戦略的医療マネジメント―VUCA時代を乗り切るMBA視点

  • ページ数 : 208頁
  • 書籍発行日 : 2021年10月
  • 電子版発売日 : 2021年10月20日
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商品情報

内容

目先の“経営術”ではなく本物の問題解決能力が身につくMBAの知識を伝授!
アフターコロナを見据えた「戦略的思考」を語る


他の医師との交渉力,医局長や指導医に必要なリーダーシップ,診療で疲弊してもモチベーションを保つには……など日常診療の場で活かせるマネジメント力を知り勝ち組になろう! 医師×MBA×起業家の肩書を持つ4名がコロナで変わった今知りたい,AI,医療アプリ,キャリア形成の実情を語る豪華対談掲載.

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序文

編集の序


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症がパンデミックとなり,人類の健康への脅威はもちろん,病院の経営破綻や,医療システムの崩壊の危機,医療職の燃え尽き症候群などさまざまな課題が噴出している.企業経営において右肩上がりの1980年代と異なり,先行きが見通せないVUCAの時代において,医療界においても戦略的思考が求められる.多くの医療機関がより近視眼myopiaになり,オペレーションの効率化ばかりに日々追われていたところにSARSCoV-2によるパンデミックが起こり,ますますmyopiaになっていくことを懸念する.中世のアイザック・ニュートンはペスト禍のためケンブリッジ大学から離れ,地元でのんびりとした時間を過ごす中で万有引力の法則や,現在の微分積分の基礎などを発見(1665年)したとされており,コロナ禍は,人生の棚卸し作業を行い,自身のキャリアをじっくり考え,自己の成長や啓発に費やす貴重な時間と捉えている.ヘルスケア業界における競争環境も激変している.従来,競合といえば近隣の医療機関であったが,遠隔診療やAI診断,治療アプリなどのIT技術の進歩は遠方あるいは海外の医療機関すらライバルとなり得る可能性があり,様々なIT企業がヘルスケアシステムへ参入し,今後医療機関にとっての新たな脅威となるだろう.

医療経営のセミナーやテキストの多くは診療報酬や,DPCなどのオペレーションマネジメントに軸を置いた戦術的なものが多いが,経営の本質は「いかに目標に向かってヒトを動かし,すべてのステークホルダー( 利害関係者) を幸福にできる」かである.そして戦略とは「限られたリソースを適正に配分して,最大のアウトカム(成果)を引き出すこと」である.人材が足りない,費用がないなどのリソース不足を嘆いても問題解決にはならず,限られたリソース ( ヒト,モノ,カネ,情報) をうまくマネジメントしていかに最大のアウトカムを得るかである.医療職の皆様に目先の“経営術”ではなく,真の経営学を学んで頂きたいそんな気持ちから本書の出版に至った.

序章では医療経営学を学ぶ意義や経営学の本質について解説し,各章はモチベーション,キャリアマネジメント,リーダーシップ,交渉学,行動経済学の医療への応用,戦略的ブランディング,Society 5.0時代のAI / IoTなどの連携について,解説した.AIなどのテクノロジーは医療を大きく変革させることが期待される一方で,われわれ医療専門職の存在意義を陳腐化させるリスクもある.

Society 5.0時代の医療専門職には,意思決定能力,問題解決能力,創造性,コミュニケ―ション能力,情熱といったホモサピエンス特有の能力が求められると考えている.

さらに医療マネジメントの具体例に関しては,実際に病院トップとしての経営努力やマネジメントについてトップリーダーの豊富な経験を語って頂いた.

MBAに関しては海外に数年間留学し,フルタイムに英語で学び,多様な人材とふれあうことが真の魅力だが,経済的コストや時間コストを考えると現実には医療者のMBA留学は相当の覚悟が必要で,実際には困難と言わざるを得ない.医療者がグローバルMBAを国内で学ぶことは現在のキャリアを捨てずに勉強できるメリットがあり,COVID-19時代としても相応しいのはないかと考えている.

最後には,私自身が憧れ尊敬する,医師× MBAホルダー×起業家として活躍される3名の先生方との対談を掲載した.本書籍の出版に関しては中外医学社の上岡里織氏には,発案から編集作業までご助言賜り感謝申し上げる.

本書は,経営学の一線の研究者や,医療専門職でありながら,MBAなどの経営学に精通する方々,医師起業家に執筆をお願いし,豪華な執筆陣になったと自負している.

最後にCOVID-19パンデミック下での多忙な日々の中で玉稿を賜った執筆者の皆様にこの場を借りて御礼申し上げる.


2021年9月

愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学 准教授
 英国国立アングリアラスキン大学ExeJapan Business School 客員教授
 一般社団法人 日本医療戦略研究センター 代表理事

角田 圭雄

目次

序章 医療経営の鍵とMBA

1.医療関係者がなぜ経営学を学ぶのか〈真野俊樹〉

1.医療者が経営学を学ぶ前提

2.病院の持続と経営

3.経営学は幅広くマネジメントを学ぶ学問

4.病院での組織におけるキャリア形成の問題

5.医療を取り巻く環境の変化とそこへの対応

2.MBAの概念と経営学〈喜多元宏〉

1.日本の現状 ─ 間違いだらけのMBA

2.MBAと経営学修士の違い

3.MBAの概念

3.サービスとしての医療における人材マネジメント〈厨子直之〉

1.医療のサービス特性

2.医療組織における人材マネジメントの重要性

3.医療組織の人材マネジメント上の課題

4.感情労働としての医療

5.医療組織における人材マネジメントのフレームワーク

1章 医療職のモチベーションとイノベーション

1.モチベーション総論〈角田圭雄〉

1.医療における働く人のモチベーション

2.モチベーションの理論体系

3.ヒトはカネのみに生きるか

2.医療者のモチベーション低下:なぜやる気が起こらないのか?〈角田圭雄〉

1.日々のオペレーションに疲弊している(学習性無力感)

2.心理的安全性が保たれていない

3.働くことの目的が見出せない

3.どうすればモチベーションを向上できるか?〈角田圭雄〉

1.肥満やメタボの治療に経済的インセンティブは有効か?

2.モチベーション30とは?

3.心理的安全性を高める

4.医師の働き方改革の行方〈裴 英洙〉

1.医師は本当に疲れている

2. 2024年から始まる「医師の働き方改革」は医療界に激震となる

3.働き方改革マネジメントの腕の見せどころ

2章 キャリアマネジメント

1.キャリアとは?〈舩木良真〉

1.キャリアとは何か?

2.社会制度の視点

3.研修とマンネリズムの視点

4.キャリアの棚卸しの視点

5.生涯学習の視点

6.生活の視点

7.プロフェッショナルの視点

8.新しい技術獲得の視点

2.医療者のキャリア形成〈賀來 敦〉

1.キャリアの成功に必要なコンピテンシー

2.〔キャリアプランニング〕 4-Stageアプローチ 総論

3.〔キャリアプランニング〕 4-Stageアプローチ 各論

3.リカレント教育としてのMBA〈角田圭雄〉

1.リカレント教育とは

2.リカレント教育の課題と解決策

3.何を学ぶか?

4.医療者にとってのMBAの魅力

3章 医療におけるリーダーシップ

1.病院経営者に求められるリーダーシップ〈角田圭雄〉

1.リーダーシップとは?

2.BHAG,ムーンショット

3.職位によって求められるスキルの変化(カッツ理論)

4.リーダーに求められるスキルの変化

5.新しいリーダーシップスタイル

6.医療現場で求められるリーダーシップ

2. 救急・災害時医療におけるリーダーシップ─ MBAの学びを活かす─〈松本 尚〉

1.特徴

2.救急・災害時医療のマネジメントとは?

3.求められる能力

4.MBAでの学び

3.中間管理職のリーダーシップ〈福田 徹〉

1.中間管理職とは

2.パワー

3.エンパワメント

4章 医療交渉学

1.交渉とは〈角田圭雄〉

1.交渉とは勝ち負けなのか

2.オレンジの課題

3.交渉とはコミュニケーションプロセス

4.人と問題の分離

5.感情に訴えるストーリーテリング

6.プレゼンテーション戦略

2.コンフリクトマネジメント〈角田圭雄〉

1.コンフリクト=悪なのか?

2.コンフリクトマネジメント

3.医療コンフリクト(医師 ─ 患者対立)

4.老子に学ぶコンフリクトマネジメント

3.win-winの医療現場をどう構築するか?〈角田圭雄〉

1.win-winとは?

2.囚人のジレンマ(ゲーム理論)

3.利他的行動がwin-winをもたらす

4.心理的安全性が良いチームを作る

5.AIとホモサピエンス

4.チーム医療とシナジー効果〈角田圭雄〉

1.チーム医療の定義

2.チームとグループの違い

3.シナジー

4.チームの発展段階(タックマンモデル)

5.チーム医療に必要なものとは

6.心の知能指数EQ

5.IQ/EQからAQへ〈角田圭雄〉

1.VUCA時代とは

2.環境適応能力(Adaptability Quotient:AQ)

3.レジリエンス

6.プレゼンテーションスキル〈齊藤裕之〉

1.プレゼンとどう向き合うべきか

2.プレゼンをどう作成するべきか

5章 行動経済学を医療に活かす

1.行動経済学が医療に果たす役割とは?〈江口有一郎〉

1.C型肝炎とは?

2.C型肝炎ウイルス検査の「受検」の機会と課題

3.陽性指摘後の精密検査の「受診」における課題と対策

4.標準的な抗ウイルス治療の「受療」における課題と対策

5.受診促進のための「肝炎医療コーディネーター」への期待

6.医療における行動経済学の重要性

2.合理的でない患者と医療者〈平井 啓〉

1.患者と医療者のすれ違い

2.合理性を前提とした医療コミュニケーション

3.損失回避

4.医療コミュニケーションで生じうるさまざまなバイアス

5.限定合理性を前提としたコミュニケーションの方法

3.医療現場での「限定合理性」に基づくコミュニケーションの方法(フレーミング効果・ナッジ)〈平井 啓〉

1.フレーミング効果

2.ナッジ

3.患者と医療者のバイアス・関係性を考慮した医療コミュニケーション

6章 医療現場における戦略的ブランディング

1.病院のブランディング戦略〈寺尾友宏〉

1.病院にもブランディングが必要な理由

2.病院のブランディングには制約がある

3.ブランド・アイデンティティ

4.策定時の視点

5.「製品」についての検討事項

6.当院のブランド・アイデンティティ

7.「選択と集中」と「一貫性」

2.医療者のセルフブランディング戦略〈角田圭雄〉

1.医療における価値基準は?

2.ブランド化と病院経営

3.知覚品質と実品質

4.パーソナルブランディング

5.戦略的医師ブランディング(strategic physician branding:SPB)

7章 Society50時代の医療マネジメント

1.Society50時代の医療における新たな価値〈猪俣武範〉

1.Society50時代の医療

2.医療ビッグデータのパラダイムシフト

3.IoMTによる医療ビッグデータの収集

4.ヘルスケア産業におけるAIの利用

5.P4 Medicineとは

6.患者・市民中心のSociety50時代の医療

2.治療用アプリ ─デジタル療法が医療を変革するか─〈佐竹晃太〉

1.治療用アプリとは

2.治療用アプリが台頭するようになった歴史的背景

3.海外における治療用アプリの現状

4.国内における治療用アプリの現状

5.今後の展望

8章 医療マネジメント具体事例

1.市立福知山市民病院〈香川惠造,阪上順一〉

1.医療マネジメントを駆使した病院運営

2.医療マネジメントの芯となる病院理念の確立

3.人材育成

4.教育環境の整備

2.武蔵野赤十字病院〈泉 並木〉

1.専門職である医師に対して偏差値を示して行動を変えてもらう

2.専門的医療などこだわりをもって医療を行う

3.チーム医療を充実させる

4.診療科の垣根を低くして皆で協力しあう風土を作る

5.シフト勤務と複数主治医制

3.大阪府済生会吹田病院〈岡上 武〉

1.吹田市の概要と医療環境

2.済生会吹田病院の概要と経営状態

3.赴任時の病院の印象

4.経営改善策作成の準備

5.具体的経営改善策

6.COVID-19の蔓延

7.全職員に伝えてきたこと

9章 国内で学べるMBA

1.国際認証のMBA〈喜多元宏〉

2.医療職の継続とMBA〈北川育秀〉

10章 戦略的医療マネジメント対談

ZOOM座談会─MBA×医師×起業家─〈 角田圭雄,山本雄士,裴 英洙,佐竹晃太〉


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書籍情報

  • ISBN:9784498148062
  • ページ数:208頁
  • 書籍発行日:2021年10月
  • 電子版発売日:2021年10月20日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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