序文 第3版刊行によせて

PCIは臨床応用されて40年が過ぎ，円熟期に入ったと言われる。この間，さまざまなデバイスや技術が開発され，現在では慢性完全閉塞病変など，より複雑な病変なども高い成功率が得られるようになってきている。

一方，時代の流れは医療を受ける側の権利意識を高め，常に最高の結果を求める風潮がある。日本医療安全調査機構によると，医療事故として届けられている件数を診療科別に見ると，循環器内科は最も多い診療科の一つである。われわれが患者様に安全な治療を提供するためには，治療に使うデバイスの構造や使用方法，起こりうる合併症などに精通する必要がある。また，合併症が起こった時には，瞬時にそれを発見し，早期に対応しなければならない。これは，カテ室に入っているスタッフ共通の認識であるべきである。医師数が限られている一般病院にとって，コメディカルはきわめて大きな戦力なのである。

PCIは，患者様が入院した時点から治療が始まっていると言っても過言ではない。治療前の情報収集，スタッフのカンファランス，治療前の患者様への説明，カテ室での患者観察，治療中や治療後の患者様やご家族様への説明，治療終了後の処置や患者観察など，どれをとっても大事な治療完結過程のひとつである。皆が一丸となって患者様の治療に当たることが重要であり，特に治療中に何か不具合が発生した時には，医師，コメディカルの職種を問わず力を合わせて対応すべきである。そのためには，コメディカルも医師と同レベルのPCIに対する知識や経験を積み重ねていくべきである。実際に私自身もコメディカルの助言や緊急対応で緊急事態を凌いだ経験があり，身をもってチーム医療の重要性というものを感じている一人でもある。

本書はPCIに関するすべてを，経験豊富な多施設のコメディカルがわかりやすい言葉と表現で書いたきわめてユニークな著書である。これまで多くの皆様に読んでいただき，お陰様で今回が2回目の改訂となる。今回の改訂版では，時代の進歩とともに出現した，新たなデバイスや技術についても追記し，また，基本的なことについても，さらにさらに理解しやすいようにカラー写真や図説を多く用いてブラッシュアップした。PCIに携わる多くのコメディカルの皆様や若手の循環器内科医にも入門書として本書はお勧めである。時代は今，安全な医療を求めており，そのためには，われわれ医師は，コメディカルの確かな知識と鋭い目を必要としている。

2021年8月

星総合病院循環器内科
木島幹博