終末期医療のエビデンス

  • ページ数 : 692頁
  • 書籍発行日 : 2017年12月
  • 電子版発売日 : 2018年3月30日
¥19,800(税込)
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商品情報

内容

時として切り出すことが極めて難しい言葉を、医師として自信をもって話すために!終末期医療と緩和ケアに関する約4000もの研究論文をレビューした、JAMAエビデンスの集大成

■主な内容
・重症患者と終末期の話し合いを始める ~"触れたくない重要な問題"に取り組む
・事前指示書を超えて ~終末期ケアでのコミュニケーションスキルの重要性
・重症者のケアにおける意見衝突に対処する ~それはまったく問題外だった
・肺疾患がかなり進行した患者の呼吸困難管理 ~いったん失うと、取り戻すのは難しいもの…
・終末期患者の難治性悪心と嘔吐の管理 ~いつも吐き気がして…何も効いていなかった
・フレイル高齢者に対する緩和ケア ~できたらいいのにと思うのに、もうできないことがある…
などの42章

序文

発刊に寄せて

我々は...患者を痛みと苦痛から解放して、彼らを理解し、決して彼らを失望させないだけでなく、無言でいること、耳を傾ける方法、そしてただそこに付き添う方法も学ばなければならない。
シシリー・ソンダース(1918~2005):近代ホスピス運動の創始者

英国ロンドンのSt Joseph's Hospice で緩和医療の若手医師として働いていた私は、肺癌で死に面していた患者のための腰椎神経ブロックを計画した。しかし、彼の主な問題は、末梢動脈疾患に起因する重度の腓腹部と足部の疼痛であり、その痛みのために彼は毎晩眠れなかった。ブロックの後、彼は痛みがなくなり、一時的により活動的になれたことを喜んだ。「なぜ」と彼は私に尋ねた。「誰もこの治療をもっと前にできなかったのですか?この痛みは何年も続いていたのに」。そして後に尋ねた。「それから、あなたが治療するのは私の肺癌で、私は死に近付いているのに、なぜあなたはこれを行うのですか?」

この遭遇は、進行性疾患患者の予後が短くなると、治療選択肢が変わる場合があることを私に教えた。臨床医はみな、緩和ケアで働く我々のような医師だけでなく、この視点を生かして、患者が死ぬまでよりよく生きる手助けをし、そうする中で、彼らの家族を支援することができる。臨床医としての我々の仕事は、ホリスティックに考えることである。当時、私の患者の主な問題は疼痛だった―そして私の仕事は、その原因を解明し、ベネフィットとリスクのバランスを検討しながら、有効な治療を探すことだった。

『Care at the Close of Life: Evidence and Experience』は、進行疾患がある人々へのケアの進化における重要な節目となる―そのことを、編集者ならびに著者そしてJAMA(Journal of the American Medical Association)は、誇りに思うべきである。このような話題は、医療が技術的に進歩し細分化されるにつれて、見過ごされることが多く、もっと悪いことに避けられてしまうこともあるが、JAMA がこの主題で一連の記事を掲載するという先見の明をもっていたことは素晴らしい。そして、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の緩和ケア病棟で働く医師チームが、この一連の記事を編集し、現在、それらをこの本にまとめる手助けをするという難題に取り組んだことが素晴らしかった。

本書が、著者と編集者によって、幅広い状況や状態を見据えた広い視野を備えていることは称賛に値する。現代の緩和・ホスピスケアは癌治療を基礎として始まったが、癌患者は死亡者の約4 分の1 を占めるにすぎない。死に面した患者が、私の患者のように複数の疾患を抱え、それらすべてに治療が必要な場合が増えている。最近のデータでは、癌患者だけでなく、心不全や慢性閉塞性肺疾患、HIV/AIDS、神経疾患、腎不全など数多くの疾患の患者でも、症状のコントロール、精神的な問題、コミュニケーションの問題、情報のニーズがあり、たとえ患者が積極的な治療を受けている場合でも、等しく重要であることが示されている。このように背景が異なる中で、これらの問題を話し合い、言うべき適切な言葉を見付けることは困難な場合が多い。

本書には、癌に関する章だけでなく、アルツハイマー病、心不全、肝不全、筋萎縮性側索硬化症、HIV/AIDS、老年期のフレイル―多くがよく見られる疾患であり、すべてに共通の懸念がある―に関する章も収められている。また本書のアプローチは、治癒がもはや不可能と判断されたときに始まる突然のカットオフポイントではなく、疾患の全体を通して、延命の可能性がある方法とともに、ケアの道筋の一部として緩和・ホスピスケアに取り組んでいる点でも、望ましいものである。緩和ケアは、地域医療やホスピスに不可欠なだけでなく、急性期医療や集中治療の現場で、また刑務所などの顧みられない場所でも欠かせないものである。最後に、多くの重要な症状(疼痛、息切れ、吐き気など)と、多くの重要な問題(コミュニケーション、予後判定、尊厳の維持、感情的・スピリチュアルな不安、家族介護者の支援、悲嘆・死別反応、文化的・個人的状況と希望など)が、無視されている場合があまりにも多いことを考えると、本書の包括的なアプローチは望ましい。大変な場合が多いが報いの大きいこのケアを提供する際の、臨床医のニーズも考慮されている。

本書ではエビデンスが重視されている点が重要である。患者の生存期間がわずかしかないとき、2 回目のチャンスはないことが多いため、最初の試みで適切な治療を行うことが極めて重要である。残念なことに、あるときは研究資金提供者や治験審査委員会などのグループが、死に面した患者の研究に対してニヒリスティックなために、またあるときは、様々な理由の中でも特に、エビデンスがなくても患者に何かしてあげたいという善意から出る願望のために、この分野の研究は依然として不足している。患者自身は、自らの症状や他の患者の症状を助けるための研究を強く支持する場合が多いため、厳密なエビデンスのない事態は不幸である。本書では、取り上げられた各側面の知識の状態が示されており、すべての章が、もとの記事がJAMA に掲載された後に改訂されている。さらに、提示された事例は実例に基づいている:1 章「重症患者と終末期の話し合いを始める」では、終末期の話し合いをどのように開始すればよいかが説明されている;3 章「終末期近くの危機の際の意思決定」では、困難な決定をどのように下せばよいかが説明されている;9 章「終末期での疲労の緩和的管理」では、疲労をよりうまく管理する方法が述べられている;11 章「終末期の激越とせん妄」では、せん妄と激越にどのように対処すればよいかが説明されている―そしてさらに多くの内容が含まれる。従って、本書は最前線の臨床医にとって非常に貴重なものとなり、実際に終末期のケアはほぼすべての医療の専門分野や現場で一部をなしていることから、すべての医療従事者にとってかけがえのないものとなるであろう。

我々は英国のロンドンで、緩和ケア専門の研究所であるCicely Saunders Institute を開設するところである。このような研究所は初めてであり、進行疾患があるすべての人を対象に、彼らがケアを受ける場所を問わず、緩和ケアのエビデンスと実践を推進するという構想をもっている。我々が重視するのは―本書や緩和ケアの原則と同様に―患者と家族をケアの中心に置き、身体的・感情的・社会的・スピリチュアルな問題すべてに配慮した、学際的なケアである。本書の各項の意図と同様に、我々の施設では、神経科医、老年科医、腎臓内科医、救急医、集中治療医、腫瘍内科医、心臓病専門医やその他多くの臨床医と協働する緩和ケアモデルを構築するに当たり、極めて協調的であるように努める。救急病院に基礎を置く緩和ケアチームとは別に、医師やその他の医療従事者を学部と大学院の両レベルで訓練する、主要な教育プログラムを用意している。この施設では、エビデンスの基礎を拡大し、様々な環境や文化で新しい治療を評価する方法と簡便な指標などの、本書の各章をさらに裏付けるための、研究を実施する予定である。さらに、教育では、学生が次世代の緩和ケアのニーズに対応できるように、本書のような書籍を彼らに喜んで推薦する。

世界中で社会の高齢化が進んでおり、この事実は、ケアを必要とする患者の数と性質、ケアが提供される環境、そのようなケアの経済的効果に著しい影響を及ぼすことになる。慢性疾患や進行性疾患またはフレイルの期間に終末期が続くことが増え、いつ死が訪れるかの予測がさらに困難になることも多い。逆説的だが、治療の進歩により遺伝性疾患やその他の疾患がある小児の早期死亡が防止され生存が改善し、癌治療が第5 選択や第6 選択の化学療法薬に進み、人々が複数臓器移植を受けられるようになり、抗レトロウイルス薬によりHIV/AIDS 患者の余命が延長し、そして、人々がますます高齢まで生きるようになるにつれて、緩和ケアの必要性は高まる。我々は、疾患の症状を治療し、併存疾患や、根治的治療の長期的な有害作用を管理し、ますます高齢化し自身の健康問題や社会的不安を抱える患者や家族・介護者を支援しなければならなくなる。従って、緩和ケアは医学と医療全体において必要不可欠であり、他の専門分野とより密接に統合されなければならない。すでに、緩和・ホスピスケアは世界中に拡大しており、世界中のあらゆる国々で、地域ごとに解釈された形で存在する。それらは資源の豊富な国でも資源の乏しい国でも等しく必要とされる。本書は、重篤な進行性の末期疾患がある患者の治療と経験を改善し、終末期が近付いても人々がよりよく生きることを可能にし、死に際した患者と家族を支援するために、エビデンスの基礎の更新・拡大により、我々がこれらのニーズに対応し、それらを満たすのを助けてくれるであろう。


Irene J. Higginson, BMBS, PhD, FFPHM, FRCP
Department of Palliative Care, Policy and Rehabilitation
Cicely Saunders Institute
King's College London
London, England, UK

目次

発刊に寄せて

原著編集者による序文

執筆者一覧

A.コミュニケーションの問題

1 章 重症患者と終末期の話し合いを始める:「触れたくない重要な問題」に取り組む

2 章 事前指示書を超えて:終末期ケアでのコミュニケーションスキルの重要性

3 章 終末期近くの危機の際の意思決定

4 章 重症者ケアでの意見対立に対応する:「それはまったく問題外だった」

B.症状の管理

5 章 進行癌患者の急性疼痛発作を管理する:「これはコードに相当する危機である」

6 章 肺疾患がかなり進行した患者の呼吸困難管理:「いったん失うと、取り戻すのは難しいもの...」

7 章 終末期患者の難治性悪心・嘔吐の管理:「いつも吐き気がして...何も効いていなかった」

8 章 フレイル高齢者に対する緩和ケア:「できたらいいなと思うのに、もうできないことがある...」

9 章 終末期での疲労の緩和的管理:「私の体は使い古されてしまったようだ」

10 章 転移癌が進行した患者の脊髄圧迫:「私にとって大事なことは、歩き、自分の人生を生きること」

11 章 終末期の激越とせん妄:「我々は彼に対処できなかった」

C.疾患の管理

12 章 アルツハイマー病:「いいのよ、お母さん。もしお母さんが逝きたいなら構わないわ」

13 章 透析中止に当たって実際に考慮すること:「その選択肢があるのはありがたいことだ」

14 章 後期HIV/AIDS に対する治療と緩和の誤った二分法を克服する:「できなくなるまで、私が生きたいように生きさせてください」

15 章 心不全患者の緩和ケア

16 章 肝移植候補者に緩和ケアを統合する:「移植するには体調が良すぎて、生きていくには具合が悪すぎる」

17 章 筋萎縮性側索硬化症患者の緩和ケア:「最悪の事態に備えつつ、最良を希望する」

18 章 頭頸部癌患者の緩和ケア:「普通のライフスタイルに早く戻りたい」

D.患者の管理に関するその他の問題

19 章 進行癌の予後予測における複雑な問題:「本人の望み通りに生きる手助けをする」

20 章 死期が迫る小児癌患者のケア:「生き延びる人たちもいる。僕はその1 人になりたい」

21 章 小児の突然の外傷死:「あらゆる手を尽くしましたが、お子さんは助かりませんでした」

22 章 終末期での化学療法の役割:「いつやめるべきなのか?」

23 章 最後の数日の緩和ケア:「そのときを迎える覚悟ができている」

E. 心理面・社会面・スピリチュアリティに関する問題

24 章 終末期に生じうる心理的問題と成長・自己超越:可能性というアート

25 章 死別を経験した患者のケア:「どのドクターも突然いなくなってしまう

26 章 青年期の悲嘆:「ずっと実感がありませんでした......現実になるまでは」

27 章 尊厳を守るケア―緩和ケアの新しいモデル:「自分には価値がある」と患者が感じられるように

28 章 終末期の家族介護者に医師ができるサポート:「自宅介護者は、何が分からないかが分からないのです」

29 章 死にゆく患者のケアでのスピリチュアルな問題:「......神と私の間では、それでいいんだ」

F.倫理的な問題

30 章 医師幇助自殺の要望に対応する:「これは、私たち双方にとって、海図のない海域です」

31 章 死に瀕した患者の緩和的鎮静:「ほかの方法がすべてうまくいかなかったときに、それを考えます

G.異なる文化と特別な集団の問題

32 章 終末期での異文化間の問題に折り合いを付ける:「その人が住んでいる所に行かなければならない」

33 章 ラテン系患者と家族のための緩和ケア:「祈りを捧げると、いつも彼女は涙を流す」

34 章 ホームレス患者のための終末期医療:「彼女は、どんな状況でもそこにいて私を助けると言う」

35 章 受刑者のための緩和ケア:「私を刑務所で死なせないでください」

H.ケアの環境(構造的な問題)

36 章 ホスピスとその他のサービスの役割:死期が近い患者とその家族を支える

37 章 病院での2 次・3 次緩和ケア

38 章 生命維持の中止:終末期の集中治療

39 章 急性期ケア環境後の緩和ケアのニーズ:「亡くなるそのときまで生きる手助けをする」

40 章 終末期の患者と家族を質の高い緩和ケアに紹介する:「これほど思いやりと共感を示してくれる医師は初めてです」

I.医師のセルフケア

41 章 死が迫った医師のケア:聴診器の向こう側

42 章 終末期患者をケアする医師のセルフケア:「つながっていること...私が生き抜くための秘訣」

各章の設問の答え

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書籍情報

  • ISBN:9784822239596
  • ページ数:692頁
  • 書籍発行日:2017年12月
  • 電子版発売日:2018年3月30日
  • 判:A4変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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