろう?

体質という言葉の意味

体質は医学用語ではない!?

日本の医学の歩み

西洋医学と東洋医学と日本の医学

Q&A

第2章 先人たちの体質学

ベルツのもたらした西洋医学

足立文太郎の体質学

体格と性格に関する分析

Q&A

第3章 ヒトの誕生と個人差の出現

遺伝と環境の働き合い

地球時間のなかでのヒト

ヒトの顔が多様であること

親から子への3つの伝達

Q&A

第4章 体質遺伝子はあるのか

ヒトのゲノムと遺伝子

1塩基多型(SNP)とは

ポリジーンとは

Q&A

第5章 体質とエピゲノム

エピゲノムとは

一卵性双生児とエピゲノム

非コードRNAの発見

Xist非コードRNAの新たな働き

Q&A

第6章 病気の発症を予知できるか

体質と病気のリスクを調べる

エピゲノムを調べる方法

乳がんとエストロゲン

がんの体質診断はできるか

肥満、がん、腸内フローラの新たな関係

Q&A

第7章 現代人の『養生訓』

古くて新しい『養生訓』

生活習慣と身体の養生

体質は3年で換わる

Q&A

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