臨牀消化器内科 2018 Vol.33 No.2 自己免疫性膵炎(AIP)

  • ページ数 : 112頁
  • 書籍発行日 : 2018年1月
  • 電子版発売日 : 2019年3月6日
¥3,025(税込)
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商品情報

内容

消化器の臨床現場になくてはならない最新情報をお届けすべく,1986年1月に創刊。

【特集】自己免疫性膵炎(AIP)
・自己免疫性膵炎の疾患概念―IgG4関連疾患としてのAIPの位置づけ,1型と2型の相違
・病理からみた自己免疫性膵炎―その発生機序を含めて
・自己免疫性膵炎の発症機序
 他

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序文

巻頭言

自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)とIgG4 関連疾患(IgG4‒related disease;IgG4‒RD)は,いずれもわが国より発信された新規疾患である.

AIP と高IgG4 血症の提唱以前には,1892 年のMikulicz らによる涙腺・唾液腺の腫脹を特徴とするMikulicz 病1),1961 年のSahle らの高γグロブリン血症を伴う膵炎,1967年のComings らの全身各臓器の線維硬化性病変を特徴とするFamilial multifocal fibrosclerosis2),1972 年のRäsänen らの硬化性唾液腺の炎症性腫瘤(Küttner tumour)3)など,一見関連のなさそうな疾患概念が提唱されていた.いずれも独立した疾患概念としての確立には至らなかったが,一連の疾患概念のうち高γグロブリン血症を伴う膵炎に対して1995 年,Yoshida らがAIP の概念を提唱4)して以降,おもにわが国を中心とするAIP 研究がIgG4‒RD の進歩に大きく貢献してきた.とくに,一連の研究のエポックメーキングとして2001 年のHamano らによるAIP に特徴的な高IgG4 血症の報告5)が挙げられる.この報告を契機に,IgG4 と各臓器病変の研究が新たな展開をするに至った.

AIP の膵外病変としての涙腺・唾液腺病変は黎明期にはシェーグレン症候群(Sjögren's syndrome;SjS)と考えられていたが,SjS に特徴的な抗SS‒A 抗体,抗SS‒B 抗体が陰性であることや,病理学的にIgG4 陽性形質細胞の浸潤が歴史的にSjS 亜型に分類されていたMukulicz 病の病変に類似していることより,IgG4‒Mikulicz 病として提唱されるに至った.また,原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis;PSC)と考えられていた胆管病変もステロイドに反応することや,病理組織学的所見よりPSC とは異なる病態であることが明らかにされた.同様に,後腹膜腔(後腹膜線維症),腎,甲状腺,呼吸器,中枢神経系,動脈などにもきわめて類似する病変が報告され,これら一連の病変は病理学的に著しいIgG4 陽性形質細胞浸潤や高IgG4 血症で包括される全身的疾患の可能性が高いと認識されるようになった.AIP から他臓器病変の合併頻度をみると,硬化性胆管炎の頻度がもっとも多く60~80%を占めるが,唾液腺・涙腺病変は14~40%程度,腎病変,後腹膜線維症,呼吸器病変は10~20%程度と臓器により合併病変の頻度は多少異なる.

各臓器病変の研究の進歩により2009 年に厚生労働省(厚労省)難治性疾患克服研究事業として組織された二つのIgG4 関連疾患に関する研究班(岡崎班,梅原班)により,2010 年には統一病名である「IgG4 関連疾患(IgG4‒related disease)」とともに世界に先駆けてIgG4 関連疾患に対する包括診断基準が提唱された.さらに,2011 年にボストンで開催された国際シンポジウム(International Symposium on IgG4‒related disease)によりIgG4‒RD の疾患名が国際的に認知され,膵におけるType 1 AIP(IgG4‒related pancreatitis),胆管におけるIgG4‒related sclerosing cholangit(i IgG4‒SC)をはじめとした全身各臓器の病変名称とともに病理診断のコンセンサスも提唱され,わが国では2015年に厚労省の特定疾患に指定された.

この間,2010 年にはIgG4‒RD の研究を先導してきたAIP においても,わが国に多い1 型AIP と,欧米に多い2 型AIP〔好中球による膵管上皮の破壊像(granulocytic epithelial lesion;GEL)を特徴するidiopathic duct‒centric chronic pancreatitis(IDCP)〕に分ける亜分類と,国際コンセンサス診断基準〔(International consensus diagnostic criteria(ICDC)for AIP〕が提唱された.AIP は包括的に「しばしば閉塞性黄疸で発症し,時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎でありリンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とし,ステロイドに劇的に反応することを治療上の特徴とする」と定義されたが,1 型AIP と2 型AIP とは異なる病態である.

わが国におけるAIP の患者数は確実に増加しており,厚労省難治性膵疾患に関する調査研究班による2011 年の疫学調査(下瀬川班)では,年間受療者数は5,745人,人口10 万人対4.6 人と推定されており,平均年齢は66 歳,男女比は3.2:1と男性に多く,そのほとんどは1 型AIP と推定されている.1,064 症例を解析した国際多施設共同研究においても,アジア地域では1 型が全AIP の96.3%を占めるのに比してヨーロッパでは87.1%,北米では86.3%と,1 型AIP は欧米に比してアジア地域で有意に多いことが確認されている.

1 型AIP とIgG4‒SC に対して2011 年にはICDC をもとに日本の実情にあったAIP の診断基準(日本膵臓学会と厚労省研究班)とIgG4‒SC の診断基準(日本胆道学会と厚労省研究班)がそれぞれオールジャパン体制で提唱され,診療ガイドラインも作成されている.

以上を背景に,本特集は世界をリードされている当該領域のエキスパートの先生方により疾患概念,診断,病態生理,治療,予後など広範囲にわたりわかりやすく解説されており,当該領域疾患の指針となると確信している.


岡崎 和一

目次

巻頭言

1.自己免疫性膵炎の疾患概念―IgG4関連疾患としてのAIPの位置づけ,1型と2型の相違

2.病理からみた自己免疫性膵炎―その発生機序を含めて

3.自己免疫性膵炎の発症機序

4.自己免疫性膵炎の診断基準とその実際

5.自己免疫性膵炎の膵外病変

6.EUS/EUS‒FNAによる自己免疫性膵炎の診断

7.自己免疫性膵炎のCT,MRIの特徴的所見

8.IgG4関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎の鑑別

9.自己免疫性膵炎の初期治療

10.自己免疫性膵炎の長期経過とmanagement

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書籍情報

  • ISBN:9784888755028
  • ページ数:112頁
  • 書籍発行日:2018年1月
  • 電子版発売日:2019年3月6日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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