第一線呼吸器科医が困った症例から学んだ教訓

  • ページ数 : 200頁
  • 書籍発行日 : 2017年3月
  • 電子版発売日 : 2019年2月20日
¥6,380(税込)
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商品情報

内容

メンターからの一喝!
「そろそろ失敗談を語ってもいいのではないか」監修者のその言葉から企画は始まった。一流医師にも勘違いをした過去があったのだ。悩んだ症例から、彼らが学んだ教訓とは?
第一線で悩み苦しみ,成功の喜びを味わっている現場の医師が,迷いながら行った医療を文字にして,臨場感を示しながら,いかに知識として体系化したかの過程と,その経験して体系化した科学を,ほかの臨床医の間で共有したいと考えた。

序文

本書を上梓するに当たって─経験を科学へ─

筆者は1969年大学卒業後,医局在籍は1年半(実質大学での研修は半年)で医局を辞し,関連(連携)病院ではない一般病院に入職した。

大学は呼吸器の一般病床は8床と少なかったが,勤務先病院は45床くらいあるので症例が多く臨床医となるにはベターと考えた。その他の理由は2つあった。

一つ目は,当時大学に残っているほかのグループの先生方は研究が中心であり,自分の専門診療以外は興味を示さなかったが,時代的にそれがほかの大学でも同じような状況にあった。二つ目は,当時の臨床現場は経験だけを頼りにする大雑把な議論であり,また文献検索が不自由な時代であり質問すると「自分で勉強しなさい」という雰囲気であった。

しかし,私の入局少し前に米国でチーフレジデントを終了した先輩が帰国されており,臨床データに基づく白熱した議論をしているのを目の前にして,科学的視点をもった臨床医になりたいと考えた。呼吸器には個人として尊敬する,臨床に対する勘が鋭く,可能なかぎり論文を読み漁って臨床教育をする先生はいたが,医局内では異端視されていた。

新しい勤務先病院では多数の指導医がいたが,当時の日本の臨床医は経験がすべてに近く,論文もほどほどに読む程度で,お互いの経験を積み重ねて議論をしており,一例を体系化して科学にする努力はなされていなかった。

経験した例を中心に文献を読み類縁疾患を含めて,その疾患に対する知見を体系化する作業は,その後の臨床を進めるうえで血となり肉となり,一回り大きい臨床医,すなわち問題点を見逃さない科学的視点をもった臨床医となるためには必要である。しかし少人数で臨床を行っていると,いわゆる我流の医療となり,経験の積み重ねが経験として止まり,日常業務の忙しさもあり知識は体系化されていないことが多い。

本書は第一線で悩み苦しみ,成功の喜びを味わっている現場の医師が,迷いながら行った医療を文字にして,臨場感を示しながら,いかに知識として体系化したかの過程と,その経験して体系化した科学を,ほかの臨床医の間で共有したいと考えた。著者らの呼吸器病床は総数で400床にも上り,日本で呼吸器としては有数な病床数となるうえ,著者が9年間在籍した筑波大学で夜遅くまで,症例検討を行った苦労をともにした仲間が多く,私の最後の臨床呼吸器科医へのアドバイスとして本書をその集大成にしたいと考えている。

それぞれの施設は第一線の病院であり,紹介患者など,以前の検査データや臨床経過がわかった例をみる大学病院と違って,症例のバラエティや症例の日々の変化のダイナミズムは素晴らしく,その経験した症例である原石を見つけ出し磨き上げ,科学的知識として共有したいと考えた。執筆者の皆さんの臨床に対する情熱は並々ならぬものがあり,それを個人の経験に止めておくのは資源の有効活用の面から損であると考えた。

したがって,喝としてのスローガンは本人たちの反省であり喜びであり,メンターとしての私の激励でもある。大きな病院といっても大学と違って特定の疾患を蓄積して臨床データを発表するのは至難であり,一例一例を丁寧に纏めあげて本著者のように発表するのがよいと思う。

一般に臨床データ,症例解析,病態などの書物類は,比較的時間に余裕のある大学で臨床を行っている先生方が,個々の体験を積み上げた経験ではなく,総論的に発表されることが多い。一例一例を積み上げた臨場感溢れる報告は第一線の病院で働く臨床医が報告することが望ましい。

私は病院も大学も両方経験した経歴があり,両者のメリット,デメリットを十分理解しているつもりであり,本著はその一端,病院のメリットを代表する貴重な本と考える。第一線の現場で日々患者に向き合っている臨床医と情報を共有し,ほかのグループからも本著のような本が発表されるのを期待したい。


2017年1月吉日
吉澤 靖之

目次

CASE 1 症状(発熱),画像パターン(結節性空洞,すりガラス影)

壊死物質による吸引性肺炎の経過中に薬剤性肺炎を発症し多彩な陰影を呈した肺癌の症例

CASE 2 症状(呼吸困難,背部痛),画像パターン(胸膜病変,胸水貯留)

リンパ球優位かつADA高値の胸水貯留より結核性胸膜炎が疑われたが,確定診断のための胸膜生検で癌性胸膜炎と診断された症例

CASE 3 症状(喘鳴,呼吸困難),画像パターン(無気肺)

喘息様症状を主訴とし,高度の無気肺を呈した肺血栓塞栓症の症例

CASE 4 症状(発熱,呼吸困難),画像パターン(間質性陰影,非線維化性―すりガラス影主体)

ARDSに対してステロイド治療を開始したところ粟粒影が明確となった粟粒結核の症例

CASE 5 症状(胸痛,呼吸困難),画像パターン(肺胞性陰影)

抗凝固療法が効果なく症状が進行し,PCPSを導入して救命したが,その後多彩な合併症が出現した肺血栓塞栓症の症例

CASE 6 症状(発熱),画像パターン(多発性結節性陰影,空洞性陰影)

多発性筋炎に対してステロイド治療中に急速な経過で多発性空洞病変を形成し,多量排菌を来した肺結核の症例

CASE 7 症状(羞明,咳嗽),画像パターン(結節性陰影)

全身性のサルコイド反応を合併し,病期診断に苦慮した肺癌の症例

CASE 8 症状(発熱),画像パターン(多発性結節影,遊走)

移動する肺結節影が先行したリンパ腫様肉芽腫の症例

CASE 9 症状(発熱,呼吸困難),画像パターン(肺胞性陰影,容積減少)

マクロライド,ステロイド薬の投与にもかかわらず重症化したマイコプラズマ肺炎の症例

CASE 10 症状(発熱,呼吸困難),画像パターン(肺胞性陰影,再燃)

呼吸困難・意識障害で発症したインフルエンザによる肺炎,脳炎,ARDSの症例

CASE 11 症状(呼吸困難),画像パターン(すりガラス影)

画像所見に不釣り合いな低酸素血症から診断に至った肝肺症候群の症例

CASE 12 症状(咳嗽),画像(無気肺陰影)

内視鏡所見と詳細な吸入歴聴取により診断に至ったbronchial anthracofibrosisの症例

CASE 13 症状(睡眠時無呼吸),画像パターン(奇異性声帯運動)

睡眠時無呼吸を認め,奇異性声帯運動を確認し得た多系統委縮症の症例

CASE 14 症状(発語困難),画像パターン(脳梗塞巣)

35歳の若さで脳梗塞を発症し,肥満低換気症候群と診断された症例

CASE 15 症状(労作時呼吸困難),画像パターン(肺胞性陰影,容積減少)

レジオネラ肺炎治療後に労作時呼吸困難が進行した続発性の器質化肺炎症例

CASE 16 症状(労作時呼吸困難),画像パターン(間質性陰影,容積減少)

典型的臨床所見を欠いた抗ARS抗体(抗KS抗体)陽性間質性肺炎の症例

CASE 17 症状(労作時呼吸困難),画像パターン(肺動脈造影,血管の狭小化・途絶)

血栓内膜除去術で肺高血圧は改善したが呼吸不全が増悪した慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対して,バルーン肺動脈形成術が有効であった症例

CASE 18 症状(自覚症状なし),画像パターン(心エコー,肺高血圧)

著明な肺高血圧があるにもかかわらず労作時低酸素血症を認めないことを契機に診断し得た多発性末梢性肺動脈分枝狭窄症の1例

CASE 19 症状(発熱,咳嗽),画像パターン(浸潤影,空洞)

肺結核時に併存した気管支結核による気管支狭窄が原因と考えられた肺化膿症の症例

CASE 20 症状(喀痰,咳嗽),画像パターン(粒状影,浸潤影)

気道病変にクラリスロマイシンが奏功していたが,経過中にアレルギー性気管支肺真菌症が顕性化したヤング症候群の症例

CASE 21 症状(喀痰,咳嗽),画像パターン(粒状影,浸潤影)

慢性咳嗽を主訴に受診し,初発症状から40年が経過し,心,肺,肝,脾,皮膚の多臓器に活動性病変が明らかとなったサルコイドーシスの症例

CASE 22 症状(呼吸困難),画像パターン(浸潤影)

手のこわばりが先行し,びまん性肺胞出血による呼吸困難で発症した高齢SLEの症例

CASE 23 症状(発熱),画像パターン(空洞影)

食欲不振と発熱で受診し,播種性Mycobacterium intracellulare症と診断された肺非結核性抗酸菌症の化学療法・外科治療歴のある高齢女性の症例

CASE 24 症状(発熱),画像パターン(浸潤影,空洞影)

比較的若年で発症し,肺食道瘻が繰り返す増悪に関与したと考えられたMycobacterium abscessus肺感染症の成人女性症例

CASE 25 症状(咳嗽),画像パターン(浸潤影)

肺結核の標準治療後,同時に存在していた気管支結核からの菌体成分に由来する器質化肺炎が出現した症例

CASE 26 症状(発熱,食欲不振),画像パターン(浸潤影,胸水)

肺浸潤影・胸水貯留で発症し,播種性結核に播種性クリプトコッカス症の合併が明らかとなった高齢女性の症例

CASE 27 症状(検診),画像パターン(血管陰影)

健診胸部X線検査を契機に診断された血管奇形の2例

CASE 28 症状(血痰),画像パターン(空洞,多発結節影)

肺NTM症で治療中に肺炎を繰り返し,病原性のある菌が複数認められた症例

CASE 29 症状(喀血),画像パターン(すりガラス陰影)

同一部位に周期的すりガラス陰影の出現した若年女性の症例

CASE 30 症状(労作時呼吸困難),画像パターン(肺嚢胞)

肺を破壊する浸潤影および進行性嚢胞を呈した肺MAC症の症例

CASE 31 症状(意識障害),画像パターン(空洞影)

空洞が急速に拡大する浸潤影を呈した肺ムコール症の症例

CASE 32 症状(胸部異常陰影),画像パターン(空洞影)

結核様肺病変を認めた慢性肉芽腫症の症例

CASE 33 症状(自覚症状なし),画像パターン(胸水)

健診にて右胸水貯留を指摘され,局所麻酔下胸腔鏡では確定診断に至らなかった悪性胸膜中皮腫の症例

CASE 34 症状(胸痛,呼吸困難),画像パターン(多発性嚢胞)

繰り返す気胸を発症し,さまざまな合併症により治療に難渋した結節性硬化症の1例

CASE 35 症状(発熱,倦怠感,呼吸困難),画像パターン(広範囲浸潤影)

肺炎が著明改善しながらも,DIC,血球貪食症候群などの併発により救命し得なかったレジオネラ肺炎の症例

CASE 36 症状(咳嗽,喀痰),画像パターン(腫瘤影)

肺癌との鑑別に苦慮したアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の症例

CASE 37 症状(発熱,呼吸困難),画像パターン(びまん性粒状影)

両肺にびまん性粒状影を認め,特異なmosaic perfusion patternを呈した慢性肺血栓塞栓症合併粟粒結核の症例

CASE 38 症状(発熱),画像パターン(空洞性陰影,浸潤影)

慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)にアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の合併が疑われた症例

CASE 39 症状(呼吸困難),画像パターン(大量胸水)

肝硬変患者の右大量胸水をインジゴカルミン腹腔内投与で肝性胸水と診断した症例

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書籍情報

  • ISBN:9784771904767
  • ページ数:200頁
  • 書籍発行日:2017年3月
  • 電子版発売日:2019年2月20日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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