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- 成人先天性心疾患
商品情報
内容
循環器内科、循環器小児科、心臓血管外科だけではなく、チーム診療に携わる多職種の方を対象として、成人先天性心疾患の多方面の問題点、その特徴と対応について解説。
成人先天性心疾患をサブスペシャリティとして治療にあたるために、身につけるべき知識を網羅的に解説した、成人先天性心疾患に携わる医師に、まずは手に取っていただきたい1冊。
序文
先天性心疾患や川崎病後冠動脈瘤は,成人になっても継続的な経過観察,加療が必要です。わが国では,これらの患者さんの多くが成人となり,現在50万人近くになると推定されます。これは年間の心筋梗塞の患者数を上回ります。このため,成人先天性心疾患は,すでに循環器内科疾患の一分野と考えられています。
先天性心疾患は加齢に伴い,心機能の悪化,不整脈,心不全,血栓塞栓,突然死,再手術,感染性心内膜炎,妊娠,出産,メタボリックシンドロームや後天的な心血管合併症,非心臓手術,肝腎機能異常などにより病態,罹病率,生命予後が修飾されます。就業,保険,結婚,心理的社会的問題など成人特有の問題を抱えます。診療体制を含む移行診療も大きな問題です。心血管の解剖学的特徴,手術方法の理解,診断方法,病態の把握,治療と診療体制の把握も必要です。
成人先天性心疾患には解決すべき問題が多く,①診療への循環器科医の参加,②多科多職種のチームで構成される専門施設の確立,③認定医/専門医制度の推進,④病診連携を含めた診療体制の確立,⑤思春期になるまでに循環器内科や専門施設への移行診療を進めることなどが必要です。米国では,成人先天性心疾患を内科専門分野の一つと認め,2015年に,専門医制度が発足します。日本でも,日本成人先天性心疾患学会学術集会の教育講演, 成人先天性心疾患セミナー, 成人先天性心疾患症例検討会が定期的に開かれ,若い医師,医療従事者の教育に力を入れています。成人先天性心疾患学会が独自に学術集会をもっているのは日本だけです。日本循環器学会に成人先天性心疾患部会が,また日本心臓病学会にも,成人先天性心疾患問題検討委員会が設立されました。循環器内科成人先天性心疾患ネットワークができ,現在,33施設以上が,成人先天性心疾患の診療を開始しています。
成人先天性心疾患は,成人期の多方面にわたる問題点を含みますので,専門の医師,循環器内科や循環器小児科だけで診療のできる分野ではありません。このような観点から,成人先天性心疾患を専門とする医師,看護師を中心として,循環器内科医,循環器小児科医,心臓血管外科医,内科専門医,産科医,麻酔科医,臨床心理士などの多職種の専門家が参加するチーム診療システムが望まれています。今後10年間でさらに進歩するものと推測/期待されています。また,これらの問題は内科学と異なり,十分なエビデンスが得られていません。このため,今後共同研究を含めてデータを蓄積し,それに基づいた診療ガイドラインの確立が必要です。
患者数の持続的増加に比べ,本分野を専門とする医師数は少なく,今後,治療の中心となって働く若手医師の教育は非常に重要です。成人先天性心疾患という分野は,内科医の専門分野としてとらえられてこなかったため,成人先天性心疾患を理解するためにどのように学べばよいか,ということが理解されていません。
そこで,本書は,循環器内科,循環器小児科,心臓血管外科だけではなく,チーム診療に加わる多職種の方を対象として,成人先天性心疾患の多方面の問題点,その特徴と対応について解説しました。各章は独立した内容ですが,通読していただくことにより,成人先天性心疾患の診断法,病態と治療法の基礎的な内容を把握していただくとともに,最新の知識,動向,今後の方向性についての一端を理解していただけると考えています。
本書の完成にあたり,本分野に関して広くご教示をいただき,喜んでいただいている恩師のAhmanson UCLA ACHD Center,故Joseph K Perloff教授に深甚なる感謝を申し上げます。校正で常に援助を受けた妻の丹羽淳子に感謝するとともに,サポートをいただいた千葉県循環器病センター,聖路加国際病院の関係者,メジカルビュー社の山田麻祐子さんに感謝申し上げます。
平成27年1月
聖路加国際病院心血管センター特別顧問
丹羽公一郎
目次
第1章 成人先天性心疾患診療に必要な基礎知識
成人先天性心疾患の問題点と今後の方向性
概要/頻度/問題点/現状と今後の方向性
自然歴(未手術歴),心臓血管手術後歴の問題点
遺伝子異常,染色体異常
概要/多因子遺伝性疾患/染色体異常症候群/隣接遺伝子症候群/責任遺伝子が判明した疾患
チアノーゼ性先天性心疾患の非手術歴(自然歴)
概要/ Fallot 四徴/修正大血管転位/完全大血管転位/両大血管右室起始/総肺静脈還流異常/総動脈幹症/心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖(純型肺動脈閉鎖)/単心室/無脾,多脾症候群/三尖弁閉鎖
不整脈の特徴と診断,治療
概要/不整脈の種類と原因・メカニズム/突然死/不整脈診断/不整脈治療
心不全の特徴と診断,治療
概念/症状/成因/慢性心不全の治療/薬物療法
チアノーゼ性ACHDの全身多臓器合併症
概要/赤血球増多症に伴う症状:過粘稠度症候群,出血凝固異常/腎合併症/末梢血管拡張/冠動脈異常/コレステロール,脂質代謝異常と冠動脈粥状硬化/四肢の異常/運動に対する特異的心肺反応/ビリルビン代謝異常/飛行機旅行
感染性心内膜炎
成人先天性心疾患における感染性心内膜炎の特徴,治療,予防法/基礎心疾患別リスク/診断/治療/予防
妊娠出産・避妊,育児
妊娠出産の適応と注意点
概要/心疾患婦人の妊娠の頻度と妊娠出産時の問題点/妊娠時の合併症と管理/妊娠出産のハイリスクCHD と管理
妊娠出産と避妊,周産期と育児
概要/妊娠・分娩が母体の循環動態へ及ぼす影響/妊娠前カウンセリングと周産期リスク評価/周産期診療における注意点/分娩方法と留意点/産後診療における注意点(育児,母乳授乳の負担について)
心臓血管麻酔と産科麻酔
心臓血管麻酔
概要/分類/術前評価/危険因子/麻酔管理
産科麻酔
概要/麻酔前評価/麻酔法の選択/区域麻酔と抗血小板・抗凝固療法/経腟分娩の麻酔(無痛分娩)/帝王切開の麻酔/出産後の管理
心臓,心肺移植
ACHD の心臓移植/待機中合併症および死亡に影響する因子/移植後合併症および死亡に影響する因子/多臓器移植と再移植の問題/ ACHD の心肺同時移植/課題と今後の展望/心臓移植の適応ガイダンス
ACHDにおける後天性心血管合併症
チアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)患者の冠動脈形態/ CCHD の冠動脈灌流と冠動脈血流予備能/チアノーゼ性ACHD の冠動脈疾患の発生頻度/ CCHD で冠動脈疾患の発生頻度が低い要因/ ACHD と冠動脈疾患/ 心血管疾患の合併
診断法
ACHDにおけるMRI,CT,エコーの有用性と右心機能評価
マルチモダリティ時代の成人先天性心疾患(ACHD)画像診断の特徴/術後のACHD 画像診断における解剖学的理解/ ACHD 画像診断の流れ/各モダリティの特徴/マルチモダリティ時代のACHD 画像診断:今後の展望/右心機能評価の実際
心肺機能評価と心臓リハビテーション
心肺運動負荷検査とは/心肺運動負荷試験の臨床的有用性/心肺運動負荷検査の手順/心肺運動負荷検査の結果解釈/心臓リハビリテーション
心臓カテーテル検査
成人先天性心疾患におけるカテーテル検査/カテーテル検査の目的/心臓カテーテル検査前の準備/心臓カテーテル検査の実際/注意するべきポイント/心房中隔欠損における心臓カテーテル検査の実例
侵襲的治療法
カテーテル治療
概要/心房中隔欠損/動脈管開存/さまざまな血管塞栓術/術後の右室流出路狭窄,肺動脈狭窄
心血管外科手術
概要/成人期手術の初回手術/修正大血管転位などの体循環右室/再手術/周術期,手術成績
第2章 各論:非チアノーゼ性
心室中隔欠損・Valsalva洞動脈瘤
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期初回修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
心房中隔欠損
概念/解剖学的特徴/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と経過観察の実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
房室中隔欠損
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
動脈管開存
概念/解剖学的特徴/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
右室流出路狭窄
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
左室流出路狭窄性疾患
大動脈二尖弁(BAV)
概念/解剖学的特徴/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と実際
大動脈弁上狭窄
概念/解剖学的特徴と病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療
大動脈弁下狭窄
解剖学的特徴と病態生理/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と実際
妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
妊娠出産/心内膜炎の予防/運動の注意点
大動脈縮窄・離断
概念/解剖学的特徴と血行動態/修復術後の問題点/診断/治療/予後/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
Ebstein病
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
冠動脈異常
冠動静脈瘻
概念/解剖学的特徴と病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断の着目点/治療・管理/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
左冠動脈肺動脈起始:Bland-White-Garland 症候群
概念/解剖学的特徴と病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断の着目点/治療・管理/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
左冠動脈対側大動脈洞起始
概念/解剖学的特徴と病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断の着目点/治療・管理/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
大動脈拡張性疾患と血管機能不全
概念/大動脈拡張性疾患/大動脈拡張性疾患と血管機能不全/血管機能の評価方法/治療
川崎病,冠動脈瘤
概念/川崎病血管炎の病理学的推移/川崎病患者の予後/冠動脈病変への薬物治療/冠動脈狭窄病変に対する治療
第3章 各論:修復術後のチアノーゼ性先天性心疾患
Fallot四徴
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖,肺動脈弁欠損
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期初回修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
完全大血管転位
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
修正大血管転位
概念/解剖学的特徴/病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
両大血管右室起始
概念/解剖学的特徴,および血行動態/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/再手術/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
総動脈幹症
概念/解剖学的特徴/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/検査所見/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
純型肺動脈閉鎖(Fontan例を除く)
概念/解剖学的特徴:血行動態と病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の注意点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
総肺静脈還流異常
概念/解剖学的特徴/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
heterotaxy(Fontan例を除く)
概念/解剖学的特徴と病態生理/小児期修復術/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療,注意点と実際
Fontan術後
概念/解剖学的特徴/病態生理/診断/予後/外来管理
肺高血圧,Eisenmenger症候群
概念/解剖学的特徴/循環動態/病態生理/臨床経過および生命予後と問題点/診断/経過観察と治療/経過観察の問題点と実際/妊娠出産,心内膜炎,運動の注意点
第4章 診療体制と心理社会的問題
診療体制と移行
診療体制と移行
概要/移行期医療の確立/成人期医療体制/専門医制度
多職種の役割(特に看護師)
成人先天性心疾患診療にかかわる多職種/現状と課題
心理的社会問題とQOL
心理的特徴
先天性心疾患患者の心理的特徴/心理的問題への対応
QOL
QOL とその評価/成人先天性心疾患患者のQOL / QOL の向上に何が必要か
保険・社会保障
社会保障制度/就労支援について
第5章 Appendix
ACHD関連のweb,ガイドラインの紹介
学会・関連団体ホームページ/ ACHD ガイドライン/画像関連/妊娠出産関連/その他,ACHDの学習に役立つサイト
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書籍情報
- ISBN:9784758314213
- ページ数:322頁
- 書籍発行日:2015年1月
- 電子版発売日:2016年4月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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